ショパンの有名なピアノ曲『幻想即興曲』(作品番号66)をユーフォニアム・チューバ四重奏用にアレンジしました。
(楽譜販売は準備中です。2月以降予定。)
(2021年1月15日更新)
■こんなアレンジにした。
数年前に試作してほったらかし。シリーズ曲が増えてきたので、せっかくだから仕上げた。難産だったけど割と良いアレンジになったと思ってる。
「完成させるぞ」と決めてしまってからは割と短時間で完成。ピアノ曲からの編曲を10曲以上を連作したことで腕が上がったなぁと感じられたのが何よりの収穫。やればできる。
■アレンジ内容
(※スコア画像は製作中のフルスコアからの抜粋です。パート譜はもうちょいきれいな状態でリリースされます。)
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動画7秒。
有名な主題。高速パッセージはシリーズ他作品と同様のスタイルで2人に分割しました。
原曲はこう。
それを、こうする。
また、ここの運指が最も簡単になるキーに移調しました。
サウンド的にはもっと高い音域にした方が当然良いんだけど、可能な限り速い運指が可能なキーを優先しました。が、この音域の低さはもしかしたら酷評されるかもしれません。それを覚悟の上で、あえて「これがベストだ」という意思表示でもあります。冒頭の音域を低く抑えたことで、他の部分でちょっと高めの音が出ると相対的に効果が強くなるメリットもあります。そういう点も評価基準にしてもらえたら嬉しいな。
この第1主題に対する伴奏は、原曲の8分3連符を取り入れつつ、やや穏やかに。原曲に忠実にしてもサウンドが濁るので配慮しつつ無理のない音符を配置しています。
動画18秒。第2主題。
原曲の譜割りだと4拍目と1拍目は当然切ります。が、音の伸びを重視して、あえてタイにしてつなげました。オケ奏者がたまに自主的に使う奏法を記譜で表現しています。指揮者が「もっとソフトに刻んで」と指示し続けると、最終的にはタンギングしなくなるし、もっと指揮者が要求するとロングトーンになって「それでOK」となるあの状況。
なお、ここは沈む場面なので、Euph2が担当。Euph1は途中からのオブリでそのセンスを発揮してもらう。
動画38秒。
rit.の末尾で浮かす処理。
これも原曲どおりに音符を当てはめると「その楽器が、その表現をする時」の用法にならなくなる。原曲が出したがっているムードを、アレンジ先の楽器の手法でリビルドするアレンジ。
Tuba1と2
結句。
動画55秒から、1分5秒。
テーマの結句。ド派手。
原曲の音符をなぞっても完全に無意味なので大幅に書き換えて、激しさの表現に注力しています。
今回のアレンジで一番特徴的な書き方をした部分。この書き方のバリエーションを他の場面でも数回使っています。
「冒頭の音域を低くしておけば、必然的に結句では派手な音域が使える」という緻密などんぶり勘定による設計が的中。「アレンジとは音域です」と断言した某人の言葉を証明した部分。
ヤナーチェクが『シンフォニエッタ』の3楽章で、金管楽器の自然倍音が絶対に混入する書き方をしていたのがヒント。たしかストラビンスキーもやってたはず。うろ覚え。
(12分49秒からしばらく連続する)
中間、緩徐部。
動画、1分13秒~
メロディは主にチューバ1で。
オリジナルのオブリを薄く追加。
チューバのメロディとベースラインの並達8度を避けるために、ベースラインも一部変更しています。
この緩徐部のメロディ、1拍スタートの部分と3拍スタートの部分があって、非常にショパン的。みならう、じゃなくてパクるべき美しさ。
この曲で最もインパクトがあるのは冒頭の高速フレーズですが、実のところメロディを演奏する時間が最も多いのはチューバ1。メロディを演奏するのに最適な中高音域で朗々と演奏できます。無茶曲のようだけど中間部はこれぞETアンサンブルという美しさが表現されています。
消去法的に伴奏はEuph2に押し付けられる。
ただし、負担を軽減するためにアルペジオは限界まで減らし、順進行スケールを主体にしました。最高音は実音Eで、終盤で1回だけF。
「Bb管の金管楽器は上F以下なら難易度が一気に低くなる」というセオリーに従った教育的な書き方。
話が前後しますが、第2主題のTuba1の伴奏は、この場面とほぼ同じ形で書かれています。
なお、この書き方はスメタナの『わが祖国(モルダウ) 』のビオラに倣っています。
1分9秒あたりから、ビオラ参照。
ビオラのパート譜はこんな感じ。ギター教本「地獄のメカニカルトレーニング」のような真っ黒な楽譜。
高難易度ながらも中低音のみを使用し、ほぼ固定ポジションで演奏できる(はず)ように書かれているので「悠々とした川の流れ」のサウンドが得られる、らしい。
個人的には特に好きな曲というわけでもないんですが、知人が「モルダウのオーケストレーションは良いぞ」と言っていたので、さらっと勉強した。冒頭のフルート2本のコンビネーションを筆頭として初歩のオーケストレーションで語られることの多い曲です。 どの曲を研究したら良いかワカラネー!という人にもおすすめできる良作、だそうです。
で、スケール多めに変更した伴奏パターンは、ある意味「変奏曲的」な書き方にしてあります。スタンダードな和声音のみの構成から、徐々にスケールの非和声音が増えていきます。ここしかないという入念な音選択をしたつもり。この伴奏を書くのが今回のアレンジで一番苦労した点。
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■シリーズまとめ記事
結構な数になってきた。
eki-docomokirai.hatenablog.com
リクエストあったらお気軽にどーぞ。
既存楽譜の出版状況などを考慮した上でアレンジします。
希望の難易度があればそれもお知らせください。