読み込みが重くてすみません。とてつもない数の動画リンク集なのでご容赦願います。
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(2020年12月19日)
- ■現代音楽家のたしなみとして全部聞くべき
- ■リファレンス曲リスト2020年版
- ■人気エンジニアのお気に入り
- ■エレクトロ系
- ■ヒップホップ
- ■ハウス
- ■ポピュラー
- ■R&B
- ■ロック
- ■その他のジャンル
- ■Mastering the Mixに対して思うこと。
■現代音楽家のたしなみとして全部聞くべき
かなり手広いジャンルのリファレンス曲リストです。
極めて広範囲なジャンルとサウンドの仕入れとして、全曲を少しずつでも良いので一通り聞いておくことを強くおすすめします。
「あー、あるよねこういう曲」と記憶しておくだけでも必ず役に立ちます。
・Youtube再生リスト
せっかくだから再生リストを作っておきました。
■リファレンス曲リスト2020年版
Mastering the Mixによるリファレンス曲リスト。
Best Reference Track For All Genres – Mastering The Mix
エンジニア本人の名前も併記された資料です。
このリファレンス曲リストが優れている点は「良い点とダメな点」をはっきりと言っていることです。参考になる点と、気をつけなければいけない点、鵜呑みにするべきではない事柄をちゃんと言うのは本当に度胸のいることです。
また、サイト内では彼らがいつも作っている「ミックス模式図画像」も掲載されているので参考になるでしょう。(やや図形としての綺麗さを重視しすぎていて、実際のサウンドとは開離しているものもありますが、入り口としては十分すぎるクオリティです。)
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では本編。
以下、「アーティスト名 - 曲名(Youtubeリンク)」です。
元サイトでも一部間違っていた部分もありましたが、修正箇所があったらコメント欄等で連絡をお願いいたします。
一部動画は日本では再生できないため、URLを変更しておきましたのでご安心ください。
■人気エンジニアのお気に入り
・Serban Ghenea氏
Troye Sivan - My My My!
Troye Sivan - My My My! (Official Video)
(良い)明快さ、豊かなローエンド。綺麗なトランジェント
(悪い)メインメロディの位相が悪い
Backstreet Boys - Don't Go Breaking My Heart
(日本で再生できる動画URLに変えました)
https://www.youtube.com/watch?v=UTsPXFClN3M
Backstreet Boys - Don't Go Breaking My Heart (Official Video)
(良い)パン、低音バランス、多彩さと密度、
(悪い)明るすぎるサウンド(特にボーカルがハイ上がりという意味だと思われる)
Imagine Dragons - Only
Imagine Dragons - Only (Lyrics)
(良い)シンセドラムの発展的な使い方、明確なサウンド構築、(商業的成功)
(悪い)明るすぎる(シンセ等)ロック寄りを狙うならこの曲よりもっと太く低く。
・Josh Gudwin氏
Silk City, Dua Lipa - Electricity
Silk City, Dua Lipa - Electricity (Official Video) ft. Diplo, Mark Ronson
(良い)模範的ローエンド、場面によるラウドネス制御、(商業的成功)
(悪い)ベースが動きすぎてサビで悪目立ち(メインVoに隙間が多いことにもより、相対的に悪目立ちする。楽器運用バランスの悪さ。)
Due Lipa - ”New Rules”
Dua Lipa - New Rules (Official Music Video)
(良い)巨大なベース、ミッドレンジに共存する様々な楽器の出入り、大きな音とパンチ
(悪い)ベースは良くも悪くも大きすぎるので、あなたの曲には合いにくいかもしれない
・Derek "MixedByAli" Ali氏
Kendrick Lamar, SZA - All The Stars
Kendrick Lamar, SZA - All The Stars
(良い)全帯域のバランスの良さ、丁寧なボーカル、(商業的成功)
(悪い)サウンドが暗い。リファレンスとして使う際には要注意!
