Cubaseのちょっと便利機能「ノートパッド」のお話。
(2022年1月18日更新。マーカートラックの活用について追記。)
■Cubaseのメモ機能
何種類かの方法でDAW上にメモを残すことができます。
・プロジェクトへのメモ
かなり古いCubaseからついている機能です。
プロジェクト全体に対する大量のメモはこっちが便利。
歌詞メモ、オーダー、締め切り、連絡先などのメモに。
「ツールバー>プロジェクト>ノートパッド」
文字が非常に小さいのが難点です。
Ctrl+ホイールで文字を拡大できますが、文字サイズを記録しておくことはできません。閉じると元の小さい文字になってしまいます。
なお、OSのシステムフォントを変えるとCubase全体のシステムフォントにも悪影響が出るので、Cubaseを使う人は絶対にシステムフォントをいじるべきではありません。
eki-docomokirai.hatenablog.com
・ミキサーのメモ
最近のCubaseに追加された機能です。
画面上部の「ウィンドウゾーンコントロール」から表示します。
これが出ていない場合は、ミキサー画面上部の空白で右クリックして、操作ボタンを出してください。(位置カスタマイズもできます。詳しくは拙著『Cubaseカスタマイズの教科書』にて。)
ただし、メモできる文字数は少ないです。
もし使うなら、自分なりの記述ルールを決めた方が良いでしょう。
・古いCubaseを使っていて、ミキサーメモ機能が無い場合
メモ用プラグイン(Meldaフリー等)を使う方法も一応あるけど、日本語対応していません。
また、当然プラグインを開かなければならないので、実用性は極めて低いです。
・トラック名にメモする人は非常に多い印象
ある意味最強。
トラック名にメモするのは、基本操作の延長で使えるので便利です。
が、これも文字数が非常に少なく、実用性は低いです。
でも最もシンプルな方法なので、新しい操作を覚えたくない人にとっては最強のメモ方法だと言えます。
■ノート単体にコメントを書く
Maustopia氏の記事に誘導。
「tip4 : 個別のノートにコメント記載する」の項目をどーぞ。
ただし、スコアを使う場合には後で削除に手間がかかったり、見落としてゴミが入ることがあるので要注意な!しかもコメントのフォントがノーテーションフォントになってしまうので、音符に対する注釈には使えません。
他者とファイルやり取りがCubaseのピアノロール専業なら、キースイッチの注釈などには使えるかもしれません。
■Cubaseのマーカートラックをメモ場所にする
マーカートラックを複数段にすれば、全体を縮小しても長文が読めます。
たとえばこういうお悩み。
音を試聴した時のメモを書くのがむずいのよね…わざわざN小節目って書かないしな…楽譜ならまだしもピアノロールとか音量波形。
— しふとん(🔥×10) (@shift_web01) 2022年1月18日
ニコニコみたいに流れるコメントはメモとしても使えるのかも…?
残念なことにマーカーはピアノロール等のエディタ内部に表示はできません。
この対処はメインウィンドウとエディタを上下分割配置することでなんとかなるかもしれません。(個人的には、各種エディタ上部に任意のマーカートラックを表示できればなぁと思っています。)
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上は8小節作曲レッスンで使用しているテンプレートでの使用例です。
私がよく使うのは、複数の曲集を制作する際の曲番号やタイトル、シーン内容のメモとしてです。
制作中のチェック項目などを書き残す際にも活用できます。
色付によって重要度などの順位付けにも使えるでしょう。
レッスン受講者の中には、マーカートラックをコード進行メモに使っている人もいます。
本来のコードトラックだと演奏トラックに連動が誤爆してしまうこともありますが、マーカートラックは演奏に一切影響を与えません。余計な機能が無いことがメリットとなります。
■紙とペン最強
もっと最強なのは紙とペンですよ。まじで。
レッスンでも必ず紙とペンを用意するように指導しています。
紙のメリットは「大きな文字」と「図形」です。
左に書いたメモに対して、右に図形イメージなどをすぐに追記できます。
紙メモに慣れておくと、デジタル機器を持ち込みできない環境でも普段と同じスタイルでメモをすることができます。
自宅DTMだけの人にとっては「スマホかエクセルで良いじゃん」と思うかもしれません。
しかし、自宅DTM活動でも楽譜への手書き記入が発生するので、手書きメモに慣れておくのは音楽的にメリットがあります。
・プロこそ手書きメモを多用する
また、下のようなレコーディング現場でのメモ例も見ておいてください。
こういう現場に行くことが無いとしても、テープに手書きメモをしてペタペタ貼っていく行為は「プロっぽさ」を感じることができるはずです。同様のアナログなメモ行為は音楽以外の仕事でも必ず役立つので、「誰でも読める文字での紙メモ」に慣れておくのは悪いことではありません。
・タイムスケジュール
紙とペンの場合には、楽譜を使う方法がもっとも一般的ですが、大きな白紙に直線を書いて、そこに「1分23秒」などの必要な箇所だけ数字を明記していく方法もあります。
この辺りは音楽制作の作法だけではなく、舞台のタイムスケジュールの運用技術を流用すると良いでしょう。
下のリンク先記事では舞台照明の仕込みスケジュールについて書かれています。記事内にそれっぽい画像があるので参考にしましょう。
backstage-report.blog.ss-blog.jp
・デジタルメモはおすすめできない
もちろんスマホ等のデジタルメモも可能ではありますが、雑念を誘発する危険なデバイスです。集中力を維持するためにも真剣に作業するならスマホの電源はオフにしておくべきです。まじで。
紙はオフラインでいつでも参照できます。
PCとDAWが起動するまでの時間で、この後の作業チェックができるメリットは大きいです。
もちろんバウンス等の処理待ち時間でtodoチェックをすることもできます。(この点において、PCメモは使い物になりません。)
デジタルメモを使いこなすことはできても、デジタルメモでは絶対にできない行為が多くあります。その点について考え抜き、なぜプロは手書きメモを多用するのかを積極的に理解しましょう。
・添削や行動計画はエクセルで
もし録音時の情報などを細かくメモすることが多いなら、エクセル等でひな形を作っておくべきです。他の人に引き継ぐ時などにも完璧な情報伝達ができますし。
■何よりもワークフローを確立すること
メモは目的ではありません。手段を補佐するツールです。
優れたメモ術を身につけることは、腕のいいアシスタントや有能な秘書を持つことに相当します。
メモを含めたあらゆる手順を洗練させていくことで、あなたの音楽はより優れたものになり、少ないストレスで創作活動を持続できるようになります。
たかがメモ、されどメモ。
敏腕ビジネスマンが手帳を大事にするのと同じように、優れた音楽家としてのメモ術を研究しましょう。
■レッスンのお知らせ
音楽制作における「誰でもできて、絶対役立つメモ術」については有料レッスンで伝授しています。
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