田舎のライブハウスでよくあるステレオマイク一発録りの劣悪データを修正したお話。
(2021年3月7日)
■作業結果
下の音源は一部分だけ抜き出し、「元の状態→修正」を2回繰り返しています。
(アーティスト許可の上で一部分だけアップしています。)
ありますよねこういうヤバい録音。
もちろんソースが悪いので満足の行く結果は得られません。それでも元の状態よりは聞きやすくなります。
・何をやったか?
こういう修正で最大の効果が得られるのは、とにかくモノラル化することです。
Cubaseの場合は付属のStereo Enhancerでモノ化します。
もちろん他のステレオイメージャーを使っても良いです。
Ozoneだと4バンドでステレオ幅を処理できるので非常に自由度が高いです。
完全にモノラル化するとちょっとさみしいので、悪影響の少ない高音はやや広い幅を残しました。
マルチバンドのイメージャーはCubase付属のQuadrafuzzにも付いています。各バンドの左下にバンド分割のイメージャーが備わっています。
どのイメージャーの処理が一番まとまるかなーとテストしたついでなので、せっかくだからQuadrafuzzでサチュレートしておきます。
Quadrafuzzは個人的にかなりお気に入りのプラグインです。
あまり言及されることがありませんが、非常に優れた機能を持っています。暇つぶしに研究してみてはいかが?
eki-docomokirai.hatenablog.com
ダイナミックEQで過剰な低音の「小屋鳴り」を抑え込みます。
同時に全体のスペクトラルバランスを考慮してハイを加工しました。
とはいえ、低音があまりにも大きく鳴っている場面ではマイクの許容限界を超えていて、全帯域が潰れてしまっていました(ポンピング)。
そういう部分を無理やり復元することも可能と言えば可能なのですが、割りに合わないのでやめました。過去の経験上、そういう無茶修正をやってもどうせ納得の行く結果にならないことがほとんどですし。
やろうと思えばキックが一番安定して聞こえる位置から抜き出してトランジェントを出していくとかそういう加工もできなくは無いです。が、本当に割りに合わないです。何より妥協を重視し、元よりちょっと聞きやすくなればOK!という程度で良いと思います。
挑戦してみたい人、技術の限界を高める「筋トレミックス技術」を試してみたい人は、思いつく限りの技術を投じてみるのも楽しいでしょう。
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作業結果をもう一度貼っておきます。
「元の状態→修正」を2回繰り返しています。
このように。劣悪な録音はモノラル化をすることでそこそこの状態まで持ってくることができます。
こういう作業は仕事として請けることもありますし、営業の一環として「こういうのはある程度なら直せますよ。」と売り込むこともあります。その作業自体には直接的なマネタイズ価値が無くても、営業ツールにはなります。
コロナ禍ということもあり、コストを下げて録音設備が整わない状態でのライブ録音も増えています。そういうアーティストさんたちに対しても微力を尽くしたい所存です。
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