eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

おすすめの音楽理論書「サルでも分かる音楽理論(下巻)」

音楽理論の説明記事ではありません!)

独学で音楽理論を勉強している人から「アッパーストラクチャートライアドについて詳しく書かれている本は無いかね?」というピンポイントすぎる音楽理論の質問メールをいただきました。せっかくなのでブログ記事で返答します。

(2018年2月20日リライト)

 

 

■サルでも分かる音楽理論(下巻)を買え

ピンポイントで特定の要素について知りたい場合は、下の本がおすすめです。

現在の価格は、新品1728円。(中古出品が1019円)

サルでも分かる音楽理論[下巻]

サルでも分かる音楽理論[下巻]

 

ネットではこの本の評価はあまり良くありません。良くない理由については後述します。

が、「ピンポイントでの疑問解決」「細分化」という点において、非常に優れている、オンリーワンの本だと思い、私はこの本を発売直後から推薦しています。

 

・細密な技術分類がすばらしい1冊

この本では、下巻だけでも音楽理論の名前をなんと100個に分けて解説しています。上巻も含めると単純計算で200もの技術があるということになります。なんかすごいですね。

 

それらひとつひとつに対して2~5ページ程度で明瞭な解説が添えられています。

おそらくこれほど小分けに解説している本は無いんじゃないでしょうか。

 

Amazonの説明文では下画像のように細分化された理論の名称がドバーーーっと並んでいます。復活の呪文か!

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100個の終盤でようやくアッパーストラクチャートライアドなどのテンション細分化の紹介されており、4つに分けて紹介されています。

 

P177~179、UST
P180~182、コンパウンドコード
P183~189、ハイブリッドコード
P190~192、ポリコード

合計15ページかけて高度なテンションを分類して解説しています。

 

なお、テンションの基本については「上巻」で解説されています。他の書籍やネット情報程度でも十分だと思います。

USTにピンポイントで興味を持つということはテンションについては理解済みのはずです。

 

■本の中身を見てみる

非常に整然とした美しいレイアウトの本です。

 

・目次

目次は非常に整然としています。

スクリーンショットは同ページにあるお試し版からの引用です。)

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基本的に英語名をカタカナ表記しているので、日本語で広く流通している呼び方と違う呼び方のものが多くあります。

たとえば「インターポレーテッド・ツー・マイナー・セブン」「リレーテッド・ツー・マイナー・セブン」と言われても分からない人の方が多いんじゃないでしょうか。単に「ツーファイブ」と言えばほとんどの人が分かるはずです。その「ツーファイブ」を細分化することもできるよ、ということです。

同様に「シンコペーション」の解説の中では「ディレイド・アタック」と「アンティシペーション」を明確に分けて説明しています。が、仕事で作編曲をしている人でも「アンティシペーション」と言われて「なにそれ?」という人はかなり多いです。

 

・索引

巻末の索引は、単語が出て来るページがすべて書かれているので非常に使いやすいです。

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欲を言えば、上下巻を含めた索引があったら良かったかも、と思います。

また、クラシック系の理論用語については一切触れられていないので、例えば「アウフタクト」という用語はシンコペーションの説明にも出てきません。

そもそも異なる理論体系を横断的に扱うと、同じ用語でも意味がズレてしまうことがあるので、そういうのは個人的に作れば?という部分です。理論ってそういうものですよ。

 

・用語個別の解説

個別の解説は3人の会話形式で展開します。

大きな文字とゆったりしたレイアウトはパッと見で初心者向けの仕上げになっている本ですが、その内容は過酷です。

とにかく生徒役の2人の理解力が高すぎて不気味なレベルです!

そのやりとりを見た読者は「自分にはこんな理解力ないよ……」と落ち込む人がいるかもしれません!

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生徒2人は劣等生タイプのサルと優等生タイプの女の子の2人ですが、劣等生タイプのサルもすさまじい理解力です。お前のようなサルがいるか!理論初心者をナメてんのか!

