eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

Cubaseのクオンタイズ誤処理問題

Cubaseでたまに起きてしまうクオンタイズの誤処理を回避する方法。「Cubaseカスタマイズの教科書」に書き忘れた点です。

(2020年7月6日)

 

■その機能、誰が使うんだ?

Cubaseの謎機能で、バージョンを追うたびに説明が雑になっていく「クオンタイズの固定」機能。

Cubaseオペレーションマニュアル曰く、

MIDI クオンタイズの固定
「編集 (Edit)」メニューの「高度なクオンタイズ (Advanced Quantize)」サブメニューから「MIDI クオンタイズを固定 (Freeze MIDI Quantize)」機能を使用すると、MIDI イベントの開始位置と終了位置が固定されます。これは、元の位置ではなく、クオンタイズした現在の位置を基準として 2 回目のクオンタイズを行なう場合に便利です。

 昔のCubaseではもうちょい丁寧かつ意味不明な説明がされていた。

「2回目のクオンタイズ」という特殊な編集が便利だと感じることよりも、「固定」されていない状態から通常操作でクオンタイズした際に生じる誤処理の後始末を面倒に感じることの方が多いはず

ノート間をレガート処理する前のノートイベントが固定されていない場合、後々になってクオンタイズを使った時に下のような状況が起きうる。

 

■クオンタイズで不要な処理をされてしまう

下のデータでは矢印の箇所にわずかなズレが起きている。

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拡大。

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左上の数値を見てのとおり、拍ちょうど(480=次の拍、3.000)ではなく、2.478になってしまっている。分解能480でマイナス2tickのズレ。

他人から預かったデータなので、どうしてこんな微細なズレが起きたのか詳細不明です。操作誤爆で2ticずらしてしまったのかも?

こういうのがあると、キースイッチをグリッド通りに配置していても、当然キースイッチが無視されてしまう。

 

とにかくズレてるので直さなければいけない。

 

で、ノート側にクオンタイズをかけると誤処理が起きる。

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このように不当なクオンタイズが行われることがある。

こうなる原因が「クオンタイズの固定」データが挿入なんです。

 

音源差し替え用のデータを作る際、とてつもない数の誤処理が起きてしまい、困ったことになる。「やりやすいベタでくれ」とも言えないので、自分で処理するしかない。(言ったところで適切なデータがもらえるとは限らないから、自分でやった方が良い。)

 

これを防ぐために、「MIDIクオンタイズを固定」を掛けなければいけない。

マウスでたどる場合は「編集>高度なクオンタイズ>MIDIクオンタイズを固定」にある。

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(Cubase9系)ショートカットの場所はそことは違って「クオンタイズカテゴリー」にある。(カテゴリーが統一されていない。)

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この「クオンタイズを固定」をやっておくと、通常のクオンタイズ操作で普通のベタが出来上がる。

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同様の処理の必要性について、Sleepfreaksでは「リアルタイムで弾いた演奏ではご注意」と解説されているが、これはリアルタイムじゃなくても起きる。

sleepfreaks-dtm.com

■「クオンタイズ固定」を調べる方法は存在しない

・環境設定には無い

ノートが書き込まれた時点ですべてのノートに対して「クオンタイズを固定」が行われるようにできれば何も問題は無いのだが、残念ながら環境設定に「☑記録されたノートのクオンタイズを固定する」という項目は存在しない。

・プロパティにも出ない

ステータスライン、情報ラインを表示しても、「固定」の有無は表示されない。

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編集履歴にも出ない

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1、「固定」して
2,「クオンタイズ」

を実行した直後のヒストリー表示(編集履歴)。

クオンタイズを行ったことしか記録されていない。

履歴に出ない時点で色々と「お察し」。Cubaseハードユーザーならおなじみの「あるバージョン時点で実装されたけど、あまり需要が無かったので放置され、新バージョンとの統合性が失われた機能」だということです。

そういう贅肉の多さに辟易したスタッフが作ったのがStudio Oneなわけですが、贅肉を削ぎ落とすだけではなく、必須機能の多くが欠落してしまっているのが残念極まります。

 

・リセット履歴は出る

クオンタイズパネルの左下にあるボタンで固定前の状態にすることはできる。

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クオンタイズリセットのコマンドの場所はここ。

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ただ、貰ったデータに対して一括でリセットをかけると、どこで変化が起きたか分からないので、正直この機能の使用はおすすめできません

■結局どうしろと?

クオンタイズをマクロ化し、保険をかけるべきです。

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・展望

この後数年以内のDAW潮流として、MIDI2.0到来に伴う大規模な刷新があるはずです。その後2にCubaseアップデートがバージョン目くらいで遺産機能を切り捨ててくれる安定版になることを期待しています。

もしくは、Microsoft Officeのように、自分が頻繁に使う機能をまとめたパネルと、融通の効いた機能検索が実装されればCubaseは使いやすくなるはずなんです。

そうなれば私がやってるようなCubaseレッスン仕事が地球上から絶滅するはず。早くそういうバージョンが出て欲しい。YAMAHA Steinbergに言っても無駄なので七夕の願い事に書いてみよう。

■書籍宣伝

こんな感じでCubaseのいろいろな機能を使いやすくするノウハウを詰め込んだ拙著『Cubaseカスタマイズの教科書』をよろしくお願いします。お陰様でたいへん売れています。ありがたや。

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

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