eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

EQの使い方、の前に。

よくある間違ったEQの使い方と、正しい使い方について書いておきます。

つーても私は短期的にエンジニアに教わった程度なので、ちゃんとしたEQの使い方を習得している人にとってはネットによくあるド素人の戯言でしかありません。

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最初に結論だけ書いておくと、

・ピーク探しで細すぎ禁止

・ピーク探しで上げすぎ禁止

です。

(2017年12月31日更新)

 

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■間違ったEQの使い方 

国内で安易に入手できるEQ手法に対して、もっと懐疑的であるべきです。

 

■ピーク探しの間違い手順「間違ったスイープ」

まず間違い例1。

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パラメトリックEQを使う場合「不快な帯域を探すためにピークを細くして探す」という手法がありますが、

1,Qが細すぎだと、どの帯域でも不快に聞こえます

2,上げすぎると、どの帯域でも不快に聞こえます

この「スイープ」と呼ばれる手法は多くの書籍で書かれています。しかし、極端すぎるスイープはどこを聞いても不快に聞こえてしまいます。

もう1つ上のレベルで書かれている本では「狭すぎ、上げすぎは絶対にNG」という注意点についてちゃんと書かれています。

しかし、海外でのミックス技術指南では「そもそもスイープという手法自体、ちょっとおかしくね?」とさえ言われています。

スイープは補助的な手法でしかありません。「聞いて探して削る」ではなく、「削る前に判断できるように能力を伸ばしておく」のが正しい、と紹介されていることさえあります。

ついでにもうひとつ挙げておきたいミス例として、

3,動かしている間にたまたま大きい音程に触れただけ

というのもあります。

そりゃそうですよ。細すぎるピークを上げて聞き続けていれば、たまたま特定の音程が鳴った時に「ビーン!」って不快な音に聞こえて当然です。

 

結論。スイープは方法としてはアリだけど、たいていの人が間違ったやり方をしている。

 

というわけで、下も続けてどうぞ。

 

 ■スイープはソフトにチェックしてみる

少なくとも下のように「Qわりと太め(オクターブ間に影響が出るくらい)、ゲインは6dB~12dB程度」で運用すると良いです。

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こうしないと、どの帯域でもおかしな音に聞こえてしまいます!

 

別の言い方をします。

  1. どこを聞いてもおかしな超音波が聞こえてくる
  2. 数秒うろうろして「まぁ調べたし、ここで良いや」と決めているだけ

 

ニコ生などで素人のミックス作業を観察し続けて分かったことがあります。

EQを刺してスイープをする人が非常に多く、そういうやり方をする人はほぼ例外なく「スイープした後に削っている」ということです。なぜスイープの結果「やっぱり削らなくて良い」と判断しないのでしょうか?

それは「人間は道具を手に持ったら、使わずにはいられなくなる」性質があるからです。

スイープをした後には、「このくらいなら削る必要が無いかも?」と一度考えてみてください。

そもそもEQをかけるということは音を壊すということです。

 

明確な目的で的確に使うなら音は「聴覚上」は良い方向に加工されます。

しかし、どんなEQの掛け方でも「データ上」は必ず壊れて行きます。

「やらないほうがマシかも?」と考えることだけは忘れないでください。

 

質の悪いEQのブーストで音がおかしくなるという話だけではなく、カットでも音はどんどん壊れます。カットすればするほど音が良くなると勘違いしている人は実在します。

 

・職人ごっこをやめよう

なんとなくEQをさして、なんとなく適当な場所を削って、できるだけ繊細っぽく見せかける。そんな職人ごっこはやめましょう。

 

削れば音が良くなるとか、削るなら細く削った方が精密な音になるとか、細くできるEQの方が高性能だ、などの先入観を捨てましょう。

 

レッスンをやっていて割りとよくあるのがコレで、「EQを使いすぎた音がする」とコメントし、指導しています。

下のような状況です。これは悪い例ですよ。

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細く何箇所も削れば削るほど良い音になるという魔法のプラグインではありません。逆です。加工すればするほど音はおかしくなっていくだけです。

 

こういうやり方をしている人がネット上で本当に多いです。騙されないようにしましょう。DTMの作業配信をやってる人のほとんどがこういうタイプだと断言しても良いです。

彼らの姿から学べることは反面教師であることだけです。あと、世の中でどういう勘違いが起きているかのサンプリングができます。実際そういうサンプリング結果はレッスンで生きます。

 

プラグインの数値と見た目はあてにならない

Qなどの数字とその表示はモデルによってまちまちです。

モデルが違えば、書籍に書かれている「Qは2.0で」とかの話はまったく参考になりませんよ!

