平成30年(2018年)9月6日、北海道胆振東部地震で被災しました。せっかくなのでいろいろ書き残しておきます。本気で防災やサバイバルを考えている人はこんな素人記事を参考にせず、ちゃんと勉強し、備えてください。
■役に立った道具
スマホ等の電灯でも良いと思いますが、なにしろスマホは電力消耗が大きすぎて、いざという時には数時間しか役に立ちません。省電力で長時間使える単一機能の道具は本当にタフです。
・小型ラジオ(手回し充電、懐中電灯付き)
今回の震災で最も活躍した道具は間違いなくコレでした。
Panasonic RF-TJ20-W
父が釣りに行く時に使っている携帯ラジオです。
似たような携帯ラジオは様々なモデルがあります。もっと良いものがあるかもしれませんが、これは十分な性能&使い勝手だったと感じます。今回のMVP。
もっとも、ラジオの情報があったところで具体的に役立つことは無かったのですが、何かの音はそれだけで安心感を提供してくれるものです。
洞爺湖では花火大会をやっていたとか、バーベキューと花火を楽しんでいる人がいた、というニュースを見た人もいることと思います。災害時やイヤなことがあった時、落ち込む気分を紛らわせる娯楽は重要な栄養素です。事実、ローカル放送では3日目からは心理的ストレス対策についての情報が見受けられるようになりました。
・市支給品の防災ラジオは2番手
東北震災の後に市から配給された三角柱型の電灯付きラジオはやや大きすぎた。
が、これは緊急放送が強制的に鳴るので安心感がある。
同梱されていた小型軽量の電灯は光量も十分で役に立った。
ストラップがついているのでベルトに通して常に携帯できるデザインもすばらしい。
・電池
上のラジオよりもベターな品物はあるはずです。
アルカリ単4電池3本や、野外での光量の不足はどう考えても欠点です。
我が家は単4電池の使用率が圧倒的に高いので問題を感じなかっただけ、とも言えます。
100円均一などの電池関連グッズでは、単4電池等、細い電池にプラスチックカバーを着せて太い電池のサイズに太らせるアイディア商品もあります。そういうものが準備できているなら、電池駆動の機器は細い単4電池を使うものより、太い電池で駆動するもののほうが弾数の点で有利でしょう。
・初動で灯火できるか?
こういうものは暗闇の中で手にできなければ役に立ちません。
スマホでも何でも構わないので、すぐに灯火できる手順は大事ですね。
・人数分の電灯
あったほうが良いです。固まって動くわけではない。
・ローソクとマッチ
(そもそもマッチを常備していることは防災的には危険です。)
仏壇があるので常備してありました。
日没あたりから役立ちました。
なごみます。
ローソクは結構な本数があったので、電源が無くなる長期戦でも大丈夫だという安心感になりました。
・ダクトテープ
強引ではありますが、テープを巻いて電池を太らせる方法もあります。こういう用法まで視野に入れると、アメリカ人が大好きなダクトテープ無双で乗り切れるのかもしれません。ダクトテープは様々な工作や応急処置にも使える超絶便利グッズです。
いざとなれば衣服や履物(災害時には足を怪我したら終わりです)、カバンも作れます。
もし寒い冬の被災だった場合には、ありあわせの材料で風よけの壁や焚き火の風よけも作れます。
今回は使用することはなく、布テープで補強したレジ袋で水を備蓄する程度でしたが、念の為にカバンにダクトテープを1本入れました。
・(半分ネタ)DTM、音響勢的な話
半分ジョークだけど、半分マジメな話。
帯域ごとに聞き取るミキサー耳は少しだけ役に立ちます。
スピーカーは真横や真上に向けるより、テーブルなど硬い床面に向けた方が音の反射増幅が期待できます。この音響効果はスマホのスピーカーでも体験できます。スピーカーを硬い面に向けて反射させると音が聞き取りやすくなります。
これはDTM的には吸音などの知識を逆に使う、と言えば分かるでしょうか。モニタリング的にはタブーとされる反射音を活用するわけです。
同じ音量で聞き取りやすいということは、電池の温存に直結します。
あと、野外スピーカーや広報車両から聞こえる音は、普段からDTMでディレイ/リバーブの聞き取りができていれば、不明瞭でもわりと判断できます。あと遠くの音はハイローパスフィルターされた聞こえにくい音になるので、特定周波数だけを聞き取る耳ができているとちょっと役立ちます。
■食料
我が家はやや特殊かもしれません。常にある程度の食料が常備されています。
・冷凍おにぎり
普段から残ったご飯はおにぎりにして備蓄しています。
外出時に持っていくことが多いです。
