(書きかけ) 「なんで440Hzなの?」というお話。「あなたはこのピッチの違いがわかるか!? 」という趣旨ではありません。時代とニーズによってどんどん変わってきた、ピッチの歴史の話です。
(独立記事にしました)
(2020年12月23日)
■昔のピッチを聞く
楽器とその奏法も、全て当時を再現しています。
この「古典コンクール」については下の記事でどうぞ。
eki-docomokirai.hatenablog.com
何度も言いますが「あなたはこのピッチの違いがわかるか!? 」という趣旨ではありません。
また、作為的に作った奇妙なピッチの音楽の話でもありません。
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■440とは何か?
手短に。
440HzとかISO、国際基準です。
基準が定まるまで、国や歴史、演奏形態など、さまざまな理由によってさまざまなピッチが存在しました。
それではいろいろと困るので基準を作ろうということになりました。
どの音楽形態も「我々の音楽こそ至高」として譲りませんでしたが、多数決という数のパワーや殴り合い、陰湿なハラスメントの末に「とりま440で手を打とう」となりました。
基準が決まれば当然、「基準はみ出すことで得られるメリット」という新たな価値観も生まれます。この世は地獄だぜ!
たとえば、ISOの440よりちょっと高い方が明るく聞こえるので442が使われるというのが実情です。なお、国際規格に拘束力はありません。
そもそも「国際」なんて大きな名前を使っていますが、天地創造の瞬間に神が定めたルールではありませんし、ビッグバンによって生まれた宇宙の絶対的な法則でもありません。なにかの原子振動を基準にしているわけでもありません。一昔前の人がなんとなく決めただけです。
Wikipediaによれば、440は1955年の国際標準化機構(ISO)とされています。
・ヒョージュンとは一過性のブームでしかない
「国際的な標準」なんてものも、しょせんは流行でしかありません。作られたムーブメントでしかありません。
たとえば企業が取り入れるISO9001とかISO14001とか、一昔前に流行したじゃないですか。で、今になってみれば、完全に古臭くて、役に立たなくて、「あの時代において、立派な企業であることをアピールするためのツールでしかなかった。」という評価になりつつあるのが現状です。
テーブルマナーや服装だってどんどん変遷しています。
なお、上の動画では楽器とピッチ、奏法は当時の音楽を可能な限り忠実に再現していますが、服装や髪型についてはまったく考慮されていません。さらに言えば、当時の観衆マナーも再現されていないでしょう。ついでに言えばコンクールとしての審査基準も現代の基準です。
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以下、うんちくと雑学。
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■ピッチは歴史とともに上がっていく
昔の話から。
冒頭の「古いオーケストラ」ではコンサートピッチが430Hzでした。
低いピッチですが、まだギリギリ聞ける低さです。
当時は「国際標準」など存在しないので、国によって、、楽団によってピッチは大きく違っていたとされています。今の時代からはちょっと考えにくいことですが、440になったのだって割と最近のことでしかありません。
423が良いとか、419こそが真の美だとか、諸説ありました。
さらに古くは423などが標準的であった、という研究報告があり、そのピッチで演奏する「古楽器楽団」も現存します。
この辺については諸ウェブサイトを御覧ください。
興味がある人は以下のリンク先をどうぞ。
- 非常に古くは390Hzだった。
- 高く張りのある「明るい音」競争が加熱。
- 456Hzまで上がったという極端な楽器設計の例。
などの興味深い話が書かれています。
全くことなる観点として、
- 計算しやすい数字
- 低いピッチの方が弦が長持ちする(経済)
などの、まったく異なる事情によって使われるピッチもあります。
たとえばDTMの場合、「ほぼすべてのプラグインがデフォルトで440だから」という理由で440が一般的です。別に442にしても良いのですが、全てのプラグインを毎回設定変更する必要があるので面倒ですよね。
■ピアノのピッチ
ピアノの最大の特性は「でかい」「重い」ということです。
超一流のピアニストでさえ、ほんの数人の異常なこだわりを持つ者という例外をのぞいて「そこにあるピアノ」で演奏をします。
奏者に同行してピアノをチューニングする「調律師」というパートナーの腕と相性は重要です。
