DTM、ミックス・マスタリングに関連する記事です。MIX練習に便利なプラグイン"MMultiAnalyzer"の紹介です。(ブログ移転記事)
(2019年7月11日更新)
- ■MMultiAnalyzer
- ■価格と割引情報
- ■体験版
- ■マルチアナライザーって何?
- ■スムージングが便利
- ■デハーモナイズ機能
- ■ハイレゾ表示モード
- ■衝突確認モード
- ■起動時のデフォルトを変更する
- ■その他の機能
- ■センドトラックで運用してみる
- ■リファレンス比較、マスタリングでも
- ■マルチアナライザの活用法
- ■あとがき。プロのミキサーじゃないなら絶対オススメ!
- ■蛇足、追伸
- ■Voxengo SPANのマルチ表示
- ■今後の展望
■MMultiAnalyzer
公式youtube(https://www.youtube.com/watch?v=qx5GaZ8-zxY)も併せてどーぞ。
Win32/64、Mac対応。VST2/3、AAX。
複数のトラックを比較して見ながらミックスすることで、誰でもワンランク上のミックスができるようになります。
また、耳も鍛えられます。
こういう道具を使って訓練もせずに、なんだかわからない高級プラグインを買っても無意味ですよ?
■価格と割引情報
定価は7100円。(59ユーロ、68ドル)
一年中使える割引があります。
クーポンコード
MELDA2264563
を入れると、初回購入時に2割引きで買えます。
私にも1割のポイントが入ります。
・半額セール
たまにやってます。急がない人は半額待ちでも良いかも。でも、待ってる間に1年くらい経つかもしれません。
ミックスを上達するまでの時間を買うか、いつ来るか分からないセールで3500円程度のために1年過ごすか?
今あなたが考えたことが答えです。
■体験版
体験版は2週間フル機能です。
一度使ってみると「なるほどなぁ」となるはずです。
マルチアナライザを使いながら2週間ミックス漬け生活をすれば必ず上達します。
2週間まとまった時間がある人は体験版だけでも良いです。
■マルチアナライザーって何?
画面見ればわかるんじゃないでしょうか┐(´-`)┌
複数のトラックのアナライザを重ねて表示し、比較検討を容易にするユニークな分析系プラグインです。
使い方が非常に特殊で、複数のトラックにさして使います。
表示するのは1つだけでOKです。
もちろんインストールするプラグインは1つでOKです。たくさん買う必要はありません。
Cubaseだとミキサーのインサートエフェクトの項目でCtrl(設定によってはAltかも?)を押してドラッグするとエフェクトを別のトラックに複製できます。たまに便利。
他のDAWでもそういう操作はあるはずです。
トラックごとの色設定は、プラグインの画像の左側で行います。
もしDAW標準付属する時代になったら、DAWミキサー上の名前や色が自動で読み込まれるようにできるので、手間が省けるのになーと思います。どこかのDAWメーカーとmeldaが組んでくれたらそうなるかもしれませんね。
色は割りと適当で良いと思います。
複数使用すると自動で色を割り当ててくれるのでそのままで良いかと。
ビジュアライザーの動きでどのパートなのかは大体見当がつくので、わざわざ綺麗に作る必要は無いです。名前も決めることができますが、それも必要ないと思います。
どうせ主に使うのはキックとベースの低音衝突管理で、もし増やしたとしてもメタル系の曲を作る時のディストーションギターの低音リフの衝突くらいです。
そもそも4つ以上のトラックを同時に表示しても意味不明になるので色と名前を変える必要は無いです。
■スムージングが便利
Meldaのプラグインに共通する特徴ガビジュアライザーのスムージング表示です。
スムーズ表示にしておくと細かいピークに惑わされず、マクロな視点で作業ができるのがメリットです。
一番上の状態は精密過ぎてトゲトゲしか見えません。
私の場合は、ミックス時は2つ目、マスタリング時は3つ目くらいのスムーズ設定にしています。
表示設定は音を再生しながら、名画面でいつでも変更できます。
また、エネルギー検出の時間を変更できます。
いわゆるVU、RMS的に「指定した時間内の平均」で表示させるモードです。これも突発的なピークを無視できるので、トラック間のすりあわせを行う意味におけるミックスでは非常に効果的なしくみです。
一般的にVUは300msで動きますが、Meldaの場合は極めて自由度が高いスムージングができます。ほんの少しだけ緩くして突発ピーク(一瞬表示されるだけで目に見えない)を無視したい時や、300msだと短すぎると感じた時に非常に長いスパンで捉えることができるようになります。マスタリング、リファレンス比較の時は1000msや3000msなどの非常に長い時間の平均表示が効果的です。
個人的には4種類の使い方をしています。
1,細く表示 → 突出ピークを見つけたい時
2,少しゆるく表示 → トラックバランス用
3,とてもゆるく表示 → マスタリング用
これらをすぐに表示変更できるので本当に便利です。
また、
4,高解像度で表示 → ローエンドの確認時
という使い方もすることがあります。
