eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

ハリウッド映画でよくあるコード進行

コード進行を発展的に自由研究すると楽しいよ!と言うお話。音楽理論は教科書丸覚えだけではなく、音を自由に組み合わせて楽しむ経験から飛び級することもできます。主に劇伴制作で役立ちます。

(2020年12月15日更新)

 

■ハリウッド映画でよくあるコード進行

youtu.be

動画序盤。初歩の和音の仕組みの話。

後半はそこで定義した和音の操作と効用の説明。

ちょっと独特の方法でコード運動を読ませているので注意が必要です。

・和音進行によるキャラクター

動画中盤。4分30秒から。ここが本題です。

和音進行のキャラクターです。

 

()内にはCを基準としたコード進行例を書いておきます。

見間違わないようにメジャーにはMを添えます。

すべてトライアドです。

 

間の数字は度数でもコード装飾でもなく「半音いくつ上昇させるか」です。同じ音は半音ゼロとして数え、

1は半音1つ上げる。C→C#

2は半音2つ上げる。C→C#→D

5は半音5つ上げる。C→C#→D→D#→E→F

 

M2M: (CM→DM) Protagonism(主人公)
M6M: (CM→F#M) Outer space(宇宙)
M8M: (CM→AbM) Fantastical(素晴らしい)
M4m: (CM→Em) Sadness, loss(悲しみ、喪失感)
M5m: (CM→Fm) Romantic , middle eastern(架空、中東)
m5M: (Cm→Fm) Wonder, transcendence(不思議、超越)
m2M: (Cm→DM) Mystery or dark comedy(謎めいた、暗いコメディ)
m11M: (Cm→BM) Dramatic sound pupular in early 21st century(21世紀初期の劇伴)
m6m: (Cm→F#m) Antagonism , danger (less character-based)(敵対1)
m8m: (Cm→Abm) Antagonism , evil (more character-based)(敵対2)

(カッコ内編者)

これらの和音が「ハリウッド映画で多く用いられるサウンドである」と

 

・類似する動画

アラン・シルベストリなどが良く使うサードリレーション("3rd relation harmony")の仕組みについての解説動画です。

www.youtube.com

上の仕組みで記号化すると、

m3mを繰り返す方法です。

Cm→Ebm→F#m→Amという進行になります。

前の3度を次のルートに使うことで、適度に重複音を含みつつ、劇的にサウンドを変化させていく手法です。

 

これを逆にした方法が『機関車トーマス』などでも聞くことができます。

C→Abという進行で、次のコードの3度が手前ルート音というコードワークです。

何でもかんでも転調だと解釈して意味喪失するのではなく、関連性を見出すようにすると「変態だ!」から「パクろう」に転じることができます。

作曲家はそういう姿勢で接するべきだと思います。

・発展

上のレクチャー動画では2つのコード進行について解説されています。

が、当然コード進行は2つだけではなく、3つ以上の流れによってより具体的なイメージを想起させるものです。

たとえば「M2M: (CM→DM) Protagonism(主人公)」のコードを3回以上連続させると、ゲーム『グラディウス』シリーズで頻出する、高揚感のあるサウンドを得られます。

他、ゲーム系だとsus2を基調にすると誰でも崎本っぽく、あるいはプログレっぽく作れるとか、いろいろなアプローチがあります。

いずれも広い意味で「パラレルコード」に属する語法だと言うこともできるでしょう。「M2M」ではなく「M1M」などを使ってみると、キー共通音が一瞬で喪失するので、いかにもパラレルで書いたサウンドを手っ取り早く実装できます。個人的にとても好き。

その手のゲーム音楽を作る際の足がかりにどーぞ。

・「コード理論」で考えない方が良い

こうしたコード進行はキーやファンクションで考えない方が良いです。

強引に説明しようと思えばできないこともないのでしょうが、こじつけ感が強いアナライズになってしまいます。こういうアナライズをやってしまう人の書いているネット記事は非常に多く、今回紹介したような手法を知っている人にとっては「そうじゃないんだよなぁ」と呆れてしまうことでしょう。

 

初歩的な理論で語れる音だけではなく、「この曲ではこういう和音運動が何度もあるよ」というルールを貫くことを『語法』と言います。発展的な、独創的な『語法』を編み出してみましょう。

ヨーロッパの語法から派生したブルースも独特の語法の発明ですし、アフリカやアジアの音楽がブームとなったのも、いわゆる先進国の音楽理論では説明できない語法があったからです。

話すと長いのでこの記事では割愛します。

 

・キーカラーで考えない方が良い

絶対音感系の人(特にピアノの人)が議論するハ長調は明るい」とかいう印象論は考えない方が良いです。

 

もしキーについて考えるなら、楽器の特性について慎重に決定することに注力することの方が、はるかに実務的で重要度が高いです。

ちなみに私個人の見解としては、キーによる印象というものは存在しないことになっています。 

eki-docomokirai.hatenablog.com

要約すると、「どれみシール」を使いすぎた人が、色と音をセットで刷り込まれた影響があまりにも大きい、ということです。 

無調の曲とか、やむを得ず移調演奏した経験とか無い人は幸せだね、という程度にしか思っていません。歌手の特性を無視して「必ずこのキーで!」なんて言えるんでしょうかねぇ。

 

eki-docomokirai.hatenablog.com

いずれにせよ、「このキーはこういう意味です!」と一方的に押し付けをしてくるのはまともな音楽家じゃありませんよ、ということでよろしくお願いします。

そして、キーにこだわりすぎて作曲をすることは、この記事で紹介しているような、より感情的で拡張的な音楽表現への道を閉ざすことになりかねません。

 

■鍵盤遊びのススメ

こういう不思議なコード進行は、コードの教科書に書かれている理屈で考えず、自由に「鍵盤遊び」をし続けることで編み出すことができます。

上の例だけにとどまらず、あるコードを演奏した後にどのコードに動くとどういう雰囲気を得られるかについて実験をしてみることを強く薦めたいです。

1回のコード進行だけではなく、3回、それ以上のコード進行もメモしておくと必ず役に立ちます。

ネットでたまに盛り上がる珍妙なコードの話題は、その殆どがコード単体に対してです。コード進行はその名の通りは単体で考えず、進行で捉えるべきものです。連続性によってどういうサウンド・キャラクターを得られるかについて、すでに覚えた理論を無視してみてください。分析は後でやれば良いですし、分析が不能だったとしても構いません。

・個人的な経験

私は昔こういう研究をずっとやっていたことがあります。師匠からは「そんなことやってないで作品をどんどん作らないとダメだ!」と怒られました。

が、その頃に膨大な楽曲研究をし続けた経験はあらゆるジャンルの音楽を作編曲で大いに役立っています。

「鍵盤遊び」は初歩の理論にとらわれない、より自由でクリエイティブな音楽性を得られるので超おすすめ。

・多くのコード本はジャズ・ポピュラー用途に限られる

「コード進行」の話題の殆どがポピュラー音楽的ですし、段階的に習得させようとしている教科書の多くは初歩的な知識止まりになっています。

たいていの教科書の終わり方では「より発展的なサウンドを模索してみてください」とか「覚えたらすべて捨てて自由に」という感じになっているはずです。

・その他の類似和音進行

クロマチックメディアントなどなど。

いわゆるポピュラーのコード理論だけではなく、「おやっ?」と思ったらどんどん耳コピしてみると、より自由で表現力のある音楽を知ることができるはずです。

 

より劇的な効果のある音楽を作りたいなら、初歩のポピュラーの教科書に書かれているコード進行を卒業しましょう!

 

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