メガドライブ初期のRPG「ファンタシースター2 還らざる時の終わりに」(1989年セガ)の音楽をアレンジしました。レトロゲーム音楽アレンジです。
個人的に大好きだったゲームです。悲劇的なストーリーと、それ以上に狂った難易度が素敵でした。
(2018年7月22日更新、再販開始)
- ■クロスフェード音源
- ■R-TYPEアレンジもあるよ!
- ■ファンタシースター2アレンジ、制作後記
- ■Phantasy Sprite タイトル画面~タイトルデモ
- ■Step Up データメモリー等
- ■Pleasure Stream モタビアの各地の街
- ■Restration モタビアフィールド
- ■Rise or Fall 通常戦闘
- ■Under 宇宙船ノア
- ■Place of Death ボス戦、最終イベント
■クロスフェード音源
Youtube版はこちら。
Phantasy Star2 アレンジ、クロスフェード - YouTube
(2018年7月22日~)CD-Rでの再販が可能です。希望者はメールで連絡してください。ショップ委託等は予定していません。
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■R-TYPEアレンジもあるよ!
同時期に「R-TYPE」もアレンジし、こちらも制作後記を書きました。
eki-docomokirai.hatenablog.com
いずれもM3(2017秋)に出品します。私は現地には行かず、サークルの人が売り子をやってくれます。ありがたや。
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■ファンタシースター2アレンジ、制作後記
同時期に作った「R-TYPE」とほぼ同じ音色セットで制作されています。
曲ごとに必要になる専用音色などはちゃんと用意しているので、まったく同じ音色セットではありません。
アレンジした曲は、
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Phantasy Sprite タイトル画面~タイトルデモ
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Step Up データメモリー等
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Pleasure Stream モタビアの各地の街
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Restration モタビアフィールド
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Rise or Fall 通常戦闘
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Under 宇宙船ノア
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Place of Death ボス戦、最終イベント
です。
クロスフェードでは構成の都合上、最初の曲を最後にしています。
■Phantasy Sprite タイトル画面~タイトルデモ
効果音スタート。めっちゃ宇宙。
本編ではあまり「還らざる時の終わりに」感が無かったので、「時」っぽさを表現するために柱時計の音を入れました。
この効果音はアレンジの最後の曲"Place of Death"の最後にもちょっと変更したものを入れています。アレンジアルバム全体として、時計で始まり時計で終わる、という構成です。千年紀ごとの節目に起きる事件がファンタシースターシリーズですよね、ということで。
■曲集の音色セット
「ファンタシースター2アレンジ」の音色セットはシンクリードとスイープパッドを多用しています。それを支えるギターとシンセベース、EDM系ドラムという音色構成。
当時のメガドライブではシンクリードの音を鳴らす技術が編み出されていなかったようですが、当時のゲーム音楽でよく使われていたシンプルなシンセリード音ではなく、シンク系のギラついた未来感のある音のほうが「続編感」もあって似合うはずだと考えました。
原曲にあるフワっと持ち上がってくるシンセパッドがやりたかったことは間違いなくスイープ音色のそれでしょう。やりたかったことはこういうサウンドのはず。
あと、当時流行していたフュージョン系のテンションサウンドを多く取り入れました。聞いてもらった人が「古くて新しい何か」を感じてもらえれば良いなと思います。
時計の音、遠くから響くクラシカルな旋律とコーラス。
そして2の開幕を告げるフュージョン部に突入。
原曲では省略されているボイシングをリビルドし、「こうしたかったんですよね!?」という提案を形にしたアレンジです。
複数のシンクリードが絡み合うパートでは、原曲では対旋律に若干の設計不良があるので(とんでもないスピードで制作されたゲームなので仕方がないことです)、形を壊さない程度に書き直しています。
最後はテクニカルなエンディングを付けて、シャット音で終わり。
■Step Up データメモリー等
1曲目のシャット音を引き継いで電子音でスタート。
この曲はデータメモリーセンターでセーブやロードを行う時の曲です。
ゲーム再開時はタイトル画面が出たらスタートボタンを押し、すぐにこの曲を聞くことになります。
RPGではイベント曲やエンディング曲などのドラマチックなシーンよりも、戦闘曲やメニュー曲、街の曲などの曲を聞く時間が長いです。ゲーム体験の印象はこういう曲のメロディとともに記憶に残り続けます。
ということで意図的にそのままループ。目覚まし曲にしたら素敵な1日が始まるかもしれません。
■Pleasure Stream モタビアの各地の街
非常にキレの良いリズムが印象的な序盤の街の曲。
ファンタシースター2の音楽は諸事情からやたら派手なスネアとタムの音が目立つゲームです。良くも悪くもスネアとタムが顔なので、これをうまく活かすアレンジにしようと考えました。
スネアはEDM系のゲートスネア、タムはバチバチにチューンしたAddictive Drumsのメタル系タム。シンバルは極力使わずにビッグスネアやインパクト系の音でEDM寄りにし、演奏内容も意図的に機械的にしています。
普通の音楽として考えるとおかしく聞こえるかもしれません。聞いてくれた人がどう判断するか若干心配ではありますが、「はいアレンジしましたー。リアルなドラムでしょー」的なのは逆に安易だと考えたわけです。
■Restration モタビアフィールド
シンプルな8ビートとスイープパッドが奏でる未来感。
スイープパッドの音色はシンセの設定一発だと、アタックとリリースのタイミングが噛み合わないので、スイープの持ち上がりはすべて手書きにしました。
シンセベルの音をリバーブした上でリバースした音をパッドにして、さらにリバーブすることで透明感を出しました。
この加工は非常に綺麗なのでしばしば行うのですが、その度に「先読みして逆リバーブできねーのかなー」とボヤいています。知人作家にこれを言うと「うちゅうのほうそくがみだれる!」と言って笑われます。いやいや、そんなことねーよ。先読み系エフェクトこそが次世代デジタル音楽だから!絶対くるから!過去からやってくるから!
