ユーフォニアムの有名なソロ曲『パントマイム』のオーケストラアレンジを制作していました。半分仕事、半分趣味、半分ライフワークによる制作です。プライベート仕様のため、出版予定はありません。
(2022年11月21日)
■こんなのできた
よくある82~124小節をカットしたバージョンです。
https://www.youtube.com/watch?v=Kii1qdKGFj8
はじめてこの曲を聞いたことに思いを馳せ、チャイルズ兄弟の当時の写真(1990年頃のもののはず)の画像を使いました。
・制作の経緯
今月学生時代の後輩と会って伴奏音源制作の仕事話になり、この曲の話が出てきました。その流れでなんとなく「じゃあそのうち作るわ」ということに。
たぶん次回の飲み代くらいの仕事にはなったんじゃないかと思っています。もしここ見てたらおごってね。
・編曲について
オケ書きの基本にのっとり「9割弦で表現」を心がけて2管編成で書きました。元が吹奏楽・金管ブラスバンドおよび吹奏楽なのでそれらと差別化したサウンドを目指しました。
原曲ピアノ版および金管ブラスバンド版は1回聞いただけで、後はやりたいように書いています。
参照したスコアはピアノ版のみ。伴奏がピアノ単独なので不足している和音は補い、数箇所はフルオケで表現可能とみなして和音を変更しました。
・使用音源(シンセ)
毎度と同じです。特に変わったことはしていません。
ViennaとHALionで制作しています。
過去のテンプレを元にしているので、詳細は別記事に委ねます。
eki-docomokirai.hatenablog.com
今回は金管楽器のミュート演奏用にエフェクタによる音を採用しています。アレグロに入った直後の音です。
eki-docomokirai.hatenablog.com
ホルンのゲシュトップとトランペットのストレートミュート音を使用しました。
・ミックスについて
ソロ演奏を大きく聞かせることを主軸に、積極的なミックスをしています。
コンセプトは過去のコンチェルト制作にほぼ準拠しています。
eki-docomokirai.hatenablog.com
今回の制作でテンプレートを若干変更したので、今後の伴奏音源の制作などがちょっと良くなっていくはずです。たぶん。
■俺とパントマイム、とチャイルズ兄弟
この曲は高校生の時にチャイルズ兄弟のデュエット演奏で知って、耳コピした楽譜で練習していた曲でしたが、結局人前で披露することはありませんでした。
耳コピはもちろん正確なものではありませんでしたが、「この手の曲はどうせごまかし演奏するし、まぁええやろ」的な感じでやっていました。その後、楽譜を所有している人に見せてもらえました。楽譜には「for Nicholas Childs」と明記されていて、チャイルズ兄弟のために書かれたことが分かります。
で、この曲はユーフォニアムをやっている人ならたいていは知っている曲です。
この「久美子がユーフォニアム奏者・進藤正和氏のCDを聴き始めるシーン」、原作においてはスパーク作曲の名曲「パントマイム」が流れるのです。
もしかしたらアニメでもこの曲の前半部分を流していたかもしれないんですね。
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チャイルズ兄弟の略歴についてはこちらがたぶん一番詳しいテキストです。
兄弟そろって同じ楽器でプロ活動という幸せな環境。しまいには息子娘まで同じ楽器に取り組んでいます。
・「無茶経験値」のための曲
お聞きの通り、かなり難しい曲です。
こういう無茶曲に挑戦することで得られる種類の経験値があり、安定して演奏できるレベルの曲にしっかり取り組むことで得られる種類の経験値もあります。初見同然の状態でそれなりの演奏をすることによる経験値もあります。
この3種の経験値をバランス良く摂取することが上達のカギだと思っています。
勤勉なふりをして、かんたんで地味なことだけをやっていても、高速系の曲は絶対に上達しないからです。
・イメージと現実の違い
チャイルズ兄弟のサウンドは、当時としては明らかに異質なものだったという評論だったはずです。それはもちろん録音とミキシングによるもの、とも言えますが。
ユーフォニアムとは思えないクリアーで素早いサウンドを聞いて「なるほど、こういう演奏を目指さなきゃいけないんだな」という方向性を教えてくれたのがチャイルズ兄弟のCDでした。
その後も「どういう演奏をしたいのか?」という問答があった歳には間髪入れずに『チャイルズ兄弟の音です』と即答していました。
ベルが前を向いているトロンボーンは想像以上にソフトな演奏を身につける必要があり、ベルが上を向いているユーフォニアムは想像以上にタイトな演奏を目指す必要があるのだと学んできました。最終的にはホールリバーブによる音響効果を活用してCDで聞こえてくる音になるからです。
■俺とフィリップ・スパーク
プロの音楽家が自己紹介に「◯◯に師事」と書くのだけれど、それって本当に師事って言えるのか?と悩むことがよくあります。
この手の談義をすると「ちょっとでも教わったなら師事したって書いて良いんだよ」派と、「授業を取って単位をとった」「面識のあるレベル」「電話したら声を聞いただけで明るく返事してくれるレベル」など、さまざまな段階があるようです。
もしちょこっと接した程度で師事したと言って良いのであれば、私は「フィリップ・スパークに師事」と書いて良いことになるのですが、いや、それはねーよと感じています。
これについてはまたそのうち。
■関連記事
ユーフォニアム学生時代のお話。
eki-docomokirai.hatenablog.com