ピアノ人気曲をユーフォニアム・チューバ四重奏にするシリーズ、今回はショパンの『ノクターン』を編曲しました。
(2021年1月15日更新)
■こうなった
リストの『愛の夢』と比較されることの多い、非常に似た音楽性を持つ美しい曲です。
楽譜はこちら。
たぶん一連のシリーズの中では最速で作ったアレンジ、一晩かからず作った。速いけど手抜きという意味ではなく、過去に作ったリストの『愛の夢』と差別化したサウンドにしたかったから、あえて手癖全開でさらっと作った。
作曲でも編曲でも、演奏でもミックスマスタリングでも、たくさんの音楽を手掛けている人ならたぶん分かってもらえると思うのですが、これは決して手抜きではないんです。エゴを出さず「いつもの」を作るというのは、それはそれで労力があるんです。
もちろん入念に作る部分、油断したら崩れる部分というのはあり、そこはきっちりと必要な時間と精神力コストをかけています。
言うならば、レストランで「いつもの」を作れるということ。レシピが完成していて、それを余談無く遂行するということです。それは手抜きではありません。こちとら中高生の頃からこういうアレンジをやり続けていオッサンになっているので、ぬかりはありません。
『愛の夢』のように仕上げることもできないはずは無いのですが、音楽的には『愛の夢』の方が要素が多いので、あっちを先に作りやや困難な内容にしました。『ノクターン』の方がストレートな曲だというのは両方を知っている人なら同意してもらえるはずです。
たぶん今後このシリーズを量産するとしたら、本作のような仕上げ方で数を増やしていくことになると思われます。
・そっくりと噂の『愛の夢』
コンサートではメインプログラムにどちらかを配置し、アンコール用としてもう片方を短縮して使うと効果的だと思います。個人的な推奨としてはややくどい『愛の夢』をメイン、アンコールにはすっきりした『ノクターン』にするのが高趣味かと思います。
そういう意味でも演奏の負担が少ない本作のようなスコアは、それはそれで価値があるんです。
■アレンジ内容
なにしろ原曲の完成度が高い。ほんとに普通にアレンジするだけでも説得力のある内容になる。
昔師匠は言っていました。「良いメロディの条件の1要素として、どの楽器で演奏しても説得力が出ること」だと。その考え方には賛同できるとともに、「それは違うんじゃないのか?」と思う曲もあります。が、『ノクターン』は明らかに前者に属する「どの楽器でやってもイケてる曲」だと感じます。
余計なことをせず、主役のEuph1がメロディを担当し、他が過不足無く伴奏する。必要に応じてサブパートがカウンターを取る。
拍子は原曲は12/8。これは3/4に変更した。
理由は単純で、4パートのスコアにすると扱いにくいから。合奏練習でも拍数を指定しにくいでしょ?「9拍目」って言われてもわかりにくいでしょ。
唯一注意を要した点はここ。第一主題の終わりの部分の10度跳躍の処理。
もちろん卓越した金管楽器奏者なら。中音域から高音域に対する10度はできて当然です。しかし実際難しい。
美しさを軸にした曲なので、困難な表情を見せてはいけないので、あえて影譜にオクターブ上を追記し、任意に選択できるようにしました。これなら中高音域での3度跳躍なので、最も美しく演奏できます。
とか言いつつ、その手前では細かい音の後のオクターブ跳躍をそのまま残しています。
あちこち変えすぎると別の曲になってしまうので、ここくらいはやってほしい!
原曲16小節、(1分36秒)のレチタティーボ的な部分。
原曲の譜割りに忠実にやるなら均等な16分音符で良いのだけれど、スピードの変化を付けてほしいので変則的な書き方にしました。
最後のカデンツァも「その楽器向け」のアレンジ。暑苦しい二重唱。
原曲はいかにもピアノ的な細かい音が連続するスリリングできらびやかなシーンですが、それを低音金管楽器でなぞってもクソ曲になるだけなので大幅に変更。
途中からもう1人が加わって、情熱的な二重唱に。
このように「ピアノ名曲をユーフォニアム・チューバ四重奏で」シリーズでは、ほぼ一貫してカデンツァには変則的なアイディアを盛り込んでいます。
編成の醍醐味を訴求するための工夫であり、それは原曲の音符に忠実であることより重要だと考えたからです。
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