eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

エレピの100%オートパンはNGにしてほしい

雑記カテゴリ。不確かな医療情報を含みます。

特定の音に対して不快感を感じる症状についてのお話です。

(2021年1月21日更新)

 

■オートパンは少し狭くするべき

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過剰な幅広さになり、ミックスが不快だと思われる原因になります。

少し狭くしましょう。

音を大きく変えるエフェクトは、ついつい強く掛けすぎてしまいがちです。

自分が許せる限界まで薄くすると丁度よい仕上がりになります。

 

また、マスタリングでMSを拡大されても破綻しません。

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2mixで音量のヘッドルームを確保するのとと同様に、「左右のヘッドルーム」も確保しておくことでマスタリング結果が良くなる可能性が高くなります。

そういう意味においても100%パンは避けるべきなんです。

 

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■とても苦手な音がある

極めて個人的な音楽嗜好というか、生理的に嫌悪する音があります。

それは左右100%パンの音です。もしくは100%パンに近い、極端な左右定位です。

特に嫌悪感が顕著に引き起こされるのが

  • 広すぎるオートパン
  • 鍵盤系(エレピ、オルガン)にオートパンが掛けられた音
  • 含む、ロータリースピーカー(レスリースピーカー)の極端な移動
  • 複数のエレキギターが100%左右に振られている音

が非常に苦手だ、ということです。

ギターを複数使ったポピュラー曲のイントロなどで100%振りが使われていると、ほぼ例外なく「うわ、これは無いわ」と生理的に感じてしまいます。

エレピの音が100%近い幅でオートパンされていると「やめてくれ」と生理的に拒絶します。

 

あくまでも個人的な趣味趣向の話なのですが、そういう音に対する嫌悪感は尋常じゃないレベルなんです。「比喩ではなく」本当にめまいや全身の不快感、吐き気などが起きます

しかし、どれも本格的な治療が必要なレベルのものではなく、瞬間的なものです。

また、当然のことですがそうした症状が起きるのはヘッドホン(イヤホン)を使っている時です。スピーカーだと100%パン振りされても左右の耳に交互に音が動くことは無いですから当然ですね。

・苦手度合いのレベル

※私個人の感覚です。

  1. (非常に強い)
    左右に「高速で移動する」パン。
    ex. エレピ系。倍音が少ないシンプルな音色。およそ1秒以内に往復。
  2. (やや強い)
    片側チャンネルだけから持続的に音が鳴る状態。
    ex. ギターロック系のイントロや古典テクノで頻出。
  3. (中くらい)
    同1、倍音が多い音。ディストーションギター。
    ex. エレキギターのソロでたまにある素早いサイドディレイ。
  4. (弱い)
    左右チャンネルで異なる演奏が持続する状態。
    ex. 過剰にパンミックスされたオーケストラ系
  5. (弱い)パン、往復2秒以上。なんともない。
  6. (追記。)それらの過度パン音が、その状況で鳴っている「端付近の周波数帯」を専有している時。例えばベースと超高音のFMシンセベルがセンター付近で大きく鳴っている状況なら、過度パン音は気にならないと気がついた。

 興味深いのは1の「高速で移動」が圧倒的に強い因子であること。また、他に混ざる音があると大幅に軽減される。(が、100%パンするエレピは他の楽器の音がかなり大きくても強い不快を感じる。)

3のように完全に左右に散るディレイ音ではそれほどの嫌悪感は無い。不思議だねぇ。

 

同様の感覚は視覚による癲癇でも似ているそうで、速さや強さが極端な音に対して生理的嫌悪感を示すとのこと。

近年のテレビで放送される映画で極端に音量差があるものや、輝度の高すぎるアニメ映像も同様です。

■癲癇の一種らしい

ふとしたことから癲癇(てんかん)について調べてみたら、特定の音に対して発症する癲癇症状というものがあるそうです。 

23.反射てんかん、その5.音楽てんかんについて(2005年2月号) | てんかん勉強室

http://mkclinic.jp/tenkan-room/onuma_23

 

