Ian van Gemeren氏とスケッチ話。
元はこういう状態。
今回見せてもらったスケッチのミスは、
- 中途半端にピアノ演奏を意識している
- 書きたいアイディアが中途半端なピアノのリアリティに阻害されている
という2点。だと私は推測しました。
なぜか左手がオープンボイシングで書かれている。
和声やボイシングを意識した人がこういう書き方をしてしまうことがある。
こうなってしまった理由は
- ベースをベースの音域で鳴らしたい!
- コードも鳴らしたい!
- ベース音域でクローズコードにすると音が悪いから
- 自分の手でギリギリ届く10度まででコードを組めば良い!しかもハイテクなオープンボイシングだ!やったぜ!
という間違った論理によるものだと推測できます。
・間違いをゴリ押す理屈付け
「これはピアノ的に演奏不能に近いよ!」という話をしたら、
「10度を弾けるピアニストは自分の周りにたくさんいる!」と反論された。
が、『演奏が可能』ということと「演奏しやすい」「その楽器に対する通常の書き方」は全く別問題です。
車はドリフト走行が『可能』だとしても、タクシーに「そこの角でドリフトしてください」と指定するのはおかしいということ。
普通のことを普通にやらせるのが作家の仕事。
もしどうしても特殊なボイシングをしたいなら、多重録音を想定すればなんでもできる。生演奏用じゃないなら何でもアリ!
某アニメの劇場版ではオーケストラそのものをダブルトラッキングする手法まで使われていましたし。
・スケッチでは凝ったことをしない方が良い
もちろん、高度にアーティスティックな表現を求める場合には高度な演奏技術を強要する曲になることもある。けど、これってスケッチ段階でしょ?
スケッチ段階では視認性と直感的な編集スピードを重視するから、フルレンジのボイシングを使うのはナンセンス。せいぜい3オクターブくらいの範囲でクローズボイシングで適当に書いた方が良い。
もちろん最終的なアレンジ段階ではフルレンジを配慮する。
・スケッチでは個々の楽器の奏法制限を意識しすぎない
下書きではピアノの手で弾けるかどうかを考えない。
最終的には他の楽器で伴奏を支えることに変更されるかもしれないから、手の数が3本でも4本でも構わない。
つまり、高音域にメロディ、中音域にコード(クローズで書く)、低音域にベース。この3本腕で演奏できるピアノを書くと良い。
で、最終的にピアノ1人で演奏できる体裁にするなら、音域をまとめ、メロディの空いてる指にコードを割り当てたりしてピアノ専用にアレンジしていく。
もちろん、はじめからメロディの楽器が決定しているなら、「その楽器らしさ」のあるメロディにした方が良い。そういう場合はトラックを分けて、はじめからそれらしい音色を使った方が良いインスパイアを得られる。
よくあるミス例として、「スケッチはピアノ音色で書くべき!」という誤り。
ピアノの音色は鳴った瞬間が大きく、数秒後にはほとんど聞こえなくなる「減衰系」の音色です。
もし歌やフルートがメロディをやるなら、少なくとも伸びのある音色を使うべき。
プロの作曲家が自宅でピアノで作曲している映像をテレビなどでよく見ますが、それは彼らがピアノ演奏をする必要があるからピアノに頼っているだけです。また、ピアノの減衰音でもストリングスなどの伸びのある音色をイメージできているからです。
明確にイメージできないなら伸びのある音色でスケッチするべきです。
スケッチに使う音色は別に何でも良いのですが、個人的にはGM系の音域制限の無いアコーディオン系がおすすめ。
(SC-88Pro時代の人がスケッチでアコーディオン音色に頼ることが多いと思います。)
(近年のVST音源などのアコーディオンはリアル寄りなので音域制限があるのでスケッチ目的では絶対にNGです!)
程よくアタックがあり、揺れがあり、聞こえやすく、フルレンジでどの音域でもそれなりに聞こえやすい。そういう音色なら何でも良いです。
あまりおすすめできないのはストリングス系。往々にしてアタックが弱すぎるので、エッジの効いたリズムをイメージしにくいです。そのたびにスタッカート音色のキースイッチを使うようだとスケッチ作業になりませんし。
チープな音色が良いんです。
■アレンジした。
というわけでサクっとアレンジ例を返してきた。
トレイラー系をやってる彼がやりたいのはこういうのじゃないとは想像できるけど、まぁいいや。
to Ian.
メロディの音の長さなどを変更した。
I changed the sound length etc of the melody.
突貫なのでポカミスあったらごめん!
I made it quickly so I can not careless mistake!