シンセ話。知ってる人にとっては当たり前の話です。
LFOっていうとピッチを上下に揺らすビブラートを、モジュレーション・ホイールで操作するために組むもの。というか、多くの場合は初めから組まれていることが多いです。
なお、ハリオン厨による記事なので、最近のシンセの具体的な使い方は書いてありません。
(2020年6月25日更新)
- ■ほとんどのシンセTIPSは70年代の話で止まってる
- ■こういう音が出る。
- ■ベロシティに色々反応させる
- ■内部LFO
- ■マトリクスの柔軟性
- ■HALionで残念なこと
- ■プリセット音色を観察する時にチェックしてみよう
- ■その他
- ■モダンなEDM用音色の話
■ほとんどのシンセTIPSは70年代の話で止まってる
基礎波形とかADSRとか、その程度の話しか書いてないシンセ記事が多すぎます。そういうのは大昔のシンセ概論に書いてる古臭い話でしかなくて、モダンなシンセの音作りではほとんど役に立ちません。
シンセという楽器は登場以来さまざまな機能が追加され、昔の知識だけでは扱えないものに発展しています。
基礎を理解した上で、モダンシンセにはどういう能力が備わっていて、モデルごとの特性を決定づけている要素はどこなのか?ということを調べる「オタク的」なアプローチで取り組まなければなりません。
・シンセ分類のTIPSも古すぎる
基本波形の分類の話も前時代的なTIPSが散見されます。
近年(と言うほど最近でもないが)はいわゆる「ウェブテーブルシンセ」が爆発的に普及しているのは周知の通りです。おそらく今からシンセの音を求める人が使いたがるのはそういう現代的なエグい音のはずなのですが……
ともかくネット上で楽に見つかる素人記事には気をつけてください。
また、そういうクソ記事を乱発する人に限ってSEO対策だけはしっかりやっているので、検索上位に上がってくるという酷いありさまです。
・この記事は主にHALionの話です、が
Serumの場合はこういう記事もあります。
https://www.dancemusicproduction.com/10-tips-every-serum-owner-needs-to-know/
音色を自作する派の人は、特に多重LFOの項目を熟読することを推奨します。
ぶっちゃけそういうのが苦手なら市販プリセットをいくつか買うべきです。
プリセットだけで運用し、作曲に専念するのは悪いことではありません。
シンセTIPSによくある悪い例は「全ての機能を知れ」「音色は自作しないとダメ」というシンセ原理主義です。
『今そこにある音色』に対して作編曲を行うアプローチの方が、より音楽的であり、健全だと私は考えています。事実、音色作ってばかりいる人って曲作りが下手ですし。
■こういう音が出る。
ベロシティを傾斜させているだけのベタ打ち。オートメなど一切無し。(数回リピートします。)
■ベロシティに色々反応させる
通常はベロシティは音量変化です。が、他のパラメタをアサインすることもできます。
内部的には「入力されたベロシティ数値」で「VCA(音量)を決定する」という処理が行われています。
同様に「入力されたベロシティ数値」を「フィルタ」にも連動させるわけです。
今回のサンプル音色ではベロシティが傾斜している部分で徐々に音色が変化しているのが分かります。
フィルタが閉じることで音量が小さく感じるので、ベロシティによる音量変化を小さめに指定することでバランスの取れた使いやすい音色に仕上げています。
サビだけちょっと大きいベロシティにするだけで、ちょっと明るい音色にしたり、盛り上がりにあわせて音色を変化させるのが容易です。
こういう音色の表現において、たまに勘違いをしている人が「それはオートメを頑張って書くんだよ」と言っていることがありますが、残念。間違いです。もっとスマートにシンセ内部で実装しておかないと、恐ろしく手間がかかってしまいます。
・別の方法でのランダマイズ
シンセによっては「基礎波形をどのように切り取るか?」を精密に管理できるものもあります。
(全然使ってないシンセのスクショだけど、Cubase付属のレトロローグです。)
鍵盤を押した時に、「毎回必ず波形の最初から発音」「途中から発音」などを選択できるものもあります。
同音連打の際に位相的にランダマイズできるメリットがありますが、モデルによってはレンダリングのたびに違うニュアンスになってしまう欠点があります。一長一短です。
シンプルな波形だけを鳴らす初期状態で、位相処理を選択し、同じ音を連打してみるとその違いが良く分かるはずです。
