DTM、ミックスとマスタリングに関する話です。
マスターコンプを多段がけするメリットについて書いておきます。知ってる人は普通にやってる方法ですので、もし知らなかったら情報収集が足りないと思ったほうが良いと思います。
(2020年9月26日更新)
■多重コンプの方法をメリット
コンプ(リミッタ)を多段掛けするメリットの1つはコンプ感を薄くすることです。
アタックとリリースのスピードなどのパラメタについては書きません。書いてもコンプのモデルによって挙動が違うので意味が無いからです。もちろん曲ソースによってもコンプの掛け方は異なるので、数値で書いても全く意味が無いです。
・模式図
文章で説明するより模式図を使った方が分かりやすいと思うので画像を作ったよ!
こういう帯域バランスの曲だったとします。
一発で大きくコンプを掛けると下のようになります。
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これを小さく2回掛けると下のようになります。
・模式図2
比較のために画像を並べます。
はい、つまりそういうことです。
「耳で聞いて判断しろ」というメソッドが横行していますが、上のように模式図として捉えれば一発で理解できる人も多いでしょう。
・多重加工は高品質エフェクタがあればほぼ不要
もちろん、3回やっても構いませんが、事実上無意味です。
いわゆる「音圧戦争」において、質の悪いリミッターを「薄く」「多重」で使用することで、歪みの少ない追い込みが可能である、というメソッドは広く流通しました。その後は高品質なリミッターにより、多重リミッティングではない一発加工でも「透明な」加工音が出力できるようになりました。
新しい道具に興味がある人はいち早く新しい道具に切り替えました。古い道具を愛用する人は多重加工で音圧戦争に参戦し続けました。
どっちが良い悪いということではなく、サウンド変化の選択肢として多重コンプのことを思い出してほしいなと言うことです。
また、一部の界隈で「コンプを2回掛けるなんてありえない」と主張している人がいますが、そんなことは無いです。特にマスタリング段階では多重コンプは当たり前です。逆に、初期のトリートメント段階での整形を考えれば当然です。
個別トラックでのヒゲ取りと圧縮、グループバスでもグルー用コンプ、マスターでもコンプ。ほら、何段階にもコンプするのは普通の手順でしょ?
・マルチバンド多重がけ
もちろんマルチバンドでも同じ理屈になります。
2mixの時点で帯域バランスが整っていない曲の場合に特に効果的です。
ていうか、個人で仕上げるレベルなら、質の良いマルチバンドコンプに頼っても良いと思います。
ぜひ一度試してみてください。
手持ちのしょぼいプラグインのコンプだけでもいろいろできますよ!
■ベースの多重コンプ例
手持ちのシンプルなコンプで良い感じにならない際、同一のコンプを複数使って良い感じに持っていく手法。
(下の動画は時間指定再生にしてあります。
時間指定無しURLはhttps://www.youtube.com/watch?v=xFNMd1J8Bwc
)
モデルを適切に選択することで、入力音に対して一発で最適化できるのがアナログビンテージを使用するメリットです。
しかし、アイディア次第であなたのクソコンプは万能コンプになるのである!
最終的にどういう状態にしたいのかをちゃんと考えてから、的確にエフェクトを使いましょう。
なお、言うまでもなく多重コンプは「色付け」も多重になります。
色付けが無いと思い込まれているデジタルプラグインのコンプでも、わずかながら歪みが起きます。しっかり確認しながら丁寧にやりましょう。
バイパスチェックも忘れずにどーぞ。いろいろ加工しまくった後に「掛けないほうが良かった」となるのはよくあることです。
・ボーカル用に異なるアタック特性のコンプを重ねる
「全体的なダイナミクスが整うこと」
「瞬発的なアタックが突出すること」
この2つは別問題です。
2つの問題解決を1台でやろうとするから過剰コンプになってしまうよ、という内容。ファストアタックとスローアタックの二段構えで攻略しよう。
まず緩いコンプ(オプト系、LA2A等)で全体的に整える。その際、突発アタックは無視。
次にアタック特化(FET系、1176等)を前段に置く、という手順。どちらか1基に頼りすぎないバランス感覚が大事。
で、まさにその使い方を前提に作られているのがKotelnikov。
eki-docomokirai.hatenablog.com
もちろんKorelnikovじゃないとダメということはありません。
波形の中に含まれる問題の分類と、その治療方法を理解できている人ならまったく不要です。
Kotelnikovは、そういう多重問題が理解できない人にとって、よい入り口になってくれるはずです。