eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

ダッキング専用エフェクタ "ShaperBox"が素晴らしい件

高機能ダッキング専用エフェクタの紹介です。

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(2021年4月26日更新)

 

(新旧バージョンの画像、解説が混在しています。)

ダッキング系エフェクタに対する誤解と不満

まずよくある誤解から。

エフェクタはあなたの曲を聞いて自動でなんでもやってくれる魔法の道具ではありません。ツールを使った上で、入念なオートメーション処理など、丁寧な楽曲制作は不可欠です。

雑にダッキングさせたいだけの人には何も言いませんが。

 

不満点。

(初期版のみ)

一定のBPM、一定の拍子じゃないと誤作動します

最新版ではこの問題がクリアされました。テンポを変動しても大丈夫です。

ただし、三連系の拍子を使う場合や、拍子が変わる曲では良く考えて設置する必要があります。気をつけましょう。

なお、私が知る限り、DAWの拍子情報を参照してくれるダッキングエフェクタは存在しません。あったら下のコメント欄によろしくお願いします。

 

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それを踏まえて、本題へ。

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 ■入手

www.cableguys.com

ダッキングに使うだけなら"VolumeShaper"のみの購入も可能。これだけで良いと思います。

https://www.cableguys.com/volumeshaper.html

34ドル。安い。(PBとかの方が安いこともあります。)

マニュアルPDFはこちら。ただし内容は薄い。

https://www.cableguys.com/downloads/Cableguys-ShaperBox-2-Manual.pdf

・デモ版

デモ版は「機能無制限」「セーブ不可」です。

雑に使うだけならダッキングさせたいトラックをオーディオ書き出ししてしまえばOKです。

DAWへのオートメ書き込みは保存されますが、デモ版のままでは再現性に難があります。テスト済みです。

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・なぜダッキング専用エフェクタを使うのか?

よくDTM初心者界隈で書かれているSCコンプを使った方法では適切なダッキングの実装は困難です。かなり詰めて行かないと、適切なグルーヴを作れません。

が、こういう専用ツールなら求めていたノリが簡単に作れます。

 

下のGUI画像に番号を入れたので、ダッキング専用エフェクタのメリットを順に解説。 f:id:eki_docomokirai:20201108053946p:plain

 

  1. キックが来る前から余白を作れる
  2. バンド分割で低音だけダッキングできる
  3.  裏拍にピタリと合わせられる
  4. 持ち上がり量でグルーヴを作れる

これらの加工は「オーディオ化してからの位置ずらし」や「トリガー専用の発音しないトラック」、「多重コンプ」、「手書きエンベロープ」などの手法で実装できます。

が、非常に面倒です。死ぬほど面倒です。(昔はそういう方法だった。)(私もMIDI時代に音圧に配慮した演奏をさせるために、そういう変態的な打ち込みをやっていたことがありました。)

ちゃんと作ってる人はそういう手間を惜しまなかったんです。

で、こういうプラグインは、ニッキーロメロを筆頭とする先達が苦労していた点を瞬時に実装できるように設計されています。 訂正。 ニッキーロメロが後です。機能を簡略化したものとして。

 

・トリガー

MIDIトリガーを設定できるようですが、残念なことに不安定です

テンポシンクによる4つ打ち専用として運用するのが妥当だと思います。

 

・カーブの設定値

極めて柔軟なカーブを生成できます。編集ポイントは非常に多いです。

ややクセのある挙動ですが、HALion(有料上位版)とそっくりな挙動です。

 

・設定値をずらす

(旧版のみ。最新版では削除されています。)右下のツールバーの<>ボタンで、設定したカーブを水平に前後移動できます。

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・バンドスプリット

帯域スプリットは3バンドまで。

左上エリアで切り替えできます。

スプリット境界線はオートメできます。

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ハイ/ローの片側だけダッキングしない、いわゆる「プロいEDMのアレ」を作れます。もちろん通常のDAW機能だけでも同じ音を作ることは可能ですが手順が面倒です。

・オートメ各種

ダッキングが必要ない時には右下のMaster Mixにオートメーションを書けばOK。平坦な音に戻すことができます。

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ただし、多くのパラメタのオートメーションは効かないので注意。

 

・追加モジュール

ボリューム制御でダッキングを行う他、フィルターやパンなどを揺らすモジュールを追加することも可能です。

ダッキングだけではなく「音作り」を目的とした特殊な用法も可能のようです。やらんけど。

■小技

・操作系

Shift - グリッド吸着

Ctrl - 新規ポイント追加

ポイント上でダブルクリック - ポイント削除

・運用

ウェットバランス大事。100%はまず無い。

スライドを使って移動した方がスマート。

カーブよりもポイントを増やして直線の方がスマート。

トランスゲート的に使う場合は短い拍で作った方がスマート(例えば16分音符1回分だけを作る)。

トランスゲート的に使うならウェット100%。

クロスオーバーは基本6dB。

クロスオーバーは200と2000か、無し。3択が速い。

 