また、モデルによっては和音演奏の際に全て同じ位相で演奏するか、ランダムにするかを選べるものもあります。揃っている方が綺麗だと感じることもありますし、ランダムの方が豊かだと感じることもあるはずです。
この発音位相がずれることはメリットとデメリットがあるので注意深く指定するべきです。
御存知の通りサブローのミックスでは他のトラックとの位相干渉が重要になります。それがピタリと合っていることによる音の太さを良しとするか、ランダムに乱れるファジーなサウンドを良しとするかは完全にケースバイケースです。
この部分が悪影響を及ぼし、アタックが不当にカチカチすることがある。対処法は後述。
似たようなことが顕著なのが実機808キックの頭位相。
実機TR-808の音はオシレーターのスタート・ストップではなく、常に揺れている波形をVCA開閉で発音しているので、事実上のランダマイズです。
詳しくは別記事で。
eki-docomokirai.hatenablog.com
■内部LFO
一般的にLFOは音程を揺らしビブラートのために使われます。
モジュレーション・ホイールを上げると音がうねうねするアレです。
多くの音色の初期状態では、「モジュレーション・ホイールから入力された数値」が「ビブラートの深さ」に割り当てられているということです。
これもエディットして、modを他のパラメタに連携させるようにします。たとえば音量やカットオフを揺らします。個人的に非常に多用するのが、PWMを揺らした音色。
シンセ音色の話で「LFO」と言うと、ビブラートの話だと思われることが多いですが、細かく設定できるシンセでは内部LFOをいろいろなパラメタにアサインし、よりクリエイティブな音色作りができます。
・内蔵LFOで各種パラメタを揺らす
画像はシンクロのベース系音色で、シンクロ数値を毎回少しだけ変更させた例です。
内部LFO(緑)をオシレータ1(PWM波形)のウェーブフォームにアサインしています。
これで毎回少しだけ違ったウェーブフォームで発音されるようになります。
いかにもシンセベース臭い均等な音ではなく、エレベで同音連打した場合のようなニュアンスを得ることができます。最近の人だとラウンドロビン的だと言った方がわかりやすいかも?
(どっかのベース音源みたいな安っぽいラウンドロビンにならず、同じ発音から誤差を出す程度なので非常にナチュラルに聞こえる。)
(もちろん毎回同じ音が出る方がハマる曲もあるので注意。)
こういう仕掛けをすることで、単にピッチ・ビブラートを掛けるだけではなく、カットオフや音量、パン、エフェクト度合いなどを自動で揺らせるようになります。
シンセの音作りの解説で「何かしらを揺らすとリッチになる」と紹介されているのはこういう方法で実装できます。
・「LFOいくつ?」というシンセ談義
個人差はありますが、シンセマニアが新作シンセの話をする時に「で、LFOいくつ?」と質問する人がいます。
彼らはLFOを駆使することで音作りをするスタイルなので、LFOが多いほど多彩な音色を作れると考えます。
もうちょっと一般的な会話だと「で、オシレータいくつ?」というやり取りもあります。これはオシレータを重ねることで音色作りを試みるタイプの人です。
そういう人からすると「オシレータの数が少ない=音色が貧弱」なのと同じで、「LFOが少ない=音色が貧弱」と感じる人もいる、ということです。
念の為追記。
「LFOの数」というのは、波形の山の数やスピードのことではありません。「何系統のLFOが装備されて、異なる振幅をアサインできるか?」という話です。
古典的なシンセは1系統しかついていないので、実質的にmodホイールにアサインしてビブラート用にしか使えません。複数のLFOがあれば、様々な音色変化のために独立した振幅をアサインできるので、基本波形からだけでも非常に幅広いバリエーションが生み出せます。
私が「フリーのシンセにこだわる価値は無い。さっさと良いのを買え」と言う理由はこういうところにもあります。
たしかに強烈なシンセオタクの手にかかれば、フリーの1オシ、エフェクタも何も無いシンセでも素晴らし曲を作ることは「可能」です。でも、そういうタイプの人は徹底的に使い込むこと自体を目的にしている変人(褒め言葉)なので、真似しても音楽的な価値は何も無いんです。
なお、シンセ廃人になると、1つのシンセの中に入っている機能でモデルを選ぶことを放棄し、ブロック遊びのように自由に機能を付け足す「モジュラーシンセ」に傾倒していきます。
■マトリクスの柔軟性
マトリクスというのは「あっちのデータ値で、こっちのデータを制御する」アサイン機能です。
最も初歩的なマトリクスは、
- ベロシティの大きさ→音量
- モジュレーションホイール→音程ビブラートに
- ピッチベンドホイール→音程上下