また、プラグインのEQのGUIに表示されている曲線もアテになりません。割りと適当に表示されているだけです。

近年はアナライザ付きのEQが増えてきましたが、その表示も割りと適当です。

 

■細く削ることの意味

細く削るということは、音階の特定の音(特定の倍音)だけを小さくするのと同じです。

あまりにも細く削ると、「ソ」の音の時だけ削られることになります。それって無意味ですよ。

 

・ノッチフィルター

特定の音階(特定の倍音)に狙いを定めて下げるのは電源ノイズ等の「特定位置に出現するピークノイズ」や「レゾナンス(共鳴)」を除去したい時の処理方法です。

それらの異音が特に強い場合にはノッチフィルターを使うことも検討してみましょう。

 

そもそもの話として、ミックスの教科書に書かれている「不快な帯域をカットしましょう」という手法は、「部屋のサイズや形状によって生じる音」「録音の際に生じた、やむを得ない雑音」についての説明です。

 

ですから、録音されたサンプル音を再生するPCM系のシンセの場合は基本的に不要な工程です。

例外的に、収録時のミスで極端なレゾナンスが特定の音階にのみ出現することがあります。そういう音を除去する場合にも効果的です。

 

料理で言うと、「魚の骨を取り除きます」という工程であって、切り身で買った魚や、シーチキンの缶詰では不要な作業だということです。料理のレシピに書かれていても、インスタントな料理ではまったく必要ないということです。

 

 

・アナライザの見た目で細く削る時のミス

アナライザを見て細く削る場合によく見るミスが、アナライザで見つけたピークの高い部分を削るミスです。

その高いピークは単に音階を示しているだけではありませんか?ソシレのコードを演奏しているなら、当然ソシレの音とそこから生じる倍音が高くなります。それを削る意味がありますか?

スイープで探す場合、たまたまそのコードに「ソ」の音が多い時にスイープが「ソ」の音に当たれば、当然不快に聞こえます。そして、「ソ」を含まないコードの時には なんともないはずです。

 

 

・コンプやリミッターを回避させるためのピーク取り

コンプやリミッターなど、ダイナミクス系のエフェクトは、演奏されている周波数で最も大きく突出したピークに反応します。この反応を避けるために、ピークを「均す(ならす)」必要があります。

しかし、あまりにも均しすぎると音色感が損なわれます。

そのピークは本当に除去する必要がありますか?

 

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■無意味に繊細な加工

目的を明確に決めて、それから加工するべきです。

よく見る悪いやり方は、スイープで探しているふりをし、数分聞いてみてもなんだか分からず、でも「EQはカットするもの」という知識だけを使いたがることです。

結果として、聞いて判断できないけど「とりあえずカット」をしただけで終わります。

その場合にセットになる間違った考え方が「EQはわずかに掛けるのがプロっぽい」というおかしな知識です。

聞いて差がわからないのに見た目で「細いQ」「小さい下げ」をすることで音が良くなるという「おまじないEQ」をしているだけです。

 

そういうことをやっていると、繊細っぽく操作することがミックスだと勘違いするようになってしまいます。

過去に見た重篤な患者さんは0.1dBの加工をやり続けていました。

 

細かすぎる加工に時間を使うのは無意味です。

明確に効果の出る作業をしましょう。

という話が下のリンク先に書いてあります。

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

 

 

・でもプロもそうやってるよね?

繊細そうに見せかけるための記事などで頻繁に見かけます。

0.5dB削っても、それをバイパスしても気が付かない人がほとんどです。

気持ち程度ならやらなくても同じです。

もし本当にゼロコンマの差を聞き分けられる能力があるならどうぞ。

 

できればそれができる人にお会いしたいです。

で、俺がランダムにバイパスするから、本当にゼロコンマを聞き分けできてるかその場で見せて欲しいです。

 

 

■削る場合のコツ

細く使いすぎるのはEQの使い方に不慣れな人が必ずやってしまうミスです。

自分もそうでした。

 

しかし、エンジニアの人からレッスンを受けた時、先生は想像以上にラフなEQの使い方をしていました。

 

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このようにそこそこ太く削る方法も試してみてください。

(念のためもう一度言いますが、カーブとスペアナの見た目はモデル差があるので注目しなくて良いです。)

 このように、倍音域の一定区画(音域幅)を下げることによって、他の楽器の音が相対的に浮いて聞こえるようになるということです。いわゆる「帯域を住み分けさせる加工」です。同じカットでも、これは不快なピークをカットするのとは全く意味が違うEQの使用方法です。

 

この記事を読んだ後に、「細すぎ、上げすぎはNG」と思って、幅広いQでのEQ運用をメインにして1曲ミックスをしてみてください。EQの使い方が明確になるはずです。バイパスしたら分からなくなる程度の使い方をやめましょう。

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