eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

同人ボイスドラマ用アニソンを作ったよ(オフボーカル音源あり)

楽曲制作記です。同人ボイスドラマ用の主題歌(アニソン)を作っていました。

サークル側からオケ版のみ公開OKという許可が取れましたので、音をアップしておきます。

ボイスドラマ完成後には販促記事としてリライトか別記事にします。

(2018年6月12日更新)

(業務連絡)サークル側の許可の上でオケ版の音源をアップしています。削除や文面変更、各種URL等追記の必要がある場合には連絡してください。

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■機材話じゃないです。作編曲の話です。

「ここでは◯◯社の◯◯を使った。アウトボードが云々。」というタイプの記事じゃないです。 

 

■曲アップしました(オフボーカルのみ)

製品リリース前ですが、サークル側からオケ版のみ公開OKという許可が取れましたので、音をアップしておきます。

製作中のものですが、聞きながらどーぞ。

 

歌入れ時に使った時のオケです。この後歌をもらってからもうちょい仕上げています。

 

たまにレッスン教材として自分の曲を使うことがあります。

下書き状態や今回アップした状態で受講者に聞いてもらって「あなただったらここからどう詰めますか?」という実践をやってもらう中上級者向けのレッスンです。

そういう場所で出せる曲が毎回のレッスンに用意してあるわけではないのですが割りと好評です。

私としても新鮮な客観的アドバイスを得られることもあるので、良いギブアンドテイクの関係作りになっています。

 

■どういう曲?

曲のオーダー内容は「ピアノが目立つ曲に、あとストリングス。」「冬っぽく。」「冷たいけどアツい」「和風ではない」など。

その他、参考にと伝えられた音楽&映像作品などをリサーチ。映像作品、要するにアニメシリーズはあまりにも長いので、それらの作品群に詳しい知人にも質問し、重要なテイストを含む箇所をピックアップして見せてもらった。うん、要するに「中二病」「サブカル」系ということか。水樹奈々系のアレンジ仕事でやったあの感じで良いはず。

 

最近マイブームなピアノコンチェルト的な要素を盛り込もうと思った。

主にラフマニノフ、若干ベートーベンっぽさを入れよう。

それに沿って華やかなストリングスを書き、邪魔しない程度にその他の楽器で支える。

 

ギターとベースは主張しすぎない音。モダンな感じにしたかったのでドラムセットではなくEDM系のエレドラとSE、あとシンセで補強。ピアノやストリングス系を軸にした曲だからこそシンセのレイヤーを使ったほうが良いと思ってる。

 

コードはおおむね順進行の曲で、コード進行的な意外性は無い。

シンプルさ+要所要所での意外性、あとはとにかくピアノと弦の鮮やかさ、という曲です。

 

・曲先、後歌詞

「曲先・後歌詞」でやってほしいということだったので、曲先ならではのメリットを重視した。

ポピュラー歌ものは作曲よりも圧倒的にアレンジ仕事の方が多いので、こういう曲を曲先でやるのは久しぶり。せっかくだから楽しもうと思った。

 

作詞は結崎有利さん。

yu.sflabo.com

歌詞が後なので「メロ変更したいとか、音符分割したい箇所があったらお好きにどーぞ。」と伝えた。

うまい具合に変更提案もしてくれたので、今後も自分の曲で依頼してみたい作詞さんだった。かっこいい。今後も良いご縁になれるように誠実に努めたい。

 

■この記事の楽譜が雑な件について

この記事の楽譜は記事用に急造した雑な浄書です

演奏依頼や出版譜用はちゃんと作っています。念の為。

 

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■ピアノの話

とにかくピアノな曲なので、ピアノについて多く書いておきます。

 

・ピアノは難易度を無視した書き方

普段の生演奏用のピアノアレンジでは演奏しやすいように極力気をつけています。

が、この曲は全部打ち込み仕上げになるので、久々に「ぶちかます」ことに決めた。やっちまえ。

 

