eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

初心者は正しく質問できず、バカな先生は正しく指導できない

音楽教育に関する雑記です。

この度、レッスン関連のやりとりで私は「あなたが教えて欲しいと言っていることは、本当に今のあなたに必要なのか?」という指摘をしました。

「◯◯について教えて欲しい!」という言葉に素直に従っているだけが先生の仕事ではないというのが私の教育哲学です。

この考え方は私の師匠から学んだことそのものです。

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この記事はまず管楽器の話からスタートします。後半ではこのブログの趣旨に戻り、DTM・コンピューター音楽の話に置き換え、私が行っているレッスンの方針について書きます。

「なんだ、ラッパの話かよ」と思わず、ぜひ読んでみて欲しいです。私が生きてきた中で経験した様々な分野の知識をまとめた渾身の記事ですよ!

 

 

■生徒の疑問は解決策なのか?

学生時代、私が毎週ホルンのレッスンを受けることになった時の話です。

私は先生に対し「僕は今の自分は◯◯が悪いと思っている。その点を改善したいので教えて欲しい。」とレッスンで希望する内容を伝えました。

すると先生は「なぜ君は◯◯が原因だと断言できるの?」

と返してきました。

 

■知らない概念を教えるのがレッスン

その後に続く問答で先生は、

  • みんな◯◯が必要だと思いこんでいるだけ
  • ◯◯という言葉だけが普及しすぎている
  • 自己分析が正しいとは限らない
  • すべてを一度壊すべきだという勘違い
  • 全く知らなかったテクニックが存在する

というお話をしてくれました。

金管楽器を練習している人の多くがアンブシュアについて悩み続けています。

 

アンブシュアというのは、金管楽器を演奏する時の口の形のことです。野球で言うとピッチャーのフォームのことです。

田舎の中学生でもアンブシュアこそが大事だと考え、常に悩んでいます。

ひとりひとり違う形をした自分の体のフォームのことなので、参考にできる人はこの世に誰もいません。唇の形、それを支える歯ならび、顔と顎形状と筋肉の付き方。

そもそも楽器を口に当てて演奏している最中に起きていることなので、目で見ることすらできないからです。

「プロはこうしている!」というのを真似できたとしても、根本的に無意味なのがアンブシュアに関する情報を暗中模索にしています。(その点においてバイオリンなどの弦楽器や、ピアノなどの鍵盤楽器の奏法は全て目に見えるので、技術体系化が非常に進んでいますね。)

basilkritzer.jp

 

■技術チェックを根拠にする

先生は私の技術力チェックを開始しました。

「高い音を出してみて」

「低い音を出してみて」

「大きいのを」

「小さいのを」

そして一言、「全部できてる。アンブシュアには何も問題無い証拠。あとはそれらをつなぐためのテクニックを知るだけで良い。」とのことでした。

 

そして具体的なテクニックについてのレッスンが始まりました。

 

金管楽器での3オクターブ跳躍

「3オクターブの跳躍音」というレッスンです。

(具体的な技術内容についてはここでは書きません。)f:id:eki_docomokirai:20170811162450p:plain

※楽譜は実音表記、ピアノの鍵盤での音域です。

 

低いFも高いFも、曲の中じゃないなら多くの人が出せる音域です。

 

その両方をそこそこ出せるのであれば、すでにアンブシュアには問題は無い、というのが先生の考え方でした。

あとは跳躍の奏法を正しく覚えて、曲の中で的確に使うだけなのだそうです。

 

つまり先生が言っているのは、

ということです。

 

以上が私が金管楽器のレッスンを受けていた時のエピソードです。

 

 

DTM、コンピューター音楽のレッスンでの話

ではここからは音楽、DTMの話です。

 

 

■ほんとにコード理論のレッスンを受けたいの?

レッスン希望者からよく聞く言葉があります。

  • 音楽理論を学びたい(コード、和声)
  • ミックスを覚えたい

という2つのワードがあります。

この2つって、よく初心者界隈でよく目にする言葉なのですが、音楽を作る上でそれほど重要なことなのかな?と私は考えています。

なんとなくみんなが言っているから「コードを学びたい」「ミックスを上達したい」と口をそろえているだけなのではないでしょうか?

 

実際、私はそういう問い合わせを受けると「コードも和声も教科書を買えば書いてあるよ?」と返すことがほとんどです。私自身、レッスンでコードや和声の説明をしていても「こんなのお金払って、しかもマンツーマンで教わるようなことじゃないんだけどなぁ……」と思っています。さらに言えば、そういうレッスンは私自身が楽しくないです。

そういうレッスンの結果得られるのは「個人レッスンでプロから教わっている!」という満足感でしかなく、教科書だけを読んで独学している人とスキル面ではそれほど差がつかないと思うんです。

 

身につけるべきはコード理論でもミックスの技術でもなく、プロのワークフローだと思うんです。作業の手順と、その作業の時に注意するべきポイント、時間の使い方ね。有料レッスンで教えている内容だから細かくは書けないけど。

 

■本当にその機材やプラグインが必要なのか?

