eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

変則的なダッキングサイドチェインの実装

ダッキングプラグイン難民を続けるより、ちょっと面倒だけど柔軟性のある手法を使えば良いんじゃない?というお話。

(2022年9月18日更新)

 

■KICKSTART2発売記念アンチセール記事

古い方の、紫のKICKSTART(1)はシングルバンドでしたが、KICKSTART2では2バンド分割ができるようになりました!ようやくかよ!

Kickstart 2 Screenshot

www.kickstart-plugin.com

発売記念セールで14ユーロで買えます。

・良い点

マルチバンド機能に加えて、任意のリズムでのダッキングも簡単に実装できるようになっています。はじめからやってくれ!

・悪い点

が、現時点(2022年4月22日)ではBPM速い曲での4つ打ちオーディオトリガーに反応しないクソ仕様です。180でアウトでした。

BPM140ばかり量産している人なら問題無いでしょうが、汎用ダッキングトリガーとしてはまったく使い物になりません。

 

 

というわけで、ろくに試しもしないでゴミプラグインを買え買え言ってる乞食DTMブロガーとは違う俺様はアンチセール情報として有用なTIPSを公開するぜ!

 

ダッキングがうまくいかない人へ

個人的には以下に示す方法がもっとも柔軟です。

組み込み方がちょっと特殊ですが、まさに「やりたい放題」です。

 

■変則的なルーチングを組む

まずドラム全体をセンドします。これをトリガーにしてベース等をダッキングしていきます。

 

が、センドされた音は一切発音しません


EQでローだけを抽出し、これをトリガーにしてダッキングSCを行います。

これは専用プラグインが登場するまでは自力で実装されていたテクニックとして知られています。

ルーチンをさらに多く分岐させてバンド分割を増やすと、もっと無茶ができるようになります。中音域トリガー、高音域トリガーを作る、ということです。さらに細かく分けてもかまいません。(現実的には2つか3つだけでも十分で、シングルバンドに比べると劇的な効果を得られます。)

 

ドラムセットの一括音でも、ドラムループでも、無加工でロートリガーとして使えるメリットがあります。

MIDIトリガーを書く必要もありません。

 

■多重ダッキング

(EDM系のリズミカルなダッキングの話。)

ドラム全体から抽出した低音トリガーをベースに3回送信します。

1回で大きく送るのと、複数送るのとではダッキング挙動が変わります。通常のSCではありえない速度で高速で下げることも可能になります。

・トランジェントでリリースを制御する

キック音(ロー音)をそのままトリガーにすると、「ドゥン!」と鳴っている間、ずっとトリガーされてしまいます。

普通の人が普通にコンプを使ってもそれっぽくならない原因はまさにこれ。

 

そこで、「ドゥン!」の「ド」だけに反応させるために、トランジェントでリリースを削り、「ド」だけをトリガーさせることを狙います。

どうせこのセンドトラックは発音しないので、トランジェントでめちゃくちゃに加工しても全く問題ありません。もちろんトランジェントも多重にしても大丈夫です。

ただし、トランジェントは万能でないので、上のEQとの組み合わせでいい感じにトリガーを整形しなければならないこともあります。ハードリミッターを併用するのも悪くはありません。


ガチのEDMだとこういうことをしないで、MIDIでトリガーを行ったりします。

MIDIノートによるトリガーだと、キック発音を無関係にダッキングできるので割と便利。

 

・通常のダッキングと多重ダッキングの比較

トリガー1本の場合。

ベースの落ち量が甘いです。

ポピュラー音楽、バンドものなどであればこのくらいでも実用レベルですが、EDM的な強いダッキングサウンドにはなりません。

 

よくある国内DTMチュートリアルで「はい、これでダッキングできましたね」とドヤ顔で解説している人がいますが、聞く人が聞いたら『それじゃあ弱いよ』と思っているはずです。しかも全然タイミングも合っていないので、EDM的なグルーヴには到達できていません。

 

というわけで改善策。

 

トリガーを3本にしてみましょう。

ガッツリと深くダッキングできていますが、ベースが下がりっぱなしになってしまっています。でも強烈に下げることには成功しているので、一歩前進だと言えます。さらに調節していきましょう。