その弊害で、数箇所に演奏不能、もしくは極めて演奏困難な箇所が点在する曲になってしまった。が、このくらいは許容範囲だとも思う。辺にリアリティを求めるより、クラシック語で言うところの"con bravura"(達者に)な感じを全面に押し出すべきだと直感した。華やかさが大事。

 

後述する「これは演奏不能」という箇所以外は、コンチェルトに取り組むつもりで頑張れば絶対に弾ける、はず、だと良いな、と思って一気に書いています。

(途中チェック無しで全部作ってからピアニストに確認してもらったところ、「弾けますが何か」だそうです。)

 

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■動機とユニゾンの多用

曲のスタートはピアノのリバース音から始まり、「16分音符2つのアウフタクト」と「3音ずつの動き」の動機を提示する。この「3音」は曲全体でこれでもかというくらい出てくる。クラシック用語で言うところの「動機」です。

(音源0秒~)

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冒頭はピアノのリバース音を加工した効果音で一瞬で雰囲気を作ることにした。こういうところに時間を使うのは個人的には御法度。

いわゆるアニソンのフォーマットに則った歌ものなのでSEは短め。

曲先ということもあって、インスト感を強く出したかったのでサビ開始などせず、聞かせるイントロにしたかった。

 

・動機、モチーフ運用の話

下画像。

(音源55秒~)

サビ前でもニゾン3音の動機を使う。

運指都合で三連符の始めの音は両手それぞれ単音にしてある。打ち込みだけで作るならここもオクターブ重ねて良いと言えば良い。が、ストリングスも重なっているので音量不足感はまったく無いはず。

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下画像。

(音源1分08秒~)

サビ後半でも右手に同じ音形がユニゾンで出てくる。

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クラシカルな書き方ではあるけど、それに頼った保守性が出ないように工夫しています。 

 

・シーケンス的な動き

イントロ。

運指を考えずに欲しい音をねじ込んで書いた部分。(でも弾けるそうです。)

(音源3秒~)

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標準的なピアノの右手を書く時は、

親指(1)もしくは人差し指(2)開始

小指(5)が最高音

ターンして戻ってくる

という流れのほうがピアノらしくなる。

 

なんでこんな無茶な音形にしたのか?

これには明確な理由があって、曲のオーダーがいわゆる「厨ニ系」だったからです。

露骨に音数を突っ込んだほうがツカミが良いかなーと思って、あえて運指を考えないで書いた。言い訳じゃなくてマジで。

 

また、ツカミ的なしかけとしてイントロは6拍子。

平歌はずっと4拍子で歌いやすくしてある。

 

・ピアノ運指と難易度の話

途中で「親指が人差し指の下を潜る」「中指が親指をまたぐ」形にして右手の手首の位置をスライドしていくのもピアノの標準的な奏法のひとつではある。

が、よほど熟練している人が、特定の曲に熟練していないとスピード感のある出音にならないので気をつけるようにしています。

そりゃまぁ、ガチなピアノ弾きの人に言わせれば「そのくらいスムーズにできないとピアニストとは呼べない。小学生か!」と怒られるんだろうけど。でも実際そういう部分でずっこけてる人が多いのが実情でしょ?

 

生演奏を想定した時の難易度の設定については、下の過去記事に書いています。

eki-docomokirai.hatenablog.com

つまり、ガチ勢は「これは私には弾けません!」とは絶対に言わないんです。

 

・ピアノの難易度についてご意見を戴きました!
上に対してメールでレスポンスを頂きました。

 

音大生レベルなら普通に演奏はできると思いますが楽曲のテンポの早さもあるので、保育士レベルの演奏スキルだと演奏は難しいと思います。

貴重なご意見をありがとうございます!

