eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

『君が代』リオオリンピック閉会式アレンジ版の分析をしてた

完全に時期を逸していますが、先日作曲家知人との話題に出たので。せっかくだから真面目に耳コピをした。

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(2019年10月21日)

2016年当時。ネット上では何人かの人が採譜を試み、その結果をYoutube等で発表していました。

正直なところ、そういう成果物を拝借して分析だけやれば良いかと思っていたのですが、どう聞いても採譜が間違っていました。これは自分でやるしかない。

■できあがり

で、出来上がったのがこういう感じ。たぶん採譜は完璧のはず。

soundcloud

soundcloud.com

Youtube版。


君が代 リオオリンピック閉会式版

 

再生しつつ、続きをどーぞ。

 

■完璧な採譜のために

もちろん採譜の練習であれば、実際に聞こえた音を拾って、理論で補正していくのがベストです。しかし、もうそういう練習は要らないので、とにかく正確さ重視で行きました。

大雑把な採譜では6声で採譜していたのですが、どうやら4声+一部divisiで対応するのが正解だろうと解釈。

過去にネット上で採譜をしていた人の多くは「どうせ4声だろ」という思い込みで採譜をしていて、部分的に5声になっているのを見逃したのだと思われます。(他、残響音を採譜してしまっている例もありました。)こういうのは採譜初心者によくある間違い。

 

・卑劣な耳コピを行う

そうしてできた簡易採譜の後は、様々な耳コピ支援スタイルで徹底的に追い込みます。

原曲はノイズ除去の上で、聞こえやすいようにトリムを取りました。こういう会場録音物を扱う時にはWavesの便利ツールの威力を痛感します。古いプラグインですがその威力は絶大です。

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倍音分布を比較しやすいようにクワイヤ音源を立ち上げ、母音を作り似たような発音にします。

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上のは最近Cubase半付属になったOlympus Microではないです。

同社の上位グレードのもの。使える母音が多いので、左記リンクのを買うくらいならElementsの方が良いです。Olympus Elementでも子音はダメダメですが、それっぽくなんか歌ってる感を出したいだけならこれで十分。決して最強クワイヤ音源ではありませんが、作業コストと質のトレードオフ的に非常に使いやすいです。

キースイッチで扱いやすい規模なのも実務的です。

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母音を原曲に揃えるだけでも倍音が似るので圧倒的に比較しやすくなる。

その上でダイナミックEQで声部のバランス取り。

ダメ押しに、基音を強調表示するためにサイン波も重ねておく(発音はオフ)。

 

で、MMultianalyzerに流し込むとこうなる。

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倍音による高周波数帯域の重なりもかなり正確に再現できるので、質の高い採譜になります。

倍音はそこには起きない

斬新なサウンドに翻弄されてしまい、先入観で「これは特殊な歌唱法で倍音が云々」と論じる人もいますが、結局のところ倍音とは基音から生じるものでしかありません。人間の声が共鳴で特殊な倍音を(明確に聞こえる音量で、基音付近に)生じることはありません。なので基音チェック大事。

どうせ倍音なんてオクターブが大きく聞こえる程度です。倍音に対する基礎知識がある人なら惑わされることは無いはずです。

倍音サウンドに影響を与えるのはあくまでも高周波数帯域の話です。第三倍音が明確に聞こえるということは絶対にありえません。

・残響を無視する

それより問題になるのはアリーナ残響による和声の崩壊。

採譜の序盤で苦戦し、原曲をアナライザで参照したところで残響の影響は残る。結局は脳内で除去して考えるしかない。

 

演奏されたアリーナではミックスもクソも無いでしょうが、一応考察。

おそらく、極度の密集配置和声になるAltoとTenは左右に離して配置し、残ったSopとBassを中央寄りにする、と想定されているはず。じゃないと演奏するのも聞くのもきついはず。 

■分析記事は無し。

分析話は気が向いたら記事にします。たぶんしません。レッスン等では発展的なサウンド構築の話をする際、個人的に解説するかもしれません。

一応まじめに分析を書いたペライチがあります。拡大しても読めないから安心しろ^^ 残念だったな理論厨のおまえら^^ ただで教えるわけ無いだろ!

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これを作った後、どういう手法なのかを試しつつ1曲書いた。新しい技術を仕入れるのはとても楽しいです。

・学習用の理論ではない

こういう曲は初歩の理論だけではこういう曲は何ひとつ理解できないでしょう。

理論の初歩しか学んでいない人にかぎってネット上では声が大きいです。彼らの愚直な勤勉さは称賛に値しますが、それを卒業した先にこそ、より自由で素晴らしいサウンドがあることを忘れてはいけません。

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