PCキーボードはモデルによる回路構造の都合上、「同時に複数のキーを判定しきれない」ものがあります。
(2020年7月25日更新)
■結論を先に。
・結論1
同じOEMでも109と106の違いによって同時押し判定に差が出るということです。
今回は同OEMの109から106に乗り換えをしたところ、Ctrl+Alt+Shift+Dだけが無効になってしまいました。
・結論2
OS上で同時押しを認識していても、ソフトウェアによってはそれができないことがある。という謎現象。
初歩の基礎知識だけでは通じないことがあるということです。
キー同時押しは「ハード+OS+ソフト」によって初めて表出する、ということですね。
・結論3
Cubaseではわりと多くのキーボードで「Ctrl+Alt+Shift+D」が無効のようです。
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以下詳細。
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■はじめに
先日のCubaseレッスンでこの操作の説明をしようとしたら、なぜか操作が効かない。具体的に言うとCtrl+Alt+Shift+Dです。
(注、画像はショートカット変更後のものです。)
拙著『Cubaseカスタマイズの教科書』ではモディファイアキー3つ同時押しなどを推奨しつつ、不可能な環境もあるよと解説していますが、これが無理な環境についに遭遇した。しかも自分が、というお話です。
以前から私が愛用し続けているPCキーボードは古いPS2接続(後述)なので、近年のUSBキーボードではまず問題無いだろうと思いつつも上のような注意書きをしたのですが。まさか自分の環境で起きるとは!
・そもそもPCキーボードとは何か?
キーボードとはスイッチの集合体ですが、全てのスイッチから数百本の電極で個別に配線されているわけではありません。
詳しくは下リンク記事を。死ぬほど詳しく丁寧に解説しています。
https://dailynewsagency.com/2014/03/08/microsoft-applied-sciences-group-bbw/
で、要約すると個別の配線じゃないので、複数押しの時に混雑するということです。
これに完璧に対応できているキーボードは(一般的には)存在しません。
また、同時押しはおおむねPS2接続の方が強い傾向です。安価なUSBキーボードは同時押しに弱い傾向です。私はPS2信奉者なのでUSBのキーボードを使ったことがほとんど無いので無知ですが。
■同時押しチェック用のソフトもあるが……
せっかくの機会なので同時押しチェックをかなり徹底的にやりました。
色々試した結果、下のフリーソフトによるチェックが最も確実性があります。
導入も簡単なので、興味がある人は試してみてください。(インストール不要、exeのみ。)
・3キー+Dは認識されているが、一部ソフトが受け付けない
このソフトでチェックしてみたところ、Cubase上で問題となった「Ctrl+Alt+Shift+D」は認識されています。
この結果から分かることは、
- ハードウェアとOSの間では正常に認識されている
- 特定ソフトウェアとの相性が存在する
という事実です。
一般的に「ハードウェアからデータは飛んでいるか?」「OSは受け止めているか?」「OSからソフトウェアに送信されているか?」「ソフトウェア上で動作しているか?」という手順でチェックします。
が、その常識を超えた謎トラブルだったわけです。
今回のテストで使用したチェッカーソフト上で同時押しが認識されていても、ソフトウェアとの相性が実在するという情報は広まって欲しい。(もっともこの同時押しチェックソフトはハードコアなゲーマー向けの情報サイトの話なので、彼らのイデオロギーからすれば『貧弱なキーボード使ってる時点でPCゲーマー失格』なのでしょうが。
■結果
私の環境のCubaseで、PCキーボードFKB1424(PS2接続106)、Ctrl+Alt+Shift+で無効だったのはDと\(バックスペースの左)だけでした。
問題となっていた「独立コピーに変換」のショートカット操作を3キー押し+DからCtrl+Alt+Dに登録して対処しました。
