ニコ生で某人が「バイオフォースエイプ」を遊んでいるのを見ていて、音楽がかっこよかった&最近ビッグバンドの曲を書いていなかったので手慣らしに作った。
(2021年5月28日)
■こうなった
3回ループしてFO。
・原曲
作曲は正確な情報が無いのですが、たぶんガブリンサウンド(オーパス)の鈴木隆之氏ではないかと推測しています。正確な情報を知っている人がいたら、Youtubeのコメント欄に書き残していただければと思います。
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■アレンジについて
採譜してビッグバンドにアレンジしただけなので特に変わったことはやってません。
部分的に紹介。とは言え、ほぼベタのままです。
制作手順は、
- まずは原曲をそれなりに忠実に採譜
- コードを割り出しながらバッキングを仮制作
- 場面ごとに楽器を割り当て、大雑把にボイシング
- ドラムを仮制作
- フィル書き
- それぞれの楽器らしい演奏スタイルを実装
- 演奏内容とバランスを摺合せつつミックス仕上げ
- 細部見直し
急ぎの時はだいたいこの手順で淡々と作っています。
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・サックスセクション
サックスセクションはASax2、TSax2、BSax1の5人編成。シンセはハリオンのサックス系XXL音色。
ソプラノサックスの導入やフルートやクラリネットへの持ち替えも付けてリッチにしようか、と妄想したけど急ぎ制作なのでサックス4種のみ。モダンなビッグバンド系の曲を作りたい人はフルート持ち替えを入れると、それだけで表現幅が広がるのでぜひ導入してみてください。参考サウンドはルパン三世系のサントラなど。
こてこてのブロックボイシングで書けば良いんだろうけど、なんか鳴りが気に入らなかったので変則的に加工しています。
ハリオンのXXL系音色の自動レガートのアルゴリズムは未だによくわからん!シーケンサー演奏している時と、MIDI鍵盤で鳴らした時で挙動が違うという謎仕様。どういう理屈で制御されているのか知っている人が居たら教えて欲しいです。
省エネなのでフォールの運指考慮などはしていません。
ブロックの書き方が分からない人は、とにかく考えなしに7thで重ねて書いてみてから、2度音程が接触している箇所を中心にドロップ(オクターブ下げ)してみることと、外声をオクターブにすることを試してみるとコツが分かってくるはずです。また、ジャズではボイシング内でb9などの不協和が起きてもガン無視でやることも許容されます。(上の譜例画像はいずれのケースも出ていないので、説明と画像が一致していなくてすみません。)
そういう作業をやりやすくするために、トラックを分けてから試行錯誤しておいた方が近道です。ラフで書いている時は単一トラックでもOKです。
こういうサックスセクションのミックスでは一番下のぶっといバリトンをどのように扱うかは色々です。今回はかなり大きく出しています。
・ブラスセクション
ブラスはTp4、Tb4。これも全部ハリオン。
4つにするとシンセの扱いが面倒なので「トップとボトム+内声」の3パートで省エネ打ち込み。
もし内声だけ分ける打ち込みも面倒だとしても、トップだけは分けて別の音色にするべきです。それだけでも必ず良い感じのセクション感になります。Tp1+その他ブラス全部のセクション音色、というのも悪くはありません。その際はセクション音色を複数ブレンドで。
ブラスセクションをリッチにしたい場合には、1本だけ独立したリードトランペットを追加すると良いです。ただし、打ち込みだとそれっぽいハイトーンサウンドが得られないのでやめた方が総合的にリッチに仕上がります。いわゆるクオリティコントロールサウンド。今回の作例もリードトランペットを入れず、セクションサウンドだけで仕上げた例です。
ブラスをサチュレータでバリっとさせる。
強めのサチュレーションなので、ほとんどディストーション。これだけで割と「これだよ」というバリっとした強いブラスの音色になります。
分けた上でサチュレーションの強さを決めてミックスしていくと、こういう簡易打ち込み曲でもそれなりの音になります。たぶん。
Meldaのサチュレーターは猛烈な強さで歪ませることもできるので、チープな打ち込み音を太くしたい時に便利。
急ぎ仕上げだったので、途中でバッキング2箇所が和音になっていません。他の楽器が目立っている箇所なのでそれほど気にならない箇所ですが明らかにミスです。アップするデータをチェックしている時に気がついたけど、今後の反省にするためにこのまま残す。
・ピアノ
ピアノ。Pianoteq7のK2をちょっと変更したもの。
原曲では後半のアルペジオが特徴的なので、それをピアノにした。
「原曲はチップチューンだからこういうアルペジオで色彩を出そうと腐心した」と解釈して全く違うアレンジにしても良いんだけど、あえて限界まで原曲準拠。
この部分をピアノに担当させることで、サックス・ブラス・ピアノがそれぞれ聞かせどころを発揮できるアレンジにした。ビッグバンドなのでギターとベースは地味職人で良いと思ってる。
ポピュラー音楽のピアノだから、もっとポピュラー系の音色でも良いのでは?という考え方もあります。ピアノがギンギンに目立つ曲ならそれでも良いかもしれませんが、ジャズ系のサウンドに聞こえなくなってしまう恐れがあるので、今回のアレンジのように、必要な箇所のみ高い音域を強打するスタイルの方が総合的に「らしい」仕上がりになると思います。
