eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

フレッチャーマンソン曲線について

フレッチャーマンソン曲線の話を書いておきます。

過去に書いたスペアナの記事に書いてあった話を分割、修正したものです。

 

数学的にデシベルが整っている(いわゆるフラット)な音が果たして人の耳にとってフラットに聞こえるのか?という問題があります。

答えはノー。人間の耳(脳)は全ての周波数を均一に認識できません。

 

 ■フレッチャーマンソン曲線って何?

等ラウドネス曲線 - Wikipedia

等ラウドネス曲線とも呼ばれています。

等ラウドネス曲線は複数の報告があり(後述)、その中の1つとして最も著名なのがフレッチャーマンソン曲線です。

複数ある理由は、この測定が機械的な計測ではなく、「人間の感じ方」を集計・平均化したものだからです。個人差があるので当然異なる結果になります。

 

人間の耳(脳)は進化の過程で特定の周波数に対して敏感であり、また鈍感にできあがっています。

具体的には人間の耳(脳)は3000Hzあたりが聞こえやすいです。

 

理由は諸説ありますが、

・子供を守るために子供の声を聞き取りやすく進化した(そして子供はよく泣く)

・繁殖行為のためにメスの声を聞き取りやすく進化した

・(繁殖行為においてメス同士でも群れていた方が繁殖に有利なので、オスの耳だけがメスの声を聞き取りやすくなるわけでもない、という説も付け加えておく)

 

という説が説得力が高いと私は感じます。

(念のため付け足しておきますが、人間の声の基音が3000Hzというわけではなく、その倍音として響く3000Hzあたり、ということです。基音3000Hzなんて出ないよ!)

 

この説明で納得がいかない人は、他の説については気が済むまで調べてみてください。雑学以下にしかならないけど。

 

ちなみに人間以外の動物では、超高域に特化していたり(犬、コウモリなど)、逆に、超低周波に特化している生物(ゾウなど)もいます。それぞれの生存にとって重要なメリットとなっています。

 

重要なことは、私達人間の耳と脳は、音楽のために進化したものではないということです。

なお、オスの声が低いのは遠達性のため、という説が有力なようです。

 

ただ、このような解釈だけではフレッチャーマンソン曲線のすべてが納得できるわけではないので、なんとも言えないです。

 

 

雑学の時間は終わり。

本題は「音の高い低い」に関連する音楽の話です。

 

フレッチャーマンソン曲線(等ラウドネス曲線

この辺の理解を数学的にアプローチするか、感覚的にアプローチするかでミックスの方針はかなり変わってきます。感覚的な基準のことを等ラウドネス曲線フレチャーマンソン曲線)と言います。

等ラウドネス曲線 - Wikipedia

数学的にすべての周波数がフラットなミックスは、人間の耳にとってフラットには聞こえないという矛盾に対する感覚的なアプローチがこのラウドネスという考え方です。

 

・完璧な理論ではないが確実に役立つ

これはまだ研究も実装も模索の段階と言わざるをえない状況です。

専門の研究家にとっては重要な研究課題ですが、私たち音楽家は等ラウドネスについてはそれほど神経質にならなくても良いと思います。

そもそも「等ラウドネス曲線に沿ったミックスにすれば良いなら、誰もがそうしている」というだけのことです。音楽は等ラウドネス曲線からいかに飛び出すか?ということであって、「測定値に沿っていても、優れた音楽であることとは限りなく無関係」です。等ラウドネスはある意味オカルトであり、初心者騙しの言葉でもあるということです。(もちろん基準のひとつとして参照するに値する概念であることは確かなのですが、その実装は「キックやベースが低音楽器だからといって、ローを上げれば大きく聞こえるわけではない。1000あたりを上げろ」という方法で誰もがすでに行っているわけです。)

「わたし頑張って勉強してるから!」という所謂ワナビの人が、この手のマイナーな概念について大声で唱えているだけだと思っておいてほぼ間違いないです。「等ラウドネスという言葉を知らなくても私達の耳と脳は生まれた時から等ラウドネスで認識している」、ということです。もっと単純に言うと重力についての方程式を知らなくても私たちビルから落ちれば死ぬことや、火が危険であることを理解しているということです。