こういう現場での強引な対処法はある種の「バッドノウハウ」と呼べるでしょう。根本的な解決になっていないけど、とりあえず表面的に・現場的には対処できているから無問題だ!というアレです。専門的な技術者が見たら眉をひそめる状況ですね。
・私が使っているPCキーボードの話
富士通コンポーネントのFKB1420系の109で、少し前に同じOEMのFKB1424系106に変えました。 15年ほどこのモデルのPCキーボードだけを偏執的に愛用しています。
事実上、中古市場でしか入手できないモデルなので「Winキー無くても良いか。」と思って落札したのが今使っているFKB1424-106です。
eki-docomokirai.hatenablog.com
なお、上リンク先でも書いているとおり、同OEMで今までいくつも乗り換えてきています。そういう経験をしてきた上でもまだまだ未知の部分があるということです。油断なりません。
109は2つのwinキーとapplication keyがついているもので、106はそれらが無いもの。左winキーとDキーが物理的に近いということから、Dキーに問題が生じているのかもしれませんね。
と書いた所で「じゃあ右側のモディファイアキーなら行けるのか?」と思いついてテストしてみたけどダメでした。
・ふと思い出したこと
昔のベーマガに載っていた「特定キーを組み合わせると全然関係ないキーを押したことにできる」という謎テクニック集のことを思い出した。
・ふと思い出したこと2
格闘ゲームなどで使われる「ヒットボックス」。
ヒットボックスはレバー(十字ボタン)ではなく、完全に独立したボタンで方向入力をします。つまり左と右を同時に入力できるよ、という上級者向けの特殊なゲーミングデバイスです。
近年では使用禁止の大会もあるらしいです。
レバーってのは結局4つのボタンが中に入っていて、4つのボタンに囲まれた棒を傾けることで4つのボタンのどれかを「押す」入力装置でしかありません。その4つのボタンを外に出してしまったのがヒットボックス。
・ふと思い出した話3
ここは基本的に音楽ブログなので音楽の話を。
サックスやフルートなどの木管楽器は、指の数より多いボタンを操作する楽器です。その機械設計は歴史とともに発展・拡張され、「1つのキーを押すと、あっちのキーも押したことにする」とか、「この2キーが同時に押されたらあっちは無かったことにする」などの工夫が重ねられています。
その最も基本となったのは大型のリコーダーだと思われます。
日本で小学生が使うソプラノリコーダーより、中学校で使うアルトリコーダーのほうが大きいのは皆さんご存知のとおり。
で、リコーダー部のあった学校の人なら見たことがあるかもしれなテナーやバスの低音リコーダーは人間の指では操作できないほど巨大です。そこでキーが取り付けられ、人間の指では届かない遠くの穴を閉じる役目を果たすようになりました。
たまに写真などで見る木管楽器のキーが複雑なのは、その楽器の調では演奏しにくい調を演奏しやすくしたり、高音域の特殊な指使いを容易にするために上述のキーシステムが発明され続けています。
ちょっとググってみたんだけど、キーシステムの解説を画像や動画で分かりやすく説明しているサイトはありませんでした。
それらは設計者や修理職人以外にはまったく関係ない話だからでしょう。
■後日談
(興味がある人がいたらテスト報告を教えてください。)
・(不可)マウスユウーティリティとの組み合わせ
エレコムのマウスユーティリティにCtrl+Alt+Shiftを仕込み、+キーボードでDをやってみた。
が、ダメ・・・!!
他のソフトでは確実に動くので、新しめのCubaseのバグである可能性が高いということになりますね。
・(不可)相葉慎 氏からの報告
(環境)Cubase10.0.5、Logicool無線キーボードK270
Ctrl+Alt+Shift+Dが無効。
同氏ページはこちら。
■おまけ、高度なキーボード編集ツール「Autohotkey」
無茶なことをやろうとするなら、こういうツールがあるらしい。今の所はリスクが大きいと考えているので導入していません。
使い方日本語WIKIはこちら。
マウス操作やapplicationごとの設定など、相当なことができるとのこと。
いろいろやってみたい人はどーぞ。自己責任で。
さらにこういうのを組み合わせる、というのもイケてるかも?