 

別に1回説明されたことを次の瞬間に実践できる能力なんていりません。3日かけて1つ理解できれば、100項目を300日です。理論学習はよほどの学習センスが無い限りちゃんと使えるようになるまでは早くても数年かかります。

完全に覚えてから作品を作ろう、なんて考えるのは絶対にダメです!拙くても良いから作品を作り続けながら、合間に理論学習をする、ということだけは絶対に覚えておいて欲しいです。

 

■欠点は暴力的なスピード説明

「サルでも分かる」というタイトルですが、ガチ初心者には絶対におすすめできません!

その内容は非常にスピーディで、初心者置いてけぼりだからです。

 

タイトルと装丁、中身をパラっと見た際のレイアウトの明快さで「これは分かりやすいそう」と思って買ってしまい、がっかりした初心者が続出したそうです。

 

普通の楽器屋や書店で売っているいかにも初心者向けっぽい本やネットである程度学習済みの人が読むべき内容だと思います。マジで。

 

自分がこの本を買ったのは2011年で、音楽制作や理論を教える仕事するようになった後です。自分自身の音楽スキル向上目的ではなく、より良い教え方を身につけるために初心者向けの本も相当数を読んでいます。そういうインプットを続けてきた中でもこの本は非常に優れたオンリーワンの要素の強いものだと高く評価しています。

 

 

■名称を小分けにする意義

漠然と「テンションです」とか「代理コードです」という感じに、大きなカテゴリーで覚えても、なかなか使いにくいものです。

これを格闘技で言うと「キックとパンチ」とか「寝技」だけになってしまうわけです。

料理だと「切る、加熱、盛り付け」の3つしか知らないのと同じです。加熱方法を細分化すると「煮る、焼く、炒める、蒸す」となりますし、「焼く」をさらに細分化することもできます。

切り方だっていろいろあります。

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https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/corner/basic/vege_cutting

こういう具合に、音楽理論も細分化すると200くらいにはなるよ、ということですね。

 

こういう細分化はあらゆる分野で可能だと思います。

そして、技術を大雑把に捉えたほうが良い時と、細かく具体的に考えた方が良い時があります。

 

 

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以下駄文。

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■長いカタカナ名前に騙されるな

もしかするとアッパー・ストラクチャー・トライアド(UST)をなにかとてつもない革命的なテクニックだと誤解している人がいるかもしれません。

実際、独学の人に多かったです。

 

「アッパーストラクチャートライアド」という長い名前はなんとなくかっこいいから、「とても難しいテクニックに違いない!」と思い込んでいるのでしょう。


長い名前は少年漫画の必殺技みたいで、例えば、

という感じで、長いカタカナ名前は謎の迫力があります。

島本和彦のラジオ番組で「『リングにかけろ』を書いた車田正美の漫画では、名前の長い必殺技の方が強いんだよ!」と力説していて爆笑したことがあります。

なお、そこからヒントを得た島本和彦の漫画『炎の転校生』では、主人公が使う必殺技(滝沢国電パンチ)に対抗するために、ライバル城之内が「もっと短い名前なら先に当たる!」と考え、「殺虫パンチ」という短い名前の技を使います。アホか。

さらには「殺虫パンチ」に苦戦する主人公を守るため、ヒロインがライバル城之内に「城之内必殺ゴールデンビクトリーフィニッシュの方がかっこいいわ!」という謎の色仕掛けをするという

 

ともかく、長い名前なのでついつい「USTはすごい技に違いない!」と思い込んでしまうのだと思われます。

 

「サルでも分かる音楽理論」の目次を見ても分かるとおり、音楽理論用語の名前も結構長いものが多いです。

 

カタカナの必殺技よりも漢字の方がシブイと思うなら、アッパーストラクチャートライアドは「上部構造三和音」と直訳できますが、そんな呼び方をしている人は見たことがありません。

 

