eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

コンプの使い方、の前に(1)よくある誤解

パラメタとか動作方式の話よりも大事なコンプ話。

翻訳記事、ではありません。どちらかというと指摘記事です。

(2021年1月3日更新)

 

■はじめに

どちらかというと、私は「リミッターの使い方、の前に」を書くべきかもしれない。

コンプの使い方が間違っている例よりも、リミッターの間違った使い方の方が目立つので。

だって、一昔前まではDTM諸誌でも「マスタリングとはリミッターをかけることです」ってマジで書いてあって、それを鵜呑みにしたままの人が今でもいるし。

■間違いの間違い

初心者はUSBメモリをそのまま抜く。

中級者は正しい手順で取り外す。

上級者はその手段が無意味だと知っているから、初心者と同じようにそのまま抜く。

 

今回の記事で紹介する「◯◯は間違っている」系の音楽話もUSBメモリの抜き方と似た構造であることが多いです。さらに上級者は、常識を超えた使い方をします。初歩の理屈で縛れないのが音楽です。 

■コンプの使い方がさっぱり分からない人はMeldaを使え

すべての挙動が可視化されているので分かりやすいです。

MCompressor | MeldaProduction

これを使って理解できないなら、すべて諦めて「感覚で突っ走る派」で生きていくべきです。

それでもまったく心配ありません。そういう感覚に全振りした人が未知の領域を開拓してきたのが音楽の歴史なんですから。

 

Melda等の「可視化情報の多いコンプ」を見ながら、コンプが掛かった音はこういう音になるのか!ということを目と耳で習得しましょう。その後で室の良いコンプに乗り換えれば、誤った使い方になることはまずありません。

いきなり高品質っぽいアナログ系コンプに触るから、わけのわからない使い方になってしまうんです。

「コンプの掛かった音」を判断できないから、リミッターにいくら突っ込んでも平気でいられるんです

 

慣れてくると、テレビの音だろうと何だろうと「コンプ感」を識別できるようになります。アニメの声ってコンプかかりすぎなのが多いですよ。

 

Waves様も言っておられる

「11のコンプの勘違い」

www.waves.com

元記事はそれぞれのセンテンスが非常に短いので内容が非常に薄いです。

  1. プロだけが知っている秘密の設定数値がある?
  2. プリセットを使う?
  3. リミッターの代理になる?
  4. ダイナミックレンジを揃える作業をすべてコンプでやる?
  5. ボーカルは必ず速いアタックタイムにする?
  6. ドラムに速いアタックを使うとクソ音になる?
  7. ソフトニーの挙動の誤解
  8. コンプを使うと生演奏の良さが死ぬ?
  9. コンプの後でEQをする
  10. コンプの動作方式だけで選ぶ
  11. コンプを強くかけて音圧を上げれば良い音になる?

 

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以下、個別にコメントを添えつつ。

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・プロだけが知っている秘密の設定数値がある?

万能の設定はありません。

ちゃんと毎回設定しましょう。

 

ただし、元記事で触れられていませんが「プロは特定の数値で固定している」状況は実際にあります。それは「この環境でしか使わない」という限定的な状況です。

ライブ現場や放送用途などで「保険として設置しておくコンプ」は設定をコロコロ変えることは稀です。

たとえばラジオのスタジオで、来る人の声質によって設定を変えることはまずありませんし、その場でアコギをちょっと演奏する時に設定を変えることはまずありません。

 

また、音の調整に対して恐ろしく無頓着な「演奏プロ」の人が、高い機材を持っていても信じがたいほど雑な使い方をしているケースがあります。

・プリセットを使う?

プリセットをそのまま使うのは絶対にやめましょう。

少なくともプリセットを選んでから、今鳴らしている音にすり合わせをしましょう。

曲によって、音量も音質も音域も音符の密度も違います。

 

ただし「インプットレベル」のついているコンプは、プリセットを適当に立ち上げておいて、入力音量だけを修正するという運用方法があります。これは実際ものすごく便利です。

私は「インアウトゲインがついているだけで、そのプラグインは3割増し」と主張しています。さらに「ミックスバランスがついているなら更に3割増し」という感じ。

些細な違いでコンプをとっかえひっかえするくらいなら、インアウトとミックスの3つのツマミがついたコンプを1つ所有するべきです。

 

関連記事を貼っておきます。

コンプの基本的な動作原理を視覚的に学習できるサイトの紹介記事です。

eki-docomokirai.hatenablog.com

・リミッターの代理になる?

元記事では「言葉の定義」について言っていて、どっちでも同じと言っています。

 

しかし、マスタリングでは話が違ってきます!

