eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

近況、おかしな音を探り当てる事件

(駄文、近況。)某所某人の曲でどうにもディスコードして聞こえたので徹底的に絡んだ。

非常にとりとめのない内容ですが、あえて残す。

(2020年10月5日)

 

■眠いとろくなことをしない俺氏

他人の仕事曲。たまたま配信作業を見かけたので、寝る前にちょっと覗いたら、どうにもこうにも音が濁って聞こえたので徹底的に絡んだ。

 

最初はヒネたコードを使おうとして単にディスコードしてるだけかと思ったんだけど、なんか違う。コードとしては合ってるとしか聞こえない。

 

怒りのスペアナ起動。シンセで基準音を出して比較する。

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でもこれ、MIDIデータ上ではベースは間違いなくF#を演奏してるんです。

でもスペアナが示しているのはF#(82.0Hz)だけではなく、96Hzのピーク。

チューニングが狂っているとか、そういうレベルじゃない。完全に半音上が鳴っている。

画像ではちょっと見にくいけど、青のベース音は82Hz付近にも鳴っていて、つまり低音F#とGが同時に聞こえてしまっている状態だと判明した。

 

意外なことに、これはベース(Scarbee Pre-Bass [Rickenbacker])のMIDI演奏を単音で聞くとF#にしか聞こえない。先入観もあるんだろうけど。(具体的な設定、ベロシティ等までは製作者に確認していません。興味がある人は同音源のベロ高めを徹底的に調べてみれば特定できるはずです。)

オクターバーか?

雑なオクターバーを使うと、稀におかしな音程を出力することがある。鳴ってる音(周波数)を単純計算で割り算しているんだから、ノイズもそのまま下がってしまい、おかしな音になるんです。

私の場合はCubase付属のオクターバが音が汚くなることが多くてイヤだったので、Meldaの変態オクターバーを使っています。オクターバー難民はぜひ導入を。

www.meldaproduction.com

が、ダメ!

聞いている感じ、原因はオクターバーでは無いっぽい。 

・シンセとミックスを調べる

怪しかったのがアンプ。

ベース音源から出力できるDIとアンプを混ぜていて、特にアンプ側の音程に難あり。要するに「箱鳴り」の共鳴(レゾナンス)が盛大に発生していた。

たぶんここを煮詰めれば、使いやすいアンプ設定が導き出されてくるはず。

ただし、徹底的にアンプ特性を調べていく必要があるので、「言うは易し」、机上の空論だったりします。そもそもアンプモデルによってはどうしてもおかしな音に聞こえる入力音程があったりする。そもそもアンプらしさってのは単純なディストーションだけではなく、箱鳴り(レゾナンス)によるところが大きい。

・ノッチするか?

某人がキレの良いノッチを持っていなかったので、ピンポイントで削れず。不快な周波数を除去するところまで下げると、他の音の基音も下がってしまう。ためしに常備EQで問題の周波数が聞こえなくなるまで下げたら、他の音の第2・第3倍音(ソ)が相対的に強調されてしまい、コードが変わって聞こえてしまうという事態に。これは却下だ。

 

こういう外科手術をする時のためだけに、キレの良いノッチフィルター付きEQを持っていると便利。

と、プラグイン話に行くのもアレだったので、この話は伝えていない。

単なるローカットなら無料のSplineEQでも良いけど、こいつはノッチには向かない。

せっかくなのでノッチ耐久テストをやってみた。

・ノッチ耐久テスト

低音でサイン波の半音を3つ重ね、間の1つのみノッチで除去を試みる。

使う音程はF#(82.5Hz)、G(95.0Hz)、G#(103.0Hz)

 

Toneboosters EQ4。強い。

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斜面に若干の違いが出ているが、これはスペナア計測タイミングによる誤差。

下は全バイパス時のスクショ。実際には常に少し上下に揺れ動く。

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次。おまえらの大好きなMeldaフリーEQ。

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遜色無し。さすが俺の嫁Melda。

 だが待て。これはダメ資料だ。スペアナが大きく出ていて、倍音まで見えているから丁寧だと思ったそこのキミ、詐欺師に気をつけろ!

 

本当に必要な部分を拡大するのだ。

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もっとだ。地の果てまで追い詰めろ。

はい。

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さすがMeldaという結論に。

 

だが、さらに待て!

ホワイトノイズに対して掛けてみると、両者のカット度合いが違う。

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これを同一にするためには、MeldaのノッチのQを最大の20から10.0程度まで下げると、Toneboosters EQ4とほぼ同じになる。

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このように、Toneboosters EQ4のノッチではとなりの音に影響を与えてしまっていることが判明します。Meldaも少し下がっていますが、数倍のノッチ性能(精度)があるのは間違いありません。

 

MeldaのノッチをQ10.0にして、Toneboosters EQ4と重ねて表示してみる。ほぼピタリと合うことが分かる。要するにノッチとしての特性はほぼ同じだが、MeldaのQが20.0まで上がるのでアドバンテージがある、という結果を得られます。

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なお、Waves Q10はベルカーブでQ100.0まで上げられますが、

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Melda のQ10.0と比べてもさっぱり弱いです。間に挟まったF#音をまるで消せていません。

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ベルカーブとノッチフィルターは似て異なるものです。EQの画面上で「画面の一番下まで削っている」としても、出音が消えるわけではありません。GUIや数値に騙されないようにしましょう。
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というわけでノッチ比較の画像制作は終わり。

でも通常時はToneboosters EQ4が圧倒的に使いやすいので、こういう変態的な外科手術の時だけMeldaを使う、ということでOKでしょう。(とは言え、MeldaフリーEQはダイナミックEQによる加工ができないので、あらゆる外科手術が可能なわけではありません。どうしてもMeldaラブを貫きたいなら、MDynamicEQを使うことになります。)

 

あなたの環境でも、低音で3つの半音を重ねて、中間だけをノッチする、というテストをやってみてください。もしこれよりも良い結果ならそれを使ってください。

 

・ベースシンセの問題

で、最終的に判明した原因はベロシティレイヤーのサンプル不良。1つ下のベロシティのサンプルを鳴らして一発で解決した。

配信のコメントを使ってのやり取りだったので非常に鈍足だったなぁと思う。仕方ないね。別に相手から頼まれてやっている作業でもないんだし。

某人はハード音源に親しんでいる、いわゆる「おっさん」。あれこれ考える際、まずMIDI打ち込みを疑う。で、ベロシティ変えたら解決した、というオチです。

こういうサンプリングが良好ではないことは稀に良くあって、特にベロシティ最強で通常の演奏ではめったに使わない強奏が収録されていることがある。

なお、この問題はベースに限らず、他の生楽器音源等でもよくある。

・そもそもの打ち込み話

そういうサンプリング音源でのベロシティ最大は用心するべきなのだ。である!

・更にそもそもの話

一発で聞き取れよな、って話。

プレイヤー、指揮者時代ならできてたと思う。なまったなぁ。

でもそういう能力を維持するのって結構たいへんで、維持・上達することが不可能だと判断したから作編曲家業に専念しようという人生の舵取りをした。

言い訳をするとしたら、単に眠かった、お仕事モードじゃなかったというのもある。

 

勢いでブログに書いた。寝る。

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