eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

金管楽器ミュートエミュレーター「Sordina」の紹介

金管マルチプレイヤーとして断言できる。これは良いものだ。ただし打ち込み厨向けの妥協した音。

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(2021年3月23日更新)

 

■エフェクタです。サンプル音源ではありません。

数年前からあるプラグインですが、バージョン1.0.2に合わせたセール中。クソ安。

もしあなたが将来的に金管楽器のミュートを駆使した曲を作りたいなら今すぐ買うべきです。

Sordina - The Instrument Mute Emulator - From Libre Wave

中身はIR(インパルスレスポンス)とフィルターです。

(IRは一般的にはホールリバーブ用に使われる、音響特性を変化させるエフェクタです。

近年はそれをエレキギターのキャビネットスピーカーの音響特性の再現に使うなど、変則的な活用も増えてきています。)

 

■操作

対象楽器とミュートモデル(かなり多い)を指定し。

必要に応じてミックスバランスを決めるだけです。

MIXがゼロなら取り外した状態、ということになります。

 

■良い点

お気に入りの音源に対して後がけするエフェクタです。

ホール残響付きのサンプル音源に対して使ってもそれほど違和感はありません。

少なくともストレートミュート専用として使えば非常に良いです

サンプル音源ではミュート音色が皆無なホルン、ユーフォニアム、チューバをミュート音にすることができるようになります。

 

非常に優れている点はアウトプットゲインがあるので、ミュートによる音量低下を左のGainで調節できます。これはDTM用途として非常に実用的です。

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■欠点

過剰の期待をする人には向きません。

完璧なクオリティが欲しい人は録音するべきです。

そりゃそうですよ。後付けエフェクトだし。

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以下、具体的にダメだった点を。

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・オートゲイン調節が無い

IRでどのくらいのラウドネス低減があるかは分かっているので、自動でそこそこの音量に補正して欲しいです。

また、ミュートのモデルを変えた際にアウトプットゲインが初期値に戻されてしまいます。これは使いにくいです。

MeldaのAGC機能のような音量維持機能があればかなり良くなるはずです。

 

など、気がつく点はいくつもあるのですが、それを差し引いても非常に実用性が高いと「私は」感じます。定価では高すぎですが。

・オートメ欠陥

ミュートの「モデル切り替え」がオートメーションできません。めちゃくちゃになります。

 なので、複数のミュートを使い分けたい場合には、その数だけインサートする必要があります。f:id:eki_docomokirai:20210111190135p:plain

・(ホルンの)ゲシュトップは品質に難あり

ストップミュートのIRが入っていますが、とてもじゃないですがゲシュトップ音にはなりません。

・ハーマンステム無しが劣悪

すべてのモデルを試しましが、全滅です。

完全にダメです。音質を変えたいだけなら使えるかもしれませんが、いわゆるジャズソロで使う音には持っていけません。

・ハーマンステムありのワウ音も劣悪

吉本新喜劇」の「ホンワカパッパー、ほんわかパッパー」はできません。

www.youtube.com

すべてのモデルを試しましが、全滅です。

もしやりたいなら、別途EQのレゾナンスとオートメを使って自力で再現するしかありません。

なお、上の曲に出てくるフラッター音(39秒~)はミュートとは無関係です。

カップミュートのセッティングがイマイチ

すべてのモデルを試しましが、全滅です。

非常に浅いセッティングの音がします。もっとつっこまないとカップらしい音にならないので非常に残念な音です。たぶん分かってない人が作ってる。今後のアップデートで改善されることを期待するしかありません。

■カスタマイズ

単純なフォルダ構造になっているので、好きなように変えてOK。

起動中にフォルダ内を書き換えても、プラグインを再表示すればすぐに反映されるので非常にお手軽です。プラグインが動かなくなったり、DAWはが落ちる心配はまったくありません。

 

注意点は1つだけ。

「楽器名→子カテゴリ→プリセットデータ」という3段構えのフォルダ構造は変えられないので、適当な仮フォルダを作っておきましょう。

たとえば以下のようにします。

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ぶっちゃけ使いものにならないプリセットを削除してしまっても何も問題無いと思います。どうせ「ミュートっぽい異質な音」さえ鳴っていれば、打ち込み音楽としては目的は果たせているわけですし。(理由は後述)

 

なお日本語名は文字化けします。

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■以下うんちく、実演奏でのミュートのセッティングの話

すべてのミュートは微調整をした上で使用するべきで、特にカップミュートはコルクを削って「楽器にささる深さ」「ベルとの隙間」を綿密に調整しなければなりません。

楽器本体との接触部のコルクを削って、求めるサウンドのために改造するのが「普通」の使い方です。新品そのままだとコルクが大きいので、このような「浅いミュートの音」になってしまいます。