音圧の大きいEDMなど、デジタルピークぎりぎりの音楽で「ここを突破されたら音割れする」のを絶対に回避したい場合には、優れたリミッターが絶対に必要です。普通のコンプでは絶対に防ぎきれない瞬間的な突出は実在します。

「蓋を乗せる」のがコンプだとすると、「水漏れ防止加工」「溶接」がリミッターということです。

詳しく知りたい人は「トッゥルーピーク」や「インターサンプルピーク」で検索して勉強してください。

 

関連記事を貼っておきます。 

eki-docomokirai.hatenablog.com

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

 

・ダイナミックレンジを揃える作業をすべてコンプでやる?

コンプだけではなく、音量オートメーションも使ってください。

場面に応じてコンプの設定もオートメすることもあります。

コンプ設定一発だけ1曲通して完璧な結果になることは稀です

雑に作るだけならそれでも良いですが。

・ボーカルは必ず速いアタックタイムにする?

上と同じです。

・ドラムに速いアタックを使うとクソ音になる?

速いアタックタイムはドラムの音を殺してしまうことがほとんどです。原則的にやめましょう。

元記事では主に「パラレルコンプ」の話をしています。

パラレルコンプとは『速いアタックのコンプでべたべたに潰したドラム音を「小さく重ねる」手法』です。二重のドラムが程よくブレンドすると、非常に今風のドラム音を得られます。ちょっと面倒な手法ですが、練習する価値があります。

さらに「トランジェント」処理をすることで、より現代的なドラムサウンドに近づくことができます。

 

関連記事を貼っておきます。 

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

・ソフトニーの挙動の誤解

ソフトニーの挙動は良いGUIのコンプを見れば一目瞭然です。

GUIの無い、ツマミだけが並んだアナログ系コンプの場合には勘違いをしないように。

・コンプを使うと生演奏の良さが死ぬ?

丁寧に使えばより生のニュアンスを誇張できます。

生演奏経験、特にブラバンなどのマイクを使わない音楽ジャンルの経験が長い人が「コンプはダメ」と主張する傾向があります。が、ブラバンやオーケストラなどのクラシックの市販音源でもほぼ例外なくコンプなどのエフェクタが「丁寧に」使われている、というのが事実です。

・コンプの後でEQをする

コンプの使用で最も重要なのが「コンプの前でEQ加工済みにするか」「コンプの後でEQするか」の二択です。もちろんコンプの前後で複数のEQを使っても全く問題ありません。

コンプは「入ってきた音」に作用しますから、「EQ済みの音が入ってくる」状態にした方が、コンプがおかしな反応をすることを防げます。なので、一般的には「EQ→コンプ」の方が汎用性が高いと言えます。

例えばCubaseのデフォルト状態だと、コンプ→EQの順になっています。これは使いにくいので、チャンネル付属のEQだけではなく、インサートエフェクトでコンプの前にもう1つのEQを設置するべきです。

・コンプの動作方式だけで選ぶ

動作方式だけを言及して「オプトはボーカル用です」「FETはドラム用」と決めつける人がいます。頭が硬いなぁと思います。

はさみで切るかカッターで切るか、素手でちぎるか、という程度のことです。

いずれにせよ、モデルと設定を入念に考え抜きましょう。音を聞きましょう。

頭ごなしに指示してくる人はたいてい初心者に毛が生えた程度の教えたがりなので無視しましょう。覚えたての知識を語りたがっているだけです。

もし複数のコンプ品種を試したいなら、インサートに複数を並べておいて、スイッチをオンオフしながら試すのが早いです。

同様に、極端な数値設定のすべてがミスというわけではありません。

・コンプを強くかけて音圧を上げれば良い音になる?

元記事が主張しているのは「音圧戦争は終わった」というちょっと古いというか、一方的すぎる主張です。最近ラウドネスについて知った人がドヤ顔で言ってそうな一面的すぎる話。

音圧とはジャンルです。

潰した音が求められるジャンルなら潰すし、潰さない音が大事なジャンルなら潰さないだけのことです。

そのどちらもが共存できる世界を目指しているのがラウドネスという規格の志であって、「音量を潰すジャンルは死ね」と言っているわけではありません。潰したいなら潰してください。

 

また、誰もが御存知の通り、市販用の音源は-15LUFSで販売されているわけではありません。ストリーミング配信がすべてであるかのように吹聴するのはやめてほしいものです。

狙ったラウドネスで作れるスキルと、しっかり大音量で作れるスキル。両方が必要になっただけです。

 

大音量は小さい音量のものを潰せば簡単に作れます。

なので、とりあえず目指すべきは、-14LUFSを狙って作れるようにすることだと言えます。

 

ただし、その-14LUFSというのは「平均音量」でしかありません。

単にラウドネス数値が合っているだけではまったく意味がありません。

ダイナミクスレンジを殺しすぎない-14LUFSを作れるように頑張ってください。

 

■関連記事

続編を書きました。

eki-docomokirai.hatenablog.com

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コンプの解説でよくあるミスを指摘した記事。

アタックタイムは「コンプが作動するまでの時間」ではなく「圧縮完了するまでの時間」です。

eki-docomokirai.hatenablog.com

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