慣れてくると帯域の衝突が耳で分かるようになってきます。
耳で判断できないと自覚できているなら、マルチアナライザを買って訓練するべきです。
■デハーモナイズ機能
De-Harmonize機能は高次倍音を削り、基音・低次倍音を強調して確認できるモードです。
どの程度削るかは無断階で任意に決められます。
完全に基音だけを表示するものではないですし、完璧な挙動でもないです。あくまでも参考程度に。地味に便利ですこれ。
■ハイレゾ表示モード
高解像確認モード。
特に低音の表示がきめこまかくなります。(その代わり、反応速度が落ちます。)
上の画像では、右下の赤い部分を操作して「20Hz~150Hz」あたりだけを表示しています。低域の衝突回避作業の様子だと思ってください。
FFTの都合上、表示タイミングは発音より鈍ります。(説明すると長い上、教えられるほど正確な知識は無いです。)通常の表示モードだと大雑把に表示されてしまう低域を極めて精密にチェックできるモードです。
なお、この辺りの精度というか表示方式の違いに優劣は無いです。
低域の表示が雑だからダメなアナライザーというわけではありません。
表示の反応速度を重視するか、低音分析の正確さを重視するかの違いでしかありません。
打楽器に対して使ってみると、音のタイミングと分析して表示されるまでのタイムラグがわかるはずです。アナライザを使う時には必ず踏まえて置かなければならない基礎知識です。
たまに「低域の表示がきめ細かだから◯◯のアナライザが最高」とか言っている人がいますが、完全に勘違いしている人なので触らないほうが良いです。
と、いろいろ書きましたが、私は高解像度モードは全く使っていません。
■衝突確認モード
非常に便利!Collision(衝突)モード。
MMultiAnalyzerはこの表示モードのためにあると言っても過言ではないユニークな表示モードです。
折れ線グラフ的なスペアナと違い、エネルギー量を色の濃さでシンプルに表示し、複数トラックを並列表示してくれます。
これによって動きの大きい通常のスペアナとは異なる視点でミックスを行うことができます。
このモードで上記スムージングを変更すると左画像のような表示になります。これが超便利です!
上のようにくっきり表示させることでピークを叩くこともできますし、下の画像のように表示させることでゆるやかなQで違和感の少ないソフトなイコライジングを行っていくこともできます。ミックス作業をしている人ならこのスムーズ表示によるメリットは理解できるはずです。ケースバイケースでスムージングを変更して的確に可視化していきましょう。
■起動時のデフォルトを変更する
Meldaのプラグインは起動時に毎回同じ設定で起動できます。
右上のSetting>Set Default Settingを押してください。次回起動時から同じ設定状態で起動されます。これはすべてのMeldaプラグインに共通する便利操作です。確実に作業が効率化されます。
これ、他のメーカーもどんどんパクって欲しいですほんと。
Meldaは頻繁にアップデートをしているので、将来的にこの機能へのアクセス方法が変わるかもしれません。上の画像はバージョン10.7のものです。(2017-05-05)
追記。その後の新しいCubaseなどでは、DAW側の機能として「このプラグインはこの状態で起動する」という設定ができるようになってきました。余計な初心者向け機能を追加するのとは比較にならない素晴らしいアップデートだと思います!
■その他の機能
その他、ソノグラムと波形表示での比較ができます。が、私は使っていません。お好きな人はどーぞ。ソノグラムに絵かきしてた某生主さんには欠かせない機能ですね。
波形表示は音圧チェックに便利です。
が、ラウドネス管理は専用プラグインで数値表示のほうが良いかも?
ソノグラムと波形表示のモードでは必要ないツマミは隠されます。
・追記「ステレオ可視化モード」
その後のアップデートでステレオ状況を監視できる表示モードが追加されています。
リファレンス比較時に非常に便利です。
このモードがもっと広まれば、病的に広げすぎているアマチュアが減ってくるはずです。
低音はセンターだけだという誤解も減ってくるはずです。
帯域ごとのステレオバランスは、ある意味帯域バランスより重要です。
■センドトラックで運用してみる
比較したいトラックにインサートして使うのが通常ですが、もちろんDAWならではのアクロバティックなルーチングで使うこともできます。
たとえば、複数のセンドトラックに「比較1」「比較2」「比較3」のように名前をつけておいて、そこにマルチアナライザーを仕込んでおきます。
そのセンドトラックに送れば当然マルチアナライザーは音に反応して動きます。煩わしい設定無しでセンド量を変えるだけでどこのトラックでも比較検討が可能になります。この使い方は超おすすめ。
毎回いろいろなトラックに刺さなくても比較ミックスができます。
■リファレンス比較、マスタリングでも
当然、リファレンス曲との比較の際にも威力を発揮します。
マスタリングでもカンに頼らない均一化が容易になります。
要するにミックス序盤から最後まで常に活躍してくれるということです。買え!