Childish Gambino - This Is America
Childish Gambino - This Is America (Official Video)
(良い)Bパート(53秒~)の強烈なローエンド、聞きやすいボーカル、(商業的成功)
(悪い)独創的すぎて参考にしづらい。楽器の使い方が雑、ステレオ感が強すぎて不快
・Mike Crossey氏
The 1975 - ”Chocolate”
The 1975 - Chocolate (Official Video)
(良い)モダンなバンド感、丁寧なパンと高趣味なステレオ感、ボーカルエフェクトの丁寧さ
(悪い)ややラウドネスが窮屈
・Mark Spike Stent氏
Muse - ”Uprising”
https://www.youtube.com/watch?v=w8KQmps-Sog
Muse - Uprising [Official Video]
(良い)古さと新しさの共存バランス、ザラついたクールなサウンド。(商業的成功)
(悪い)低音が弱い。
・Tom Elmhirst氏
David Bowie - Lazarus
(良い)透明感と暖かさの共存。音楽的に強調(?)。 キックのパンチとベースの深さの共存バランス
(悪い)ボーカルが暗く、パンチ不足
・Jaycen Joshua氏
Miguel - Pineapple Skies
Miguel - Pineapple Skies (Audio)
(良い)キックとベースのサブロー域が効果的。パーカッションのグルーブによるR&B感。ボーカルへのエフェクトが的確。
(悪い)ローエンドに対し、ミッドがやや不一致。低音以外が妙に軽く聞こえる。
■エレクトロ系
・Drum & Bass
Matrix & Futurebound - Magnetic Eyes (Ft. Baby Blue) (Official Video)
(良い)ローエンドの深さ、クリアーなシンセ、前に出たボーカル、
(悪い)ハイハットが悪目立ち、他のドラムと開離している
Skrillex and Diplo - "Where Are Ü Now" with Justin Bieber (Official Video)
(良い)超深いサブロー域、キックのテールが短いことが貢献している。低音と明るいリードが共存できるように音符に適切な休符がある。7.2LUの広いラウドネスが様々な楽器の出入りに余裕を与えている。また、ドロップの厚さに貢献している。
(悪い)音が大きすぎてTruePeakが2.35も突出している!(Youtubeではどうなのかは未確認です。)
SKRILLEX - Bangarang feat. Sirah
SKRILLEX - Bangarang feat. Sirah [Official Music Video]
(良い)個性的なザラついた音、未来的な効果音、全帯域の豊かなサウンド
(悪い)リミッターが強すぎる、歪みすぎておかしな音がする
・EDM
Zedd, Grey - Adrenaline
Zedd, Grey - Adrenaline (Official Audio)
(良い)ハコを揺らすビッグなローエンド、メインリードの鮮明さ、1曲を通して強力なパンチ、音量が大きいのにドラムセクションが明確
(悪い)インストなので、歌モノのリファレンスには使えない
・Hard Style
Headhunterz - Scrap Attack HQ
(良い)いかにもな”ハードスタイル”感は参考になる。強烈なシンセと効果音。だが耳障りにならないギリギリ感。
(悪い)この曲に限らないが、ハードスタイルの音楽はマスタリング音量が大きすぎるので、ローエンドとトランジェントが悪影響を受けてしまいます。
・Moombahton
Jason Derulo - If I'm Lucky Part 1
Jason Derulo - If I'm Lucky Part 1 (Official Music Video)
(良い)明確なボーカル、低音ミックスは良好で、他帯域ともバランスが良い。パンチのあるドラム。
(悪い)リファレンスとして使う場合は、中低音が多い曲には適さない
・Trance
Audien - Wayfarer
(良い)モダンなドラムサンプル音。音色が多いのに混雑を感じさせないミックスとアレンジ。ワイド系シンセ(1分59秒~)も耳障りにならず、位相も良い。
(悪い)ベースがキックを少し邪魔している。
・Trap
Major Lazer & DJ Snake - Lean On
Major Lazer & DJ Snake - Lean On (feat. MØ) (Official Music Video)
(良い)ボーカルとリードシンセをフォーカスした良いミックス。中低音のシンセコードがワイドで良い。(2015年、Spotifyで最も聞かれた曲。2020年12月現在でさえ24位!)
