最近、予算の安そうなBGM等の音楽で異様なテクノキック音を聞くことが増えています。なんだこれと思ったので考察と対処方法について書いておきます。
(2022年11月5日更新)書きかけ。
- ■クソキックとは何か?
- ■クソキックを掴まされないために
- ■音程変更アルゴリズムによる「波形の歪み」
- ■キックは「アタック」「ボディ」「テール」に分けて観察する
- ■ボディとテールがアタックより膨らむキック
- ■テールの音程が同じまま
- ■話にならないフリーサンプル
- ■BigZの場合
- ■関連記事
■クソキックとは何か?
波形の見た目が全てというわけではありません。
が、波形の段階でも「おいおい、なんだよこのクソキック」というものは割とあります。
無料配布されているサンプル
雑な音程変更で波形が歪んでしまったキック(ここで言う「歪む」の定義については後述)
などなど、エレクトロ初心者にとってはドラムセットのキックと違う機械的な音になるだけで満足してしまうかもしれませんが、やればやるほど奥が深いのがキック選びです。
■クソキックを掴まされないために
たとえばこういう素人投稿サイト。
稀に使いものになるクオリティのものもあるかもしれませんが、ざーっと確認すれば分かるとおり、まるで使い物にならない素材があります。
一昔前は「kick free sample wav」などで検索して音色を獲得する方法が流行しましたが、あまりにも品質が低いので、そこそこの価格のサンプル集が売れまくる時代になりました。
とは言え、キック音色にこだわり抜くとしたら自作するかアーティスト名のついたシグネチャ品を買うのがベストです。
なお、「自作キック」も割と地雷で、自分で作ったからと言って優れた音色になるとは限りません。本職の作ったキック音色には勝てないんです。
たとえばこういうキック専用プラグイン。
https://www.sonicacademy.com/products/kick-2
たしかにトランジェントやピッチの制御は自由自在ですが、残念ながら素人が使ったところでプロのレイヤー音色にはまず到達できません。使っている人は結構いますが、シンプルすぎる808キックを作るのがせいぜいです。
もし完璧を目指すなら、複数の音色を合成し、さらにエフェクタを通した音にしていくことが不可欠なので、こういうプラグインで完璧を目指しても、プロが手間ひまかけて、優れたトラックとともに磨き上げた音色にはまず到達できないのが実情です。
まぁそんなに高いPluginでもないので、買って試してみて「やっぱプロってすごいんだな」と心の底から実感するためには良い授業料と言えるでしょう。
トータルで言えば『プロのキックサンプル音を買え』が正解です。
最もコストパフォーマンス、タイムパフォーマンスが優れていると断言できます。いくつかはメーカー品を手に入れておきましょう。あとはそれの編集で自作曲にすり合わせていくのが良いでしょう。
■音程変更アルゴリズムによる「波形の歪み」
サンプル集では、12音階にマッチするように編集済みのものがあります。
が、雑な編集によるものだと、音程変更で波形が著しく変形してしまっているものがあります。
・音程変更のアルゴリズムの優劣
一概にどれが優れていると断言することはたぶん不可能です。
素材とアルゴリズムの相性としか言いようがありません。
一番お手軽なのは、DAWの基本機能を使う音程変更。オーディオ貼り付けの場合には最も手軽で素早いです。
次はサンプラー内でのピッチ変更。
サンプラのGUIによっては使いにくいこともあります。
また、サンプラ内で複数のパッドに異なる音程で割り当てておくと、1つのキック素材を複数の音程で扱えるようになります。ちなみに、異なるフィルター設定でサイズ感の違う複数のバリエーションを確保することもできます。