貧乏くさいと思うかもしれませんが、これはサバイバルに直結します。数個のおにぎりで1日生き延びられます。自然解凍だと味は落ちますが十分に食べられます。チャーハンなどの調理飯はおにぎりとして優秀です。栄養価もありますし、味も楽しめる。
コンビニでチャーハンやオムライスのおにぎりがあるのを初めて見た時は驚いたものですが、実際それらは美味しく楽しいものでした。
・畑
うちの庭は半分が畑です。小さな庭なので完全な自給自足ができる規模ではりませんが、インゲンマメ、芋、青菜、大根などが採れます。栄養的にも良いですし、色のある食事は精神的に良いです。大根の葉などは食べられます。
そういう食事を楽しんで食べることはとても良いことです。
■地震直後にやったこと
9月6日、未明3時過ぎ。
いつもどおり規則正しく昼夜逆転している私は1F作業部屋。
もうすぐ寝るところで被災した。
両親は2Fで寝ている。
ガガガ、と鋭い振動。
「ああ、これはアカン奴だ」と察し、即座に大声で「起きて!」と叫ぶ。2Fの両親が起きたかどうかは分からないけど、直後の凄まじい揺れで、あぁ、これで起きない生き物は居ないだろうと思った。電気が消え、ガシャガシャ、ドサドサと音がする。あれこれ壊れたか。でも無視しようと決意した。
まずは危険物から離れる。柱に身を寄せつつ、懐中電灯の場所をイメージする。
食品庫の中に1つ、いや、それは先の台風停電の際に使って居間のテーブルに置いたはず。もう1つは玄関だが、玄関のガラスが割れて危険かもしれない。
落下しそうな物を押さえようとしない。
まずは自分の安全と明かりを確保。
テーブルに置いたはずの懐中電灯が数秒以内に手に触れないので、真っ暗でも今数歩歩いたPC机までは戻れて、そこにはライターがある。喫煙者は暗闇でもタバコとライターに手を伸ばせるはずだ。
ライターを手に取り、カチカチと点火しながら懐中電灯を発見。
「起きろ!」と叫びながら2Fへ。
すでに起きていた両親に「靴下を履け」「何でも良いから上着を3枚着ろ」と大きな声で命令。
割れたものを踏んで足を怪我したら終わりだ。靴下は重要。
もし踏まなかったとしても、素足で靴を履けば足が靴ずれする可能性がある。
だからあらゆる災害時に靴下の優先度は極めて高い。
緊急時の言葉遣いは「強く短く明瞭に」と学んできた。
誰かが強烈に命令し、ベストよりベターを瞬時に、だ。
その上で、両親それぞれにこの後の行動を命令をし、具体的な成果の出る行動を寄せ集めることだ。
「少し様子を見て、まずかったらすぐ避難するよ!」「大事なものを集めるよ!」
3人まとまって行動し、もう1つの明かりを確保。
母に明かりを1つ持たせ、改めて貴重品などを集めるように命令。
父と私でもう1つの明かりを探す(ガレージ内)。完全に暗闇だったので、それぞれが手にできる明かりを確保したかった。
ガレージで電灯付きラジオをみつけ、父には隣の家の身障者への声かけをさせる(そういうルールになっている)。
父はのんびりしているので、家に居させるより使命を持たせた方が良いと判断したので、父に行動させた。隣家との面識が一番あることも理由だった。(母は耳が悪いので、この状況ではまともに会話ができない。)
というか、何より父は家の中でどこに何が置いてあるか熟知していない。貴重品の確保で一番スムーズにできるのは母だ。
私は宅内に戻り、PC作業部屋に戻り、自分の必需品を確保。
PC周辺は文具が散乱してめちゃくちゃになっていたが無視。常備薬、いつものポーチ(派遣時代の上司に傚った癖で、貴重品や文具等が入ってる)を身につける。2F自室に走り、大きめのカバンの中から仕事道具を非繰り返し、自分の着替えを突っ込む。まさに『天空の城ラピュタ』の「40秒で支度しな!」のスピードだったと思う。
宅内で母と行動。
母は耳が悪いのでまずは補聴器を用意。同時に補聴器の電池をポケットにねじこむ。耳が聞こえる状態になった母に「いつもの薬を全部ポケットに入れて!」と命令。
寝起きもあり、耳がちゃんと聞こえていないようだったので、ポーチから自分の銀行通帳と財布を出し、ライトで照らして母に見せる。母は「うん、分かった」と言って、貴重品をかき集めだす。
その間、私は買い物袋に、水、タオル、食料(高カロリーで持ち運びやすいジャム等)、テーブル上に見えた食パン、ビニール袋(最悪の場合でも水等を入れられる)、着替え(誰のでも構わない)をぶちこむ。
父が隣家から戻った頃、町内の拡声器から「震源と津波が無いこと」を知ったので、待機策を決断。
■水
父を仏壇に引っ張り、ローソクとマッチを持たせつつ、「大事なものと着替えを集めて」と指示。
これが非常時だということを強調する意味でローソクとマッチを最初に渡した。釣り道具とか賞状とかいらねーからな?
