「ピアノ名曲をユーフォニアム&チューバ四重奏で」シリーズ、さしあたり11曲まで作りました。アレンジ対象楽曲にご提案いただきました諸氏に感謝いたします。
(2021年10月19日更新)
■Youtube再生リスト
ピアノ名曲をユーフォニアム・チューバ四重奏でシリーズ - YouTube
■コンセプト
懐かしさと憧れのピアノ曲。
「この手の室内楽編成のアレンジは出尽くしている」と敬遠されがちでしたが、ふと思って調べてみると、オケ曲や邦楽ポピュラーなどは無数にあるのにピアノ曲はぜんぜん無いことが発覚。名曲中の名曲で、しかもコンパクトなのにもったいない。
私自身、幼少期からピアノを学びたいと思いつつ、幾度となく機会を失ってきました。要するにピアノという楽器に対するコンプレックスもありました。
でも小学校の「お昼の放送」「掃除の時間」などで聞き続けた曲は今も鮮明な記憶として残っています。きっとピアノを学んできた人はもっと強い思いを持っていることでしょう。
そういう記憶に訴えかける名曲を演奏してもらえればな、というわけです。
それは音楽家としての「たしなみ」でもあり、人類史レベルで語り継がれる最高のメロディを噛みしめる行為でもあります。
ユーフォニアムとチューバという鈍重な編成向けですが、非常に充実したサウンドが出ます。ピアノではなかなか「歌う」演奏が難しいものですが、管楽器編成ならではの「歌の表現力の高さ」は、本家ピアニストでも納得してもらえる部分があるはずです。
単に名曲の威を借りるだけではなく、もうひとつの解釈を示すことができたらなと願っています。
ピアノ初心者の頃に触れた曲から、「こんなの弾けねーよ」という無茶曲まで幅広く揃えてみました。
今後も気が向いたら量産しつづけ、ライフワークのひとつにできたら良いなと思っています。
別編成でのアレンジも考えてはいますが、安易な置き換えアレンジにはしたくないのでしばらくお待ち下さい。
■以下、音源貼り
順不同に貼っておきます。ペタペタ。
・幻想即興曲(ショパン)
(個別ページ)
冒頭の右手の練習だけした人も多いはず。緩急の効いた名曲。どうアレンジしたものか悩み、数年放置していましたが、シリーズに追加するために仕上げました。難産。
・月光ソナタ(ベートーベン)
(個別ページ『月光ソナタ』)
『万物創世記』のピアノ回でも大きく扱われた、ベートーベンの激しさを象徴する曲。
アレンジ対象としてはきわめて無茶曲。4人の分散により無茶パッセージを演奏可能レベルに落とし込むことに成功しました。
(以下、動画なんか作ってる時間が無かったのでサウンドクラウドの音声のみ。)
・革命エチュード(ショパン)
(個別ページ『革命エチュード』)
(楽譜はこちら 吹奏楽楽譜販売 ASKS Winds / 『革命エチュード/ショパン』ユーフォニアム・テューバ四重奏譜)
無茶曲シリーズ。チューバを殺す曲。マイナースケールとアルペジオの奏法をマスターしているなら余裕だ余裕!