■マルチアナライザの活用法
自分の曲の中で使うだけではなく、参考曲との比較を行う際にも便利ですよ!という記事を書いておきました。
eki-docomokirai.hatenablog.com
■あとがき。プロのミキサーじゃないなら絶対オススメ!
仕事でちゃんとしたミックスをやっている知人曰く、
「この手の特殊スペアナは一見便利なんだけど結局要らないことになるよ」と言っていました。実際そうだと思います。
でも、私はこのプラグインを通じて色々と勉強になりました。
ミックスの技術のカン・コツについて自信がない人は一度導入してみて、自分のスキルアップに役立てることができるはずです。
一流のプロの人が「アナライザなんて邪道だよ、耳でやらなきゃ」と言っているのを真に受けて、経験の少ない人が「アナライザなんて邪道だよ(キリッ)」なんて言っても滑稽です。(余談ですが、一説によればアナライザ邪道説は、ミックス目的の仕様に堪えるスペアナ実機が極めて高価で買えない僻みだった、とも言われています。100万超だとか。今の時代ではフリープラグインで手に入る、あるいは付属程度の表示性能のものが、です。もちろん比較表示など不可能です。)
すべての道具には初心者向けモデルが存在します。
楽器にも初心者用の音が出やすい楽器があり、上級者上のデリケートなものがあります。
自転車に初めて乗った時は補助輪がついていたはずです。
それと同じように、邪道であろうと補助的な道具を使ってスキルを高めた上で卒業していくことで、より良い音楽制作が可能になっていくのではないでしょうか。
とりあえず体験版で2週間ガッツリ使ってみてください。
その2週間で干渉回避のスキルを得られた!と確信できたなら買う必要は無いです。
(逆に言えば、干渉をどこまで行わせても構わないかを知ることにもなります。帯域きっちり分けすぎると気持ち悪い音になるのは周知の通り。)
■蛇足、追伸
最後に、蛇足とは分かっていますが、ひとつだけ苦言を呈しておきます。
アナライザはDTM作業放送に表示して画面を派手に見せるためのものではありません!
同様に、作業放送の画面に表示されているアナライザがどういうスロープ/ラウドネス表示設定になっているかも分からないのに「ロー出過ぎ」とかコメントするのはやめましょう。とても恥ずかしいです。(スロープについてはネットでいろいろな情報がすでにありますが、気が向いたらそのうち私見を記事にしようと思っています。)
過去にやっていたブログでMeldaの話を書いた折に「こういう感じでよければ日本語の説明書書こうか?」というメールをMeldaには出しましたが、特に返事がないので個人的に良いなーと思ったものだけ紹介していこうと思います。はい。
使い勝手にきわめて強いクセがあるのがMeldaの欠点ではありますが、ユニークで高機能なプラグインを多数リリースしている良いデベロッパーだと思っています。WAVESに憧れる人はいるでしょうが、Meldaに憧れる人はたぶんどこにもいないでしょう。でもめちゃくちゃ良いですよほんと。
■Voxengo SPANのマルチ表示
フリーのスペアナとして非常に有名なSPANもマルチアナライザーとして使うことは「可能」ではあります。が、その設定が非常に面倒です。「ちょっと心配だから確認してみようかな?」と思ってから設定方法を思い出しながらやっているようではミックス作業にはなりません。(やり方を説明する手間すら面倒なので、SPANのマルチアナライザ使用方法について紹介することは無いと思います。もしやってみたい人がいたら自力で挑戦してみるのは,DAWならではの変則ルーチングを知る上で良い経験になるので止めはしませんが。)
数千円の投資、もしくは2週間のデモ期間で必ず上達できるので、私は圧倒的にmeldaのマルチアナライザーを入れることをおすすめしています。
■今後の展望
複数表示できるアナライザは、まず間違いなくDAW標準装備になっていくと思います。
過去にはアナライザを重ねるEQや、コンプも入出力レベルとゲインリダクションをリアルタイムに表示するものが存在し、いずれもDAW付属になりました。他には音程補正、トランジェント、ステレオ加工などなど。どんどんDAW付属プラグインは高性能化しています。
「付属になるなら買わなくて良いやー」でも良いのですが、そうなるまでに数年はかかります。本当に便利で、自分の成長に役立つものであれば今すぐ使うべきだと思いませんか?2年後に付属するのを待っている間に上達できるわけですから。