eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

英雄ポロネーズをユーフォチューバ四重奏に編曲しました

ピアノ名曲をユーフォチューバ四重奏シリーズを量産しています。今回はショパンの『英雄ポロネーズ』をアレンジ。5分にまとめたのでコンテストでも使えます。

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(2021年1月15日更新)

 

ユーフォニアム2,チューバ2にアレンジ

こんな仕上がりになりました。5分以内にカット。

youtu.be

多彩な場面を表現するために、いろいろなアンサンブル書法を駆使して作りました。

楽譜はこちら。

www.asks.shop

 

 

イントロ。連続する16分音符の下降。

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は、こう書き換え。

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これをうまくテンポアップ(accel.)しながら合わせて演奏できるならコンテスト上位も狙えるパフォーマンスになると思います。コンテスト審査員は曲を最後まできっちり聞くことなんてありません。序盤でアピールしないとダメです。

 

■超有名なAテーマのアレンジ

何度も出てくるAテーマ。たぶんここを聞いたらほとんどの地球人が「あ、この曲知ってる」となるポイント

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譜割りの変更、装飾音符の表記を変更してあります。

個人的にはあらゆる音楽の中でもトップ級の格好良い主題だと思っています。

こういう曲をアレンジする時、大事なのは「これだよこれ」という納得感。

良くないアレンジだと「そうじゃねーよ」感になってしまう。

曲の命となる「これだよ」ポイントをうまく書けずにお蔵入りにしている曲も多いです。たんにアレンジ先の楽器編成に合っていないこともあるし、私の技術不足もあるでしょう。

 

 

 

全体の音域はメインテーマの最高音(Euph1、上Bb)に合わせた。(下画像、赤囲み)

ここで事実上Euph1の演奏能力が「詰み」の状態になるので、これ以上の行動をさせたくない。

金管楽器が何をやると演奏難易度が「詰む」のかについては過去記事がありますので、興味がある人はどーぞ。非常にシステマチックな考察で、奏者の人からも評価が高い内容です。

eki-docomokirai.hatenablog.com

キーも運指の機動力が高いFなので

 

というわけでEuph1が「詰み」状態になるので、最後の「オチ音」はEuph2とTuba1に受け渡す。

(音源0分46秒~)

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こういう工夫しないと、Euph1の負担が大きくなりすぎて、演奏クオリティが低下してしまいます。

なお、2つ目トリルの(F+G)はBb感楽器の構造上、自然倍音の都合で運指トリルができず「リップトリル」という奏法が必須になります。管楽器の扱いが不慣れな作編曲家がよくこれを使っているのですが、高確率でミスされます。原則的に使うべきではないネックです。

という工夫をしつつ、その2小節後ではもう少し難しい内容にしています。

聞く側としても、1回目がちゃんと演奏されていれば、直後の反復で多少ミスっても脳内補完できるものです。

 

 

なお原曲はこうなってる。恐ろしい運指です。ピアノ1人でやるには過酷過ぎる曲なんだなぁと再確認させられます。

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ショパンが生きていた当時のピアノは、現代のピアノよりも軽量な鍵盤で、音も軽いものでした。そういう「楽器の進化と巨大化」についても色々と考えさせれてます。

ところでショパンと言えば、近年のビッグイベントとして2018年に母国ポーランドで開催されたのが「当時の楽器、当時の奏法で競うコンクール」。過去記事で少し触れています。大会の様子の大半を確認できる動画リンクもありますので、暇人はどーぞ。

eki-docomokirai.hatenablog.com 

 

・テーマ終盤の駆け上がり部

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こうしないとET4では音域が詰む。

エグすぎる超低音・超高音に記譜すればもうちょっと忠実に書くことはできる。でもそうすると「音符置きましたアレンジ」になってしまい、良い演奏は引き出せません。「勢いよく上がる」ことをアレンジ先の編成で表現するのがベター。

4人がかりなのに音域もスピードも低下しますが、コンビネーションならではの興奮も伝わる場面として、一定以上の演奏効果があります。

 

