製作中によくあるミス。主に耳コピ作業で稀に良くやらかすアレ。
(2021年11月29日更新)
■そのツールに一括編集機能はありますか?
・大規模な修正には2つの方法がある
- 音楽ソフトの一括編集機能を活用する(※ついていないものも多い)
- ド根性で全て手作業をする
もし「ド根性」で行くなら、どこから手を付けるべきか、ちょっとだけ考えてから行動しましょう。
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全体を直すためには一括編集の機能を使うべきです。そのためのコンピュータです。
もし一括編集ができないツールを使っているなら、ツールの乗り換えを検討するべきです。どんなにそのツールを気に入っていても莫大な時間を奪われ続けます。
今こんな記事を見ているということは、一括編集で悩んでいるはずです。その悩みをきっかけとして、重い腰を上げてツール乗り換えに踏み出すべき時です。
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もしあなたが不老不死なら不便なツールのままでも構いません。しかし私のような普通の人間には寿命があり、創作意欲を保ちつつ手足が自由に動く年数には限りがあります。
■単にストレッチを使えば良いだけの時代
以下はCubaseでの一括編集方法です。
珍妙な機能を使う必要などまったく無い。単にストレッチ機能を使えば良い。
・3連符系の状態
4/4拍子で3連符で作った曲を
6/8拍子の8分音符にしたい。
・ストレッチする
元のリージョン(通称MIDI箱)の終了位置が64小節アタマなので、「64掛ける*1.5=96」小節アタマまでリージョンをストレッチする。
この操作はロジカルエディタでやっても良いし、カーソルのツール変更(タイムストレッチ)でやっても良い。
個人的には圧倒的にストレッチをおすすめしています。なぜならストレッチはワンショット効果音の製作などで頻繁に使うから習熟しておくべきだからです。
もし「64掛ける*1.5=96」が小節アタマなのか小節終わりなのかを迷ったとしても、数回やり直せば良いだけです。
計算が面倒なら「3つに複製して半分にする」という方法もオススメ。
もしくはリージョンの長さを計算しやすい数字まで拡大にしてから行う。100の1.5倍は150なので瞬時に計算できるはずです。
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結果はこうなる。上がストレッチ前。下がストレッチ後。
内容を楽譜で確認。
3連符が8分音符に拡大された。
拍子を直そう。
これだけで作業完了!どんなに遅くても数分で終わるはずです。
・注意点
リージョンを細切れにして打ち込むスタイル(フレーズ単位で作るスタイル)の場合は不可です。
こうなる。
リージョンの開始位置と終了位置をそれぞれ合わせてストレッチした場合にはこうなる。
そもそも拍子感を変えるというのは、Cubase的にも音楽的にも想定された使われ方ではないので気をつけましょう。
リージョンが細切れの場合には、一度リージョンの前後幅を直してから作業したほうが早いはずです。
■なぜ三連符系ではNGなのか?
「別に楽譜で出すわけじゃないし、DTMで演奏してるだけだし」と思う人はいるかもしれない。
が、アイリッシュダンス系の制作だったらどうすんの?と言いたい。
譜例『リバーダンス』のような「6/8系の8分音符」=「4/4系の8分音符」として目まぐるしい拍子変化のある曲の場合には、シーケンス上の8分音符を常に等しく扱えないと拍子変更が不可能になってしまいます。
上のを3連符でやると、1小節は3連符を2拍でも書けますが、2小節目は3連符の長さで8個というおかしな拍子になってしまい破綻します。
6/8、4/4の繰り返しの場面。これも最初に三連符を使ってしまうと拍子感の変化に対応できないのでアウト。同じ音価のまま多彩なバリエーションを出せる記譜をしないと単調になってしまう。
なおこの『リバーダンス』はアイリッシュ系音楽のブームを巻き起こした重要な音楽なので、それ系をやるなら劣化コピーされたゲーム音楽等ではなく、ちゃんと本家を聞くべきだと思う。決してマニアックな音楽ではないはずです。
拍子変更を面倒くさがってずっと6/8のままだと非常に単調な音楽に聞こえてしまい、どんなにリアルな音色の音源を使っても「それっぽさ」が出せません。
その他、アイリッシュ音楽については死ぬほど綺麗にまとまった記事を書いている人がいるので正座して読もう。ありがたや。
民俗音楽の普及をやってる人は本当に偉い。出し惜しみの無い素晴らしい活動だと思う。
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話を一括編集に戻す。
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■その他、一括編集に付随する話
3連符系の修正より頻出するのが2倍(半分)にする修正。
これも3連符直しと同様にやる。*2(/2)した小節数にすれば良いだけ。
・全て手作業する場合は「終わり」から開始、「区間分けする」
昔はこういうのを一発で編集できなかったので地獄のような全修正作業を強いられた。
その際に便利だったのは「最後の小節から順にやる」「リージョンを細切れにする」という方法。
絶対にやってはいけないのが曲のアタマから加工する方法。
音符の長さが増えていくので、次の音符に重なってしまう。これでは作業が進まない。
なので手作業でやる場合には「終わりの音から開始」するのが正解。
1小節終わったらそれを10小節ほど後に移動し、できた空白を更に手前の音符を延長して埋めていく。
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逆に、長さを半分にする場合はアタマからやって問題無い。
音符がどんどん短くなって隙間ができていくので、区切りの良いところまで進んだら空白を詰めていけば良いので非常に簡単。
4/4で書いたマーチを伝統的なアラブレーベのスタイル(2/2)で書きたい時や、異様にテンポの遅い曲の楽譜上の表記を変える時にこういう作業が必要になる。(64分音符以上の細かい音価が登場してしまう曲)
・できないこと
Cubaseのタイムストレッチツールではリージョン内の選択した特定の音符群だけをストレッチすることはできない。
こういう場合にはロジカル(マクロ)が必須になります。
■宣伝
やり方は拙著『Cubaseカスタマイズの教科書』に書いてあります。頻繁に使う人はぜひロジカルの習得を!
eki-docomokirai.hatenablog.com
その他にも様々なロジカルの使い方や環境設定方法について役立つ内容が満載。書籍としてはかなり高いですが、Cubaseユーザーなら絶対役立つ一生モノの知識が満載です。