 

テンポは記事冒頭に埋め込みした音のとおりで、かなり速いです。

上のご意見から、今の私が少々ムリでもサウンド重視で殴り書きしたものは、ちょっと上手い人なら弾ける難易度にまとまるようになってきた、と認識を改めます。ピアノ弾きじゃないのによくここまで書けるようになったな俺、すげえよ俺。うん。

 

ただ、出版譜などの場合には本当に難易度を下げる必要性があるので、引き続き神経質に難易度下げを継続していきます。私程度が書いた曲を真剣に練習してくれる人なんていませんし、そもそもそういう需要向けの楽譜を作っていないので。

 

演奏可能な難易度についてはここ4年くらいかなり真剣に勉強しています。あちこちで質問し続けてきたので成果が出ているんだな、と前向きに捉えます。

 

 

アルペジオ

Aメロ伴奏。

メロディのボーカルは音程の動きが少ない「お経」の書き方をしたので、ピアノは色彩担当。

両手を使った幅広い上昇アルペジオを書いた。

(音源18秒~)

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正直ここはもうちょっと運指を配慮しても良かったかもしれない。が、配慮しすぎると地味になる恐れがあったので、欲しい音をどんどん書いた。

メロの音との和声的衝突を避けるため、ピアノ側が回避する書き方をしているので、ピアノ譜として見ると若干の不自然さがあります。指の割当はある程度は考えたのですが、どうなんでしょうねこれ。

 

  

が、明らかに演奏不能に近いポイントがAメロの最後。

(音源39秒~)

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大して目立たないのにアホかと言いたい。

ピアノの難易度を考慮した書き方的には、「両手の位置が跳躍していると難易度2倍」だと教わっています。跳躍するなら逆の手は位置を保つと良いよ、とのこと。

 

そもそも打ち込みの音だけで仕上げまで行くことに決まっていたので、きっちりと運指チェックをしていないからこういう残骸が残っている。

お仕事的には各種チェックがどのくらい必要になるのか?という作業時間コストを考えているので、今回のピアノはオケと混ざった状態で聞いてさらっとチェックしかしていない。

ちゃんとチェックすることが必要な時にはパート個別でソロチェックしています。

 

上の箇所はその後直しました。そりゃ「弾ける」んだろうけど、演奏効果もほとんど無かったので難易度下げ。

 

・拍子の変化

Bメロは3拍子。

アニソンは途中で拍子を変えると物語性が感じられるのでウケが良い、と思ってる。

戦うヒロインの曲だからこそ、かっこよさ+切なさの2面性が欲しい。

作詞さんもちゃんと汲み取ってくれて、バトル系のパワフルな主題歌なのに「無力に」という歌詞を入れてくれた。さすが。(歌詞先だとなかなか二面性を出しきる曲にならない。ポエムと作詞のテクニックの大きな違いのひとつだと思います。)

 

Bメロ終わり部分はピアノ的に演奏困難。

(音源47秒~)

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まず、赤の部分の左手の跳躍が大きすぎる

救済策的に手の移動のための時間は確保したが、もし生演奏用だったらリテイクもしくは演奏ミスが多発するかもしれない。(この記事を書いた後で直しました。)

青の部分の下降跳躍はオクターブ間隔なので割りと難易度は低い。左手が高い和音を弾いた時の小指の位置に親指が「尺取り虫」の動きをすれば良いから、狭い意味では跳躍だと呼ばないこともあるらしい。これはたぶん金管楽器でオクターブ跳躍が割りと狙いやすいのと同じなんだろうね(簡単とは言っていない)。

 

■拍子の変化と変則的な小節数

上のとおり、Bメロ3拍子。

で、小節数も変則的にしてある。

3拍子が6小節で、歌の入りが2小節目から。

 

この方がボーカルもリズムが変わったことに対応しやすいし、メインメロが抜けることによるブレーキ感も強くなる。

16系から3連系にいきなり変わると歌いにくいし聞きにくいので、直前は4分音符を4回入れてブレーキした感じにしてある。こういう工夫をしないとポピュラーじゃなくてプログレに寄ってしまう。プログレが好きだからこそ、プログレにならない工夫をした点。

 

4拍子は倍テンで3小節やってキメのリズムに突っ込む。

こういう場合に4/4を1箇所だけ2/4にする方法もある。が、それは直近に知人SSWの曲のアレンジをやった時に何度も聞いたので食傷気味だった。直前にやった曲のテイストって次の曲にいろいろな角度から影響するよね?

