リファレンス曲は1曲だけにこだわらなくてもOKです。それどころか、異なる曲をいくつか持ってきた方が優れたチェックができます。
せっかく話題に上がったので追記がてらに新規記事として残しておきます。
(2019年8月15日更新)
■発端
「リファレンス曲は1つにしなきゃダメ」的なことを言っていた人がいたので反論を集めておく。リファレンスミックスをやるなら、複数の曲を使うべきです。
・いろいろな記事を紹介
リファレンストラックは複数使っても全く問題ありません。
Many engineers will use multiple tracks to get a general idea where to take their mixes instead of focusing on the mix decisions of one track.
「1つのトラックだけに集中せず、一般的な見解を求めて複数のトラックを参照する」とあります。
今あなたが制作している曲は単一のリファレンス楽曲に完全に沿ったものではないことの方が多いでしょう。また、リファレンス曲として制作された楽曲は存在しないので(※文末)、その曲を「正解」とすることはできません。必ず独特な要素があったり、どんな一流プロが作ったものでも完璧ではないからです。いいところをかき集めてあなたの曲を模索するために複数の曲にすり合わせるのは良いことです。
もし仮に平坦なピアノソロ曲であれば目指すべきサウンドは同じです。
しかし、多種多様なジャンルの要素、楽器、楽節が入り乱れる曲を作っているのであれば、それと全く同じ編成・展開の曲は皆無のはずです。
それぞれの場面に適したリファレンスを用意すると、より効率的になるはずです。
複数のリファレンスを使う際のレベル合わせ(音量合わせ)についてはこちらの記事に書かれています。
If you have multiple reference tracks, another button will appear adjacent to the Level Match button.
リファレンスツールの使い方の説明で、複数の参照曲のレベルマッチングについての説明があります。
音量合わせについては本ブログの過去記事のどれかで書いたはず。「リファレンスミックスは音量が違いすぎて意味ねーよ」的なことを言う人は、単に音量を揃えることを忘れているだけ。もしくは単に仮のマキシマイザを入れて「とりあえずの音圧」だけを作っておけば良い、ということです。どんなに雑なマキシマイズだったとしても無いよりまし。「ベストではなくベター」というスタンスであれば何のデメリットも無いです。完璧じゃないからダメという考え方は完全にダメな考え方です。
・次
gyokimeさんによる翻訳・紹介。
原文元記事はこちら(https://www.soundonsound.com/techniques/mix-mistakes)
この中でもgyokimaeさんは、
しかしそれとて、低コストで対処する方法の数々を思えばつまらない言い訳に聞こえる。以下にいくつかヒントを記載する。
— Vocal-EDIT.com (@VocalEdit_com) February 20, 2018
・DAWに市販曲を複数インポートし、自分のミックスと聞き比べる。このときトラック間のラウドネスを揃える。
(赤太字強調編者)
と紹介されています。リファレンスは複数使いましょう。
他、この人の書いている記事や書籍は本当に素晴らしいので本腰入れて読むべき。
・もう1つ追加
こちらでも1つだけに絞るな。「普遍的なバランスを持つ1曲」は存在しないと言っています。複数の曲の中間を狙うべきです。
■作編曲のリファレンス
ミックスにおけるリファレンス話とは筋がそれますが、「作編曲を含むリファレンス」というものもあります。
この場合には、『この場面はこの曲』『この場面はあの曲』『つなぎはこの曲』という具合に、複数の曲からパクります。サウンドを似せるためにオーケストレーションのみを盗む場合もあります。
最も軽度な場合には編成とミックスバランスのみをパクる、ということです。
ただし、あまりにもパクり能力が高い人の場合は、本当にそっくりになりすぎるので要注意です!
私はこれでボツにされたことがあります。
「この曲っぽいの作って!」と依頼された際に、その理由を最初にしっかり確認しなかったのが敗因でした。「権利的にNGになるから、法的に問題が起きないようにメロをわずかに変えた曲を作って」ではなく、「雰囲気だけ似せて」だった、ということですね。
■リファレンス専用曲?
せっかくなので関連する四方山話。
「曲はクソだけどミックスバランスだけは完璧と言える」としてミックス師匠から譲ってもらった曲集があります。曲の好き嫌いや流行だけではなく、参照楽曲としての出来の良さだけに注目していくのも面白いことかもしれません。「好き」と「上手い」はまったく別です。
それらはどれもどれも演奏は抜群に上手いのに、非常に短く(1分程度で終わる)、変化のない単調なものです。機材テストか特定場面専用のリファレンス用として作られたものなのかもしれません。まじで謎の曲集。
・オーディオ機器調整専用の曲!?
オーディオ調整目的だけのために作られた奇作『オーディオ交響曲』(すぎやまこういち)がありますが、これは楽曲制作のためのリファレンスじゃないです。
ニコ動版はこちら。解説文章がついています。
様々なオーケストレーション・音量をオーディオ機器がバランス良く再生しているか?をチェックする目的で制作された曲です。すぎやまこういちの手癖が全開なので「これは◯◯じゃねーか!」とツッコミを入れながら聞くとかなり楽しい。同じ目的でダイナミクス幅が大きい曲として知られる『春の祭典』などが使われるケースが多いようです。
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・その他の海外記事
https://theproaudiofiles.com/reference-tracks/
過去記事で引用していない海外記事です。せっかくなので貼っておきます。