eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

映画『タイタニック』のはバグパイプではなく、イリアンパイプ

タイトルだけで100%ネタバレ記事です。

作編曲家、およびDTMer各位はあの楽器のことを「バグパイプ」と呼ばないようによろしくお願いいたします。

(2021年5月2日)(更新2023年2月19日)(更新2023年6月1日フリーシンセ)

 

■映画『タイタニック』映画館で再上映

news.yahoo.co.jp

映画には2種類ある。

その時にしか評価されないものと、老人がいつまでも語るもの。

 

いや、3つ目がある。

時代を超えても視聴にたえうるものだ。

 

映画という文化の歴史は文学や音楽、美術などに比べるとまだまだ浅い。

本当の意味で歴史のふるいにかけられていくのはこれからなのでしょう。

■映画『タイタニック』テレビで放送されます

済(2021年5月7日にTVで『タイタニック』が放送されました)

kinro.ntv.co.jp

楽家としての最大の萌えどころは主題歌の"Heart Will Go On"ではありません。

中盤の第三船室での平民パーティシーンであり、そこに出てくるのはバグパイプではなく「イリアンパイプ」(Uilleann Pipes)であるというウンチクです

ぜひこのウンチクを披露して一般人から嫌われてみてください!

 

 

 

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というわけで、アイルランドバグパイプは「イリアンパイプ」と呼びます。

奴らアイルランド民はバグパイプと言われると「おい、ちょっと待て」と返事をするそうです。三味線とサンシンのような関係だと思っておいてください。

 

ユーリアン、ユーレニアン等、なまりのある呼び方もされています。

ja.wikipedia.org

スコットランドグレート・ハイランド・バグパイプ(Great Highland Pipes)に比べて音量が小さく、音を止めることが可能なため、室内で他の楽器と合奏しやすい。また、音楽表現の幅が広いという利点がある。

いわゆるバグパイプスコットランドケルト

お隣アイルランド的には「バグパイプ」と呼ぶことは決して無いそうです。

 

アイルランド在住の知人と話をしている時にこの話題になり、「日本で言うなら三味線と沖縄の三線(サンシン)のような違い」とのことです。沖縄でシャミセンって言ったら怒られるのと同じくらい違う楽器です。

 

で、そのアイルランドの知人曰く、

スコットランドバグパイプは軍隊のイメージが強い。直立不動で演奏する。」

アイルランドのは俗。ゆったり、座って。ノってくると足踏みとか。」

とのことです。

ゲール語で検索すれば死ぬほど出てくるらしいです。

 

バグパイプというのは楽器の「属」の名前、総称

ja.wikipedia.org

 

ゲール語Wikipedia曰く、

ga.wikipedia.org

ach is dócha go raibh siad i bhfoirm áirithe cosúil le píoba móra Albanacha an lae inniu.

Dhíorthaigh na píoba uilleann as an bhfoirm níos sine seo agus tá siad, gan aon amhras, níos sofaisticiúla agus níos casta ná aon sórt eile ar an domhain

「元はスコットランドバグパイプに似たものだった」

「現在のイリアンパイプの原型は18世紀にあり、今日では同属楽器の中で間違いなく最も洗練されている」

元は似たようなものだったと認めつつも、最も進化したものだと主張しています。

歴史認識のスタンスを感じさせるエモい文章だなぁ。

 

・『リバーダンス』もイリアンパイプ

ゲーム、アニメなどの音楽でバグパイプが広く使われるようになったのは、1994年(単独ステージは95年)からロングランされた『リバーダンス』の世界的ヒットによる影響が強いと言えます。

リバーダンス - Wikipedia

 

めっちゃタイタニックな音だと感じるかもしれませんが、世界的なヒットはこちらが5年早いです。

www.youtube.com

非常に鮮烈なアイルランド音楽群を世界に広めたのですが、その楽器がイリアンパイプであることは認知されず、なんとなく手近なシンセに入っていたバグパイプの音色で再現され続け、「こういう音楽はバグパイプだ」という誤解が定着してしまったのではないかと私は考えています。

もちろんいわゆるバグパイプ知名度はそれ以前から高かったからシンセにも収録されていたのですが、この矛盾はたぶんそれ以前の世界万博などでバグパイプが紹介され、それが教科書に載って、シンセ音色として採用された、という流れじゃないかと思います。例えばSC-88PROにもバグパイプの音色がありますが、その隣にはディジリドゥがあります。ディジリドゥなんて映画などでもまず使われないのですが、万博で各国の紹介パビリオンがあって、そこで紹介された楽器としてなら認知度が高くなったもの納得できます。で、教科書に並べるとした際に「イングランドの楽器」「オセアニアの楽器」としてバグパイプとディジリドゥが採用されたんじゃないかと。その際にイリアンパイプは「バグパイプと似たようなものだし、見た目の特徴としてもバグパイプの方が強烈(奏者の姿も強烈)だからイリアンパイプは割愛」ということじゃねーかなーと。

・ディテールの観察しやすい動画

固定カメラで音質も良いので貼っておきます。たぶんウィキペディアの写真の人と同じです。

www.youtube.com

 

■音楽制作上での使い分け

闘いのシーンはバグパイプ

村のシーンはイリアンパイプ。

という使い分けをしたら面白いかもね。

 

VST音源もある(質は不明)

専用音源もあります。作ったの絶対にアイルランド人だろこれ。バグパイプとは違うのだよバグパイプとは。

www.ilyaefimov.com

59ユーロ。要Kontaktフル版。

試聴デモ曲は異なる曲想で3つ。

この手の音源は得意な楽曲のデモ音源だけを並べることが多いですが、苦手な曲想も折り込んで弱点を隠そうとしない勇気あるデモで心底好感が持てます。

より本格的な民族音楽を作ってみたい人はどーぞ。

f:id:eki_docomokirai:20210502225719p:plain

 

・フリー音源

labs.spitfireaudio.com

 

 

■主要なイリアンパイプ普及のルート

リヴァーダンス(1994年)

光田康典(ゲーム『クオノトリガー』1995年)→2010年代以降アニメサントラで死ぬほどパクられる

映画『タイタニック』(1997年)

テレビドラマ『マッサン』(2011年)

 

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