また、プラグインやモニタースピーカーの話なども定番で、よく相談を受けます。

そんなもの買わなくて良いからレッスンを受けるべきだと私は言います。

私がレッスン仕事をしているから収入が欲しいというわけではなく、本当にそうするべきなんです。

 

プラグインなんて半年一年すれば安くなりますし、さらに高性能な後発品が必ず出てきます。最新最強なのは半年程度でしかありません。

大きなモニタースピーカーを買ったとして、その性能を正しく発揮できる大きな音量でいつも鳴らすことができる部屋に住んでいますか?と言っています。

機材屋さんの広告と、それをスポンサーにしている雑誌やサイトにとっての良いお客さんになっても音楽が上達するわけではありませんよね?ということ。

知識無しで道具だけ買い揃えることと、レッスンを受けることで、今持っている道具の性能を数倍に引き出すこと。どっちが大事なんでしょうか。

 

曲を作らずに機材談義をしている人たちの価値観に巻き込まれるのは、音楽的に有害でしかないと私は考えています。

「買えば悩みは解決するはずだ!」という考えで機材を購入するのはやめるべきです。

 

■機材を買うのは「純粋に贅沢のため」

下の翻訳記事で、エンジニアのJustin Colletti氏は「機材は贅沢を楽しむためのものだ」「基本的な装備があれば、それ以上の購入は贅沢のため」と言っています。 

eki-docomokirai.hatenablog.com

もし贅沢を楽しむためではなく、音楽を上達するために何か行動をしたいのであれば、新しい道具を買ってさらに混乱を増やすよりも、持っている道具の適切な使い方を教わるべきではないでしょうか?

 

もちろん、プロと同じ最高級のものを手に入れて「同じものを使っているのに音が違う!」ということを身銭を切って痛感することはとても重要な経験だとは思います。その経験をした上で「技術を買う」ようになれば、それはそれで良いことだと思います。

 

■お客様の注文は本当に正しいのか?

近年はネットで不確かな医療情報を仕入れて、医者に言うことを聞かせようとする患者さんが増えてきていることは、医療関係者にとって大変な問題となっているそうです。

そこには「がんばって手に入れた情報は正しいと信じてしまう」心理作用があると言えますね。さらにその知識を使って医者を黙らせてみたいという欲が重なっている人も多いようです。

 

病院に来た患者さんが「私◯◯だと思うので◯◯のお薬出してください」と言ったとして、どうしてその患者さんが自己診断で病名と処方箋を断言できるのでしょうか。

www.chiryouin-support.biz

 

 

上の記事では、情報を提供する側への教訓を下のように説いています。

 

患者さんは、『マッサージをしてください』『この痛みをなんとかしてください』と言ってやって来るんですから」といった声が聞こえてくるかもしれませんね。

確かに患者さんは、そんなことを口にしながら来院されます。ですが、本当に患者さんが求めているものは、口に出しているものと決して同じではないことに、治療家の皆さんに気付いてほしいのです。

 

 

また、他の医療系のサイトでは、下のように書いています。

 

hibi-club.com

見出しのみを紹介すると、

  1.  痛みのつらさをわかってほしい
  2. 痛みの本当の原因を知りたい
  3. リーダーシップをとってほしい
  4. 自分の存在価値をわかってもらうこと
  5. 完ぺきな安心が欲しい。 

 

良い治療者はこれらを踏まえて情報と技術を提供するサービスであると説いています。

 

もちろん頭ごなしに「てめーら素人に何が分かるんだよ!」「どうせ調べるならネットの情報が正しい根拠を調べろ!ソース持って来い!」と頭ごなしに高圧的に否定しても喧嘩になるだけです。

客の努力を評価し、悩みを受け入れつつ、やんわり否定し、より的確で説得力のある対案を提示するのが真の「上から目線」のなせる技だと私は考えています。

 

医者は患者さんに言われた通りの施術をして、言われた通りのお薬を渡すマシーンではないということですね。

 

漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するイタリア料理シェフのトニオは、客の注文は聞かずに、客を見てその客に合った料理を出します。

漫画家は読者の心理を読んで続きを書きますが、読者の「次回はこういう内容にして」という指示を直接聞いて漫画にしているわけではないですね。

 

■巨大教育システムの限界

音楽のレッスンをする人(や学校)もそうあるべきだと私は考えています。

先生が学校に対して年間の講義計画を提出する仕組み、いわゆるシラバス」は安定した教育サービスを提供する上で重要なことです。しかし、それは教育の本質から外れたものだというのが私の考えです。

 

立派な校舎を構えて教育を行うことは素晴らしいことです。

通学する人も立派な校舎があったほうが信用できるでしょう。

でもそれ故の限界を持っているのもまた事実でしょう。

立派な校舎を維持するためのお金集めに奔走し、生かさず殺さず生徒を飼いならすというのは、経済行為としては正しい戦略なのですが、音楽教育という観点ではナンセンスです。

「立派な校舎の学校に通った!」「一流キャリアのあるプロに教わった!」という満足感は得られるでしょうが、『で、その結果がこの程度か?』となってしまいます。

 

一般的な一般大学で過ごす4年間は前半の2年間に一般教養科目が多くあり、その退屈さは筆舌に尽くしがたいものです。なぜ受験を乗り越えて学力を証明しているのに……と思います。校舎を構える教育システムそのものが破綻しつつある時代なのだと思わざるを得ません。(いわゆるFランじゃなくても。)

 

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■まとめ

  • 初心者の質問は、それ自体が的外れな注文である
  • 的外れな注文にバカ正直に従う先生もどうかしてる
  • 「黙っていても聞こえてくる情報」はたいていズレている
  • 知らないことを知ることから始めよう(無知の知

というわけで個人レッスンは随時受け付け中です。機材セールでは買えない、教科書にも書いていない、一生モノの音楽制作技術を教えています。

お気軽にお問い合わせくださいませ。(docomokiraiあっとgmail.com

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