知人の曲を添削ついでにリマスターして色々話をしていました。
■関連記事
下記事の続編的な記事です。
eki-docomokirai.hatenablog.com
曲の音はブログ記事に貼れません。お察しください。
■リファレンス
オケ劇伴曲でダイナミクスレンジが非常に広いので、リファレンスがやりにくい時はこうする。
似たような音量バランスの箇所を切り取って配置し、編集中の曲に当てはめていきます。必要以上に細かくやる必要はありません。あるのと無いのとでやりやすさが全然違うよ、というだけのことです。
リファレンスの良さそうな箇所を10秒程度抜き出し、そのオーディオリージョンをコピペして1曲の長さを埋め尽くします。これを3段階の音量箇所で行います。
で、必要ない箇所を削除していく。そうすると上の画像のようになる。
で、毎度おなじみのマルチアナライザーで目視比較する。
■帯域バランス直し
ダイナミックEQを使って何も考えず大体近い感じにします。
どうせ後でもう一度調節するので「だいたい」でOK。
Toneboosters FLXはアップワードをやりやすい。弱い箇所は上げたい。大きすぎる箇所は下げたい。中間の箇所で合わせて、上げ&下げの境目を見定めることに集中する。
ローエンドが狂った上げかたになっているのには、元データを作った作者が疲労困憊していた、という深い理由がある。
「なんか変な音だからスカイプでプロジェクト見せて」と頼んで見せてもらったら、なんとマスターリミッターの後になぜかEQが刺さっていてローカットしていたので、2人とも眠気もブッ飛ぶほど爆笑した。
一体この作家は何を聞いて、何をチェックしたのか?
疲れている時にチェックしても無意味だということですね。
今回の単曲マスタリングに限らず、多人数から2mixをもらってマスタリングをやると稀によくこういうクソ音で提出してくる人がいる。自分も「やらかした」ことがあります。
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これは下で説明する各種調節の後にもう一度やり直す。
アナログ感を加える。
お前はまだそんなプラグインを使ってるのか?と言いたい人がいるはず。でも実際便利。今となっては軽いし。
サチュレートとコンプでそれらしくする。
で、リミッター。
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上の工程を何度か往復してバランスを取りつつ、3段階の音量の箇所ですり合わせをしていく。何度も言うけど曲が違うから完全一致は絶対に狙ってはいけない。
ここまでほぼ目視のみの作業。
■人間にはなぜ耳が2つあるのか知ってるか?
この後、「左右の耳でリファレンス曲と編集中の曲を聞く」という変態的な作業方法でサウンドをマッチングさせていく。当然スピーカーではできません。ヘッドホンのみで可能な確認方法です。
交互に聞くよりはるかに速い。まじで速い。
左右の耳で聞こえ方が違うので、たまにヘッドホンをひっくり返す。
なお、この方法は耳コピでも非常に便利です。やってみると笑えるので是非。
ただし、長時間やると気が狂ってくるので本当に短時間で済ませる。
この作業をやりやすくするために「逆がけ」しやすいヘッドホンを選ぶ人もいるのだそうです。
もちろんステレオ感の調節はできないので、交互に聞いてチェックする必要があります。
つーても、オケ曲で、しかも楽器配置も異なるのでむやみにステレオをいじらない方が良いです。
・ナチュラル感
ダイナミックEQを多用したリファレンスとのすり合わせをやると、どうしてもコンプ感が強い音になる。ナチュラルな音になるように、ダイナミックEQ(コンプ)のアタック&リリースを直す。概ねどちらも遅めに設定されるはず。
上の帯域から順に、
下の帯域を並べてます。
細かい数値に意味はありません。設定中に数字なんて見てません。結果的にこうなってた、という話。
「自然な音のまま緩やかにマスタリングしていく」という方針よりも、『ガチガチに固めてから、ナチュラル感を取り戻す』という方法です。聞き疲れしないので楽。
コンプ感を直して音が崩れるなら、もう一度各所を調整。今触ってるパラメタですべてを解決しようとしない。
そのためにすべてのエフェクタに瞬時にアクセスできるレイアウトにしておくのが割と大事。作業中にどういう配置にするかは本当に大事だと思っています。
■ケアレスミスに気をつける
マスターリミッターの後にEQが刺さっていて、盛大にローカットしていないことを確認する。
他、稀に良くあるのが「マスターフェーダーが下がったままだった」という悲しい事件。
耳はアテにならない。
書き出し前に必ず音量の大きい箇所でピークレベルをチェックしよう。
言うまでもなく書き出し開始/終了の位置に気をつける。
今回の人じゃないけど、あるDTMブログの人がアップする曲は、いつも音が出るまで数十秒かかる。
■仕上がり
こういう具合になる。
概ね良し。