 

■サビ

サビ(音源、59秒~)

平歌はずっと4拍子だけどサビは3連系にした。(音源、42秒~)

バトルものの場合、16系より8分3連(12/8)のほうが華があると思ってる。

多彩なアルペジオの演奏スタイルを盛り込んでピアノの魅力を演出してみた。

その対比としてエレクトロ系のキックとスネアが機械的なリズム。

安易なダッキングサウンドはコンセプトからずれる気がしたので、有機的で鮮やかなサウンドを目指した。

 

・サビのピアノ

ピアノはAメロ伴奏のアルペジオの変形で、より鋭い演奏をする。

ラフマニノフの楽譜では下のように均等な音符で書かれているが、これを演奏する際に、高い音に向かって一気に「流した」弾き方をする人がいる。

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そういうラフな演奏スタイルからフィードバックを得た書き方にした。

記譜だと下のようになる。

(音源59秒~)

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MIDI打ち込み的にもタイミングをかなりずらした演奏にしてあるので、同じタイミングに入るスネアやシンセホーンとうまく分離して聞こえる。

音源で明確に聞こえるのは高いの音だけなんだけど、下の音が無かったり、ずらしをしていないとふいんきが出ない。実際に演奏してもらうとしたら「拍外してラフに」と指示すれば狙い通りの演奏をしてくれるはず。だと良いな。

 

上画像、青で囲んだ箇所。

例の3音の動機のバリエーション。

4小節目では両手で交互に3連符をドタバタと強打する。

ここはストリングスもドラムも、そしてボーカルもtuttiになる。

 

 

 

・臭いサビを書く

サビのメロはこういう譜割り。力強く羽ばたくようなカッコ臭いメロディにした。

(音源58秒~、ただしオフボーカル)

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こういう臭いメロディを思いつくのは、いつも風呂で顔面にシャワーをぶっかけている時。風呂はクリエイティブに満ちている。

この曲では作詞はしてないけど、こっ恥ずかしくなるような狂った歌詞を想定しないと良いメロは書けない。

 

 

 

・ちょっとボーカルと作詞の話

 

もう一度同じ画像を貼ります。

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細かく書いていくと、

音の入りは「Tu」。発音が明確な「T」音で始まるのでクリアーになる。

つらぬ「け」の「Ke」も子音が明確に出るので強く吐き捨てる歌い方がしやすい。

3連符の2個目から入る「やみに」「さく」。「Ya」も「Sa」もずれたタイミングになる子音なので、正確なタイミングで歌うというよりも先に進む勢いを出しやすい。

 

楽譜2段目の最後2小節。

「こころ を まもる ため」の「ここ」「まも」は作詞さんが音符分割をした箇所。

もともとはどちらも2拍3連で書かれていた。

1回目と2回目で変化をつける上でも極めて妥当な分割処理だと思います。うまい。

 

中でもすごいと思った点。

作詞さんが「つらぬ | け」という小節線をまたぐ歌詞をつけたのは上手だなぁと感心させられた。その「つらぬけ」の後に上述のピアノの高音がズレぎみに入るのが非常にかっこいい。つらぬいてる。

あと、漢字込みでもらった歌詞では「つらぬけ」は「穿け」となっている。アツい厨ニ魂を感じる。

 

 

作詞には上のような音韻的なテクニックだけではなく、いわゆる世界観的な表現力など、いくつかのカテゴリ分けできる技術があります。もちろんどんな歌詞でも楽しく書けばそれでOKという考え方もありますが、仕事的に求められる作詞能力というのはまたちょっと違ったコツがあります。

 

・このメロ、息継ぎきつくね?