この辺はシンセの初期段階でアサインされているものが多く、そもそも外すことができないモデルも多くあります。
初歩の使い方としては、
- ベロシティでアタックを変える
- アフタータッチでカットオフを変える
- ランダムにウェーブフォームを変える
などの設定が可能で、非常に音楽的、生楽器的な表情を出すことが可能になってきます。
この機能の自由度が高いシンセだと、「ピッチベンドしたらエグい音にする」とか「ベロシティが強い時にアタックだけ強くする」などのマトリクスを組むことができます。
・マトリクス例
HALionでのマトリクス例をいくつか挙げておきます。
Modを上げるとカットオフが下がる、という設定です。
右下のバーがマイナス指示(-41.7)になっているので「Mod上げ=Cutoff下げ」という意味になります。
強いビブラートがかかった時に、必要以上に音が悪目立ちするのを回避できます。これはビブラートをピッチだけではなくカットオフも揺らすマトリクスを使う時に非常に音楽的な響きを得られます。
次。カットオフ管理その2。
ピッチベンドするとカットオフが下がります。
これも-61.1というネガティブ方向に組み込まれているので「Mod上げ=カットオフ下げ」です。
ピッチベンドで音程だけを変えると、どうしても安っぽい音に感じてしまうものです。それを回避するためにフィルターも動かすわけです。
次。ウェーブフォームへのアサイン例。
2種類のLFOをそれぞれ別のオシレータにアサインしています。
ウェーブフォームの揺らし方を2系統にしてあるので、より複雑な音色感を出すことができます。
次。ベロシティでディケイとリリースを変えています。
強く叩いた時だけより強い残響を強調できます。
いちいちフレーズ終わりの音だけ音量を書いたり、エフェクタのオートメを書く必要が無くなります。
なお、言うまでもなくこういう設定はエフェクタがMIDI Learnを装備していれば、ベロシティによってEQのハイシェルフを操作したり、空間系エフェクタがベロシティを検知してWet量を自動で調節する設定にもできます。単に「音が高品質」というだけでエフェクタを次々買うより、MIDI Learnについて熟知した方が短時間でより音楽的な効果を出すことができるはずです。
だって、リバーブが高品質って言っても、その音源はCDやmp3、Youtube音質で提供されるんでしょ?しかもマスタリングで音圧ガンガン上げてアナログ色付けするから、ハイレゾ感を楽しんでるのは作ってる時だけじゃないですか?
それなら自由度とワークフローの改善のために、シンセを熟知した方が曲の出来に直結すると思うんだけど、どうよ?
■HALionで残念なこと
残念なことに、HALionではグライド数値をマトリクス化することができません。ベロシティに応じてグライド速度を変えられたら良かったのになぁと思います。仕方がないのでピッチベンドで乗り切るしかない。
他にも色々と残念なことはあります。
が、これはどのシンセでも一長一短なので仕方がありません。
もしそういう自由なマトリクスを望むなら、既製品の機能に依存せず、完全なモジュラーシンセで自由に作るべき、ということでしょう。
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LFO系統数が多くても、アサインできないパラメタがあったり、LFOそのものの設定幅が狭かったり、融通の効かないLFO波形ということもあります。
そのシンセについているLFOで何ができるのか?ということを知るためにも、プリセットを熟読するべきです。説明書をちゃんと読み、その上でテストをしてみるべきです。
それが嫌ならシンセにこだわるのをやめて、プリセットを買ってポン刺し運用するべきです。
・レイアウトと操作性、使いやすさでシンセを選ぶ
言うまでもなく、マトリクスが高機能でもレイアウトやメニューが使いにくいと本末転倒です。たとえばCubase付属のRetrologue2は数値入力ができないので、中央ゼロに合わせるのが非常に困難です。私はこの1点があまりにも気に入らないので、RetroLogue2をほとんど使いません。
頻繁に使うハリソニは一貫性のあるレイアウトなのは良いのですが、マトリクスをオン/オフする機能が使いにくいです。(それでも他の要素が非常に使いやすい、というか慣れすぎているので手放せない。)
昔酷使していたSD90も怪物的なマトリクスを持っていたのですがGUIが劣悪でした。(某界隈でSD90が愛されているようですが、ほとんどの人がプリセットしか使っていないのは宝の持ち腐れだと思います。SD90は怪物ロンプラですよ!)