「超一流のピアニストが日本に来る!」という場合、まず優れたピアノが無ければいけません。そのために各コンサートホールは可能な限り優れたピアノを所有しています。
同時に、事実上の世界標準機、スタインウェイとなってしまうわけです。
ピアノ製造各社はこの壁を打ち壊すために必死の開発競争をしています。が、あまりにも一般的ではない仕上がりのピアノでは、奏者の身につけてきた技術に適合しなくなってしまいます。結局スタインウェイの模倣品になっているのが実情だと言わざるを得ません。このカテゴリを「国際コンクール認定ピアノ」と呼びます。
なお、ピアノのコンクールには演奏コンクールだけではなく、製造のコンクールという工業競争部門も存在します。
で、ピアノのピッチ。
運搬できないし、極端なピッチにすることもできない。
だから「その演奏会場にあるピアノのピッチに合わせるしかない」となります。
もしあなたの曲を「どうしても443で演奏したい。私の曲は443と指定しています」と主張しても、その曲のためだけに別のピッチにしたピアノを用意させるのはとても大変なことです。
・現在のピアノの製造ピッチ
ピアノの「設計」は442が主流になりつつあります。国際基準が440だとしても、事実上求められているのが442だからです。
「設定」としての調律では442か440を選べるようにしていますが、それでも「設計」は442が主流です。442を狙って製造されたピアノを440に低くチューニングしている、ということになります。
一般家庭のピアノでは、440Hzで調律師が合わせるのがふつうです。しかし、最近では、442Hzで合わせることが増えているようです。
おいおい、国際規格440はどこに行ったんだ?と感じるかもしれません。
しかし、冒頭に書いたとおり440はあくまでも規格基準でしかなく、基準ができればそこからはみ出すメリットが生じるのが社会というものです。
「設計が442なのに設定が440」の意味が理解できない人は、靴とヒモだと思えば良いかと。
24.0で設計された靴本体に対し、個人差によってヒモがきつく設定されたりする。ということです。ゆるくした方が履きやすいこともあるし、運動をする時にはきつく結んだ方が良いこともある、というわけです。運動会などで靴紐をきつく結びなおした経験はありませんか?
楽器のピッチの話は、靴や服の寸法設計の話だと思って考えればスッキリするし、絶対値など無意味だということも納得できてくるはずです。基準はあくまでも基準でしかありません。
なお、調律というのは大変奥が深い技術で、単に数字をあわせるだけではなく、高音に行くほどちょっと高くするなどの工夫(ストレッチチューニング)で、さらに良い音を出そうとする試みもあります。
ストレッチチューニングの音は実際に聞いてみれば多くの人が納得できるはずです。特にピッチに対して敏感じゃない人でも「そう、これだよ」と直感するはずです。単に数学的に正しいだけの調律では、私達がすでに知っている「あの音」にはならないという現実を体感するべきです。
最も安価にューニングの差を体験できるツールとして、XLN AuduioのAddictive Keysがあります。
Addictive Keysのものはあくまでも擬似的な表現ですが、それでも各種チューニングの個性を手軽に実感できるツールとして有意義です。
似たようなピアノシンセにPianoteqがあり、こちらはより優れたチューニング特性のシミュレートが行われいます。が、その機能を使えるのはかなり高価な上位モデルのみです。
・パイプオルガンのピッチ
もちろんさらに巨大な楽器としてパイプオルガンがあります。パイプオルガンは事実上の「建築物」ですから、移動は不可能です。チューニングは数百方のパイプを「削る」「曲げる」という工作で行うので、数日を要します。
パイプオルガンを使用するなら、他のすべての楽器はパイプオルガンに揃えるしかありません。
特定のオーケストラは特定のホールを拠点とし、そこで「443」「445」というハイピッチ演奏を行いました。しかし、海外ツアーで回る多くの国でパイプオルガンを自分たちのために再チューニングさせることは事実上不可能なので、レパートリーが制限されます。
・鍵盤楽器のピッチ
マリンバやシロホン(ザイロフォン)などの木琴。
グロッケンシュピールなどの鉄琴。
チューブラーベルなどの「鐘」。
これらは事実上チューニングが不可能です。
削ることで小さくすればピッチを上げることができます。
ピッチを下げたい場合は特殊な削り方でわずかに低くすることもできます。
が、頻繁に削ることは絶対にできません。
そういう楽器に合わせるしかありません。
・マーチングスネアドラムのピッチ