サビではボーカルメロディも3連系になっているんだけど、意図的に息継ぎポイントを減らしてある

なんで息継ぎをきつくしたのか?

本来なら息継ぎをしっかり確保して書くべきなんだけど、きっちり3連でなめらかに歌わず、息継ぎでタイミングが崩れて16分になってくれたら生々しさ(切迫感)が出るかな、という仕掛けです。そのスピード感の変化をうまく捉えてくれた作詞の結崎さんが本当に偉いと思った。

 

 

 

・サビのオブリと和声

繰り返しの際にはストリングスの扱いを変えて異なるオブリを書いた。

このアツい和声がこの曲を強く印象付けるはず。だと良いな。

このサビの繰り返し箇所は非常にうまく書けたと思っている箇所なのでぜひ聞いて欲しいです。

(音源、1分05秒~)

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これは和声的にNGじゃねーのと言う人もいるけど、鳴らしてる楽器の音色の性質が全く違うので問題無いです。初歩の和声の知識「だけ」で音楽全部を語るのは禁則です。

 

■Aリピート時の変化

リピート後のAメロ。

(音源、1分26秒~)

伴奏は同じで、メロディだけ変化しています。

この記事に張っている音源ではボーカルが無いので分からなくてすみません。リリース版にご期待ください。

 

そのままAメロを繰り返すと飽きられてしまう。

リピートするボーカル曲によくある「2番Aメロ歌詞の強引さ」を事前に封じたかったのもある。

 

一度演奏し終わったサビのメロディの動きも踏襲しつつ、元のAメロと融合しています。 

 

■ビジュアルからサウンドをイメージする

 

こういう臭いメロディや曲中に何度も出てくるキメのリズムを考える時には、MVや歌番組のカメラワーク、ステージ照明などをイメージしてビジュアルから妄想するのが私のやり方です。

このやりかたで外したことが無いんです。

音楽の理屈から考えるのはアイディアを実装する時だけだから、制作の序盤では完成後の映像をイメージした方が良いと思っています。

 

伴奏の書き方も、それぞれの楽器の奏者がちゃんとアツく演奏している姿が絵になるように書くようにしています。

この辺は私がいろんな楽器を演奏してきた経験が生きてる点のはずだから、自分の武器だと思って大事にしています。特定の1つの楽器だけに邁進してきた人にはなかなか書けないはず!たぶん!

レッスンをやっていても、特定楽器にはプロ並みに精通していても、知らない楽器の書き方があまりにも稚拙で足を引っ張っているタイプの人が多い印象があります。逆に、個別にはうまく書けているのに、全部が常に目立ちたがって衝突しているタイプの人もいます。

 

あるレトロゲームの中で「狂っていたほうが楽しいことは多い」と言って悪役(兄=魔王)が主人公(弟)をそそのかす場面があるのですが、すばらしくクリエイティブな言葉だと思います!

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■間奏

(音源、2分29秒~)

バトルものとのことだったので、間奏はフラッシュカットをイメージして構成した。

 

フラッシュカットというのは下の動画のような素早い映像カット編集でいろいろなシーンを一気に叩き込む演出。名前は知らなくても見れば「あー、こういうのか」と分かるはず。

(時間指定再生URL)

www.youtube.com

 

エヴァンゲリオンのOP、サビからのフラッシュカットは有名ですね。(時間指定再生URL)

www.youtube.com

(念の為書いておきますが、フラッシュカットはエヴァンゲリオンが初めてやった手法ではありません!昭和の刑事ドラマ等でも使われており、これは庵野秀明が頻繁に引用する昭和テレビ趣味によるものだと考えるのが妥当なはずです。)と、放送当時に詳しい人から教えてもらいました。

 

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で、フラッシュカットを想定して書いた間奏。

平歌が割りと普通なので間奏はハチャメチャにする。

基本的にはワンコードのリフに乗っかるソロがゴリ押ししてるだけなんだけど、これはうまく書けたと思う。

(音源、2分29秒~)

