ひとことで言うと「テストと楽曲制作を一緒にやるな!」です。テストと制作を完全に切り分ければ、何が起きても大丈夫ですし、適当やってぶっ壊してもダメージはありません。
(2021年7月21日~随時加筆)
■まずは関連記事から
eki-docomokirai.hatenablog.com
上の記事に関連したDTMトピックとして「やらないほうが良い操作」という話題があります。
ひとことで言うと
「テストと楽曲制作を一緒にやるな!」です。
・やらないよりマシか、やっても無駄か
行き詰まった状況になると人はおかしな考えに取り憑かれます。
「やらないよりマシ」
大抵は「下手にいじってぶっこわす」状況になるだけです。
・DTMにおける勘違いメソッド「ツマミを適当にいじってみましょう」
古典的なシンセの機能を習得する際のメソッドとして「とにかくいじってみよう」という、好奇心主導型の技術習得方法があります。
それは正しいです。
ただし、古典シンセの領域でのみ正しいです。
他の状況では「とりま、いじってみるか」は絶対にやってはいけないのが常識です。
昔のシンセへの接し方が、すべてのコンピューター音楽に通用すると思い込んでいる老害がいて、そういう耳当たりの良い言葉を鵜呑みにする若者がいます。
何の知識も無しにいじって良いのは、ぶっ壊す覚悟がある時だけです。たとえばジャンクで買ってきたPCをばらしてみる時とか。メインで使っているPCを「とりあえずいじってみるか」とはやらないでしょ?
現代のDAWには、あまりにも多くの機能があります。
知らずに適当にいじると、復旧不能になるのは当然です。
もしいじりたおすなら、再インストールすることを前提に取り組むべきです。
それはOSでも同じでしょ?
なんだか分からないファイルや機能には触らないでしょ?
テレビが映らなくなった時に平手打ちでバンバン叩いて直したのは昭和で終わりです。ファミコンのカセットをフーフー吹いて直すのもやめましょう。
テクノロジーの進歩をちゃんと見てきた人、ちゃんと理解している人は「とりあえずいじってみる」なんて方法は絶対にやりません。
現代DAWへの正しい接し方は
「なんだか分からない機能には絶対に触るな!」です。
もし触るなら、曲の制作が終わって、暇な期間ができた時だけです。
■テストはテストとして独立させる
初心者はなぜ曲の制作中にテストをするのか?
曲作りに行き詰まって、「なにかいじれば音が良くなるはず」「未知のDAW機能、未知の音楽理論があるはずで、自分がそれをやっていないからだ」という思い込みに支配され、手当り次第いじるから事故が起きるんです。
好奇心としては素晴らしいのですが、好奇心を発揮して良い時と、絶対に興味本位で動いてはいけない時があります。
今作っている曲は早く仕上げましょう。
終わったら「そういえばあの操作ってどういう効果があるんだろう?」という実験タイムに移行してください。その技術が役立つものだと確定した場合、次の曲から使ってください。
・実際のプロは想像以上にDAWの機能を知らない
初心者に限って「DAWの使い方を極めるべき」というベキ論を信仰しています。
一方、上級者の大半は驚くほどDAWの機能に対して無知です。
一部の変わり者、オタク気質の人が異様に詳しいだけです。
『プロなら何でも知っているはず』という他者に理想を投影してしまうことを、心理学用語では「ハロー効果」と呼びます。
「プロだから立派な人に違いない(そうであってほしい)」という思い込みです。
カタギの仕事ではない特殊スキルのヤクザ業界ですから、変な人が多いに決まってるじゃないですか。
と、こういうことを書くと「俺はプロだが何でも知ってる!そのくらい知らないとプロとしてやっていけない!」と噛み付いてくる人がたまにいるのですが……文章をちゃんと読めない証拠ですね。特殊技能のプロなんてそういうものです。義務教育レベルの構文も読めず、一部分だけ見て怒り狂う。そういうのを見たことあるでしょ?
