Cubaseのコードトラックの対象者がどういうユーザーなのか未だに謎です。
なお私はレッスン目的以外にはコードトラックを使ったことがありません。
(2022年2月16日)
- ■コードトラックから生成されたMIDI伴奏の欠点
- ■(欠点1)左手の音が右手では省略されてしまう
- ■(欠点2)コードトラックから生成したデータは、すぐに加工ができない
- ■(欠点3)勝手に演奏されてしまう
■コードトラックから生成されたMIDI伴奏の欠点
■(欠点1)左手の音が右手では省略されてしまう
下は見やすいように音程ごとに色分けしたもの。
ベースで使われている音程が上声の伴奏でオミットされてしまう欠陥がある。
例えば最初のAM'コードはベースがA1で、上3声にAが無い。
このまま演奏させると、ピアノ伴奏の右手にルート音が含まれない状況が多発してしまいます。
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これを解消するために、すべてのベース音を選択し、オクターブ上にコピペする。
重複してしまう音もあるので、「重複ノートを解消」する。
これで上3声にもルート音がしっかり含まれた使いやすい状態になります。
新しめのCubaseはalt+クリック操作などでも重複のノートが発生しやすいので、このコマンドの使用頻度は激増しています。重複ノートを可視化する機能がいつまでたってもつかないのは本当に謎です。昔のMIDIシーケンサではたまにあったのですが。
レッスン等で預かったデータでも稀に良くノート重複が散見されるのでお前らも気をつけろマジで。
・「学習和声」は実際の音楽では使われない
クラシック和声的に書く場合には上声にルート音を入れない書き方があります。
が、それは「学習和声」「教科書的」な場合のみでしかありません。
御存知の通り、ベースに含まれる音をギターが演奏することがあります。たとえ純なクラシックだったとしてもバイオリンやビオラがコントラバスの音をすべて使用不能になるわけではありません。
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・ピアノの場合
純粋にクラシカルな書き方をされているピアノ曲では右手の運指の都合で「ここは左手がルートを鳴らしているから、右手では省いて、もっとメロディアスな動きを優先しよう」となることはあります。
が、コード弾きするピアノ伴奏(コンピング演奏)では左手で演奏している音を右手で積極的に省略するスタイルは存在しません。左手ド、右手ドミソ、となるのが普通です。7thの場合は左手ド、右手ミソシとなることもありますが、多くの場合は右手もドミソシです。
・ギターの場合
ギターも同様です。
ベースがドを演奏しているから5弦3フレットのCを省略して、ということはまずありません。
・ではどのような場合に「ルート省略」が使われるのか?
ジャズ(ビッグバンド)、ホーンを含む大編成バンドなどにアレンジされる際にはいわゆる「上モノ」楽器ではルートが演奏されることは稀です。
Cubaseのコードトラックから生成されるMIDIノート群はそういうジャンルを想定しているのかもしれません。
・コードそのものを見て演奏する楽器
そもそもコードが決まっているならギター(キーボード)は音符群ではなくコードを見て演奏します。なのでルート省略について考えることはありません。
問題になるのはMIDI打ち込みでギターやピアノを演奏する時です。
近年のCubaseはボーカロイドとの連携やコードトラック機能の追加などで初心者への訴求を行っていますが、どうにもコードトラックの機能は初心者向けにチューンされているとは言い難い状態です。
・(備忘録)コードトラックからMIDIノートへの一括変換操作
MIDI/INSTトラックさえ立ち上がっていればOKで、リージョン(空白の箱)の設置や音色の指定などは必要無い。
■(欠点2)コードトラックから生成したデータは、すぐに加工ができない
紹介が前後しましたが、そもそもコードトラックから自動生成したデータはそのままでは編集ができません。
他の作業では一切使わない専用の操作をしなければならず、その方法も初心者ではまず自力で見つけられないんじゃないかと思います。
コードトラックの支配下まま実用的な演奏が行われるなら良いのでしょうが、残念ながら「コードトラックを使って最後まで仕上げる」スタイルを研究しないとまともな曲には至りません。
・コードトラックの支配を解除する
上の操作でコードトラックから生成した「MIDIノート」は自由に変更することができない。編曲のためにこれを解除する必要がある。
左のインスペクターの『コード』を「ボイシング」から「オフ」に変更すれば、ノートを自由に移動できるようになる。(『コード』が無い場合は歯車or右クリックでインスペクタの表示項目を設定。)
ただ、このたった1回の操作のために専用操作を覚えるのは面倒なので、
「新規にMIDI/INTSトラックを立ち上げて、そこにMIDIノートをコピペ」
という方法が一番スマート。
特殊機能のために新しい操作を覚えるくらいなら、和声や楽器の音域のひとつでも暗記した方が絶対に役立ちます。
同様の問題はオーディオトラック(ボーカルハモリ制作)でも生じます。
生成時に「コードトラックと連動させますか? Y/N」と出すだけで多くの人が時間を奪われずに済むのにね。もしくはイベント(リージョン)右クリックのメニューに出してくれるだけで多くの人が助かるはず。
「この定義はここからしか操作できません」というのが多すぎるのがCubaseの悪い点です。なので、上にも書いた通り
特殊機能のために新しい操作を覚えるくらいなら、和声や楽器の音域のひとつでも暗記した方が絶対に役立ちます。
ということに行き着くんです。
■(欠点3)勝手に演奏されてしまう
コードトラックで設定されたシンセの音を止められなくなってしまった人は多いはずです。
これはコードトラックそのものがシンセを保持、つまりインストゥルメントトラックとして運用できれば何も問題なかったはずです。
わざわざ他のトラックに連動させなければ音が出ない仕様なので、あらゆる操作が二度手間になってしまいます。
設定場所は下画像のとおりです。
これを「モニターしているトラック」にしてしまうと、一見便利なようですが後で地獄を見るハメになります。
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Cubaseの悪い伝統として「一度追加した機能は保持したまま次のバージョンに行く」という方針があります。中途半端なまま事実上捨てられてしまった機能もいくつかあり、おそらくコードトラックも中途半端なままになるんじゃないかなぁと推測されます。