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10年前くらいにこういうのを書くことが多かった。が、当時の師匠から「それ音楽的に意味あるのか?」と怒られたことを思い出す。

 

この楽譜通りでも演奏は可能なはずなんだけど、完コピは恐ろしく難しいことになると思う。

こういうのを生演奏でやってもらうとしたら、軽くガイドだけ書いて「ad.lib. かなりアウトぎみ、激しく、音数多く」と書くだけにして、手癖でガンガンやってもらったほうが良い。

何も書かないと演者が困惑することがあるので、ある程度以上は書くべきだし、サンプル音も作った方が良い。アドリブとだけ書いて本当に良いアドリブをやってくれることはまず無い。

 

・ラスサビへのつなぎ

(音源、2分54秒~)

知人宅でプレビューした時に「そのままラスサビに突っ込むんじゃなくて、一息落ち着きたい」という秀逸なダメ出しを戴いたので、サビ前のボーカルを倍テンポにした。

比較のために画像を2枚貼っておく。

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「つらぬけ」の歌詞が1サビではすばやく貫いていて、ラスサビでは渾身の力だということが分かる。

どう考えても長くした方が正解。かっこいい。

「音楽に正解も間違いも無い」という考えの人もいるけれど、だからこそ「こっちのほうが絶対良いと感じる!」と言ってくれる人がいることや、その言葉をまっすぐ受け止めて「確かに良い!」と決めつけて、アイディアと心中する覚悟が必要だと思う。自由とは選択肢のことで、1つしか選べないことだ。

 

もちろん他人のダメ出しを突っぱねることで得られる良さもある。

が、私の場合はダメ出しを頼んだ場合には必ずその提案を汲み取ることにしています。頼んでもいないのにアレコレ言ってくる人の声は基本的に無視しています。

また、余談ですが、仕事でも完成後に「修正があったら言ってください」的なことは言わず「できました」とだけ伝えることにしています。修正案を求めるような言い方をしてしまうと、それを言われた相手はなんとしても何か言わなきゃという気持ちになってしまい、思ってもいないことを口にすることがあるからです。

これはデール・カーネギーの『人を動かす』の方法論とはまったく逆なのですが、自分のキャラクターを加味した上で意図的にそうしています。

デール・カーネギーの場合は「最後にひとつ頼みたいことが……」と切り出して、相手に最後の1コマを動かす権利を与え、満足感を演出する方法を推奨しています。興味のある人は読んでみてください。決して損のない名著です。

右の商品貼り付けリンクからどうぞ。

 

■ストリングス

この曲の楽器の優先順位は「ボーカル>>ピアノ≧ストリングス>Gt、Bs、Dr」です。

 

曲の制作はまず最小限のMIDIトラックで骨子を作る。

メロ、ピアノ、ストリングス一括、Gt,Bs,Dr。

 

ピアノは音を多めに書きつつ、後から良く見てストリングスであるべき箇所はピアノを間引いてストリングスを主役に。あるいはギターに担当させる。

 

それらの楽器だけだとパワーに欠けるので目立ちすぎないシンセを数本重ねる。

ストリングスを分割し、差し替え。

 この差し替えの段階でどういう鳴り方になるかを最初からイメージできるかできないかがとても大事だと思ってる。

最初から分割トラックで書いても良いんだけど、それだと制作スピード的に不利だし、骨子が定まっていない段階でストリングスのキースイッチとかを使い始めると、最終的におかしなことになる方が多い。(経験上)

なので、ちょっと遠回りなんだけど最小限のトラックでラフに書くことにしている。その方が仕上がりが良い。

ネットでよく見るDTMの人のように、1小節目から全部の楽器を重ねる方法はやってないです。

それをやると楽器の出入りがおかしくなって当然だと思ってるし、そういうやり方をしているから作るのが遅いんだとも思う。絵描きする時に下書きするでしょ?という話。最初から色を塗り、細部を整えながら絵描きなんてしないでしょ?