キューバのギターなどで「低いチューニングの方が長持ちするから経済的」とする一方、とにかく高い音を目指した楽器もあります。マーチング用のスネアドラムです。
知らない人が聞いたら「こんなのスネアの音じゃねえよ」と思うことでしょう。確かにこれはすでに「いわゆるスネアドラム」の音ではありません。
普通のドラムセットのスネアを擬音で表すなら「バン!」「ドン!」「ズン!」ですが、これはもう「カッ!」という謎の音。
どうしてこんな異質な音になるまでハイピッチを追求したかというと、野外で聞こえやすいからだそうです。マーチングバンドで使われる大量の金管楽器を相手にしても埋もれない音色感という理由もあります。
また、音が短いサステインなので、より細かくテクニカルな演奏を強調できるからだそうです。特に競技マーチングバンドでは、多人数のスネア奏者が、文字通り一糸乱れぬ演奏をすることが競技規定にあり、採点基準の1要素となっています。
いわゆる「バスドラム」「タム」もマーチングバンドのスタイルではこういうサウンドに変質しています。大昔はもっと低い、ちゃんと「太鼓」の音だったのですが、競技として先鋭化していく中でこのようなサウンドの方がアスリート的なアピールにおいて有利だったことが最大の理由です。
マーチングスネアドラムの奏法(ルーディメンツ=練習、の意味)は、バンドのドラムセットを修行する人にとっても、非常に重要な練習演目として定着しています。お知り合いのドラマーに「ルーディメンツってやったことある?」と聞いたら、神妙な面持ちで「あれはキツいんだよ」と語り始めることでしょう。私もやったことがあります。
ドラム奏者はこうした歴史的な練習方法で身につけた「短いパターン」を組み合わせて演奏することがあります。(それが全てというわけではありません。念の為。)
DTM的には、よりよいドラムを作曲したい人は、定番ルーディメンツパターンを仕入れておくのも悪くはありません。
なお、この「ルーディメンツ」「マーチングスネアドラム」を主役にした奇妙な映画 『ドラムライン』があります。
https://www.youtube.com/watch?v=JaGoM25tGVA
Drumline (2/5) Movie CLIP - Fighting for the Field (2002) HD
非常にニッチに感じるかもしれませんが、アメリカ(白人圏)では昔から教育の一環としてマーチングバンド活動という選択科目が広く採用されているので、マーチングバンドというのは割とホットな音楽ジャンルだったりする。
なかなかアツい映画であり、DTM的には「最も優れたマーチングバンド録音」として必見でもある。
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ドラムピッチの話に戻す。
薄くて硬い新素材を積極的に活用し、恐ろしいほどネジを締め上げます。その強烈な締め上げに耐えられるボディを持った専用のマーチング用ドラムを使います。当然その寿命は短いので、キューバのギターが「すぐ弦が切れないように低いピッチにした」ことも真逆にあたります。
以上は「非常に極端なピッチに到達した一例」として知っておくとネタにできるかもしれません。
■音圧戦争と、音程戦争
DTMをやっている人なら誰でも知っている通り「でかい音」の方が『良い音』に錯覚します。少しでも大きな音でリリースしようという欲望が生み出したのが悪名高い「音圧戦争」(loudness war)です。
同時に「高くて明るい音」も『良い音』と錯覚されます。
いわゆる「音圧戦争のように、「高いピッチ戦争」が存在したわけです。
より高いピッチ、より大きな音を求めて、ほぼすべての楽器は変質の歴史をたどっています。それを正しい進化と受け止めるか、歪んだ争いの弊害と見るかは諸説あります。また、「そんな細かいことはどうでも良い」とするマッチョな意見もあります。
・バイオリンはガット弦から鋼鉄弦に変わった
たとえばバイオリン。
「バイオリンの形状は数百年変わっていない」と良く言われていますが、完全な誤りです。なぜならそのボディ形状は同じでも、貼られている弦が動物の腸を加工したガット製弦から、鉄の弦に置き換わっているからです。
現代のバイオリンの音は、「大音量」と「高ピッチ」を実現できる、鋼鉄弦の音です。
(4本全てをガットにする人と、最も細いE弦のみスチールにする人がいます。)
(なお、近年では、弓の毛の素材も変わりつつあります。旧来の馬の尻尾の毛からシンセティック弦と呼ばれる樹脂弓に変わりつつあります。が、これはまだまだ普及の途上です。)
発音体が変わってしまったので、昔のバイオリンと今のバイオリンは完全に別の楽器である、と言っても暴言ではないでしょう。だって、ギタリストがガット弦のギターとスチールギターを同じアコギとして扱わないでしょ?
