問い合わせ業務で「修理で戻ってきたシンセの音が合わない」とのことでサポートしてた。せっかくなのでブログ記事にしておこう。
(2021年12月16日)
■外部デジタル機器とDAWの音が合わない時に疑う順序
1、MIDIデータにピッチベンドが入っていないか?
2、ピッチ変更エフェクタで音を変えていないか?
3、各種機器のサンプリングレートがずれていないか?
今回のサポートでは「3」が正解でした。
デジタル機器(Roland Integra7)をメーカー修理に出していた人からの問い合わせ業務で、おそらく修理の際に初期化されていたのではないか?と私は推測しています。これ以上質問しても無意味なので、あくまでも推測ですが。
■48000Hzと41.100Hzの音程差はおよそ2半音
計算式は面倒なので割愛しますが、とにかく48kHzと41.100Hzの音程差は「およそ2半音(全音)」です。
・全ての機器のサンプリングレートを統一するのが第一歩
デジタル音楽制作では、全ての機器のサンプリングレートを統一しなければいけません。
- 接続しているデジタル機器
- DAW
- PC
のサンプリングレートを見直してください。
・今回のサポートの決め手となった情報
問い合わせ元のコメントに「2半音ずれてる。いや、片方を2半音移調してもちょっとずれてる」という一言でした。正直なことろ、最初にそれを言ってもらっていればピッチベンドやDAWの移調機能という初歩的な話から始めず、初手で『それサンプリングレートの不一致です』と即答できたかもしれません。いやどうだろう。R氏あたりなら即答するに違いない。
・応用技術
48と411のサンプリングレートで「およそ2半音」のズレになるので、多少の絶対音感があればオーディオ素材のサンプリングレート不一致も判別できます。
強めの絶対音感があれば、「2半音」であることより「およそ」の部分で、通常のコナートピッチ(440等)からずれていることで、サンプリングレートの不一致を判別できます。
■実験方法と楽典話
周波数を指定できるシンセサイザー、オシレーターでそれぞれの周波数のサイン波を鳴らしてみましょう。
もちろん48000Hz」は人間の耳には聞こえないので、桁を2つ下げて「480Hz」「441Hz」を使います。
そこにチューナーを当ててみます。
(MeldaのMTunerを使用)
441Hzは「少し高いA4」、480Hzは「かなり低いB4」だと表示されました。
AとBは2半音。それより53セント狭い2半音であることが分かります。
100セントで1半音なので、2半音よりもおよそ1/4音せまいということです。
(厳密には-146.71略 セント差になります。)
1/4音はかなり大きな音程差です。音楽を少しでもやっている人に備わっている多少の絶対音感・相対音感だけでも「なんか2半音のようだけど、ちょっとずれてる」という判別はできるはずです。音律ガチ勢やブルースガチ勢なら「1/4音違う」と即答するかもしれません。
なお、計算上ではA=441に対する正しい長2度上はB=495.01です(平均律にて)
ガチ勢なら「導音のB?」と言うかもしれません。
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※周波数比率の「正しさ」についてそれ以上の興味と必要性のある人は、ちゃんとした計算をして、ちゃんとした資料を手に入れてください。音楽制作において「通常の作曲家」はこれ以上の精度を必要としません。
(この「こちらは作曲家であり、作曲家でしかない」というスタンスは、私の発言において一貫されています。それ以上の「正しさ」に対する質疑・議論には一切応じません。と念の為に書いておこう。)
・チューナーの特性チェックにもなる
なお、Steinberg Cubaseに現在付属しているTunerでは「480Hz=かなり低いB」を判別できません。高いBbと低いBを往復してしまいます。(ストロボモードにしても同様です。)
Meldaのフリーツールに含まれているMTunerはこれを判別できます。
このように、チューナーにもメーカーやモデルによって様々な特性があります。暇人はこの機会にいろいろ試してみてはいかが?