せっかくなのでSD90を使っていた頃の過去作を貼っておきます。
今となっては一部界隈で愛用されている以外では、もう完全に無価値なシンセですが、極めて柔軟なマトリクスは本当に素晴らしいものでした。
シンセマトリクスは非常に多くのパラメタを多次元的に構成するので、どうやっても1画面にきれいにレイアウトすることができません。
各社が様々なレイアウトを提案しています。ぶっちゃけ今どきのシンセはどれを使っても出せる音は似たようなものなので、自分が直感的だと感じるレイアウトと操作性のものを選ぶのも良いでしょう。
あと、慣れ最強。
■プリセット音色を観察する時にチェックしてみよう
どのシンセでも多彩なプリセットが入っています。
その中身は今回紹介したLFOを駆使することで変態的な加工をしているものもあります。
よくあるシンセ解説では「波形」「ADSR」「エフェクト」という初歩の初歩しか解説されていませんし、プリセットについても「プリセットで良い音色があったら、ADSRとエフェクトを変更して曲に合わせよう」までしか書かれていません。
プリセットを聞きつつ、それぞれのシンセならではの変態的なLFOマトリクス構成を観察してみると、もう一歩高度な音色作りを楽しめるようになります。
■その他
その他にもシンセのモデルごとに様々な拡張的な音色加工方法があります。
・ノイズ
安価なシンセにも割とついている機能。
「適度にホワイトノイズを混ぜることで、音色に説得力が出るよ」という用法です。
ただし、音楽における『ノイズ』の意味があまりにも広範なので、誤解されていることがあります。
当ブログのシリーズ記事「DTMをやっていると突き当たるちょっとむずかしい単語の話」の続編として、『ノイズ』『ディストーション』も書かなきゃダメかなぁ。
DTMをやっていると突き当たるちょっと難しい単語の話(1)位相
DTMをやっていると突き当たるちょっと難しい単語の話(2)ナイキスト周波数
DTMをやっていると突き当たるちょっと難しい単語の話(3)上下定位、前後定位
シンセの音色作りの話において『ノイズ』と言ったら、ほぼ例外なくホワイトノイズを混ぜる話か、シンセ内蔵ノイズのスペクトラル(周波数分布、ハイローのロールオフ)の話です。ノイズ音楽の話とか、録音ノイズとか、アナログ機器ノイズの話ではありません。
・発展的なADSR
実践的なコツは2つ。
1,わずかにアタックを柔らかくする
2,わずかにリリースを長くする
特にアタックは最速のように思えても、ほんの少しだけ遅いアタックの方が曲に乗りやすい。
特に内部演算のシンセの場合、不自然に硬いアタックが出てしまう。これはデジタルの欠点。
結局ミックスで当たりを柔らかくするアナログ系の処理をすることになり、二度手間になる。
なんでアタックを柔らかくするのかというと、先述の発音位相によって、不当に硬いアタックになってしまうのを軽減するため。
・ディストーション
ミックスでアナログ系の音にしたいってのは要するに軽くディストーションして、ハイローを丸めて、反応を遅らせたいとうことなのだから、シンセ内部でそれをやってしまえば良い。そうすればアナログ系エフェクタで余計な加工をされず、クリーンかつウォームな音を出せる。
シンセ音色作り話をしている時の『ディストーション』の意味は、そういうアナログサチュレーションの話であることがほとんど。
インサートエフェクトでいわゆるディストーションギター的にバリバリ鳴らすほど極端な音の話ではないです。
こういうのを単に「アナログボタン」1つでやろうとしている大雑把な作りのシンセもある。実際それで良いんじゃないかとさえ思うこともある。
細かく制御するオタク的なアプローチはシンセの本流なんだけど、曲を作るための楽器として考えるなら、簡単に「あーそうそう。その感じ。」を出せる簡単ボタンで良いでしょ?
・グライド
その他、私が好んで細かく設定するのがレガート(グライド)処理。
これも初歩のシンセ話だと「グライドのオン/オフ」「グライドの速さ」くらいしか説明されていません。
シンセによってはリトリガー等の設定ができます。これは手持ちのシンセで試してみてください。
鍵盤が一時的に複数押されている時にだけグライドになり、一度全ての鍵盤を離してから次の鍵盤を押すとグライドが掛からない、などの生楽器的な表情のある演奏が容易になります。
これを役割に応じて適切に設定しておくだけで、演奏内容が豊かになります。
完璧なスラー表現ができるので、生楽器出身の人にとっては「これはすげーよ」となるはずです。
・グライドのカーブ品種
HALionで特に気に入っているのは、グライドのカーブ品種を選べること。
"Exponential"(指数関数)カーブは、均一な斜面での音程移動はないので、大きく離れた音域に跳躍した際に、グライドが強く聞こえすぎることを防いでくれます。非常に音楽的な処理です。
Quantizedはさらにソフトな感じになります。
・グライドとフィンガード
前の鍵盤に重ねて、次の鍵盤が同時押しされている時だけグライドを実行する設定です。
フレーズに大きな跳躍や、長い休符がある場合に、普通に演奏するだけで不要なグライドを除去できます。
一長一短ですが、概ねオンの方が使いやすいはずです。
・レガートとリトリガー
レガート時に前の音のエンベロープを引き継ぎます。
・ユニゾン
微妙にチューニング等を変えるデチューン効果など。
「チープなフリーシンセでもすごい音を作れるよ!」系の話はこういう技術が大前提になる。チープなものだと1台だけでは何をどうやっても無理だから、たくさん起動してどっさり重ねる。
ただし、ユニゾン数ぶんだけ負荷がかかるのでクソ重たくなる。
モデルによっては演算済みの波形をコピーするので軽く扱える。出音特性はちょっと変わる。また、はなっからユニゾンされている音をPCMで扱うシンセだと、凄まじい量のユニゾンをした音色を極めて軽量に扱える。純粋な演算シンセの文脈ではロンプラを毛嫌いするのが「踏み絵」になっているのが実情だけど、そういう音色を軽量に扱えるロンプラってすごく良いものですよ?
