eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

参考曲の話をする時には時間を指定しよう

アレンジの打ち合わせやリテイク作業の話です。

「この曲みたいに作って!」と言われて作ったのに「そうじゃないんだよなー」というリテイクが発生する理不尽を回避するためのプチノウハウです。

仕事じゃなくても、音楽仲間とのやり取りがスムーズになる方法なので、周知徹底をよろしくお願いいたします!拡散希望

 

■時間を指定して話をしよう

「あのアーティストの」「このCDの」「この曲の」「Bメロが」「♪その両手を~のところのコードが」と言われても全く分かりません!

CDの何曲目、何分何秒なのかを明確に伝えましょう!

ファンの間では略して呼ぶのが当たり前だとしても、ファンじゃない人には通じません!カラオケ用の練習をしているわけでもないので歌詞なんて覚えていません!

ファンの皆様ほんとうにすみません!

歌詞をスラスラ暗記できる人のことは尊敬しています!まじで!

 

■「Bメロの転調の部分の」と言うのをやめよう

アレンジの打ち合わせやリテイクなどで頻繁にあります。

「Bメロの転調するところのコードがー」と言われても分かりませんし、「Abm7のところが」と言われても即座に分かるわけではありません。その場所を探すだけで時間をロスしてしまいます。

 

正しい伝え方は「42秒の部分ですがー」です!

 

とにかく時間を秒数指定で話を進めたほうが良いです。

 

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メディアプレイヤーは秒数表示できるようにしておくと良いです。

可能であれば上のように波形表示もあると何かと便利です。

カーソル左右で5秒移動とか、Ctrl+左右で30秒移動とかの設定もしておくと本当に便利です。

上はfobar2000をColumn UIでカスタマイズした例です。暇人は作ってみてはいかが?まじで便利になります。

 

こうしないといちいち全体の構成を見えるようにDAWの画面を拡大縮小しなければいけませんから、手間がかかります。コードで言われてもそのコードの場所を特定するのに余計に頭を使う必要が生じてしまいます。

結局作家がその場所を特定するまで数秒待たされることになってしまいます。

伝える側が最初から秒数を指定すればポンと移動できるので話のスピードが速くなるんです。

 

■作曲発注、アレンジ発注する際の注意

参考曲を用意してくれるのは本当にありがたいことです。

しかし、「どの曲のどの部分なのか」は明確に指定してください。そうしないと二度手間になってしまいます。最悪の場合、リテイク料金が発生しますよ!

 

昔実際にあったのは、「この曲っぽくアレンジして」という発注だったのに、似たように作ったラフを聞いてもらったら、

「うーん、参考曲の間奏の部分が欲しかっただけなんだけどなー^^;」という大規模リテイクになってしまいました。

 

 

他にあったのは「この曲っぽく作曲して」と言われて参考曲に似せて作ったら、

「うーん、遅い曲じゃなくて、ピアノ曲って意味だったんだけど……キミ大丈夫?」

発注主が欲しかったのはピアノ曲だったそうです。

作編曲家はテンポを大事にしますが、発注主によってはテンポに対して恐ろしく鈍感で、鳴っている楽器しか聞いていない人もいるようです。

 

■打ち合わせでは徹底的に対話するべき

上はいずれも当時の私が未熟だったことが大きな原因です。相手だけの責任ではありません。

 

初めからちゃんと打ち合わせをきっちりやっておくべきだったんです。

打ち合わせではこれでもかというくらい対話を重ねなければいけません。

言っている言葉が本当に言葉通りなのかということさえ疑ってかかるべきです。

特に、以下に書く「専門用語」は齟齬(そご=誤解、食い違い)が起きやすいです。

 

 

みなさんご存知の通り、音楽の奏法や学理、理論には様々な流派があります。同じ門下生でもない限り、言葉の意味ひとつひとつに微妙な違いがあります。ましてやジャンルが違ったり、職務が違ったりすると、もう同じ音楽用語ですら通じないと思っておくべきです!

 

とにかく、

あなたが覚えてきた専門用語が
一般性のある言葉だとは限りません!

これ、まじで重要ですよ……

 

■専門用語を避けるべき理由

特に音楽に不慣れな人というか、中途半端にわかっている人は専門用語を使うことで歩み寄りを試みてくるものです。しかし、間違った意味で使われる専門用語は齟齬を生むだけです。

がんばったことによって悲劇が生まれるなんて、とても悲しいことですね。

 

そこで便利なのが時間指定による対話です。

稚拙なやりとりだと感じる人もたまにいるようですが、大工が寸法を「1520の840ね」と言ってミリ単位で話すように、誤解の起きないやりとりをするべきです。

音楽は時間の芸術ですから、時間で話をするべきです。時間で言えば誤解の生じる余地は一切ありません!プロっぽく、仕事っぽく会話をしたいと思う人は「Bメロの転調が」なんて言い方をせず、時間を秒数で言うべきです。

 

■どこで打ち合わせのスピード感を出すか

変にプロぶって「あーはいはい分かったよ」という雑なやり取りで打ち合わせそのものを短くするスピードアップではなく、打ち合わせで秒数指定で会話することを約束してもらった上で、打ち合わせの中身のスピードを上げることこそが大事ということです。同じ時間でやり取りする内容の数を多くするということです。

 

■構成をAメロBメロと言わないほうが良い?

