eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

コンプの使い方、の前に(3)最大音量と平均音量

コンプの話ではなく、コンプの前と後にどうしたいか?という視点で。

(2021年1月12日)

 

 

■最大音量と平均音量

高い位置で動いて見えるのが「ピーク」です。瞬間的な最大音量まで表示する方法です。

 

少し低い位置、数字の15の少し下でゆっくり上下しているのが平均音量です。

 

音量の話をする際に最も重要なのは「ピーク」の話をしているのか、「平均」の話をしているのかです。

 

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パチスロをやる人が「8万勝った」と言っていても、それは瞬間的な話でしかなく、ギャンブラーの収入は1年平均ではおそらくマイナスのはずです。

 

私のような音楽仕事をしていると、短時間で終わる仕事なら30分程度の作業で1万円になることもあります。もし30分で1万円を稼ぎ続けることができるなら、単純計算では1日48万円を稼げることになりますから、年収は1億7520万円となる、わけがありません。

 

つまり、瞬間風速の話は日常的にはあまり意味がないんです。

最大ピークだけを見ても無意味

ということをまず理解しましょう。

 

・デジタルピークの瞬間風速

しかし、DAWを使うことが一般化していると、最大の問題になるのは「瞬間風速」です。

デジタルで最大ピークがゼロを超えると「パチッ」という音が聞こえてしまいます。いわゆる「音割れ」です。これはなんとしても避けなければなりません。

 

この問題に対処するためには、2種類の手段があります。

1,高性能なピーク除去リミッターを使う

2,徹底的に音量を下げる

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

そのようなピークリミッターを悪用した結果生まれたのが「音圧戦争」だと言えます。 

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

平均音量を上げるためには、リミッターではなく「コンプを丁寧に使う」べきです。

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

一昔前にDTMをやり始めた人たち、具体的に言うと2010年代にボカロをやり始めた人たちの間で「とにかくリミッターに突っ込む」方法が流行しました。非常に簡単な音量稼ぎ方法だったので仕方がありません。

が、今すぐやめるべきです。

「コンプを丁寧に使って、平均音量を上げる」方法を身につけましょう。

 

■平均メーターを活用する際の注意 

平均メーターには様々な計測方法があります。

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中央に並んでいるのが、

  • True Peak(厳密なピーク測定)
  • Momentary(およそ0.3秒の平均)=左端のRMSメーターと同等
  • Short Term(およそ1秒の平均)
  • Integrate(全体の平均)
  • Crest Factor(ピークと平均の差)

厳密に言えば語弊がありますが、だいたいこんな感じです。

 

 

ラウドネスメーターの特殊性について

ラウドネスメーターは「耳の聞こえ方に近い」です。

低すぎる音、高すぎる音は人の耳に聞こえにくいです。なので低く表示されます。

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が、上の画像を見て「おい」と思った人は正しいです。

Cubaseラウドネスメーターはそういう点がおかしいです。

Cubaseの、というか、割と多くのラウドネスメーターは、一定より「高い音を下げる」基準を使っていません。要するに、ギョーカイ的にもまだ模索段階で、基準の決定版が存在していないということです。

 

どの周波数から、どの程度下げるか。Meldaの各種プラグインでは「3種類+下げなし」の4種類の表示モードがあります。他にも様々な基準がある、ということです。

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いずれにも共通しているのは「200以下は明確に下がる」「3000~4000あたりが最も聞こえやすい」ということだけです。これらのカーブは研究に参加した被験者の個人差なので必要以上に考える必要は無いでしょう。

とは言え、20000Hzが同等だとするカーブを採用するのはいくらなんでもおかしいと思います。これが「メーターなんか見ても無意味」派の拠り所です。

 

逆に言うと、どの周波数に対しても「電力の大きさ」しか表示しないデジタルメーター(Kメーターを含む)で『海苔波形』を作りたいなら、人の耳に聞こえない超低周波や超高周波数の音波を流すだけで、いくらでも太い波形にすることができてしまいます。

 

テスト波形ジェネレーターで20Hzのサイン波を出して、オーディオ書き出し。

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美しいサイン波が生成できました。

 

おやぁ?

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ラウドネスが約-14とのことです。人間の耳にはまず聞こえない20Hzの波形がです。

ラウドネスの計測は「人間の耳」に近いものだったはずですが、完全にダメですね。

つまり、非音楽的な電気信号を計測させても無意味だということです。気をつけましょう。おかしな入力をするとバグった反応をしてしまいます。

 

■平均値と中央値

瞬間的に超大きい音が一発あるだけで、メーターが過剰に反応してしまうことがあります。

bellcurve.jp

逆に言えば、突発音をリミッター等で除去するだけで、平均値が一気に落ちることもあります。

■平均値の底上げ

上を削って平均値を調節するだけではなく、底上げによって平均値を大きくする方法もあります。

・パラレルコンプ

「原音」+「キツいコンプを掛けた音を小さく鳴らす」という方法です。

「原音」は適度なコンプでも構いませんし、そのままでも構いません。

一般的にはリバーブ用として使われるセンドエフェクトにコンプを入れる方法が最もスマートです。

コンプのプラグインのモデルによっては、プラグイン自体の機能として備わっています。

 

・アップワードコンプ

通常のコンプは「指定値より大きい音を潰して小さくする」+「ゲイン」です。

アップワードコンプは「指定値より小さい音を大きく」するコンプです。

アタマを削らず、底上げすることができます。

特殊なモデルのコンプについている機能です。無いならパラレルでやれば、ほぼ同じ効用を得られます。

 

いずれのやり方も「上を削らず、底上げする」ことが目的なので、使う道具は何でも構いません。

 

・クラストファクターの維持

もう一度先程の画像を。

クラストファクターは中央一番下の右から伸びてくる赤と緑です。

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通常のコンプではこの要素が失われていきます。

底上げの場合には影響しません。

曲のダイナミクスレンジ(大小差)が維持されるので、音楽の躍動感が保たれます。

パラレルやアップワードを使うメリットとは、つまりそういうことです。

 

 

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