リファレンスミックスの方法について書いておきます。このブログの過去記事でも散々書いていることなのですが、ちょうど海外記事で良くまとめられたものがあったので紹介ついでに。
■元記事(英語)
■リファレンスミックスって何?
「写真をとって、家に帰って、写真を見ながら絵を描くことと同じだよ」と書かれています。
ミックスでリファレンスを使わないのは、「目が見えないのと同じだ」とまで言っています。
どんなに良いモニター環境を構築していても、どんなに高性能なプラグインを持っていたとしても、どんなに時間をかけたとしても、目指す方向が無いなら全ての行為は無意味です。
■「決断疲れ」(decision fatigue)
心理学用語。
要するに疲れるとレジ前にあるお菓子を衝動買いしてしまうということです。
どの服を買うか迷って、結局最初に見たものを買うのも同じです。
それは悪い意味での人文科学としての心理学ではなく、脳科学的な裏付けがあるのだそうです。
考え、判断する行為は脳内のグルコースの消耗です。
「判断、選択は幻想である」という言葉さえあります。
人は本質的に判断も選択もしておらず、身体という機械的システムでしかない、という考え方です。また、周囲の現象(見えざる手)によって外的に動かされているにすぎず、自主的な判断などしていない、という、まぁなんというか、終末思想的なアレなのですが。
アンドリュー・バード シュムークラー (著)
出版社: 青土社 (1997/8/1)
言語: 日本語
ISBN-10: 4791755707
ISBN-13: 978-4791755707
発売日: 1997/8/1
・「学ぶ」は「マネぶ」
絵を描く方法を学ぶステップとして模倣が重要であることは誰もが知っているはずです。
もちろん真にアーティスティックな作品のためにはオリジナリティが不可欠なのですが、そこに至る前段階として「マネる」ことはとても大事です。
カラオケを歌うとして、オリジナルを聞かずに楽譜と歌詞だけで表現し切ることができますか?という話でもある。
・リファレンスによってオリジナリティが喪失しないか?
しません。
リファレンス楽曲とあなたの楽曲は違います。
どんなにマネても同じにはなりません。
というか、どうせ完璧にはリファレンスどおりにできません。安心してください。
・オリジナル幻想
むしろオリジナリティという言葉は初心者を惑わせます。
能力が無いのにオリジナリティばかり主張するのは、技術を段階的に身につける順序としておかしいです。
オリジナルというのは魅力的な言葉ですが、それはそう易易と得られるものではありません。
もし誰の力も借りずに、自分の力だけで真のオリジナリティを表出できると本当に信じているならご自由に。
私は「オリジナリティは全ての人の中にある」という考えには同意します。しかし、それを具体的な作品として形にするためには不断の努力が不可欠だとも思っています。イメージし続け、それを体の外に出す能力を獲得しなければいけません。そのステップとしてリファレンスは極めて有効です。そして真のオリジナリティとは訓練で奪われるものではありません。もし訓練によって才能を奪われたと感じるなら、それはもともと大したオリジナリティを持っていなかったことが証明されただけです。真の才能は決して潰れません。
シンセの音創りで「オリジナリティのある音色が欲しい」と主張する人がいた場合に、
「プリセットは論外」
「1から作ってもそのシンセの個性に支配されるよ」
「じゃあ自分だけのシンセを自作しないと」
「既成パーツじゃダメだな」「鉄や木もダメだろう」
「まず木を植えろってことか?」
「いや、木も鉄もすでに存在してる。オリジナリティが無い。」
という実機シンセジョークがあります。
オリジナル、オリジナルと言っている人は往々にして作品を作っていません。
・曲例
同記事では「31曲の世界的リファレンス楽曲」も引用されています。
私がまとめて再生リストにしたものがあるので、興味があれば使ってみてください。
eki-docomokirai.hatenablog.com
ただ、ジャンルが違いすぎると無意味なので、あなたが好きな曲、あなたが熟知している曲、そして何より、今あなたが作っている曲に似ている市販曲をリファレンスにするべきです。
■執筆中の本があります
既存の音楽理論を一切使わず、心理学的なアプローチで音楽制作について1冊書こうかなと思っています。
まだ漠然とした内容なので難航していますが、数年以内には完成させたいです。
■関連過去記事
評判の良い過去記事です。
eki-docomokirai.hatenablog.com
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