(悪い)スネアが窮屈(コンプ感のことと思われる)。このスネアは参考にしてはいけない!
■ヒップホップ
・Contemporary
Arizona Zervas - ROXANNE
Arizona Zervas - ROXANNE (Official Video)
(良い)キックとベースの関係性。くっきりしたボーカル。全体を「カット」する鮮烈なパーカッション(短いクラップ)。
(悪い)40Hz以下を大きく再生する環境でややブレる。(ローカットが不完全)
・East Coast
50 Cent - In Da Club
50 Cent - In Da Club (Official Music Video)
(良い)他のヒップポップとは一線を画するタイトな低音とドラム音色。808キックやベースを主体としたヒップホップとは異なり。そういうローとうまく共存する明瞭さ。
(悪い)楽器の要素が少なすぎる。リファレンスとして使う際、あなたの曲の楽器が多いと参考にはならない。
・Gangsta Rap
Dr. Dre ft. Snoop Dogg - Still D.R.E.
Dr. Dre ft. Snoop Dogg - Still D.R.E. (Official Video)
(良い)クリアなボーカルはオケとのバランスも良い。モノラル互換性が良い、あらゆる再生環境で良好な仕上がり。アレンジと楽器運用に余裕がある、ミックスで競合しないよく計算されたアレンジ。
(悪い)キック音が古すぎる。
STORMZY - BIG FOR YOUR BOOTS
(良い)モダンで新しいサンプル音が新鮮。ボーカルの仕上げが見事。ドラムが鮮明。
(悪い)リミッターが強すぎて歪んで聞こえる。
・Pop-Rap
J Hus - Spirit
J Hus - Spirit (Official Music Video)
(良い)ローエンドが良く目立ち、しっかりボーカルを支えている。濁らない丁寧な低音は暖かい。ボーカルとオケが良くまとまっている。
(悪い)キックが他の楽器に邪魔されている。が、これは強烈なベースとスタブ音(1拍3拍に聞こえる強い低音ヒット)というアイディアがある以上は避けられないことか?
・Old-Skool
The Sugar Hill Gang - Rapper's Delight
The Sugar Hill Gang - Rapper's Delight ( HQ, Full Version )
(良い)昔風のサウンド(=オールドスクール感)が良く表現できている。ドラムとパーカッションが鮮明で効果的。ノリノリ(死語)なグルーヴが良い。
(悪い)イカしたナンバーだが、ベースが静かすぎる。他の曲との共存を考えると、マスタリングで悩まされる曲だろう。
■ハウス
・Deep
Au/Ra & CamelPhat - Panic Room
Au/Ra & CamelPhat - Panic Room
(良い)クリーンでパワフルなキックとベース。くっきりしたボーカル。ドロップ(サビ)に入った時の強烈なダイナミクス変化!(58秒、ベースが入ることによるグルーヴ感)
(悪い)パーカッションが弱いか。(特にドロップ後のクラップが弱く感じる。ベースの存在感と比較すると特に。)
・Tech
Format:B - Chunky
Format:B - Chunky (Official HD Video) [2015]
(良い)良いハコ鳴り。クラブで効果的なサウンド。ハイハットは、キックとベースとの良好なバランス感。ボーカルのためにしっかりセンターを確保した明確なミックスコンセプト。
(悪い)中音域が希薄。フリファレンスとして使う歳、あなたの曲にコード用シンセがある場合には参考曲にできない。
・Future
Oliver Heldens X Becky Hill - Gecko
Oliver Heldens X Becky Hill - Gecko (Overdrive) [Official Video]
(良い)強烈なサブベース!パーカッションとボーカルによる高域の輝き。(商業的成功)
(悪い)ユニークすぎるサウンドなので参考にしづらい。
・Commercial
Disclosure - F For You ft. Mary J. Blige
Disclosure - F For You ft. Mary J. Blige
(良い)古いハウス感とモダンさの融合。リバーブの使い方が上手、面白いサウンドデザイン。(商業的成功)
