eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

リフレクションフィルターは本当に必要か?

(近況)最近立て続けにリフレクションフィルターに関する問い合わせを受けたので記事にしておきます。結論を先に言うとアレは「簡易的なものでしかない」です。

(2021年8月18日)

 

 

■それは雰囲気アイテムかもしれません

自室をスタジオっぽく見せるためには非常に役立ちます。

可能な限りの手段を作り、録りを良くした。あとは自分の腕だ!という追い込みに役立ちます。

が、音響的に本当に役立っているかについて、一度疑問視してみてください。

まずは毛布をセッティングして遮音を試してみてください。

部屋中に可能な限りの洗濯物を吊るしてテストしてみてください。

■役立たない派の主張する根拠

www.gravyforthebrain.com

もっとも端的な画像がこれ。

f:id:eki_docomokirai:20210818072903p:plain

https://www.gravyforthebrain.com/reflection-filter/

マイクの指向性と無関係な根本的な問題です。

演者のいる方向の音を録りたいということは、リフレクションフィルターは演者側をシールドできないということです。音は回り込みます。光のように直進しません。

 

そもそもカーディオイドである時点で、マイク背後からの音はかなりが防がれています。最大の問題はマイクの背後ではなく、マイク正面でから来る音です。 

 

次。

www.soundonsound.com

で、この画像。

Q.「反射フィルター」はお金の価値がありますか?

https://www.soundonsound.com/sound-advice/q-reflection-filter-worth-money

However, simple DIY filter constructions can be virtually as effective as commercial versions, and if you have an experimental nature I'd certainly recommend having some fun with a foam panel to see whether the idea is useful to your specific recording situation or not!

まずは部屋の中にあるもので単純な方法で自作したフィルターを試してみてください。それは非常に強力です。(ただし、死ぬほど不格好ではあります。)

マイク裏と自分の後ろに毛布を吊るしてどのような効果が得られるかテストをしてみましょう。

 

次。

gearspace.com

「あくまでもポータブル、簡易であるとメーカーも言っているじゃないか」

1つのポータブル簡易ツールで全てが解決するわけではありません。

 

これは別に不当表記でも何でもなく、「かぜ薬」のようなものだと捉えておけば良いです。カゼ薬を飲んだらカゼに対して無敵になれるのか?携帯カイロで熱源を持ち歩けば素っ裸で雪山登山をしても死なないのか?ということです。

今どきの話で言えば、新型コロナに対してマスクは無敵ではないが、無いよりマシだし、誰もができる防御力アップの手段だから、みんなマスクをしようね、というだけのことです。マスクをしても無敵じゃないからマスクをしないとか、ワクチンを打っても無敵になるわけじゃないから効果が無いとか、そういう話です。

リフレクションフィルターはある程度の効果はありますが、せいぜいマスク程度だと思っておけば良いです。あらゆる病原菌を全てシャットアウトできるわけではありません。

 

■そもそも完璧な防御は不可能

音は回り込むし、部屋には直線的な壁がある。

もうこの時点で物理的に不可能である、ということを納得しなければなりません。

私が楽器店勤務をしていた時にも「防音をしたい」というお客様がいましたが、私も上司も「並大抵の予算じゃ無理ッス」と答えていました。

特に上司は入社直後に「防音したいというお客様がいたら、安易に『できる』と答えてはいけない」と強く教えてくれたものです。

日々の売上欲しさで半端なものを売って店の評判を悪くするくらいなら、正しい情報を提供し、本当に必要なものを売る。信頼を得て何かあった時に一番に相談してもらえるパートナーになる。そういう方針で仕事をしていました。だから、「楽器にこのネジを取り付けるだけで音が変わる!」などというオカルト商品は扱っていませんでした。

そういう哲学を持たず、「売ればヨシ」という方針でやっている楽器店ももちろんあります。選ぶのは客だし、客の信じていることを否定するのは失礼に当たる、という考え方です。正しいかどうかは本人の人生の問題ですから、失敗も含めて経験してもらい続ける、というのも正しい経営方針です。

作るメーカーも同じです。

効果が少しでもあるなら作って売る。

否定はしませんが、私はそういう方針では生きていません。

ただし、騙すのはいけないことだと思います。

 

そういう問題は昨今の新型コロナで浮き彫りになったなぁと思います。

が、調剤薬局で怪しげな免疫ツールを陳列しているのはいかがなものかと思いました。知識と権威を持つ者には責任が伴うべきだと「私は」思っています。でも、それを止める手段を持っていません。世の中は実にカオスです。

 

新型コロナ関連商品に接するのと同じように、オーディオ製品に接するようにしましょう。

 

■その他のソリューション

反射音の全てが悪だというわけでもありません。デッドすぎる音、何かに囲まれた感じのする不自然な音は、数値としてはベストかもしれませんが、ミックス乗りが悪いこともあります。(頭から毛布をかぶって録音してみてください。)

部屋の中で歌う方向を変えてみるだけで劇的な違いが得られます。

必ずしもPCに向かって歌う必要はありません。

背中の壁の距離を変えてテストしてみましょう。

床の反射は想像以上に大きいです。忘れている人が非常に多いですが、リフレクションフィルターは下方向に無防備です。座った状態と立った状態、床にカーペットや毛布を置いた状態でもテストしてみましょう。座った状態は身体的に歌いにくいだけではなく、音響的に間違いなくバッドです。

 

まずはDIYを試みてください。

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