その間、私はペットボトルに水を入れる。
ついでに水を多めに飲んでおく。
最初の数本のペットボトルを父と母に手渡す。
食い物はともかく、水が無いと人はすぐに死ぬ。
(ここでミスがあったのは、両親にもまず水を飲ませるべきだったことだが、それをやるとトイレに行きたいとか余計な行動をされるかも?と警戒した。)
災害になっても数十秒の間は蛇口から綺麗な水が確実に出る。
最初の数本までは間違いなく飲料水にできる。
その先は水道管の破損等で汚染されているかもしれないということを考えた。
暗いから水質を目視ではチェックできない。でも確実に役立つはずだから、ありったけのペットボトルに水道水を入れまくった。実際、地震等で水道管に衝撃があると、管内の汚れが剥離し、飲むタイミングが悪いと人体に有害なことがある。これは引っ越し直後とかにもあるので知っておいて損はない。(というか、昔それで死にかけたことがあるので知っていた。)
台所周辺の収納を片っ端からチェックし、大きな鍋、水筒などにどんどん水を入れる。
持ち出すためではなく、備蓄のためだ。少々汚染されていても飲まないよりマシだ。
鍋に水が貯まる間、居間のテーブル周辺の安全を確認し、テレビ下の収納にあったはずの大きなガラス灰皿を2個取り出し、ローソクを立て、ラジオを入れる。
・逃げるか、とどまるか?
もちろんなりふり構わず外に逃げ、避難所の小学校にでも駆け込むという選択肢もあった。
が、両親の状態からそれが難しいと考えたので、少し待つという選択をした。
もしここで大きな余震が来て家がまるごと潰れるような事態になったら、と言いたい人がいるのも分かる。それは正しい。
でも、この建物が瞬時にぺしゃんこになってしまうレベルの大地震になったら、そもそも体力自慢ではないこの一家3人が生き延びることはできないはずだ。
もちろん自分一人だけで逃げ出すことも考えた。でもそれは選択しなかった。隣家の身障者を見捨てることもしたくなかった。
同時に考えたのは、これからの状況が最悪の事態となった場合に「いかなる行為」をしてでも家族を守るという決意だった。
そこまで逼迫した事態にならず本当に良かったと思っている。
・お金の失敗
地震直前の日中、銀行に行き、普段持ち歩いているお金の大半を預入してしまった。小銭もすべて入れてしまい、財布には1万円札2枚しか無いという状況で被災した。これは完全に運が悪い。
また、直前(それこそ地震の数時間前)にAmazonでいろいろと購入していた。
いくつかの小物は今日の時点ですでに届いているが、大きな物はどうなっているのか未だに分からない。
もう数日して連絡が無いようだったら問い合わせよう。
■事後談
幸いなことに停電生活は2日程度で終わった。
その最中にあったこと、両親に支持したことを羅列しておく。
「どうせ2,3日で直るでしょ」と楽観視する母への説得。(最悪の事態への備えは必要だが、復旧に備える必要は無いでしょ?)
風呂は昼間の暖かい時間にするように。
食料の確保のため、1日数回は近所の店を巡回。
同時に市内の状況に関する情報を収集。
移動は基本的に自転車。急がず、体力を消耗しないこと。汗をかかないこと。
食料は日持ちしないものから順に食べる。数日後に確実に傷んでしまいそうなら、残さず食べる。
(食料の管理・やりくりは母に任せる。)
・おさらい
非日常的な行動をしたので、それらが本当に妥当な行動だったかググってる。