■同種のダッキングエフェクタ

・Nicky Romeo Kickstart

Shaperbox系の先祖です。中身を作っているのも同じメーカーです。

今から所有するならShaperboxだと言えるでしょう。

ミーハーな人はコレクションとしてどうぞ。

www.kickstart-plugin.com

正確な情報かどうかはアレですが、先にShaperboxが出ていて、販促の一環としてメジャーアーティストの名前を使いつつ、機能をシンプルにしたのがニッキーロメオ版だそうです。わざわざ低機能になっているものを使う意義は無いと思います。 

 

Waves Oneknob Pumper

こちらはすでに持っているダッキング専用エフェクタ。一時期無料で配布されていました。定価23ドル。今からWavesのを買うなら、Shaper Boxの1機能だけを抜き出したVolume Shaperを34ドルで買った方が圧倒的に良いと思います。

雑にやるだけで良い場合は便利。丁寧なことは一切できない。

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https://www.waves.com/plugins/oneknob-pumper

そのまま使うとナンセンスなタイミングになるので、右下のOffsetをグルーヴに応じて操作すると良いです。

が、カーブのニュアンス変更ができないので、やはり徹底的な煮詰めはできません。「まーダッキングしてりゃ良いんでしょ?」という雑な制作ならこれでも十分です。

でも、こだわりが無くてたまにしかダッキング音楽をやらないのであれば、だからこそちゃんとした道具で「ホンモノらしさ」を出すべきだと思います。変なタイミングでダッキングしてる曲はたぶんこういう雑なプラグインでポンと加工しただけなんじゃないかと思っています。

・フリーのダッキング

EDGのSideChainer2は先読みとカスタム傾斜ができます。フリーでは圧倒的にこれ。(2021年時点)

rdgaudio.com

おなじみTAL。ちゃんと64bitも対応。

TAL-Filter-2がダッキングです。フリー。試してないのでノーコメ。

TALはは過去にCubaseと圧倒的な相性の悪さがあったので気をつけるべきです。

FL Studio等ではド安定です。他にも実用性の高いシンプルなプラグインを多くリリースしています。

tal-software.com

 

・Duck

似たようなのはちょこちょこリリースされてる。どれも一長一短な印象。

買うならVolumeShaperにするべきです。EDMを作ることが多い知人もそう言っていました。(2021年時点)

eki-docomokirai.hatenablog.com

■なぜコンプでやらないか?

コンプだと下降と上昇のタイミングが悪く、適切なグルーヴを出しにくいです。これを回避するために複数のコンプを同時にSCして制御することがあるのですが、やはり面倒です。

用語を使い分ける人は、単純なコンプによるダッキングを「クラシック・ダッキング(クラシック・ポンピング)」と呼ぶのだそうです。対義語は専用エフェクタでやるモダン・パンピング。

Cubase付属のコンプでダッキングする場合のコツ

もしCubase付属コンプでダッキングやるなら、アタック/リリースよりもHOLDを使った方がタイトに処理できます。たぶん。

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ただ、これも単体ではニュアンス作りが難しいので、やはり多重SCコンプなどの変則的なミックスをしないとグルーヴを適切に作れません。

 

■とはいえ魔法のプラグインではない

初心者っぽく「ダッキングできた!わーい!」となっているだけではダメですよ!

 

確かにダッキングは誰が聞いても分かるド派手な加工です。EDMの要素を取り入れた現代的なサウンドには欠かせないと言えるでしょう。

しかし、ダッキングを使わない状態でもグルーヴのある演奏じゃないと、音楽的な仕上がりにはなりません。当たり前ですね。

「専用プラグインを使っていてそんな程度か?」と思われないようにがんばりましょう!

 

■応用的な貧乏運用

「そこまでやるか?」というアイディア話。

デモ版で大音量のホワイトノイズを「先読みダッキング」させたデータを作る。

そのダッキングノイズから、サイドチェインコンプで音量が逆転したノイズを作る。

という方法で、先読みダッキング専用のトリガー波形を生成することは一応可能です。これでデモ版すら不要になります。

何を言ってるのか分からない人は分からなくて良いです。

 

つまりこうだ。

「・・・」を押して、上下反転にする。

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で、ホワイトノイズを通して書き出す。

 

するとこういうダイナミクスを抽出できるでしょ?

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この波形をサイドチェインのトリガーにすれば良い、ということです。拍ジャストの手前と、落ちていく傾斜も作れますね。さらにやりたいなら

 

こういうことをやるのが面倒なら買った方が良いと思います。つーか買ったよ。
 

 

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(検索用語:サイドチェイン、SIdechain、ポンピング、パンピング、Pumping、ダッキング、Ducking、ゲーティング、Gating)

 

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