eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

昔の曲のドラムを耳コピした話

以前にSteely DanのAjaを耳コピしたことがあります。

1976年の作品なので、時代的には私よりも一回り上の世代です。

”Aja”はその世代における重要な楽曲とされています。

 

 

 

■原曲

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権威主義的な言い方をするなら、「この曲を否定することは、いわゆる洋楽と、ミックス、エンジニアリングの否定そのものだ」となる。(※後述)

”Aja”についての様々なエピソードと、その存在価値についてはネットで検索すれば腐るほど出てくる。

つまり神。

 

そう噂に聞いたので「じゃあコピーしてやるよ。やれば良いんだろ?」となった。もうかなり前の話ですが。

私はただ単純に権威主義的に持ち上げることを極度に嫌う人なので、スゴイと言われる人がなぜスゴイのかをちゃんと確かめたかったんです。

で、結果。スゴイよこの人、ってなった。

 

■拙作

有名なドラムのソロ。完璧な演奏とミックスで知られるスティーリー・ダンなのに、最後のリム音は「あれは演奏ミスだ」と本人がゲロッてることも含めて有名。

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その部分だけ本人が解説してる動画もある。

耳コピした人は答え合わせとしてチェックしてみると良いです。

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ちょっと間違ってるけど、実際に叩いた時の動きはこうなる。

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繊細なシンバルの使い分けは高い再現度なのでパクろう。 たくさんのシンバルがどのように活用できるか、見れば誰でも納得できるはず。パクろう。

でも実際のシンバルはちょっとした叩き方でいろいろな音色を出せる(とくにこういう弱い叩き方だと顕著)ので、枚数はこんなにいらない。でも、打ち込みドラムだとそういう変化は出せないので、ドラム音源を複数用意するのがベスト。(なお、スネアドラムシミュレーター「Modo Drum」というドラムシンセがあるが、そんなものよりシンバルシミュレーターの方が望まれるんじゃないか?と思う。実際ドラム奏者はスネアよりもシンバルをクソほど買い集めるものだし。)

 

スティーブ・ガッドについてざっくりした解説はこちらが分かりやすい。

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「今ではみんなやってるけど、それやり始めたのはガッドだから」ということです。

 

一昔、ふた昔前におっさんがこぞって練習したドラムフレーズをなぞっていくことで、今どきの複雑なドラムの基礎を知ることができます。なんとなく聞いて「地味なサウンドだからつまんね」と切り捨てる以上のことを学べます。私もこの”Aja”のドラムから多くを学びました。

 

 

他、サックス等はピッチのズレまで完コピした。

同時再生したらピタリと合うので「きめえ」と褒められた。

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他、繊細なエレピの音色使いや、テンションボイシングを学べる。

・完コピの意義

基本的に無価値な自己満足です。

が、所有している音源の特性、DAWの操作方法の習熟などに役立ちます。

また、所有している設備では再現しきれない時の妥協策を模索するチャンスになります。

■世代の違う曲に触れる価値

こういう曲をたしなんでおくとおっさんと対等に話ができる資格を得られるメリットがあります。

「おっ、キミの歳でこれを知ってるとは見どころがあるね!」という柔和な態度を引き出すことができるメリットは計り知れません。

世代間の敵愾心を深めるより、お互いにとって建設的な関係を構築するためのツールとして役に立ちます。

 

私の人生においてYMOスペクトラム、Earth Wind&Fire、カーペンターズはそういう価値がありました。

 

そういう曲は将来的に変化していくでしょう。

90年代JPOPだったり、マイケル・ジャクソンだったり。

 

実際、”Aja”の耳コピによってお仕事の斡旋も受ける機会がありましたし。

 

・今の好きなアーティストが影響を受けた曲に触れる

好きな人が好きなものを知りたがるのは当然です。

行き過ぎた愛情はストーカー行為につながるので危険ですが、音楽ではもっと過激であるべきです。

ガッドの他、ポンタのドラムもいくつか完コピしたし、好きなゲームの曲はだいたい耳コピしてる。

楽家の愛情表現はそういう具体的な形であるべきだ。我々はコレクターではない

 

スゴイと言われている曲を「古臭い」と否定してる暇があったらさっさと耳コピするべきです。

 

■(※補足)こういう古い洋楽の評価

おおむね老害です。

スティーリー・ダンなどの評価の高さはあくまでも「当時の評価」であって、フラットに評価するなら価値は無いです。でも偉大なアーティストだったことは事実です。今の多くのアーティストに強い影響を与えています。

 

その昔は代表曲『ナイトフライ』などが優れたリファレンスとして席巻していましたが、さすがに周波数レンジ(特にローエンド)が狭すぎます。 

詳しくは下記事で。

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

 

つーわけで本日のレッスンでドラム話になったので「効率の良い勉強方法なんか考えてないで耳コピすれば色々分かるよ」と伝えると同時に、「完コピするまで次のレッスンしません」というスパルタをした。

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