・モーダルインターチェンジ!相手は死ぬ

USTの他で同様の誤解をしている人が多かったのは「モーダルインターチェンジ(MIC)」です。

USTにピンポイントで興味を持つような人ならすでにご存知とは思いますが、MICは「Cメジャーキーの中で同主調のCマイナーキーを使う」ことでしかありません。それだけです。

 

という答えだけを言うと、「え?それだけ?」と言われることがあります。
彼らはMICを何か超複雑で感動的な音が出る究極奥義だと思いこんでいるから納得できないようです。


過去にニコ生で音楽理論を勉強している配信があったのでそういうコメントをしたら、

「そんな簡単なものじゃないだろw」

と怒られたことがあります。

どうやら彼らはもっとすごい感動的な何かだと思っているようです。ネット配信しつつ音楽を勉強している姿をアピールしたい人と、そういう不真面目な勉強スタイルに群がる人の程度が知れます。だいたい何だよ、配信しながら勉強って。

 

音楽理論なんて個別に取り出せばどれも一瞬で説明が終わります。音符を数個書くだけで「これです。」と言って終わりです。

 

なお、MICについては「サル下巻」のP82~85で4ページかけて説明されています。

 

・マイナーセブンスフラッテッドファイブ!相手は死ぬ

誰でも知っているダイアトニックの長いコードネーム。

これも名前が長すぎると思います。

あまりいませんが、短く言う時は「ハーフ」と言います。厳密には「ハーフ・ディミニッシュ」ですが、短く言う(考える)ことが目的の略語なので「ハーフ」で良いんです。同様に「ディミニッシュ」は「ディム」で良いんです。

 

超初心者の頃にダイアトニックを暗唱できるようになるまでは誰もが苦戦したはずです。

 

実際、演奏しながらアドリブを考える時に、頭の中で「次のコードはAマイナーセブンスフラッテットファイブ、DマイナーセブンスオンG……」という具合に、長い名前を考えていてはいけません。

なお、曲の進行に合わせてすべてのコードネームを読み上げるととんでもない早口言葉のようになってしまうのは藤巻氏の本の付録や、Youtube音楽理論動画などで良くわかります。

 

・ハーモニック・マイナー・パーフェクト・フィフス・ビロウ!相手は死ぬ

「23小節目はマイナーセブンスフラッテッドファイブでハーモニックマイナーパーフェクトフィフスビロウを使います。」

 

えっ?

 

そもそも他に「ビロウ」なんて付く用語はまずないので、「23小節目はハーフでビロウ」で済むと思います。が、そんな言い方が必要になるのは精密な分析をし、他人に解説する必要がある時だけです。

個人的にコードとスケールをメモるだけなら「∮5↓」とか「∮↓」で良いよね。でも略しすぎると自分でも読みにくくなるから、略しすぎ注意。

 

理論の学習が一向に進まない人が多いのは、名詞が長過ぎるのと、略語が略しすぎなのが原因だと思います。

 

・ロウアーインターバルリミット!相手は死ぬ

LI、もしくはLILで良いです。

でも、制作中の談義で出て来る時にも「そこ低すぎるわ」と言うだけな気がします。

いちいち「そこはロウアーインターバルリミットが云々」と言う人はいませんし、厳密なLILの音域をいちいち適用しながら書くことも無いです。

初心者が書いた曲を添削する時に「LILというものがあるよ」と指摘する時に使う程度です。

 

・シックスス

シックスで良いです。どう考えても発音しにくいですから。

ただ、解説をする時とかは念のため「シックスス」と言うことがあります。

揚げ足取りをしたい時には「シックスって何ですか?シックススじゃないんですか?あなたそれでも音楽講師ですか?」と言っていじめれば良いと思います。

が、そういう間違い探しで優劣を競うために音楽理論を身に着けたわけじゃないですよね。

厳密さを求められる場面じゃなないのに厳密さにこだわっていると、頭がおかしい人だと思われても仕方がないと思いますし、そういう揚げ足取りが習慣化すると文書校正の仕事以外では役に立たない嫌な人になってしまいます。

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