 

 

 

■作業時の音量

そもそも、「作編曲の人が」手持ちのスピーカーの性能がフルに発揮されるほどの大音量で作業することなんて皆無です。

よく見聞きするスピーカー選定の基準が「小音量でもフラットなモニタースピーカー」という訳の分からない要望です。そんなものは物理的に存在しません。理由はこのフレッチャーマンソン曲線です。

もしフレッチャーマンソン曲線を無視するために、音量によって特性を変化させるモニタースピーカーがあったとしたら、それはもうモニタースピーカーではありません。味付けされすぎなんてレベルでは済まされないサウンドになってしまいます。

 

フレッチャーマンソン曲線をどう読むか?について

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まず、上の曲線に比べて、下の曲線の方が曲がりが大きく見えることを確認してください。

 

この曲線の一番上は音量が大きい時です。

下の曲線になるにつれて、音量が小さい時の特性です。

意味は「音量が小さいと、低音が聞こえにくくなる」ということです。

特に、「非常に小さい音だと、低音は極端に聞こえにくくなる」ということです。

 

 

基準点は1000hzで、1000hzの聞こえ方を下げていくと、低音は必要以上に小さくなっていると「人間の耳と脳が」感じるという図式です。

もし仮に人間の耳と脳がすべての周波数を均一に知覚できるとしたら、このような差は起きません。

 

・たまに見聞きする勘違い

この曲線の読み方を勘違いしている人がいるので、丁寧に説明を書いておく。

(雑談しながら突貫で作ったので、ミスってたらコメント欄で指摘お願いします。)

 

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ホン」は音量の単位で、1000HzでのdBと同じ数字です。「500Hzのホン」というものは存在しません。

グラフの横軸は対数です。対数で書かないととんでもなく読みにくくなってしまいます。(参照:線形グラフと片対数グラフ)対数表記はスペアナでも同じです。

また、元の画像だと目盛りが分かりにくいので書き換えておきました。

 

実験の結果、どういう結論を得られるかというと、

  • 周波数によって人間が感じる音量感は異なる!
  • 基準音の音量が大きいと数値差は小さくなる!
  • 基準音の音量が小さいと差が大きくなる!

 

 

等ラウドネス曲線は複数ある

注意点は、そもそも人間の「感覚」を集計したものだということです。機械的に計測するものではありません。なので、測定したグループによってことなる曲線になります。でも、だいたい似たようなカーブになります。

Meldaのアナライザでは3種類のカーブを試すことができます。

興味のある人はどーぞ。

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いずれのカーブでも3000Hz~4000Hzあたりに大きく凹んだカーブが現れていることなどに注目してみると、音楽および雑学にとって何かのヒントになるかもしれません。

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■まとめ。フレッチャーマンソン曲線について音楽作家が知っておくべきたった2つのポイント

「音量を小さくすると低音が聞こえにくいよ!」ということと、

「3000~4000Hzは聞こえやすいよ!」という2点だけです。

 

この2つのことがDTM的にどういう意味があるのかというと、

  • 小さな音量でミックスしていると、低音が聞こえにくいので気をつける
  • 大きな音量でミックスしていると、小さな音量で聞いた時のバランスを見失うので気をつける
  • どの音量でも、3000Hz周辺(後述)は最も大きく聞こえ、ローとハイは小さく聞こえる

 

というシンプルな結論です。

 

 

 

■関連知識

興味のある人は調べてみてください。音楽制作にはそれほど関係ないので、記事内での解説は割愛します。

  • 3000Hzあたりの方が聞こえやすい理由(生物特性)
  • 小さいと低音は非常に小さく感じる(フレッチャーマンソン曲線)
  • 低音の方が遠達性が高い
  • 盆踊りの太鼓の低音は遠くからでも聞こえる(気温・回折)
  • 遠くの工事の低音も聞こえやすい(遠達性)
  • ドア越しの声は低音だけ聞こえる(遮音・振動)
  • 水の中での音の伝達

音楽の知識なのか、雑学なのかを分けて考えましょう。

 

音の回折については下の外部記事が分かりやすいと思います。

wakariyasuku.info

 

音ってなに | 防音工事は安く確実な音響へ

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