Seizure Precipitants

(http://epilepsy.yokoo-hosp.jp/resources/seizure_precipitants.html)

 

私は病気の専門家ではないので、正しい知識を得る必要がある人は脳神経科の専門家から適切な指導を受けてください。音楽的嗜好の領域で語るべきではないとさえ思います。

また、私自身はこれらの症状が実生活に決定的な支障が出るレベルではないので、診断を受けたことはまだありません。

(どうせ診断を受けても「打つ手なし」「症状が出た時に診断しないと何とも言えない」という診断結果になるのは目に見えていますし。で、「強い刺激を避けるように過ごしてください」「休んで、ストレスを下げて」と言われる程度で、もし処方を要求しても「じゃあ弱めの安定剤とビタミン剤出しておきますね。睡眠導入剤出せますけどいる?」となるのは間違いないでしょう。通常レベルの医療行為とはそういうものです。)

 

音を発症因子とする癲癇は極めて稀なのだそうですが、それはたぶん音刺激を発生因子とする部類の症状は、意識不明などの危険なレベルまで達しない傾向が強いから、とか、問題が大きくなりやすい子供の症例が少ないからかな?と私は考えています。

今こういう文章を書いていると、昔の知人に視覚による癲癇持ちがいたので詳しく聞いておけば良かったなぁと思う反面、それは残酷な好奇心であると理解しています。体質の話は好奇心で触れて良いものではありません。聞けるわけないじゃん。本人が進んで話をしてくるなら別だけど。

・(脱線)脳科学、認知学、やや雑学

癲癇の治療のための研究で分かってきたらしい脳の話。片方の耳にのみ情報を伝えると、逆側の脳(左脳、右脳)にのみ情報が伝わり、脳がバグった反応を示すことがあるのだそうです。ネットでちょっと調べてみたけど具体的な情報は無し。

前野隆司の「受動意識仮説」の話にあったはず。

まとめたニュース : てんかんを克服した患者に驚きの事実 右脳と左脳でそれぞれ別の意思

再生位置を指定できてないけど、下の動画でも言ってたはず。

www.youtube.com

 

■「光」への反応もだんだん過敏になってきた

90年台後半に社会現象として認知された癲癇症状がかの有名な「ポケモンショック(光過敏性発作)」です。

 

ポケモンショック - Wikipedia

私は当該番組を見たことはないのですが、近年になってから明らかに過激な光に対して過敏になってきたと感じています。

 

10年ほど前に視覚に一時的な障害が起きたことがあり、その治療をしている頃から強い光を怖いと感じるようになりました。

今でも夜間に車の運転をすることは極力しないようにしています。実際、夜間に対向車などの光を目に受けるとしばらく線が残って見えてしまうからです。この症状が怖かったことから、一度自動車免許を返納しています。(その後、必要に迫られ取り直していますが、夜に運転することは極力避けています。)

 

テレビやパソコンの画面でも強い光刺激を受けないように画面を暗くしたり、そもそも光刺激の強いコンテンツを見ないようになりました。ディスカバリーチャンネルのドキュメンタリー番組は明暗を極端に使った演出が多いので見ることがほとんど無くなりました。同様に映画も見ることが少なくなり、特に映画館で見ることは全くと言って良いほど無くなりました。

その他のテレビ番組でもシーンの変わり目や、CMに入る瞬間、CM最後にメーカーロゴが真っ白な背景で出る時など、直視すると瞬間的に頭痛が起きることがあります。

インターネットを見ている時も、薄目にしたり、画面以外の場所を見ながらページを移動することが多いです。ページ移動で画面が真っ白になる時は結構つらい。

ので、ChromeブラウザにDark Readerという拡張機能を入れて、色を穏やかにしています。

chrome.google.com

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プロ・アマ問わず映像作品で 、とくに短い音楽PVなどで画面を揺らす効果が頻繁に使われていますが、あれも結構きつい。カッコイイ画面を作りたいのは分かるのですが……