CDをポンと渡すだけでスピードを出すのではなく、曲名と秒数を指定する手間をちょっとかけてでも「7曲目の24秒のつなぎの感じ」という言い方にするべきだということです。

これを「Bメロ前のつなぎ」と言ってしまうと、どこをBメロだと判別するかは分析方法によって異なるので誤解が生じるということです。おk?

 

■楽器名も言わないほうが良いことがある

同様に「ドラムが入ってくるところ」と言われても、ループドラムが小さく入っているのを聞き取る人もいますし、コンガが入っていることを「広い意味でのドラム」と呼ぶ人もいます。

ギターと言っているけど実はチェンバロかもしれません。楽器名を完全に判別できる人は意外と少ないですし、ミックスの仕上がり具合によっては別の楽器の音に聞こえてしまっている作品も少なくありません。

うかつに楽器名を出すべきではありません。

 

  

■こちらから時間の会話を切り出す

こういうやり取りを面倒くさいと思う人もたしかにいます。

そういう人は私のような人を避けて、自分の言葉が通じる人たちとだけ仕事をしていれば良いと思います。どうせ目上の音楽家先生や外国人の言葉がいちいち意味不明で「あー、まじで言葉が通じねえ」と痛感することになりますから。

そういう押しても引いても動かせない人が相手になった時に「つまり、おっしゃる場所は50秒のことですね?」と確認を取る必要が出てくるはずです。楽譜仕事の場合には「123小節目のことですね?」と言えば一発で通じます。時間指定で話をするのはとても大事なことです。特に外国人の場合はあいまいな意味の言葉で話をするのではなく、シンプルに数字で話をすれば一発で通じます。

シンプルで入念な打ち合わせこそプロの技術であり、敬意です。

 

■(追記)最初からわがままを言うべき

コメントに返答を書いていて思い出したことがあります。

相手先によってやり方が大きく異なることがあり、いつも迷うところです。

私は仕事となるとシタテに出過ぎる癖があって悩んでいたところ、知人から「自分のわがままを先に言ったほうが良いよ」と諭されました。

あまり悩みすぎると作品の出来にも関わってくるので、最初の時点で「自分はこういうやり取りを望む!」という姿勢を明確に出したほうが良いと考えています。

もっとベターなやり方があるのでしょうが、現時点ではこの記事で書いたような方法でやることが多いです。

 

良い意味でわがままになり、エゴを出し、自分がどういう人なのかを先手を取って出してしまうべきだという考え方です。

近年はネット界隈で「マウンティング」という言葉を見ることが多くなりました。

年上だから俺が偉い、俺のほうが経験が長い、俺の方が背が高い、この前はビッグな人と仕事をしたぜ、などなど。そういう強みを出すことでイニシアチブを取ろうとする姿勢のことを「マウンティング」と呼ぶのだそうです。

このマウンティングは悪い意味で陰口のように使われる事が多いようです。

しかし、自己紹介の一環として積極的に「自分がどういう人なのか」と伝えるのは悪いことではないはずです。少なくともビジネスマンぶって当たり障りのない言葉しか言わないよりは良いはずです。

どういう打ち合わせを行った上で仕事をすると自分の性能がフルに発揮されるのか?つまり良質なサービスを提供できるのかを考えた場合、完璧な音楽制作マシーンではない私たちは「自分はこういうスタイルで打ち合わせをすれば、最高のパフォーマンスを発揮できます!」という宣言をするのはお互いにとって良いことのはずです。

 

関連したゲロ話が1つあります。

作家Aさんが私にゴーストの話を持ってきた際に「駆け出しのころから付き合いのあるクライアントとはいろいろ縁があって断りにくい。忙しいのでゴーストを頼みたい。」という依頼でした。

結局作風が違いすぎて伝言ゲームによるリテイクの連続になり、作家Aさんと私の関係は悪化しました。おそらく作家Aさんとクライアントの信頼関係もマイナスになったのではないかと思います。

作家Aさんは長い縁があるのであれば、「お陰様で多くの仕事が舞い込むようになり忙しい。申し訳ないが引き受けられない。代理の作家へのバトンタッチであれば可能ですが」と、状況を明確に伝えるべきだったのではないかと思うわけです。

言わなければいけないことを言えない縁とは果たして良い縁なのでしょうか、ということで。

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