かんたんピアノ伴奏の楽譜制作で修正箇所を依頼(有償)しました。
(2020年9月13日)
- ■低難易度向けアレンジとしての添削
- ■元のアレンジはどういうものか?
- ■1,どちらの手に担当させるべきか?
- ■2,モチーフすら捨てる
- ■3,ポカミス
- ■4,フレーズ終わりの和音
- ■5,片手ボイシング考
- ■6,トレモロ
- ■雑記
- ■楽譜の販売が開始されました
- ■関連記事
■低難易度向けアレンジとしての添削
曲はフンメルの『ビオラ幻想曲』Op.94
原曲は小編成弦楽オケの伴奏。これを超かんたんなピアノ伴奏にする。
かんたんにすることが今回の至上目的です。
楽曲的にどうだとか、
形式とか、
ピアニズムとか、
そんなことは犬にでも食わせておきます。
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・添削者について
添削担当のM氏は専業ピアニストではありません。
この曲を知っていたわけでもないし、何日も練習したわけでもありません。手の大きさはオクターブは普通に届くサイズです。
そういう人がどう感じるかを知ることは「真のプロピアニストはこんな曲芸もできる!」「俺ならできる!」というトリビアを知るよりも、遥かに役立ちます。
世の中の圧倒的多数派は「これは難しい!」と感じるよ、という現実のお話です。高難易度の楽譜を作ることは誰にでもできるからです。弾きやすい内容を書くことこそ、知識と作り込みの真骨頂です。
最近は『カイの冒険』にハマっているようです。
「たった330円で数日苦しみ続けることができる良ゲー」とのこと。
(追記)
表60面クリア後の追加ステージ100面まで全部クリアしていたのでなかなかのゲーマー。すごいと思う。
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■元のアレンジはどういうものか?
小編成オーケストラの音をピアノ1台に落とし込む、いわゆる「リダクション編曲」された伴奏譜です。本格的なコンチェルトの伴奏で頻出します。オーケストラの音を両手だけでやらされるので、通常のピアノ奏法とは異質な内容です。こういうキメラ編曲を弾くことに特化した「伴奏ピアニスト」というニッチな職業もありますし、そのための訓練コースのある学校もあります。一口にピアニストと言ってもいろいろ細分化できるということですね。
というわけで、オケ音重視の編曲を再構築し、ピアノで弾きやすいこ内容にするのが今回のお仕事。
■1,どちらの手に担当させるべきか?
右手レの連打を左手にしてほしい(1,2拍目レの16分音符連打から3拍目の和音を弾くのが難しい為。)
「1拍目で右手に同音Dがあるから、そのまま連打でOKかな?」という考え方が敗因。
変更後、左手にした。オプションで任意にオクターブ選択できるようにした。
後日談。
さらにかんたんにするため、オクターブ上のみを採用した。
■2,モチーフすら捨てる
右手が難しい
「1」の後の場面。カウンターで入る「タンタカ、タンタカ」はモチーフ的に重要なので省きたくないと思って残したのが敗因。思い切って削除した。片手内で異なるリズムって難しいよね。
「1」と併せてわかることは、私は油断すると右手を難しくしすぎてしまう、という反省点です。
なお、このリズムを消してしまうなら、「1」のリズムも消した方が古典音楽としての統一感が出るんじゃないか?とも思った。
けど、「1」に入る時は音符の数で勢いをつけたいので残しました。モチーフとして残すのではなく、あくまでも「音圧」のために、いわゆるフィルとして残します。
■3,ポカミス
70小節目に合わせる形で左手をミ単音にして右手三和音の方が弾きやすい
アッハイ。譜表分け(声部分け)のケアレスミスです。さーせん。
この前後の部分では左手和音の構成になっています。
難易度チェック依頼用に急いで楽譜を作ったのが敗因。この部分だけ謎の割り当てになっていた。
・中間生成物の精度
でも中間生成物のために大きな時間を使うより、先に進めることの方が圧倒的に大事なのは言うまでもありません。
雑でも大きな問題にならないなら、雑で良いんです。これが分かってない人は、音楽に限らず、理想だけ高くて成果を出せない「ダメな完璧主義者」です。
■4,フレーズ終わりの和音
運指的に右手オクターブがきついので低い方のミを左手にしてほしい(102のレファミレドレを243213で弾きたいが103のオクターブが14になってきつい。103のオクターブを15にしようとすると102が243214になると思うがそれも弾きにくいので左手が四和音になる方が弾きやすい。)
右手オクターブを消すべき根拠について、わざわざ運指を詳細にカイてくれました。
右手のフレーズ最後、低い音を削除した。
コメントどおりに左手をオクターブで掴んでも良いのですが、無意味に難易度が上がるので中域のEbは削除。さらに難易度を下げる方向にしました。
左手最低音もEbなので、内声の重複音は無くてもサウンドへの影響は皆無です。
■5,片手ボイシング考
右手の三和音を125で弾くと2と5の間が広くてすこしきつい
これはくやしい!
上から2つ目のEbを連続させて運指難易度を下げたので「ナイス運指」と思っていたのに。
右手をクローズ3和音に変更した。2の指を軸にする応用運指ではなく、親指基準を貫く基礎運指、ということになる。
・右手「12-5」から「1-25」への和音移動
なお、125のまま和音を変える奏法はピアノでは割と頻出です。2の指を軸にして動くので、ブラインドでも弾きやすいとされています。が、少し変則的な運指なのは言うまでもありません。
ここの2つの和音で注目するべき点は、右手の5小指が、BbからCというクセの強い音程移動であることです。このため、移動しにくいと判断されたのではないかと推測しています。キー的に125のアドバンテージが低いということですね。
もし「BbEbBb→CEbC」ではなく、「BEB→CEC」だったら難易度は低いです。手元の鍵盤で試してみてください。距離的にも角度的にも移動が容易なはずです。
わずかな難易度差ですが、
■6,トレモロ
トレモロが苦手です。和音は特に
まじかー!
今までお付き合いのあった学生ピアニストではOKだったし、小中学校の合唱コンクール頻出曲でも使われている書き方。この手のトレモロをNGにされたのは初めて。
今後気をつけよう。合唱コンクール曲にあるレベルのトレモロでも嫌がる人がいるという事実を知ったことの方が重要。
オプションで「トレモロにしてね」と追記した。今後はこの書き方にしよう。
■雑記
私は中学生の頃からこういう書き換えをやり始めました。
管楽器をやっていて、ソロ伴奏をやってくれていた後輩は非常に手が小さい人でした。非常に練習熱心な人でしたが、オクターブが届かず、和音や音域の意味も理解していなかったので、私があれこれ書き換えていました。
もちろん当時は今よりも拙い技術でしたので、的確な編曲が行えていたわけではありません。難易度と奏者のことを考える重要性を噛み締めてきました。
それが長所でもあり、限界を作っているのは間違いありません。
■楽譜の販売が開始されました
製作記はこちら。いろいろ書いてます。
eki-docomokirai.hatenablog.com
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■関連記事
ピアノ演奏用楽譜の修正に関する関連記事です。
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コンピューター演奏の伴奏制作仕事の話
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