eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

フンメル『ビオラ協奏曲』ユーフォニアムかんたん版の制作話

フンメルの『ビオラ協奏曲』(ビオラのためのファンタジー)をユーフォニアム用に編曲。難易度を大幅に下げた、古典演奏入門アレンジ譜として仕上げました。

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(2020年11月5日)

 

■サンプル打ち込み演奏の動画

こんなんできました。

youtu.be

楽譜販売はこちら。

askswinds.com

ユーフォニアム・ソロの内容は、ロバート・チャイルズ版を参照しつつ、大幅にかんたんな内容にしています。

なお、ロバート・チャイルズは個人的に中高生の頃にCDを買ってずっと聞いていた奏者。弟のニコラスとのコンビ演奏は世界一のデュエットでした。息子は今は同じ楽器で第一人者として世界で活躍中のデイヴィッド・チャイルズ。体型まで似ている。

 

・伴奏の難易度下げ(別記事)

伴奏も低難易度になっています。

eki-docomokirai.hatenablog.com

知人アマチュアピアニストの人に内容チェックをしていただきました。

こういうチェックは上手い人に「これ弾けますか?」と質問しても無駄無駄。どうせ「このくらい弾けますよ」としか言われません。弾けないって言ったら沽券にかかわりますから。

■経緯

たまにクラシック系の伴奏制作の仕事をうけています。

難しい版ユーフォニアムソロの伴奏制作の依頼があったので、せっかくだから難易度を下げたバージョンを作ってみようと思った。

副産物を作るのは音楽制作仕事でとても大事なワークフローです。低コスト高効率。なのでこの楽譜が売れるかどうかはあまり関係ない。

■ソロ譜の難易度下げでやったこと

  1. かんたんにする
  2. より金管楽器的にする
  3. コンテスト等で使いやすいように5分にする

という3つのことを実装しました。

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以下の楽譜は上がビオラ(ハ音記譜)、下がかんたん版ユーフォニアム(ト音記譜)です。

・装飾音符を実音で記述

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初学者は古典のターン記号などが出てくると敬遠してしまうものです。実音符で書いておけば「やってみようか」となるはず。だと良いな。

より厳密に言えば、ターンの細かい音の最初をちょっと強調するべきだとか色々あるのですが、そこまで記譜すると混雑しすぎるのでやめました。(要するに5連符ではなく、6連符にして最初の2つをタイ、という感じに演奏することもある。)

(補記。上の2つの譜例はターンの説明ではありません。右はアレンジ込みの状態です。)

・弦楽器の広い音域

金管楽器でも演奏できないことは無いのですが、難易度を大幅に下げました。

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超高速スケールも同様に処理。

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また、古典演奏上の「お約束」となるダイナミクスも多く記入しました。

また、より金管楽器的に、よりユーフォニアム的な旋律に変更しています。

連桁(れんこう。細かい音符を横棒でつなぐ)の処理も変更し、初学者でも読みやすくしました。連桁の分け方、サブグループの組み方は諸論ありますが、特に吹奏楽の初学者の場合、細かい音符が大量にあると「とにかく速く」という間違った解釈をしてしまう傾向が強いので、半拍を意識しやすいようにしています。

・分散和音の難易度下げ

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弦楽器では非常に華やかなサウンドがするので、協奏曲で頻出する音形。管楽器では、仮に演奏可能だとしても、よほど卓越した奏者じゃないと「華やか」ではなく「困難」な音になってしまいます。

ユーフォニアム的に「華やかさ」が出しやすいシンプルな音形にまとめました。元の状態の2オクターブのアルペジオだと、管楽器でもできないことは無いけれど、「超絶技巧」に片足つっこんだ世界になってしまいます。

・終末部の速いテクニカルな部分

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大幅に難易度下げ。

弦楽器では移弦で表現可能ですが、それを管楽器でやるとナンセンスな音にななってしまいます。

ここはロバート・チャイルズ版に倣いつつ、さらに難易度を下げました。

ブレス(息継ぎ)のために省略しても良い音符を指定しました。こういう場面は積極的に息を補給し、堂々とした音で演奏してこそ。

 

次の箇所も同様に。

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ここも同様。

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移弦とトリルも同様に。

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やればできないことは無いけど、「華やかさ」じゃなくなっちゃうんだよなぁ。

弦楽器ソロで移弦しつつトリルを続ける演奏は本当に華がある。まさに「その楽器ならでは」の奏法です。

譜例下、最後のトリル。ここはオクターブ上の記譜G+A(実音F+G)でも出来ないことは無いし、多くのソロ曲でユーフォニアムなどBb移調金管楽器で書かれているんだけど、個人的には極めて懐疑的。

なぜなら実音F+Gのトリルは、第6倍音のFと長二度上の第7倍音の半音下のGなので、運指トリルではなくリップトリルになってしまい、難易度が桁違いに跳ね上がるから。

 これについては過去記事で少し触れているので、金管楽器の細かい奏法難易度について興味がある人はどーぞ。 

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

最後は、逆に追加要素。

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弦楽器では「弓を引き抜く」と、その見た目もあって「終わり!」という感じが出るんだけど、管楽器だと動きが無いので非常にシケた終わり方になってしまう。

なので、かんたんな音域でオクターブスケールを駆け上がって終わる。終わり良ければ全てヨシ! 

 

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