私の運用方法だと、16種程度のキックサンプルを配置しておき、曲に応じてピッチやフィルタを変えて最適化することが多いです。プロが作ったキック音色とは言え、今作っている曲にマッチすることは考慮していません。最後は自分で最適化する手順を必ず行うようにすれば、確実にワンランク上の仕上がりになります。(それらをベロシティやCCに反応させる方法もありますが、逆に不便になるのでやめました。)
3つ目は、ボーカル音程補正で使う機能でキック音程を補正。
Cubase付属のVariaudioはアルゴリズムを選択できるので良い結果になるかもしれませんが利便性は低いと言わざるを得ません。
■キックは「アタック」「ボディ」「テール」に分けて観察する
キックの音を捉える時には「ドン」ではなく「ドウン」と3つで考えると良いです。
「ド」がアタック部分。
「ウ」がボディ部分。
「ン」がテール部分。
キックはこの3つの要素で捉えると良いです。
・(発展)キックを4分割の音節で捉える
さらに言えば「ドウンッ」と4音節つにすると良いです。
音節の意味についてはこちら。
もしくは「ドウン、」です。
「ッ」や「、」は、音が終わった後の空白時間です。
一般的には「アタック、ボディ、テール」ですが、音楽的にはこの空白部分の長さがかなり重要です。
さらに言えば、「ドウンー」の4音節で捉えておくとより明確に音色の認識が可能になります。様々な音節で表現し、理想のキックを作りましょう。
アタックの「ド」が、ボディとテールの「ウン」よりも必ず強くはっきり聞こえているかを確認することで、クソキックのほとんどを除去することができます。
クソキックはDAW付属の音に入っていることもあるので気をつけましょう。DAW付属音色にも確かに優れた実用的な音色もあります。しかし、とんでもなく使いみちのない音色は本当に多いです。気をつけましょう。
■ボディとテールがアタックより膨らむキック
最近わりと耳にすることが増えました。
割と安価と思われるTV BGMなどで、明らかに低音アタックの遅れたキックです。
これはリニアフェーズEQで低音が遅れるとかそういう微細なミックス話ではなく、どう聞いても16分音符程度遅れて聞こえてしまうケースです。
たぶんオールジャンルをやる作家が作った曲なのだと思います。
■テールの音程が同じまま
特定ジャンルでは役立ちますが、一般的には常に落ちていくピッチの方が使いやすいです。
■話にならないフリーサンプル
書き出し開始位置がずれているものもありますね。
もちろんアタマを削除すればギリギリ使えなくもないのですが、こういう片手落ちのサンプルが良い音色であるケースは極めて稀、というか皆無です。
なお、上は某サンプル業者が配布している無料ばらまき音色に含まれていたものです。無料配布するにしても企業の質を疑われてしまうのではないかと心配になります。
他の例もいくつか。
テールが盛り上がってくるので、よほど曲のコンセプトにマッチしていない限り使い物になりません。
「ドウッ、」という感じ。
上手いことエンベロープを書き直せば使えなくもない、かもしれませんが。
■BigZの場合
BigZも同じことを言っていました。
非常に短い内容に動画編集することが好きな様子。
いつもとてつもなく短く詰め込んだ数分程度の動画で、ある程度の知識がある人ならそれで十分理解できますよね。
Youtube収益の仕組みとしては「再生時間」が評価要素になるので極めて不利な動画作りですが、彼はたぶんYoutubeからの直接収益を目的としていません。広告としてYoutube動画を作り、本業とレッスン業で稼ぐのがメインなのでしょう。このコンセプトは私も同じです。
動画の外にコンテンツを持っているなら、むやみに長い動画にしたりするよりこういうスタイルの方が良いと思います。実際長いTIPS動画ほど中身が薄いですし。
で、この程度の内容を「THE SECRET」というのはちょっと仰々しいと思います。サンプラをいじったことがある人なら当たり前の作業(主に徹夜でぼんやり行う)ですし。DTMの敷居が低くなったからここまで解説しなきゃいけない時代になったんだなーとテクノロジーの進化を実感させられます。
■関連記事
eki-docomokirai.hatenablog.com