・ギターは弦の多様性によって分岐した
ギターは最も変化したと言えるでしょう。
電気増幅の力を得て、今現在もっとも売れている人気の楽器がエレキギターです。
見た目でもすぐわかるとおり、フレット数が増えました。一般的と呼べる範囲でも、18フレットから徐々に増加し、22フレットはもう当たり前という感じです。
これは弦の多様化だけではなく、ボディ設計の洗練により、より高フレットでも安定したピッチを実現できるようになったからです。同時にチョーキングによる音程上げの奏法も発展しました。
エレキギターでは「アーム」の装備によってさらにピッチを変化させる奏法も発展し、とてつもない演奏能力を獲得しています。なお、初期にはアームは存在せず、ブリッジを手でつまんで捻り上げることでピッチを変える奏法だった、とのことです。そのサウンドを安定して出せるように、ブリッジにアームレバーが装着された、という経緯があります。なお、このブリッジとアームの設計は、超合金の登場とその加工技術の洗練により、今もなお激化しています。
先日、知人がギターに付けたのがこれ。
特性の異なる合金を組み合わせ、ものすごい精度で設計・加工されているそうです。従来のアーム付きブリッジと比べると異次元の操作性の高さと、可動性。何より設計が良く、アームを使用した後のピッチの乱れがほぼ無いとのこと。こういうエンジニアリングが一般化していけば、それを前提としたより高度なテクニックによる演奏も広まっていくことでしょう。
こういうカスタムパーツ文化はやはりエレキギター界隈が一歩先を行っている感があります。
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鍵盤楽器もチェンバロからピアノ、そしてシンセサイザーに変質していきました。「え?シンセとピアノは違うよ」と思うかもしれませんが、軽量で可搬性が高い上、電気で音量を増幅できる電子ピアノは多く使用されていますよね。事実上「無音」で練習できますし。
トランペットなどの管楽器も大音量を出せるようにどんどん進化しています。大きなベルを備え、薄くて共鳴しやすい優れた金属で作られるようになりました。フルートは木の笛だったものが金属製になりました。
逆に、もっとも進化していない楽器がオーボエとファゴット(バズーン)だとされています。オーケストラの中で、そのあまりにも個性的な音色を維持することが要求され続け、キーの仕組みは進化したけれど、その構造と材質はもっとも古い姿を残し続けています。ご存知のとおり、オーボエとファゴットは非常に音量が小さいままです。
クラリネットはその中間だと言えます。金属製で巨大なボディを持つサックスに進化変質した一派と、純クラシック用として比較的昔の姿を維持したクラリネットという2つの流れに完全になりました。なお、クラリネットも振動して発音する「リード」を取り付けるパーツの進化によって、大音量を獲得しています。今普通に見られるクラリネットは、オーボエほど古典的ではないです。
オーケストラ楽器の中で最も「ハイ・チューニング」化したのがティンパニです。油圧、関節力学、構造素材の進化によって、とてつもない高い音を演奏できるようになりました。
そういうメカニックの進化によって、得られたのは大音量だけではなく、「高ピッチ」でした。元来のままでは絶対にできなかったハイ・チューニングの可能性を獲得しました。
・純正律オルガンと、ピッチ微調整
こいつを見てくれ。こいつをどう思う?