(悪い)今日のハウスと比べると低音が弱い。
DubVision ft. Emeni - I Found Your Heart
DubVision ft. Emeni - I Found Your Heart (Official Music Video)
(良い)ミックスから見事に浮き上がるシンセ。低音は上手に倍音を発生していて、あらゆる再生環境で聞きやすい。ダッキング(サイドチェインコンプ)のバランスが良好。
(悪い)高音域が明るすぎるか。耳障りだと言われるかもしれない危険性。
・Electro
Deadmau5 - ”My Pet Coelacanth ”
(良い)クラブで良く鳴るベースとキック。バックビートのスネアが最高、これは参考になる。ブレイク(音が消える場面)からドロップ(サビ)への入り方は定番だが、この仕上げは完璧。
(悪い)生音系が他のエレクトロ曲と比べてやや汚い。特にミッドが多すぎて耳障りかも。(たまに入る声のこと)
(編者特記、最初のスロート音が不快すぎる。こういう動きのない持続音は放送に乗せた際に放送事故扱いされることがある。せめてパーカッションを添えるか、フィルター操作などをして動きをつけない非常に危険。またこういう音は生理的に嫌悪される危険性がある。二重の理由で極めて危険なサウンドです。)
・Tropical
Kygo - Stole The Show
Kygo - Stole The Show feat. Parson James [Official Music Video - YTMAs]
(良い)全帯域が豊か。モダンなサンプル音とサウンドデザイン。(商業的成功)
(悪い)大きすぎるマスター。ビルドアップを経てドロップしても同じ音量。
・Classic(クラシック・ハウス)
Nightcrawlers - Push The Feeling On
Nightcrawlers - Push The Feeling On (Official Video)
(良い)古いハウスサウンドをうまく再現。くりかえされるキャッチーなメロディの良さ。パンとリバーブによる空間表現が見事。
(悪い)モダンハウス曲のリファレンスにはなりません。
■ポピュラー
・Contemporary
The Weeknd "Rockin"
The Weeknd "Rockin" (Music Video)
(良い)キックとベースのバランスが良好。それが一貫しているので非常に安定感のある曲。ローエンドも常に良好。そこに乗るミッドとハイのバランスも良好。ボーカル音は現代的で高品質。
(悪い)パーカッションのパンがつまらない。(特にセンター寄りの細いハイハットが古臭く、全体のモダン志向と開離しています。今回の記事にある他の曲のハイハットと比較してみてください。)
・Dance
Steve Aoki & Nicky Romero - Be Somebody
Steve Aoki & Nicky Romero - Be Somebody feat. Kiiara (Official Video) [Ultra Music]
(良い)シンセ音が常にバランス良く入ってフィットする。その部分で足りない要素を的確に補う用途の模範。ベース、サブベースも他の楽器と良いバランス(ベースの高域がハイを侵略しすぎない)。それらの音色の配置が良く、ドラムを邪魔しない。シンプルなドラムでもしっかり聞こえる。
(悪い)ハイエンドが強すぎる。
・Electronic
Dua Lipa - Don't Start Now
Dua Lipa - Don't Start Now (Official Music Video)
(良い)タイトで高趣味。最高のボーカル。(商業的成功)
(悪い)一般的な曲よりも明るい仕上がり。良い意味で。
・Hip hop
One Dance-Drake
One Dance-Drake (feat. Wizkid & Kyla)
(良い)クラシカルな808サウンド。ポピュラーとヒップホップの見事な融合。(商業的成功)
(悪い)大きすぎるマスタリングで、時々不快な音がする。(編者追記、私には808キックが常に潰れて聞こえる。)
・Latin
Luis Fonsi - Despacito
Luis Fonsi - Despacito ft. Daddy Yankee
(良い)アコースティック楽器が効果的。ボーカルとその演出が丁寧。特にバックボーカルは繊細なパンでうまく処理されている。(商業的成功)
