細かい説明は割愛。気が向いたらもうちょい書く。なお、このブログのすべての記事は頻繁にリライトされています。
(2021年3月14日更新)
■概要
「OzoneのMaster Assistantって変な音になるよね」。何を今さらというお話です。
■20Hzローカット議論
気にしない人は全然気にしないことですが、「ADDAの都合等(後述)でリリース前には必ず20Hz以下は切った方が良いよ。」という議論があります。結構前から。それを無意味だ、神経質だ、という声も含めて、そういう議論があります。
なお、先日某所のミックス談義で「EDMの人って20以下にも何か入れてるんだよ。なんなんだよあいつら!」と畏怖していた人がいましたが、私はそれに対してあえてコメントを避けました。その20以下のは「入れてる」んじゃなくて、ほぼ例外なく「入ってしまってる」ものです。要するに録音直後に半自動でカットしているローノイズです。
・勝手に切られ、勝手に入れられる超ローエンド問題
CLA-2Aなどで自動的に20以下がフィルターされていたりするのと同じです。逆に言えば、クソエフェクターで勝手にローが持ち上がっているのも同じ問題です。
・20Hz以下を切る派が挙げる理由
コンプ等が誤作動する原因
ADDA変換で問題がある
針が飛ぶ
この辺とか、
こういうのとか、
(注意。Gearslutzに限らず、こういうフォーラムでは論旨を無視した横槍が多いので、全部真に受けるのはダメ絶対。特に外国人がこういう議論をする場合、日本の匿名掲示板以上にとんでもない屁理屈を使うので気をつけよう。)
などを参照した上で、どう処理するかはあなたにおまかせ。
最も根源的な問題を言うのであれば、「マスタリングエンジニアでさえ統一見解の無い些細なことを気にするより良い曲を書け」の一言で終わる話です。20以下の処理が悪いからクソ曲だ、ってことはありえません。
どちらかというとマウンティングのための論題のようにも感じます。だって、現にそこをきっちりやってない曲の方が圧倒的に多いんだから。こういうトピックが気になるなら下を切れば良いだけの話。コンプの誤作動と言っても、曲をぶっ壊すレベルでの誤作動ではないんだし。
更に言うと、マッチポンプ的でもあります。こんな記事を読む人なら御存知の通り、安易なロー加工による位相問題の方が、聴覚上ははるかに大きな問題となります。どっちでも良いような処理のために全体の位相をぶっこわしますか?ということ。
なお、20ではなく30~40だという主張もありますが、目的は概ね同じです。言うまでもなく垂直カットは非常に困難なので、20でカットしているつもりが50あたりから影響していることもあります。「えっ?私のローカット、ゆるすぎ?」という感じ。
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という「些細なレベル」ではない規模で、Ozoneのローエンドはおかしいと思いませんか?というのがこの記事の本旨です。
・Ozoneにおまかせすると強烈にローエンドをゲインされる問題
OzoneのMaster Assistantに丸投げしている人が多いようですが、私は極めて懐疑的です。理由はローカットのおかしさ。
で、Ozoneおまかせにするとローエンドを異様に持ち上げられてしまうことが良くある。(現時点でのOzoneはローエンドとハイエンドを異様に「強い音」にしようと提案してくる。)
これに気がついている人は実際に使っている人数人とお話をした限りでも一様に「なんか変じゃね」と言っていた。
左上はOzoneを常用している人にとって良く見る状況だと思います。
細かい説明などは書きませんが、Ozoneお任せサウンドのままはとても危険だと思うんです。ということでよろしくお願いいたします。
少なくとも丁寧に作ったはずのローエンドはOzoneによってめちゃくちゃにされる可能性が高いです。
■現代病か?