ループ演奏される中でメロディは徐々に重なってハモる展開で、多くの仲間との出会いを表現してみました。
音色の強さの都合で対斜せざるを得ないことになってしまったのはミスだったのか、正解だったのか、ちょっと判別できません。
1回目は主人公ユーシスとヒロインのネイ。2回目でオクターブで加わるのがマッチョ男のルドガー。3回目でハモるシンセが女医アンヌ。暴れてるギターがジャンク屋のカインズ、もしくは泥棒貴族のシルカという想定です。
ジブリのアニメ映画『おもひでぽろぽろ』の中で農家に転職したトシオは「都会の人は田舎に憧れる。でも田舎の景色は人が作った風景だ」と言って都会から来た主人公を諭します。
ファンタシースター2でフィールドに出た時にプレイヤーは確かに「自然がいっぱいだ!」と感じる。でもその緑は幾何学的な機械の壁で仕切られ、明らかに人工物と分かる川が流れている。それでも疑いのない美しさを感じる。
ファンタシースター1のモタビア星は不毛な砂漠の星でした。1から1000年後の世界では惑星はまるごと改造され、豊かな緑の星になっていることを知る瞬間です。
ストーリーのネタバレになりますが、主人公たちはこの歪(いびつ)な豊かさが何者によってもたらされたのかを知り、怒りを爆発させることになります。
そのストーリー展開を配慮して設計されたのかどうかは分かりませんが、この曲の明るさ、爽やかさすら虚構だと知ることになり、自らの手で破壊するエンディングを考えるとなんとも言えない気持ちになります。
長々と脱線ぎみなことを書きましたが、ファンタシースター2の悲劇的なストーリーが印象深いものになっている理由は、こういうギャップ演出の効果もあるよなーと思うわけです。
■Rise or Fall 通常戦闘
RPGで最も大事な通常戦闘曲です。
めっちゃ臭いギターアレンジ。
ギターをもっと太く前に出そうかとも思いましたが、他の曲から浮いてしまうのでストレートに仕上げました。
間奏のアドリブソロではファンタシースター1の戦闘曲のモチーフを入れました。
■Under 宇宙船ノア
最終マップのダンジョン曲。
イントロ等のギターリフは何かの洋楽ロックなんだけど、曲名を思い出せない。
アレンジで入れたクリシェの動きは原曲には無くて、原曲はまっすぐなコードで構成されています。
最終マップということでストーリーも難易度も緊迫感があるので、適度に不協和音を当てています。また、機械的な効果音でピコピコさせています。
ゲームの終盤の曲では重々しくなるより、こういう曲みたいに「行くぞ!」「あとは勝つだけだ!」的な勢いがあるゲーム音楽がとても好きです。アニメで言うと2期最終回で大ボスと戦う時に1期の主題歌が流れるようなアレですよアレ。
そのシーンの見たまんまを表現するのではなく、ストーリーの流れに配慮したBGMチョイスって良いと思いませんか?いわゆる「風景に寄せるBGM」ではなく「心情に寄せるBGM」の方ね。
そういう意味でアニメ『キルラキル』は最高でした。BGMの曲もタイミングもちょっとありえないレベルだと思っています。アニメサントラ好きの辛口な知人も絶賛していました。
■Place of Death ボス戦、最終イベント
ボス曲です。
ボス戦はゲーム中に何度かあるのですが、ここではラスト2連戦のダークファルス戦とマザーブレイン、そこからエンディングにつながることを想定したドラマチックなアレンジにしています。
ゲーム本編では準ラスボスのダークファルス、本ボスのマザーブレイン、黒幕によるネタバラシの合計3回、この曲が立て続けに流れます。最終曲目でこれでもかというくらい聞かされる印象深い曲です。
アレンジではループ3回目からクワイヤ(合唱)を追加。この合唱が仲間たちのものなのか、黒幕たちの狂気の声なのかは特に想定していませんが、残酷な機械と感情的な人間の戦いということで、メカニカルな効果音で始まるイントロと対比させています。
最後は爆破オチから1曲目の宇宙音と時計の音に戻ってオールエンドです。
戦いは次の千年紀へ。
ファンタシースター2の結末はゲーム内では語られていません。
最終ボスを倒した後、黒幕との会話の途中でエンディングデモが始まり、主人公たちは黒幕への怒りをぶちまけます。
当時の数少ないメガドラ友人とファンタシースター2のエンディングがどういう意味なのかという話をした際の結論は「主人公は怒りに身を任せて怒りの頂点でメギドを使い(画面のホワイトアウトはメギドの光だ!)、黒幕たちもろとも宇宙船ノアを破壊。全員死んだ。」ということになりました。
解釈についてはいろいろあるようですが、明確な根拠となる決め手が無いですから、プレイヤーそれぞれがどういう結末をイメージするかは自由ですね。
もしかしたら偉大なエスパー、ルツが救助を試みたかもしれませんが、全員を救出することは叶わず、誰か1人だけ生き残ったんじゃないか?とか。だとしたら一番地味で役立たずだったヒューイが生き残って語り部になるという線が一番面白そう。
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