・スプレッド
発展的なユニゾン機能として扱われることが多い。
デチューンした音色を左右にパンすることで、いわゆる「スプレッド系」の音になる。HALionの場合はUnisonのオプションにあるPanがそれです。
よりモダンでイージーオペレートなシンセだと単に”spread”と書かれていることもあります。あっちもこっちも操作してようやくスプレッド感を実装するのではなく「お前らが欲しいのはあの音だろ?ここを右に!」というわけですね。
たくさんのシンセを重ねる「富豪」な音色作りが世界に通用すると認知され、ワンタッチでスプレッドできるようになってきた。ついているならどんどん使うべき。
ただし、あまりにも主張の強い音色になってしまうので、脇役でいてほしい時には封じること。
ゴージャスなシンセ音色をプリセットだけで使っていると、こういうド派手な音色ばかりになってしまい、ミックス不能に陥る。
ステレオスプレッド系はロンプラで扱うと音程によってぐらつくことが多いので、ステレオスプレッドしたいなら演算デチューンの方が圧倒的に綺麗に出る。特に低音。いわゆる「ZeddのPWMシグネチャーベース」みたいな音は演算で出すべき。何も悩まず綺麗に出る。
・インサート・エフェクト
シンセ内にインサートがついていることについては賛否ある。
が、よほどのこだわりがないかぎり、内部でやっちゃって良いと思う。
シンセ向きのエフェクトと言うとリバーブとかが筆頭だけど、もっと基礎的なエフェクトとしてディストーションを使うことを強く推奨したい。ディストーションと言っても下品なエレギみたいなのじゃなくて、軽くサチュレーションする程度。
■モダンなEDM用音色の話
まずはこちらの記事を。
そこで紹介されている方法論は『ゼロから音を作る方がメリットが多い』と主張されています。
私はこの方法に対して半分は「だよね」と同意し、半分は否定しています。そういうベキ論で上達した人が実際非常に少ない。だから(現時点では)プリセットを推奨しているわけです。
ただし、上記事を書いているMaustopia氏(twitter mausproducer)は、
チュートリアルを流し見するのではなく、最初は上手な人のやり方を丁寧になぞることを心がけてください。
と強調しています。
いわゆる国内の自称DTMレッスンプロが、古臭い情報を右から左に流しているだけの、動画の質と声だけが良いクソ動画(※ダメ資料)を流し見するのでは全くダメだということです。
氏が音色コピーのチュートリアルとして紹介しているのが下の動画です。
紙と鉛筆とシンセ(Serum)を用意をして、大きな画面で細部を確認しながらしっかり学びましょう。
音色の元、原曲はこちら。0:34からのリフ・リードです。
私はコピーの音色はディケイ設定が甘すぎると思います。原曲の音色はBPM(グルーヴ)を感じさせるために音の伸びをたくみに設定しています。おそらくキーオフかベロシティに反応するようにしているか、単にデュレーションを作り込んでいるかのどちらかではないでしょうか。
このブログで私がたびたび翻訳記事を公開しているのも、その海外記事や動画をきちんと理解しようと努めているからです。
同様の音色コピーは昔からシンセサイザーの学習メソッドとして行われています。ただし、あまりにも古典的な音色のコピーはあまり実用的なスキルに結びつきません。要するにおっさんが推奨してくるYMOやKRAFTWERKなどのコピーを今さらやっても、これからの音楽にとってあまり有益とは言えません。郷愁を満たしたいのであればそれだけで良いのですが。