・愛の夢(リスト)
(個別ページ『愛の夢』)
(楽譜はこちら 吹奏楽楽譜販売 ASKS Winds / 『愛の夢 第三番/リスト』ユーフォニアム・テューバ四重奏譜)
フィギュアスケートでも有名になった本当に美しい曲。ユーフォニアムとチューバの音色にもマッチしますね。レチタティーボも埋め込んだ凝った構成になっています。
・月の光(ドビュッシー)
(個別ページ『月の光』)
(楽譜はこちら 吹奏楽楽譜販売 ASKS Winds / 『月の光/ドビュッシー』ユーフォニアム・テューバ四重奏譜)
独学ピアニストがこぞって挑む印象派の名曲。幅広い音域をどうアレンジするか非常に悩み、何度も試作した。
・『メイプルリーフラグ』(スコット・ジョプリン)
(個別ページメイプルリーフラグ)
(楽譜はこちら。『メイプルリーフ・ラグ/ジョプリン』ユーフォニアム・テューバ四重奏 | )
底抜けに明るい「ラグタイム」。スコットジョプリンと言えば普通は『ジ・エンターティナー』だけど、あえてこっちを採用。ラグタイムの音形はその後のデキシーにも引き継がれているので、ラフなデキシー式チューバ奏法がマッチします。存外にお気に入りになったアレンジ。
・『花の歌』(グスタフ・ランゲ)
(個別ページランゲ『花の歌』)
(楽譜はこちら 『花の歌/グスタフ・ランゲ』ユーフォニアム・テューバ四重奏)
初球~中級ピアノ曲として有名な、ピアノ奏法のすべてが詰まった傑作。アレンジしつつ原曲の楽譜を研究していて、完成度の高さにうならされた。聞き所は中間部のチューバのメロディと、その後の3段カデンツァ。
・『悲愴』2楽章(ベートーベン)
(個別ページ『悲愴』第2楽章)
(楽譜はこちら
『ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章/ベートーヴェン』ユーフォニアム・テューバ四重奏)
人類が全宇宙に誇るべき名旋律。
ただ、退屈な曲なので変化をつけてモダンなジャズ和声アレンジにしました。非常に難産で数回作り直した。納得の行く完成度になるまで、シリーズの中では一番時間がかかった。その分とても納得の行く出来になった。
・『舟歌:6月』(チャイコフスキー)
(個別ページ『舟歌』)
(楽譜はこちら 『四季より「6月:舟歌」/チャイコフスキー』ユーフォニアム・テューバ四重奏)
哀愁漂う名旋律。地味な低音楽器にこそ似合う。そのまま音符を並べると暗すぎるので、トリル練習曲的な要素を盛り込んだ。センスの良いトリルをぶちこんで演奏してほしい。シリーズに対してピアニスト某人がイチオシとして紹介してくれた曲。
・『英雄ポロネーズ』(ショパン)
(個別ページ英雄ポロネーズ)
(楽譜はこちら 『英雄ポロネーズ/ショパン』ユーフォニアム・テューバ四重奏)
ピアノの奏でる音として個人的に大好きなメインテーマを持つ曲。アレンジに際して改めて原曲の楽譜を見ていて思ったのは「弾けるのかこれ」だった。鮮やかなサウンドのためにピアニストは死ぬほど努力をしているんだなぁ。聞き所は後半の地獄ベースライン。私の経験上、チューバ奏者はこういう無茶な楽譜を見ると燃えるので容赦ない内容にした。
・『ワルツ 第7番』(ショパン)
(個別ページショパン『ワルツ第7番』)
(楽譜はこちら 『ワルツ第7番/ショパン』ユーフォニアム・テューバ四重奏)
超有名な地獄パッセージ持つ地獄曲。適度に音符を省略することでユーフォニアムでも演奏可能なアレンジにした。でもアレンジしていて「めちゃ良いなぁ」と思ったのは中間部の変則ワルツ。
・『ノクターン』(ショパン)
(個別ページショパン『ノクターン』)
(楽譜はこちら 『ノクターン「3つの夜想曲」作品9-2/ショパン』ユーフォニアム・テューバ四重奏 )
リストの『愛の夢』をやったならショパンのこれもやらざるを得ない。非常に似た音楽性を持つ2曲をあえて並べたい。浅田真央ファンも納得のレパートリーを組める。半音階を活かしたメロディと和音の使い方が最高に美しい。原曲の軽快なカデンツァは解釈を変えて、暑苦しいユーフォニアム2人のデュオに仕上げました。
■やらないか?
同様のコンセプトでアレンジをやってみませんか?
冒頭でも述べたとおり、どういうわけか金管室内楽という分野において「ピアノ名曲アレンジ」はほとんど手つかずの状態です。
人類史レベルの名曲があり、多くの人が知っている曲なのにもったいないなーと思います。
想定する聴衆は金管楽器奏者という内輪の狭い村だけではなく、より多くの人が望むレパートリーを拡充してみてはいかがでしょうか?
・演奏に際してのご提案
原曲はピアノ独奏ですが、4人の室内楽ならではのコンビネーションプレイを強調した演奏解釈を目指してみることを強くオススメします。
また、低音金管楽器ならではの力強く重厚なサウンドを主軸とした解釈で、バリバリ鳴らしてみてほしいです。
過去にはショパンコンクールでも「そんな演奏スタイルはショパン演奏とは呼べない!」という審査が行われ、物議を醸したことがあります。しかし、そもそも、演奏する楽器が違います。ピアノに従うのではなく、最初から金管室内楽曲として作られていたのだ、という姿勢で思い切りの良い大胆な演奏をしていただければ幸いです。