いつの時代も「今風の音」「よくある音」があります。
たぶんしばらくの間はOzone丸投げサウンドが支配的になるのかもしれませんが、数年後には「あの頃ひどかったよね」という思い出話になると予想しています。過去にはリミッタに適当にぶっこんだ音とかあったじゃないですか。
・「最近の音」になりつつあるのが現実
(当記事を2020年6月に書いた後、しばらくして追記。)
下リンク先の記事は2020年9月2日、ベースミュージックをメインにやっているNaco氏のnote。
40Hz以下をローカットする…という定説はもう古い印象ですね。今はそのまんま残す処理が一般的な気がします。
数年前に比べて、新譜の低音の量感が増しているんですよね。アナライザーで確かめているので概ね間違い無いかなと。ローカットするにしても20Hzを12dB/octで緩やかに切るくらいでいいと思います。
これはOzone丸投げシステムとオンラインマスタリング流行後、言わばAIマスタリング黎明期の音なのだと思う。
TC Electronics Finalizerぶっこみ、Waves L1/L3ぶっこみ、PSP Vintage Warmerぶっこみなど、以前から時代時代の良くも悪くも象徴的な「雑なマスタリング音」というものはあった。その雑マスタリングの流れが今はOzoneやオンラインにぶっこんだ音じゃねーの?と思うわけです。
こういう時流は止めることができない。少数の素晴らしい作品があったところで、尊敬はされても模倣はできないからだ。
なお、今更言っても卑劣な後出しにしか思われないと分かっているが、あえて言っておきたいことがある。私はずっと前から「ローを切りましょう」というミックスマスタリングのメソッドに対して懐疑的だった。そりゃそうですよ。ずっと生音で育ってきたんだから。いわゆる「ミックスされた音」はたとえそれがどんなミックス名盤だろうと軽薄で過剰に加工された音にしか聞こえなかった。これについてはまた後日。
■念の為
私はマスタリングでOzoneおまかせは一切使っていません。
Ozoneのモジュールは個別に見れば本当に素晴らしいので部分的に使うことはありますが。
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■ネット各所での反応に対して
むちゃくちゃなアクセス数だった。
で、当ブログの運営は「あとでどんどんリライトする」という書き方をしています。なので最初の段階で記事が薄いのは仕方ないです。その段階で「こいつOzoneわかってねぇ」的なことを言われても知ったことではありません。それとも個人ブログって記事内容を変えたらダメってルールあるの?大手新聞のネット版でも宣言無しに内容変えてるのに。
■牛心さんのOzone運用方法
牛心(うしこころ)さんからnote記事でご意見をいただきました。ありがとうございます!
他にも気になる記事があったら、内容に賛同していただけても、反論があっても、ぜひnoteの記事ネタにどーぞ。
気に入らなければ意見を却下すればいいだけの話です。
(編者略)
最終的にOZONEちゃん自体を葬り去ってしまうケースが多い。
これです。これ。
Ozoneに丸投げして「これがマスタリングかー」と鵜呑みにせず、「やりすぎだろこれ」と判断しなければダメ。この記事を書くきっかけになった作家仲間内でのOzone談義でも「あれっておかしいよな?」「買ったけど使ってねぇ」という声が圧倒的多数派だったのが事実です。
上の牛心さんのnote記事のように「最終的にOzoneを葬り去る」ということを常に選択肢に持つべきだと思うんです。
買ったから盲信するとか、無理やり使うのではなく、「特定の機能以外は使わない」という選択を大事にして欲しい。それを教えてくれるのがOzoneの存在価値じゃねーのかとさえ思うわけです。
なお、先日某人のリマスター音源を聞かせてもらいましたが、ブラインドで「本人が作った過去マスターのほうが良い」という結果でした。
・追記。そもそもプリセット一発で(略
W. A. ProductionがFacebookでこんなことを言ってた。
COMMON MASTERING MISTAKE
Using iZotope presets only
iZotopeのプリセットだけでマスタリングするのはよくあるミスだ、と言っています。
そりゃそうですよ。
ちょっとしたコンプやEQでさえプリセット一発でやって良い結果になるわけが無い。いわんや全ての音に影響するマスタリングを丸投げするなんて自殺行為です。Ozone丸投げなんて絶対にありえません。必ず自分で確認をしましょう。
最後に、恐らくそうなるであろう悲劇を予言しておく。
つまり今の時代は「音圧戦争というクソ音が終わった後は、自動マスタリングというクソ音が世界を席巻した」と言われる時代なんじゃないかと。
シンセが広まってプリセットばかりになった時代もそうであるように、流行の音ってのはそれぞれの時代の病と不可分なんじゃないかと思うわけです。それはあらゆるジャンルで昔から言われ続けていることで。
今のSNS時代は褒めてばかりの時代であり、同時にチャートが死んだ時代でもあります。私が次の時代まで生きているかどうかは分かりませんが、「ポピュラー音楽史」は一周まわり、いずれはチャートで徹底的に競うことで本当に高品質な音楽だけが広く聞かれる時代になるんじゃないかなぁとか思ったりもします。
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