など腐心することでAテーマを綺麗にアレンジできたのは本当に良かった。

普通にピアノからのアレンジをやろうとするとこうは書けないはず。

ちゃんと『英雄ポロネーズ』の雰囲気は出せているし、低音金管楽器曲としても納得の内容になっているはずです。 

■中間部以降

アンニュイでエキゾチックな中間部。メインテーマほどではないものの、非常に印象的。有名なメインテーマ以外の部分をいかに極端に演奏し、それぞれの個性的な場面をインパクトのあるものにするかがこの曲のキーポイントだと思います。

トリルはチューバ1にも入れた。

(0分33秒~)

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チューバでは非常にレアなトリルが、この曲の中間部の異国情緒的な雰囲気を強調できると思っています。

なお、原曲とは若干譜割りを変えています。

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原典主義者のアレンジャーは同じ音価で書くのですが、アレンジ先の楽器と奏者の様々な都合に配慮するなら書き換えるべきです。アレンジとは「翻訳」ですから。

 

たとえば同じ場面の楽譜、

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四角で囲った部分はピアノ版では休符がありません。

が、管楽器が休符無しのメロディを見た時、どうしてもつなげて演奏したがってしまうものです。明確に休符を入れておけばスタッカートを書くよりも明確に伝わります。

もちろんあまりにも休符が挿入されると気持ち悪い楽譜になってしまうケースではstacc. sempreなどと書くのですが、この場面なら休符を明確に見せた方がベターだよね、ということです。

 

付随する問題として、(未熟な)ピアニストやギタリストが作った曲はこういう要素が欠落しやすいです。音を出すタイミングでしか音楽を捉えていない未熟な人は、休符が遭っても無くても「同じだろ?」と言います。先日、外国人アレンジャーたちと談義した際にも「どっちでも同じだろ。」という意見が主流でした。記譜音楽なんてそんなもんですね。

 

 

・地獄の下降音形反復

中間部後半、地獄のメカニカルスケール道場!

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ピアノの難易度として見ると、単音4つなら簡単ですが、オクターブ重ねなので地味に難しい場面です。

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「これをチューバにやらせるとか阿呆か?」と言うのがチューバ奏者ですが、同時に「やってやろうじゃないか」となるのもチューバ奏者。彼らは静かでアツい。私もチューバをやっていたことがあるので彼らの気質はよく分かる。将来的に作編曲をやりたいと思って、楽器をあれこれやっておいて本当に良かった。つまらん低音楽器は絶対に書きません!

チューバでは息継ぎの問題があるので、Tuba2がフィルを処理しつつ穴埋めするように変更した。(Vは管楽器用のブレス記号)

 

ピアノ版がずっと同じ4音を連続するのは演奏上の難易度都合もあると思う。別にフィル音形が入ってもなにも問題は無いし、その方が変則的なメロディに欠ける「区切り」の要素が加わるので、演奏する方も聞く方も安心感が出るはず。

曲を知っている人は「あそこの伴奏、チューバでどうすんの?」と予想するはずですし、チューバ奏者もこういう楽譜を見ると謎のやる気を出すものです。いろいろな意味で面白いシーン。

また、ここはメロディも若干変更し、デュエット的に変更しました。2人のユーフォニアムがお互いの息継ぎ位置を補い合いながら、ノンストップに演奏します。

 

なお、この中間部のメロディは明らかに金管楽器のファンファーレ的な内容なので、この曲を金管楽器でやるのは正しいはずです。その譜割りは相当に改変し、より金管楽器のフレーズとして適切なものにし、二重奏の動きを多彩にしました。ピアノ原曲に親しんでいる人にも納得してもらえることと思います。元の音符をたどるだけではなく、意図を汲み取り、本来あるべき姿を与えていく「攻めの編曲」も大切だというのが私の信条です。

 

・リピートの多い曲

楽譜構成は3回のリピートになっていて「例のテーマ」は何度も同じ演奏をします。

リピート無しにしようかとも考えたのですが、どうやってもかなりの難易度になるテーマなので完全に同じ内容でリピートさせることにしました。

パート譜のレイアウトも精密に調整してあるので、リピートの戻り位置も見やすくなっています。こういう点も奏者時代の苦い経験が生きています。フルスコアのレイアウトやミスは割とどうでも良いのですが、パート譜は入念に作るべきだと私は考えています。Cubaseでの浄書なので至らない点はありますが、それなり以上の時間をかけて「奏者にとって見やすいレイアウト」に仕上げています。

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