ハリオンソニックのXXL系生楽器音色は結構良い。改造するともっと良くなるけど、専用音源があるならわざわざ使う意味はほぼ無い。という本末転倒な内容です。
(2020年9月29日)
■こんなのを試作した
『銀河英雄伝説』旧アニメ挿入曲、同盟国歌。
聞いた感じで「これなら使いたい」と思ったら以下をどうぞ。
「カスだ」と思ったなら、より良い手持ちの音源を使いましょう。
当初は気になった部分のオーケストレーションだけ耳コピして終わり、だったんだけど、なぜか完パケまで作ってた。せっかくなのでブログのネタにする。
■XXL系って?
念の為にお断りしておきますが、Halion Sonic(無印)以上に入っている音色です。Halion Sonic SE系には入っていません。
豊富なキースイッチ、良好なサンプル。ちょっとクセが強いけど、安い仕事なら余裕で通せるクオリティ。
今回使うのはTrumpet XXLです。
■設定変更
いろいろ変更していきます。
何度も言いますが、付属・無料のHalion Sonic SE系ではありません。
「無印Sonic」以上だと、いろいろ変更できます。
「Sonic無し」の上位グレードだとさらにアホほどいじれます。ただ、「Sonic無し」系はあまりにも機能が多すぎて、それを小さいUIに詰め込んでいるので、概ね「使いにくい、重い」という声が多いです。たしかに多機能なのですが、そこまで要求される音ならハリオンの中でやるんじゃなくて、それぞれの専用音源を使うので、「無印Sonic」くらいが便利だ、と私や知人間ではそういう評価です。
■MIDI LearnとQuick Control
・設定1、カットオフと音量の一括制御
MIDI Learnは1つのツマミ、1つのパラメタに対して1つですが、それぞれのツマミをQuick Control(以下QC)にアサインしておけば「1つのツマミで複数要素の制御」ができます。
下はQCツマミ1にカットオフと音量をアサインしています。
そのQC1をCC74(ブライトネス)で制御します。
右側ではカットオフと音量、それぞれの反応度合いを設定しています。
ツマミを限界まで回した時に、どこまで上げるか?という設定です。
この設定で、トランペットの音量変化だけではなく音の明るさも同時に、バランスを保ったまま編集できるようになります。
金管楽器が強奏した時のビビリ感のある、言わばドライブ・サチュレートした音から、地味な正弦波に近づいていく倍音の減った感じを正確(当社比)に表現できます。
・設定2、アタックタイム
同様にVibratoパッチのアタックをQC2にアサイン。
CC73(アタックタイム)で操作できます。
ここではVibratoパッチのみを使っています。やりたいなら同様の手順で他のキースイッチのパッチも変更できます。
が、XXL系の音色はキースイッチごとのバランスがバラバラなので、むやみにキースイッチに頼るより、1つのパッチを丁寧にMIDIプログラミングした方が安定した演奏になる、と私は考えています。
・MIDI演奏
Vel、CC73、CC74で制御します。
細部はノート内にノートエクスプレッションのボリュームを書いています。
なお、ノートエクスプレッションをMIDI Learnさせることはできません。仕様です。たぶんできないはず。
(※「歌わせ方」は原曲の再現とは関係ありません。この音色でやれることをやっているだけです。他のパートもですが。)
・バランス
オーディオエフェクトでコンプしても良いのですが、音源内で音量バランスを制御することもできます。
下はベロシティに対してどのくらい音量が変化するかを設定しています。
■原曲と『銀河英雄伝説』について少し。
せっかくなので銀河英雄伝説の話を書く。
以下は読まなくて良いです。
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『銀河英雄伝説』旧アニメ版の挿入曲、架空の国歌です。
この曲でどのシーンを思い浮かべるかで銀河英雄伝説ファンとしての質が問われ、疑われます。
旧アニメ版のBGMはほぼ全てがクラシック曲で、たまたまその使用権利を関係会社が持っていたこともあり、次から次へと名曲クラシックが流れます。その曲がバッチリ合っている場面もあれば、ナンセンスに響く場面もあり、ちょっと独特の雰囲気を持つアニメです。
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数少ない描書き下ろし曲がこの国歌で、バージョンがいくつかあります。今回作ったのは全部トランペットがメロディになってる版。
劇中では何度も使われていて、その多くが非常に印象的なシーンです。序盤は「腐った民主主義主義」の象徴として、クソ議長や愛国過激派のテーマ曲として使われる、という奇妙で皮肉の効いた選曲演出がなされています。(特にヤバいのが、過激派が歌いながらリンチをするシーン。)
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知らない人のために『銀河英雄伝説』を国歌を軸に超おおざっぱに説明すると、
- 2つの国に2人の主人公がいる。専制君主国家と、民主主義国家。
- どちらの国も制度の悪い点が出すぎて、どちらも腐った国
- どちらも「今の腐った国をぶっ壊す」「その後にまともな国を作る」ことが目的。
- 後にその1人が陰謀によって死に、民主国家が滅亡する。
- 滅亡を逃れたわずかな人たちが、滅びた国の歌を、ひそかに、誇り高く歌う。
- この歌から「1都市程度の人口で全宇宙に戦いを挑む」という物語の後半戦が始まる。
音楽演出的にもユニークで、ポプラン(最初に叫んでいる右側の人)のポルタメントを効かせた歌い方が、腐った国の国歌をちゃんと自分たちの歌にしたことを象徴しています。地声で、ポップな歌い方。(どうせならその後のカットでも主要声優に好き勝手に歌わせる、ということを徹底してほしかったけど、まぁそれは仕方無いです。別に超予算をかけて作られた完成度の高いアニメではないので。)
ともかく国歌というものの持つ意味が変化していく、ということを非常に美しく表現したシーンだと思う。
今現在、新解釈版『銀河英雄伝説 ディ・ノイエ・テーゼ』が放送中だけれど、残念なことに国歌が出てこない。この劇的なイゼルローン独立のシーンをどう新解釈で納得させてくれるか期待しています。
が、あの子供っぽいキャラクターデザインで新政府代表や新司令官が絵になるのか甚だ心配だったりする。2期以降をやる計画が無かったんじゃないだろうか?など、言いたいことはいろいろあるけど省略。悪い点は誰が見てもわかるから、良い点を見出していきたい。
SFファン、アニメファンだけではなく、政治に関心がある人が見ても楽しめる、非常に間口の広い優れた作品です。
ただし100話を超える長さなので覚悟が必要です。
長いだけあって、この世界のさまざまなことに対する、示唆に富んだエピソードが山盛りです。その表現のためにとんでもない数の登場人物がいて、その多くが死にます。
個人的に一番好きなエピソードは、国王の右腕が謀反の疑惑をかけられ「疑われるのは恥だが、戦うというのであれば乱世の武人の誇りだ」と言って国王に挑戦するというエピソード。この狂った展開には心の底から震えた。
なお、この場面がいかにアツいかを実感するためには終盤までブッ通しで見る必要があります。がんばれ。
なお、知ってるだけで使える最高の銀河英雄伝説ネタは「褒める時は大きな声で、けなす時はより大きな声で」です。Halionは素晴らしいですよ。