ともかく、プロが使っているスキルは「DAWの知識」ではなく「音楽の知識」です。DAWの使い方を全然知らなくても音楽は作れてしまいます。
私がDTMレッスン業をやり始めたのは、元々はアマチュア相手ではありませんでした。自分より上のプロと一緒に作業をした時に「そういう作業やるならこの操作がありますよ」とアドバイスをした際に『その情報いくら?』と言われたことから私のDTMレッスン業が始まっています。
なお、そのプロ作家の人はメジャー仕事もしていますが、Cubase最上位版をただのMTR、多重録音のツールとしてしか使っていませんでした。それでも第一線の仕事ができているんです。
・本当に今ここでやるべきことか?を10分考える
でも、全てを知っているわけではありません。知っているすべてを伝えることもできていません。やり方が逆に複雑になりすぎ、説明している間に手を動かした方が速い作業の方が圧倒的に多いからです。
eki-docomokirai.hatenablog.com
もし「楽で速い方法」よりも「10分黙って作業した方が速い」のであれば後者を推薦します。なぜならプロは締め切りと戦っているからです。
曲を作っている期間に新しい技術を習得させるのではなく、一段落した後で「あの作業を早くやる方法なんだけど、」と説明します。
■アマチュアは時間を無限に持っているから横道にそれる
「時間を無限に持っている」と言っても人間には寿命があるので有限なのですが、それについてはまたいずれ別の記事で死ぬほど語ります。
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「締め切りを決めないで納得いくまでやれる」。これがアマチュア最大の武器で、最大の弱点です。
曲を作っている間に新しい技術を習得しようとし、誰かと語り合おうとします。そしてそれを今作っている曲で試します。
曲を作る」ことと「技術を上げること」、「交流する」「好奇心を満たす」がすべて同時に行っていると、無限の時間が弱点に変質してしまいます。
今作っている作品はできるだけ早く仕上げ、それから新技術の練習や情報交流をするべきです。
・「教えてください」だけでは得られないもの
「情報交流」と書きましたが、「情報収集」ではありません。
「情報収集」は一方的に獲得するものですが、「情報交流」はお互いの知識を持ち寄って、お互いに成長することです。こういうスタイルで人付き合いをするように心がけると、常に相手に差し出せる何かを持っていなければならないので、自然と自己研究を深めることが習慣化します。(私はこの方法を高校の恩師から教わりました。)
■似たようなド素人いじいじ問題
ド素人が調子にのって、
- 自分でピアノを調律してぶっこわす
- 自分でトラスロッドを回してギターをぶっこわす
- 木管楽器のねじを適当に回してキーバランスをぶっこわす
- 金管楽器のロータリーバルブを分解して戻せなくなる
- 使い物にならない防音室を作る
- 無意味な音響インテリアをする
- 使い物にならない自作スピーカーを溺愛する
音楽ソフトウェア、OSを、
- 初期化の方法を調べずにいじる
- バックアップを残さずにいじる
- テスト環境(サブ機)じゃないのに無茶をする
- ネットに書かれていることをそのまま試すが、基礎スキルが欠如しているので(略)
・ネットに書いてあっても安易に導入しない
たとえば「そういうのはレジストリいじるとできるよ」とネットに書いてあったとしても、いわゆる普通の人は手を付けないでしょ?
例として上はキーリピート速度を変更している箇所。キー押しっぱなしで「ああああああ」と並ぶ速さを変えています。
私はある程度のことはレジストリに手を加えてOSを好みの挙動に変えることはあるけれど、理解を越えていることには絶対に手を出さないことにしています。
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なんつーかね、生易しいゲームで飼いならされてるとそうなるんじゃないかと思う。誰がプレイしても絶対に最後まで行ける、途中で「詰み」にならない安全なゲームの弊害じゃないかと思うことがあります。育て方間違ったら弱すぎて後半戦えないとか、クエストアイテムを捨てたら二度と手に入らないとか、死亡したらデータ抹消とか、序盤で役に立たないアイテムだから捨てたんだけど最後で使うことになる重要アイテムだったとか、そういうキツいゲームに親しんでいれば、ゲームから得られる教訓もあるのですが。
この記事に対する反応として、下のようなツイートをしている人がいました。
DAWで「やらないほうが良い操作」とは? - eki_docomokiraiの音楽制作ブログ https://t.co/0zRR84UKQT
— Foobaria (@mabi_foo) 2021年7月21日
音楽に限らずプログラミングでもそう
対象が無形物だとやりがち
(編者強調)
知ったふりをして重要なファイルを破損したりする人は結構多いです。
過去職場では「自称PCに詳しい人」が、勝手にオペレータ端末をいじってぶっ壊していました。(会社ならそういうセキュリティ/権限管理はちゃんとしておけ、という問題でもありますが。)
自分の自宅PC以外でやるとどうなるのか、サブ機でテストをしていないからですね。
昔からネットでは「おまえの環境ではできるだろうが、他の人に勧めるな」あるいは「それはお前の環境の問題だから俺たちにできることは何もない」を略して「おま環」という言葉があります。
「おま環」はDTMにおいても非常に多くのケースで使われます。どんなソフトが入っているのか、どういう宅内配線なのかも分からない状況では誰も手伝えません。もしぶっ壊したら自分でどうにかするしかありません。そういうピンチに陥った時に自力でどうにかできるスキルを身に着けていないなら、絶対に手出しするべきではないことがあります。以上を示す言葉として、「おま環」の他に「自己責任で」という言葉も肝に銘じておくと良いでしょう。君子危うしに近寄らずです。
・オンライン越しサポート操作ができるツール
これも万人に推奨できるものではありませんが、仲の良い知人、絶対的な信頼のある同士でなら導入しても良いでしょう。
今まで試した中ではもっともシンプルで直感的に扱えるリモートツールでした。興味のある人は「自己責任で」試してみてください。
■レッスン宣伝
そんな感じで実用性の高いDTMレッスンをやっています。
今回の記事で書いたような、プロ向けレッスン「この操作って一発で処理できないの?」系の質疑応答や、緊急時のヘルプ業務も行っています。不定形業務の場合、内容と価格は応談です。
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