(悪い)サブローからの倍音が無いので、小さなスピーカー環境ではうまく再生できません。(にも関わらず上のとおり「商業的成功」でYoutubeで60億再生なのだから、聞き専は細部やベースなんて聞いてないってこと。編者追記。)
・Rock
Foo Fighters - Run
Foo Fighters - Run (Official Music Video)
(良い)左右を固める典型的な「ウォール・オブ・サウンド」のギターミックス。そういうコンセンプトなので、ボーカルはたまにギターより目立たないが、まぁそれがギターロックなので良し。
(悪い)巨大なミックスでドラムのトランジェントが失われています。それもまたギターロックなのだが。
・Synth
Zedd, Maren Morris, Grey - The Middle
Zedd, Maren Morris, Grey - The Middle (Official Music Video)
(良い)これぞ達人チームのモダンサウンド。ドラムがパンチを持ちながらも超大音量の仕上がり。いかなる環境でも再生されることを前提としているサウンドは、低音がミッドへの倍音を持っています。
(悪い)完璧すぎてムカつく。あなたがZeddに対してどのような不満がありますか!?
・Warm
John Legend - ”Penthouse Floor”
John Legend - Penthouse Floor (Video) ft. Chance the Rapper
(良い)生音の演奏が卓越。綺麗に制御されたサブ低域。ハスキーなボーカルがしっかり聞こえるように、ハイエンド高域の楽器(ハイハット等)が抑制されている。
(悪い)たまに歪みを感じるが、あなたが歪みを極端に嫌わないのであれば、まぁ良し。
■R&B
・90's
Destiny's Child - Say My Name
Destiny's Child - Say My Name (Official Video)
(良い)明るくパンチのあるドラムとパーカッション。ボーカルの豊かさを邪魔しないミックス。(商業的成功)
(悪い)古臭いサンプル音。まぁ90年代の雰囲気を狙うならそれも良し。
・Contemporary
DJ Khaled - Wild Thoughts
DJ Khaled - Wild Thoughts (Official Video) ft. Rihanna, Bryson Tiller
(良い)作詞作曲の良さ。サウンド選択。全帯域の一貫したサウンド。適切なボーカル処理。
(悪い)音が大きすぎてキックとベースが歪むことがある。(2分41秒、1拍裏など)
・Rhythm & Blues
Barry White - Can't get enough of your love baby
Barry White - Can't get enough of your love baby
(良い)クラシカル・ポピュラーで愛されている曲。要素を取り入れることでリスナーに懐かしさを想起させられるでしょう。パンによる分離は丁寧。非常に滑らかなストリングス。
(悪い)古い曲はその録音が良くありません。ローエンドが無く、ノイズも多いです。参照曲にする際は要注意です。
・Old Skool
Next - Too Close
Next - Too Close (Official Music Video)
(良い)深い低音。キックともバランスが良い。トランジェントを確保した丁寧なマスタリングで低音も歪んでいない。ボーカル群が聞こえやすいように抑制されたハイエンド。
(悪い)中低音の音符が少ない。他の曲と比べると軽く聞こえてしまう。それらの理由により、他の曲とのマスター共存が難しい。
■ロック
D is for Dangerous
(良い)うまく共存したミックス。シンバルやディストーションギターの強烈な音色が出ても耳障りにならない、適度に抑制されたサウンド。なのに音がでかい。個々のトラックのが丁寧。
(悪い)マスタリングが大きい。0.97dBTPのデジタルピークが突出してしまっている。
・Classic
AC/DC - Back In Black
AC/DC - Back In Black (Official Video)
(良い)見事なギターサウンド。堂々としたスネアがビートを支配する。パンと空間処理が刺激的。
(悪い)現代の音楽と比較するとローが不足。(とは言え、ローを改善したリマスター版はダイナミクスが死んでいるので、参考にするならオリジナル版で!)