特に近年のアマチュアの歌もの動画に多い、素材不足を補おうとして画面を揺らす過剰演出手法が苦手です。

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また、これらの症状は疲れている時に顕著です。当たり前ですね。 

■個人的な希望

上に挙げたポケモンショック」によって、映像コンテンツにおいては過激な明滅は自粛されるようになりました。報道番組などでも、カメラのフラッシュが乱発する場面では「画面が光ります」という感じで注意を促す表示があります。

音楽においても、パンを100%動かす行為はやめて欲しいなぁ、と思っています。

音楽作品においてはエレピのオートパン。

映像作品に対する演出では、人物の声や効果音が左右100%振りから聞こえてくる疑似空間演出。

 

そういう人工的で不自然な強い感覚刺激に対して生理的嫌悪感を持つ人がいるのは事実です。

特にヘッドホン(イヤホン)が使われることが多くなり、その発症因子は拡大しています。

ポケモンショックのように、過剰な音演出は問題視される時が来るのではないか?と思っています。

 

何が言いたいのかと言うと

「エレピのオートパンを

100%振るのをやめて欲しい」

ということです。

 

同様に、シークエンス/アルペジエイターなどのシンセ音色でオルタネートパンの幅を広くするのはやめて欲しいんです。

音楽制作をしている知人さんと「100%オートパンのエレピが嫌いな人がいるみたいなんだけど」と話題にしてみてください。結構な割合で「あー、100%のパン振りは基本的にやめろって言われたことあるわ」「いつもちょい狭くしてる」という人に出会えると思いますよ。

■100%パンを積極活用する話

https://sonicscoop.com/2018/10/25/using-lcr-panning-approach-wider-mixes/

よりクリアーなミックスのために明確な空白を作る方法として紹介されています。

トラック個別のパンをLCRの100%にし、中間をだいたい50%という明確な位置にして、その上でディレイ/リバーブを丁寧に設定していく方法論です。その状態からMSでワイドに加工すると非常にクリアーでワイドな音を得られるよ、という話。

(上のリンク先で解説されているのは、超初期のミックスでパンが3段階(L,C,R)しか無かったとか、その頃の音楽が優れていたという懐古の話ではありません!)

 

STEREO WIDTH (How to Make Your Tracks Wide)

https://www.musicianonamission.com/stereo-width/

 

実際そういうミックスの音でリリースされている曲はあります。チュートリアル動画のサウンドは非常に洗練されています。

 

が、安易にワイドなミックスを狙って失敗している市販曲もあるので注意したいところです。

少なくともそういうサウンドをヘッドホンで聞くと、刺激が強すぎるので、嫌悪をおぼえる人がいるという事実を忘れるべきではないでしょう。

 

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■何件かの同意者がいる

とにかく私が主張したいのは、音楽の自由度よりも、そういう音を受け付けられない人がいるという事実です。

また、そういう症状が無くても「あー、そういう不快なミックスあるよね。狭くするべき。」と主張するエンジニアもいます。

 

■『ミックスはあらゆる極端さを避けるべき』

これはミックスの原則ですので、やはり避けるべきではないかと思います。

よほどの意図があるとしても、ポケモンショック同様、技術的に可能かつ容易だとしても配慮されるべきではないでしょうか?

過敏な人は、無条件で再生停止するレベルで気持ち悪く感じるんです。 実際止めますし。

絶対に100%パンじゃないと表現できない音楽はおよそ存在しないはずです。

・モノラル再生対応ミックスでもある

御存知の通り、極端なパンや、ステレオ錯覚を用いると、モノラル再生時に音が劣化することがあります。

ステレオでもモノラルでも、スピーカーでもヘッドホンでも、あらゆる環境で再生可能であることは良いミックスの条件でもあります。 

eki-docomokirai.hatenablog.com

■関連記事

過剰なワイドミックスはやめよう系の記事。

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

■メモ 

以下、ブログ内検索用単語メモ。

全振り片側チャンネル パンナー panner width イメージャー imager

100%パン、パニング、panning

 

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