 

で、ストリングスはピアノとメロディとの掛け合いを「適度に」行うスタイルで書く。

 

・楽器は普通に使うべき

ストリングスの書き方は原則的に「変な奏法を使わない」「音源に入ってる特殊な音に頼らず、普通の奏法を普通に使う」「音符配置で勝負するべき」というスタイル。むやみにトレモロとかフォールとかを使わないです。アイリッシュのスタイルならアリというか多用するべきなんだけど、ストリングスセクションとして運用するスタイルでは御法度だと思っておいたほうが良い。

よほどの決め所で本当に効果的なら何をやっても良いんだけど、現代曲じゃないんだし普通に音符を並べるべき。多くのDTMの人は変な奏法を使おうとしすぎていると思う。

 

最近聞いたメジャー流通曲で「おいおい」と思ったのは、のびのびした弦のオブリなのに全部トレモロになっていた曲。確かに手持ちの音源の中でトレモロが一番音が立っていたのかもしれないけど、それは流石におかしい。もちろん打ち込みでやるなら何でも自由なんだけど、その自由には「こいつ何もわかってねぇ」と思われてしまうリスクもある。

 

・和声

ストリングスっていうと猫も杓子も「和声ガー」と言って覚えたての拙い和声で書いて、結局オケ全体の中で埋もれてしまうケースを良く見る。

もちろん和声は大事だし、むしろできて当然の「感覚的なもの」なんだけど、教科書の和声でポピュラー弦を書いている人が割りと多い。教科書の和声は古典的な和声だし、そもそも学習段階で習得する基礎技術でしかない。筋トレで言うと腕立て伏せの正しいフォーム、みたいなものでしかない。野球や格闘技の試合中に腕立て伏せをする人はいないということ。

オーケストラの曲でもポピュラーの曲でもちゃんと楽譜を見れば分かるとおりで、あんたが持ってる教科書で正解をもらうための音符配置なんてしてない。「ここぞ!」という場面では3オクターブのユニゾンでも鳴らすし、少々ぶつかっていても流れ的に問題が無いならそのまま放置してある。

そんなことより大事なのは「演奏している人が楽しいか?」という観点だ。

古典クラシックやってるんじゃないんだから、演奏する姿がビジュアル的にどうだとか、スリリングな場面なのにチェロだけ退屈してないかとか、そういう視点が大事だと思う。

 

『編曲の本』では音楽の理論の話は手引きが多く書かれている。

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定価8000円なので書籍としては高いと感じるかもしれないけど、プラグインを買うよりはるかにコスパが良い。欲しいものリストに入れておいて、セールで謎エフェクタとか書いたくなった時にこっちの本を買えば良いんじゃないかな?絶対役に立つし、10年後でも役に立ち続ける。大きな本だから家に虎が入ってきた時に盾にもなる。

あと、楽譜が読めないとこういう教科書から何も学び取れないハンデを抱えていることになるので、楽譜は最低限読めるようにしたほうが絶対に良い。

もちろん「楽譜が読めなくてもDTMはできますよ!」とは言いますが、読めた方が当然有利です。読めない方が有利になる場面は無いからです。

 

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(いろいろ書いたけど一般的なことなので削除)

 

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■終わりに

実質3日で仕上げた曲でしたが、たまにはこうやって振り返りつつ色々アウトプットしてみるのも良いかなと思っていろいろ書きました。

書きながら「この作業、もうちょっと時短できたなぁ」とか「あとでこの素材はストックしておこう」とか、「あー、ここ直したかったなぁ」と思った点もあります。

今後の制作に活かせれば良いなぁ。

 

曲を作っている人からご意見を貰えれば嬉しいです。

お気軽にご連絡ください。お互いにヒマな時にこの曲をサカナに雑談スカイプしましょう。

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