楽譜浄書で一番大事なことは読みやすいことです。
じゃあ読みやすさって何よ?というお話。短い記事です。
■はじめに
私は浄書専業ではありません。サブ業務として楽譜製作をしている程度です。ガチプロの知識を求めている人はちゃんとした侘美先生に頼んで、ちゃんとしたFinaleの使い方をちゃんと学ぶべきです。
以下の内容を見て「どんだけ初心者話だよ」と思った人は大丈夫だと思います。
■逆に考えるんだ
一番読みにくい楽譜は譜めくりできない楽譜です。異論は認めない。
細部の寸法なんて二の次です。
何を演奏したかなんて覚えてないくらいの演奏をし、さんざん浄書の勉強をした上で「譜めくりには気をつけろ」と断言します。
・状況A
例えば下の状況。2ページ目の終わり方。
ソロの途中で3ページ目に行かなければならない。
つまりソロを暗記しなければいけない。
暗記が常態化している学生吹奏楽などではこれに対して違和感を持つことができない。「ソロは覚えるべき」というマッチョな考え方に支配されている。
そういう不要な労力を軽減するのが浄書のちからだ。
言いたいことは山程あるけど後述。話を進めます。
・改善B
これが少し改善された状態。ソロ音符群は3ページ目に移動しています。
しかし、忘れてはいけないのがソロ直前にあった6小節の休みの扱い方。
ページをめくる前に6小節の休みが見えれば、安心して静かに譜めくりができます。しかし、長い休みが無いと急いで譜めくりしなければいけない不安を誘発してしまいます。1拍で譜めくりしろと言うのか!?
で、さらに改善。
・改善C
6小節の長い休みがあるので、安心して譜めくりをできます。
ファとミの刻みも4小節まとまりになったので、音楽的にも扱いやすくなっています。
・言いたいこと
年に数曲しかやらないアマチュアと、数時間後に本番をやらなければいけないプロの差を考えて欲しいんです。
「全て暗譜しなければ本番に立たせない!」という思想にまみれた学生あがりの人は、上Aの状態でも自然な楽譜だと認識してしまっています。
事実、こういう状態で出版されている楽譜が多いんです。昔から。
で、演奏しやすくするためにコピーをして、ソロの部分を3ページ目に切り貼りする。
おいおい、楽譜のコピーってダメだろ?
ここまでの話で、コピーされる原因は浄書にも責任があるということを多少は感じていただけたはずです。
また、弦楽オーケストラの場合はプルトという2人組で1人が譜めくりを担当しますが、これもアマチュアオケの場合など、明らかに音が悪くなってしまう原因です。(私は既存のオケ楽譜でさえ、本当に音楽的に配慮されていると考えていません!)
曲作りで大事なのが細部よりもダイナミックでドラマチックな構成の力であるように、浄書でも細部より譜めくりの重要性を考えてほしい、ということです。
以上。
■最後に
浄書と言うと、職人(企業)が門外不出にしている細部調整の寸法の話などがあったり、コンピュータ浄書による自動化では行き届かない細部調整の楽しさがあります。
しかし、本当に大切なのは浄書をする人の満足感ではなく、楽譜を届けられた先にいる奏者のストレス軽減ではないでしょうか?
どうでも良い細部チェックをやる時間があるなら、レイアウトにこそ時間をかけるべきです。