また、カップのエッジと楽器本体のベルの隙間は、お互いの形状によっても相性があるので、入念に合わせなければなりません。

tokuya-tp.hatenablog.com

下動画、内容は薄いですがカップの調整を行っている様子が分かります。

www.youtube.com

コルクを削りながら時折音を出してチェックしている様子が分かります。特に強奏時の「ビビり」音のチェックと、低音時のチェックを重視していることが分かる内容です。

他、日本語動画でコルクの付け替えを「してみた」系の動画がありますが、ポン付けしているだけなので不完全です。削るか、取り付け位置を吟味して、ミュートとベルのアライメントをする必要があります。

学生時代、私はトランペットの連中がミュート音に無頓着なことに憤慨し、自腹でコルクを購入、すべてのミュートと使用楽器のアライメント調整をしていたことがあります。そういうことをしないで、「どこのメーカーのものが良い」などと語っても全く無意味なのにねぇと。

 

カップに比べるとストレートとハーマンはその影響が比較的少ないです。ハーマンとプラクティスは「密着」、バケット「ベルの外にひっかける」なので、コルク等の影響はありません。

などと書きましたが、デニスウィック(可動式カップ)の2種類の設定がいずれも変な音なので、マイク起因かもしれません。(そもそも可動式は音が悪い、という主張もあります。)

他、興味がある人はこういう資料も見てみると「へえ」と楽しめるはずです。

link.springer.com

 

■通常はストレートミュートのみで良い

お会いしたことはありませんが、同業のいわたさんも色々書いています。

note.com

とある学校で、「Mute」と書かれた箇所でカップミュートを使っていたんです。
「あれ?ここはなんでカップミュートを使ってるの?」と聞くと、
「あ、ミュートって書かれてたんでカップミュートにしました」と。

で、上に書いたことを話したんですね。
すると、
「(卒業した)先輩がミュートって書いてあったらカップのことだって言ってたんで」
と返ってきました(笑)

キタコレ、伝承芸能!!!!

 とありますが、これは昔の吹奏楽カップミュートを使う曲が流行したことがあって、その時に備品としてカップミュートが普及したからじゃないか?と思っています。私がいた中学校でも、誤ったミュート運用があり、外部講師から指摘されていました。

いわたさんの記事にもあるとおり、「一般的」にはmuteと言えばストレートミュートのことです。

なので、作編曲をやる人は、よほど明確な狙いが無い限り、ストレートミュートのみを想定した方がベターです。

 ■そもそもミュートとは「異質な音」が出ていればそれで良い

 そもそもの話、生楽器においても「絶対にこのミュートじゃないとダメ!」ということは存在しません。言うまでもなく「このメーカーのじゃないとダメ!」なんてありえません。

無いなら無いで代用のミュートを使えば良いし、狭いステージの場合に全てのミュートを置いておくことはありません。持ち運びが面倒だから1種類だけで良いや、とすることも普通にあります。

ただし、ジャズ用途のハーマンとバケットは別物です。が、バケットでも専用のミュートを使わずに適当な板や手だけで済ませることがあります。

 

生楽器でさえ割と適当に運用されているのに、打ち込み音楽でミュートの名前だけを合わせる意味は皆無です。

 

神経質にやりたいならお好きにどうぞ。どうせこんなエフェクタじゃそれらしい音がしませんけど。

 

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・レゾナンスが過剰

音量を上げるとレゾナンスが異様に突出することが多いです。

大きな出音にしたい場合にはダイナミックEQ等で抑える必要が出てくるケースが多いです。

これはIRによるエミュレートの限界です。

同様の技術を使ったIRリバーブでも、レゾナンスが強くなるケースが非常に多く、EQで整えることが不可欠です。まーIRってそういうものですよね。

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

 

■悪い点多すぎねーか?

いや、それでもあらゆる音をストレートミュート化できるだけでも、数千円分の価値はあると思います。無駄に無駄なIRが多いんです。機能を絞って使えば十分優秀です。まじで。 

サンプル音源でもミュート音色が入っていないものは多く、たまに「あー!ここでミュートのビリビリした音が欲しいのに!」となる状況って多いですよね。で、仕方なく付属音源とかのミュート音色を持ってきてお茶を濁すでしょ?そういう状況での選択肢が増えるだけでも効果は絶大です。オケ系を作っている人なら納得してもらえずはず。

■ミュートサウンドの自力シミュレートの話

ミュート音の作成はショートディレイとフィルターでそこそこのシミュレートができます。細かいやり方は説明が面倒なので割愛。

暇な人は超ショートディレイを試してみれば「あー、なるほどね」となるはず。

 

■サンプル制作の依頼受け付けます

もし試してみたいなら、あなたが作ったドライ音をください。こちらでミュートを掛けた音を作って送り返します。

先着3名まで無料。

2021年1月末日までのみ。

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