 

調節。

トリガーの送り量と、トランジェントで調節していきます。

(右上)キックの低音テールが伸びているのに、

(右下)ベースのリリースは無関係に回復していることを確認してください。

 

アタックの瞬間だけ下がり、すぐに上がっている、ということです。あとはトランジェントのアタック&リリースを調整してテンポ感を合わせれば完成です。

普通のコンプ1本で行うダッキングとは比較にならないサウンドを手に入れることができます。

 

■Aの特定帯域からBの特定帯域に対してダッキングさせる

ここからはボーカル特化の話。

そういうことをやる専用プラグインがTrackspacerです。

これは32バンドが全自動で分割されます。さらにハイローパスフィルターを指定して、ダッキングで無視する帯域を指定できます。極めて優秀なプラグインですねホント。

なお価格は9000円弱。

後発プラグインがいろいろ出ていますが(SmartComp2等)、余計な機能がついていないTrackSpacerの使いやすさはバツグンです。

 

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これをダイナミックEQで実装するとこうなります。

センド先でボーカル音を低音のみ抽出。これでギターをSCします。

もうひとつのVoからのセンドで高音だけを抽出し、「2つの異質なトリガーで2つのDynEQをSC」という状態を作ります。

(丁寧に1から10まで画像を作るのは面倒なのでカット。ちゃんとダッキングに興味がある人になら十分通じるはず、というかすでに知っているはずなので。)

(センドしたロー・ハイはルーチン先を無くすかボリュームをゼロにして、一切発音させません。)

 

下は結果。

ちょっとわかりにくいですが、Voの低音と高音それぞれの音量で、ギターの低音と高音が違ったダッキングを行っています。

さすがにTarckspacerの32トラックを再現するのは手間ですが、2分割でもかなり良い感じにできます。

そもそもTrackspacerのようなプラグインは手間のかかるルーチングを1つのプラグインでやっているだけなので、専用プラグインが無くても実装することは可能です。

さらに言うなら、この方法はTrackspacerよりも柔軟性があります。

ローは軽く反応させるだけで、ハイは強く反応させることが可能だからです。

本家Tackspacerは問答無用でワンノブオペレートされてしまい、過剰な反応をしてしまう欠点があります。使い方が明確なのはメリットと言えるのですが、「なんか削りすぎるなぁ」と思う人は多いはずです。

 

その点を完全に補うために作られているのがsmart:comp2です。

www.sonible.com

2000バンド分割という頭のおかしい設計で、完璧な「トラックスペース」を実現しようとしています。設定手順もそれなり以上に面倒です。価格は18000円ほど。

よほどのことをやらないかぎり、TrackSpacerでも十分すぎると私は思います。SmartComp2は過剰すぎます。

 

Smart:Comp2で現時点でのベストを目指すか、TrackSpacerで手軽に行くか、自力ルーチングで頑張るか。あなたのスタイルに応じてよりよいサウンドを目指しましょう!

 

 

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面倒ならTrackspacerのようなプラグインを買いましょう。実際便利。特にカラオケ+歌ミックスを作ることが多い人にはマストバイだと言えます。が、専用の道具が無くてもできますし、無かった時代からやる人はやっていました。やっていた人がいるから「じゃあ専用プラグイン作って売ろうか?」となっただけのことです。それは冒頭で紹介したKickstart系の自動ダッキングプラグインも同じです。

そしてそれは今この瞬間も変わりません。

既存のプラグインではできない音を、誰かが一生懸命に自力で作っています。

最新のサウンドを良く聞いてみると「これどうやって作ってるんだ?」と思う加工が見つかるはずです。(そういう加工を発見できないのであれば、『聞く能力』がまだ未熟だということです。)

キック音が「鳴ってから既存コンプで自動ダッキング」では、音量オートメを拍のわずかに前に書くことや、リールテープのヘッド配置によって「先読みダッキング」させた最新のダッキングは再現できませんでした。そういうのを自動でできるようにしたのが「先読みダッキング専用プラグイン」だった、というだけのことです。専用プラグインが出る前には、最先端のアーティストその華やかな姿とはかけ離れた地道なネクラ作業をし続けれていたんですよ。マジで。

 

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