・Contemporary
Imagine Dragons - Natural
(良い)高音質のボーカル。クリアなサウンド。コーラス(サビ)のバランスも良好。サブ良し、ミッド良し、ハイ良し。さすがポップミックスの名人(Serban Ghenea)が携わった作品。
(悪い)この明るさはギリギリのライン。参考にする時はこれ以上明るくしないように。
・Hard
Rage Against The Machine - Bombtrack
Rage Against The Machine - Bombtrack (Official Video)
(※Youtubeのは音量がかなり小さいです)
(良い)アグレッシブなロックギター。パワフルなドラム。音符と音域に適切な隙間があり、ミックスも良くまとまる。
(悪い)が、ベースはコーラス時(サビ時)にやや押し込められている。
・Indie
Beck - Colors
(日本では再生できないURLだったので変更)
(良い)非常にチャンネル数の多い楽曲ですが、音量とパンですべての楽器がうまくまとめられています。様々な楽器による豊かなバッキング。これも名エンジニア(Serban Ghenea)が携わった作品。
(悪い)オーディオとしての品質に難あり。細かいクリックが聞こえる。
Paramore: Misery Business
Paramore: Misery Business [OFFICIAL VIDEO]
(良い)ボーカルとギターの完璧なクリアさ。ステレオギターによるスペース確保。良いスネア音。
(悪い)スネア以外のドラムキットがやや淡白。ベースとキックがやや軽いか?
・Electronic
Linkin Park - Numb
Numb (Official Video) - Linkin Park
(良い)重低音なのにバランスが保守的で良くまとまっている。ドラムはサンプルを重ねて、生音とバランス良くミックスされている(ドラムリプレイス)。厚みのあるオケ。
(悪い)ボーカルはもうちょっと前に聞こえても良いかもね。
■その他のジャンル
・Country
Chris Stapleton - Broken Halos
Chris Stapleton - Broken Halos (Official Audio)
(良い)美しいアコギ。ボーカルが高趣味で明るすぎず温かい。ドラムが編成の弱さをうまく補う。
(悪い)カントリーのオーディオとして完璧。
・Disco
Michael Jackson - Don’t Stop 'Til You Get Enough (Official Video)
Michael Jackson - Don’t Stop 'Til You Get Enough (Official Video) - YouTube
(良い)的確なミックス。音量、ダイナミクスレンジ、トーン、すべてのバランスを慎重に決定することによって実現されるサウンド。ステレオ配置が適切で自然。心地よいパーカッション感。
(悪い)古い曲はローが弱いです。
・Funk
Superstition
(良い)ポピュラーの歴史に残る作品。インストの見事さ(すべてスティービー・ワンダーによる演奏)。様々な要素にたいするミックスが良好。
(悪い)録音が古いので参考にする時は気をつけて。
・Metal
TOOL - The Pot
(良い)そえぞれの楽器の持つ「スター・サウンド(意訳:必殺の音、特徴的、個性的な音)」。それを邪魔しないように他の楽器が回避しています。低音楽器には強いサブローがありますが、ギターの低音と干渉しないように丁寧に処理されています。ワイドはギターサウンド。
(悪い)ボーカルがギターよりも弱いですが、これはまぁ、メタルなのでこんなものかと。
・Jazz
I Know You Know
(良い)元の音を壊さない丁寧なミックス。過剰にならず、リアリティを与える空間ミックス。ジャズというと古臭いものばかり聞かされるが、モダンで高品質な手法で作られた「今どきのジャズ」のオーディオ。
(悪い)同じ編成じゃないと参考にできません。
EXO 엑소 'Ko Ko Bop' MV
(良い)持続的なベースにスペースを残すために、キックのテールは短くされている。KPOPで一般的なボーカル焦点を当てた明るいミックス。ドラムのハイはカットされ、大音量にマスターされた後でも大丈夫。