「平均律は汚い」 という思想を具現化した奇形。純正律オルガン。
しかし、全ての調の純正律に対応しているわけではなく、幾つかの調の純正律を実装しただけのものです。
ギターにも純正律フレットというものがあります。
このような変則的なフレットを緻密な計算によって生産しています。なお高い。
※ちょっと考えればわかるとおり、これは「純正律」ではなく、「ギター純正律」とでも言いましょうか、「従来の直線フレットよりも、ギターの構造として正しい」という設計です。
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話が調律のことばかりになってきたので、「コンサートピッチ440」の話題に戻す。
でも近接する問題だから別に同じ記事でも良いよね。
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■上がって、戻して、440
このように、低いピッチからはじまり、徐々に高いピッチになり、競争が加熱し、「まぁこの辺で」ということで440という国際基準が作られた、というだけの話です。
歴史好きな人なら誰でも知っているとおり、「枡」や「グラム」などの単位は国によって結構でたらめでした。経済が好きな人も税の歴史を学ぶ過程で知っているかもしれません。
でたらめな理由は自治体が市民から100の米を納税させ、国に20を収めるとした場合、それぞれの作業で違う容器を使えば中間利益を不正に得ることができたからです。
より大きく、より明るい音の方がコンテストで有利なら、当然高い音にします。私もやったことがあります。
そういう競争が歴史的に実在していたという、ただそれだけのことなんです。
つまり、コンペで勝ちたいが為に音圧戦争をするのはもう古くて、ピッチを僅かに高くして納品した方が有利かもしれない!ということです。(まぁまともなプロダクションなら「440でください」と言ってくるでしょうし、リリース後に問題が起きるかもしれませんが)
・今日でも聞けるピッチ混在の弊害
なお、商業音楽におけるピッチの高低を知るためには、旧アニメ版『銀河英雄伝説』をどこでも良いので1話だけ見てみることです。
このアニメはやや古い録音のクラシック音楽をそのまま使っているので、劇中のクラシックBGMと、OP・EDの曲のピッチがかなり違っています。
近年のアニメでも、稀に、異なるプロダクトで作られた曲が混在し、曲によってピッチが異なる場面が散見されます。もしあなたが私と同等かそれ以上にピッチに敏感なら、そうした現象をすでに経験しているはずです。もし「え?そんなことありえないでしょw」と思ったなら、私よりもピッチに対して程よく鈍感だから、そんなにこだわらなくても大丈夫ですよ、ということです。
私は体調にもよりますが、そこそこ鋭敏です。が、本当に鋭敏な人と比較すれば、「ピッチの専門家」になれないのだと痛感します。その程度です。
高くて明るい音の方が
今日では一般的に440Hzです。
「どのピッチで演奏するか?」については、歴史的にどんどんinflationを起こしていて、日本では競技音楽として著しく加熱した吹奏楽界隈では442Hzが事実上の標準になっています。これは高温多湿な日本の環境も影響していて、温度や湿度の影響を受けやすいからちょっと高い基準ピッチにした方が良いよね、ということです。(海外の一般的な吹奏楽団は440Hzであることが多いようです。)
442は高すぎると思います。上達に悩む人がいることや、ピッチが合いにくい一因は442にあるような気もします。(何よりピッチより大事なことがもっとあるはずです。)
なお、プロオーケストラで極端な例として知られているのが、ベルリンフィルの445Hzです。(厳密には「一時期のベルリンが445にしていた」が正しい。その後は443に落ち着きました。)
ためしにオーケストラの動画と一緒に手元の鍵盤やギターで音を鳴らしてみると、しっかり440Hzでチューニングしてあっても合わないことを体感できるでしょう。
ということからひとつの疑問が浮かびます。
「絶対音感って何?」ということです。彼らは世の吹奏楽やオーケストラなどを聞いて、気持ち悪いと感じるのでしょうか?
■西洋12音階ではない諸国の音楽
コンサートピッチ問題を語る時、絶対に忘れてはいけないのが「非12音階」の世界。
平均律12音階など、しょせんヨーロッパ白人という「民族」の音楽でしかなく、ヨーロッパを除く他の地域では今なお全く異なる音楽が展開されています。
いわゆる西洋音楽が「ある意味において限界」に達した今、バークリーなどの先進的な音楽教育機関は民族音楽の取り込みにご執心です。
DTMでも単なる12音階平均律ではなく、ズレた音のする民族音楽のサンプル音源を導入しただけで評価されてしまうことがあります。
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絶対音感がらみのお話。