広いEQから追い込んでいくやり方、の巻。
(2021年9月18日更新)
■細くから広げると間違う
過去記事では「ピーク探しを細く高くでやると絶対間違う」と解説しました。
その逆をやるんです。
よく言われている「狭く高く」という探し方は、楽器演奏の補正のための用法ではありません。「部屋鳴り」などを除去する時の「前処理EQ」の使い方です。
「楽器ごとのバランスを整えるためのミックス」で使うなら、この記事で紹介する「非常に広く」から開始する方法の方が習得しやすいと思います。すでに大量の初心者に対して人体実験済み。
とても昔はこの「広くから狭く絞り込む」EQ方法が一般的だったと記憶しているのですが、どうなんだろうね。いつから「狭く」から広げていくやり方が増えてきたんだろう。その辺りの歴史について詳しい人がいたら、コメント欄か、ご自身のブログ等で情報を広めてくれると嬉しいです。
■「広く」から追い込む
レッスン業をやり続けてきて思うのは、このやり方をしたほうが適切に使える人が多いような気がしてならないということ。
まず選ぶのはフラットトップシェイプの「中くらい」。
(バンドシェルフ、と呼ばれることもあります。)
・1、非常に広い幅で左右に移動
広さは割とてきとーで良いです。
が、
EQでを操作する前に「低・中・高」のどこを加工するためにEQを立ち上げたのか思い出してください。
ぐにゃぐにゃ動かして遊ぶのは絶対にやめてください。EQは知育玩具ではありません。
人参を切るために包丁を持ったら、人参を切るだけです。
包丁を振り回すのはキチガイです。
EQを振り回すのもキチガイです。
数秒以内にだいたいの場所を決めましょう。
幅を広くしているので、過剰なゲインになることはありえないはずです。控えめのゲイン量で作業できるので破綻しにくいメリットがあります。
・2、狭くする
左右に少し動かして、「ここいらんよな」と思ったらどんどん狭くする。
下をどこにするかがキモ。(そういう操作モードがあれば良いのにね。Meldaには似それに類する「下基準から倍音をどこまでの幅にするかモード」がありますが。)
ともかく本当に必要な部分だけに絞り込みます。
今選んでいるシェイプで追い込めないと思ったら、別の斜面を持つシェイプ形状を試す。
この「揺らし」と「形状変更」をやっていくと、
「別に四角いフラットシェイプじゃなくても良いんじゃね?」ということと、
「普通のベルシェイプって結構良いんじゃね?」ということに気がつくはずです。
フラットシェイプは割と新しいのでついつい使いたくなってしまうのが人情というもの。しかも鋭い角度の方が高性能な気がしてしまうもの。でも、実際に試していくと、音楽的に必要なのはゆるめの斜面だということも理解できていくはずです。
ある音程から急激に変化してしまう鋭いシェイプはあまり音楽的ではなく、いわゆる「外科手術ミックス」のための特殊な道具だと分かってくるはずです。
「細く高く」のピーク探しから開始していないので、適切な帯域だけを絞り込むのが簡単なはずです。
・3、低くする
許せる限界まで低くする。
他のトラックを聞きながらやるのがコツ。
すでに適切な帯域だけに絞り込めているので、それほど大きくしなくても大丈夫だと分かるはずです。
どの程度の高さにするかについては諸説ありますが、マスタリングまで作業を進めて、異なる環境で聞いたりしてみれば「あー、上げすぎると最終的にこうなっちまうのか」とガックリできるはずです。他の楽器とのバランス取りのためのEQは3までにしておきましょう。
なお、音色作りのためのEQならどんなにゲインしてもOKです。
以上。おしまい。
■シェイプは鋭ければ良いというものではない!
EQがうまく行かないという人の多くが、実はすでに高性能なプラグインを所有しています。そして、鋭すぎるシェイプを常用しています。間違った使い方をすれば、どんなスーパーカーも電柱に突っ込むだけです。
当ブログの、こんな記事を読んでまでEQの使い方を覚えたいと思ったそこのお前!
まずはゆるいシェイプから開始してみてください。
■関連記事
過去記事では「そのピーク探しのやり方は間違ってる」という話をさんざん書いています。「細く高く」は絶対にNGです。
eki-docomokirai.hatenablog.com
また、近年のモダンなEQプラグインに備わっている「フラットトップシェイプ」の良さと落とし穴についても書いています。
eki-docomokirai.hatenablog.com
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