・ギター
Electri6ity。リッケンバッカー。
コード演奏モードでストラムトリガーのみで演奏。カッティングなので上の3~4弦のみで演奏。4小節、8小節ごとのフィル感を出すためにオープンぎみの音も使う。
AmplitubeのワウをMIDIで制御。
省エネ制作なので演奏ポジションなどの細かい制御はしていません。
・ベース
MODO Bass。
リッケンバッカー4003。6弦、Soft、Round・Light・New。
ビッグバンドなのでもうちょっとダークな音色でも良かったかもしれないけど、全体的にアグレッシブな曲にしたかったので、ややロック寄りのチューンにしつつ、オープン弦を避けた演奏にした。
6弦であることに特に意味はありません。MODO Bassのフレットポジションのアルゴリズムが阿呆すぎるので、おかしな運指になりにくくするために弦を増やしているだけです。
48秒のクロマチック反復の部分だけはどうしても同じ弦で演奏してほしかったので調節した。
他の箇所なら適当なポジションでも許せなくはないけれど、こういう箇所で弦を変えられると台無しになってしまう。演奏ポジションのアルゴリズムを修正したバージョンが出るだろうと思い続けているんだけど、まるで更新されず。
6弦については、1.5.1→1.5.2になった時に増加できるモデルが増えた(はず)なので、アップデートしていない人がいたら今すぐどーぞ。情報間違ってたらすみません。
なお、今回使用したモデル(リッケンバッカー4003)がジャズ用途であるかどうかとか、そういうのはMODO BassやElectri6ityなどのシンセにおいては関係ないと思っています。イメージ先行で選ぶより、シーケンスを準備してからモデルを切り替えて曲にあった音色の出るものを選んでいくべきだと思います。先日のプロ作家との打ち込み談義でもそういう話になっていました。
・ドラム
Addictive Drumsを2本。
Addictive Drumsでも複数立ち上げて1つのMIDIトラックで制御できるようにしている。シンバルの枚数の多さと、タムのニュアンスを倍にできるのが利点。特にスプラッシュを2枚使い分けられるのであれこれ悩まず楽しく打ち込める。
ハットとライドはもっと大きく鮮明にしても良いんだけど、作為的なミックス音になるのであえて全体一発録音の雰囲気を重視した。
演奏スタイルも、もっとジャズ寄りの演奏スタイルにしても良いんだけど、省エネ打ち込みなのでこういう演奏スタイルにした。
Addictive Drums複数の同時使用については過去記事をどーぞ。
eki-docomokirai.hatenablog.com
Addictive Drumsの使い方的には、とにかくベロシティを低めにすることと、音源内でのエンベロープを丁寧に曲に合わせることに尽きます。
あと、Filterでローハイを整えること。Addictive DrumsのFilterセクションは実質的にはEQです。
EQセクションはあくまでも中間域のパライコです。
ここでローエンドを作ろうとするとほぼ間違いなくクソ音になり、「パラアウトした方が良い」という判断になってしまいます。むやみにパラアウトするより内蔵のミキサールーチンに任せた方がトータルではドラムらしさを出しやすいです。
その上でDAWでパラレルコンプをして仕上げるのが良い、というのが現時点での私の使い方。パラレル前提で、AD内のRoomマイクバランスを取ると良いかなと考えています。
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という感じで、何から何まで省エネ制作。急いで作ったものなのでこのくらいで上出来だと思う。
立体感を出すために、フォールを行う楽器と行わない楽器の選別、フィルで目立たせる楽器の選定はそこそこ入念に。
ベタで鳴らしてあまりにもヤバい音になる部分だけは入念に。
■その他
Bメロが『燃えよドラゴン』のテーマ曲にそっくりだね、というお話などを書いた記事があります。
eki-docomokirai.hatenablog.com
■ゲーム演出について個人的な見解
主人公は小さなサル。タイトル画面では偶然入手した謎のクスリを飲み人間サイズに変身する。
ゲームスタート。
しかしエイプは襲いかかってきたスモウレスラーには一切反撃できない。
いわゆる「負けイベント」から開始される。
長い時間をかけて落下する。信じがたい高さ。
これはレベル(ステージ)の広大さを最短時間で示唆する演出であるとともに、最大のウリである超高速スクロールの実現という技術力を見せるための演出でもある。
ステージ1の終盤ではスモウレスラーに再び対峙し、今回は戦う。
しょせんは1面ボスなので楽勝。スモウレスラーの贅肉を鷲掴みにしてのジャイアントスイング!
「なぜ最初から戦わないのか?」とツッコミを入れて失笑する人が多数派のようだけれど、私はこれを「薬物で人間サイズになった小猿が、最初は変身したことと手に入れたパワーに気がついていない。しかし落下しても無事なことで強靭なボディになったことを理解し、スモウレスラーに真っ向勝負を挑む」という無言のストーリーがあるんじゃないか?と解釈しています。