(悪い)リード楽器が特徴的すぎるので、他の音楽には流用・参考にしずらいかも。
・Reggae
Bob Marley & The Wailers - Three Little Birds
Bob Marley & The Wailers - Three Little Birds (Official Video)
(良い)一貫して安定した低音。サブボーカルを思い切ってパンした効果的なサウンド。良好な重低音、豊かなミドル、それらに対してハイは落ち着いた雰囲気。
(悪い)現代のレゲエだとボーカルは3dBほど、ワンランク上げた感じで良いかもね。
・Reaggaeton
J Balvin, Willy William - Mi Gente
J Balvin, Willy William - Mi Gente (Official Video)
(良い)キックのテールを短く設定し、808の低音が駆け抜けるスペースを確保。高級オーディオと安価なオーディオの両方で良い再生ができる仕上がり。ドロップ(サビ)の楽器たちに焦点を当てた仕上げ方の好例。(商業的成功)
(悪い)ちょいちょい良くない音(歪みやすい)があるので、参考にするのはドロップ(サビ)だけで良いかと。
・Soul
Jocelyn Brown - Somebody Else´s Guy Original 12 inch Version 1984.
Jocelyn Brown - Somebody Else´s Guy Original 12 inch Version 1984.
(良い)生楽器ニュアンスの良さ。機械的にしないサウンドのための良い参考になる。マスタリングはラウドネス重視ではなく、ダイナミクス尊重スタイル。印象的なステレオスプレッド音。特にサブボーカルとインストの位置が優れている。
(悪い)現代の曲と比較するとロー不足。
Marvin Gaye - I Heard It Through The Grapevine
Marvin Gaye - I Heard It Through The Grapevine
(良い)昔のミックススタイルで、ドラムが左にミックスされている。対してストリングスとオルガンが右。(時代を感じるね!)ボーカルに対する他の楽器の音量が適切でナチュラル。昔のミックススタイルで中高音に集中しているので耳障りになりにくい。
(悪い)古い。
・Orchestral
Hans Zimmer - Time (Inception)
Hans Zimmer - Time (Inception)
(良い)感情的、感動的な現代オーケストラサウンドの参考ならハンス・ジマー。ただオーケストラなだけにとどまらず、ミックスエンジニアの技術を強調し、非常に心地よい。徐々にじわじわと明るさを満たしていく劇的なサウンドは「進歩、進捗」を表現している。
(悪い)目指すオーケストラサウンドの傾向にもよるが、低音が不足している。あなたのオーケストラ曲でもっと低音が必要ならより重たい音にしましょう。
■Mastering the Mixに対して思うこと。
いつもは何かに付けて「自社製品プラグインを使えば解決するから買え」と言ってばかりで商売っけが強いMastering the Mixですが、今回の記事は本当に素晴らしい内容です。普段からたまにで良いので、こういう話を小出しでもやるべきだと思います。
なお、彼らの作るプラグインは悩ましいポイントにダイレクトに作用できる素晴らしく実用的なものが多いです。
要するに「コンプをちゃんと覚えろ」「EQは丁寧に」とか正論を押し付けるのではなく「この作業で困ったらこの道具を使え」というモダンな思想で設計されています。ぶっちゃけある程度以上のスキルのある人にはまったく必要のないものですが、「ミックスめんどくせ」派の、つまり作家寄りの人にとっては役立つものです。私は体験版を試した上でまったく不要だと感じました。
主力商品の「REFERENCE」という楽曲比較分析プラグインがあり、そこで判別できた差を、それぞれの専用ツールで補っていく、という感じです。似たような比較プラグインは他社からもリリースされていますが、一歩先を行っているというか、AIという実用性があるんだか無いんだか分からない新しい言葉でごまかさず、丁寧なツールを設計しているなぁとは思います。